MCU『ブラック★ロックシューター』 作:おれちゃん
旅行当日朝。相変わらず非通知電話が来るが無視である。
「よく考えたらこれ空港の検査通れるのかな」
トニーの言葉に心機一転、アイアン・スパイダーは持って行くことに決めたピーターがうんうん考え込む。向こうに行った時に検査で引っかかって没収なんて悲しすぎる。ピーターからすればまだ八ヶ月とちょっとの付き合いな為か戦い以外の機能がよくわかっていない節がある。
「あ……そうだ。もしもーし、F.R.I.D.A.Y.? 聞こえますかー」
『おはよう、スパイダーマン。どうしましたか?』
「うわぁ! 本当に答えてくれた!」
『このスーツは私の管制とサポートを受けているのですから当然です。ご用件は? マスターに何かお話でも?』
「あーえーとね。旅行の時もスーツを持って行きたいんだけれど……空港で没収されないかなって」
『それでしたら圧縮モードで偽装可能です』
「ほんと!? スッゴイなんで教えてくれなかったの!?」
『必要がなかったからです』
「……たしかに」
ピーターがF.R.I.D.A.Y.の言葉に喜んでいると充電されたアイアン・スパイダーが高級な腕時計とネックレス風に変形する。トニーが胸につけていたナノマシンホルダーの要領でナノマシンを圧縮したのだ。腕時計で収まり切らなかった分はネックレスに分割された。
「おお、ちょっとスパイダーマン風……」
「はいピーター朝ごはん」
「えっあいた!」
メイおばさんが通りがけにバナナを投げたらそれがピーターの顔面を直撃した。予想外の事態に思わずメイおばさんが笑ってしまう。
「あーありがとう」
「ごめんなさいてっきりほらいつものアレで取れるのかと思って。ほらピータームズムズ」
「いやそのネーミングはやめてよもっとかっこいい感じが良いんだけど」
「えーと……ピーターウズウズ?」
「悪化してる気がするよおばさん……」
「スーツは持って行くの?」
「うん持ってく。見てよこれすごくない?」
「わあ素敵、気をつけて行ってきてね。誰かと喋ってなかった?」
「あーまぁ、スタークさんの友達と?」
「そう」
メイおばさんとハグをしてピーターが旅行鞄を閉める。
そうしてケネディ空港へ集合しパスポートチェックを終えて飛行機へ乗り込む。その際にテリアが金属探知機に引っかかり外し忘れていた意外と金具が多く大きいバックルをしたパンクなベルトとドックタグを下げていたのをクラスのみんなが意外そうな目で見ていた。
ネッドもピーターもワクワクした様子だ。というより旅行に行くミッドタウン高校の面々がみんなウキウキしていると言ったほうがいいだろう。
「オイ、ピーターこれ飛行機って言うんだぜ。自転車とは違うぞ初めてか?」
フラッシュがピーターを煽る。
「何飲んでるの?」
「おっとテリア、これは大人の味だお子ちゃまは飲んじゃダメだぜ」
「乗務員さん。彼は五年間消えてたのでまだ未成年ですよ」
「おいちょっと!」
添乗員に飲んでいたアルコールを取られた。後からやってきたMJとテリアにタジタジのフラッシュであった。二人が通り過ぎた後をブラッドが通る。
「さすがMJだな」
「……ねえブラッドも来るって知ってた?」
「いや? まじ変だよな。アイツ五年前はヒョロヒョロで鼻血出して泣いてるようなチビだったのに今やムキムキで爽やか。女子はみんな狙ってるっぽいんだよな」
後ろに行ったブラッドを二人が覗き見る。MJとテリアの荷物を棚にしまうのを手伝っていた。
「みんな狙ってるってことは無いんじゃないかな」
「いいや全員アイツを……まあ例外はどこにでもいるさそんなことより大事な事だ。見てくれよこれ! 苦節五時間並んでギリギリ買えたアベンジャーズのゲーム!*1 まだプレイしてないからマルチで一緒に九時間ぶっ続けでやろうぜ!」
「ネッド、MJの隣に座れるよう手伝って……!」
「まじか、プランは? アメリカンボーイヨーロッパでモテモテ物語」
「それはネッドのプランでしょ僕のプランは最初からこれだよ……!」
さあまずはピーターのプランその一。MJと隣になってデュアルアダプターで一緒に映画見る作戦である。ネッドに協力を要請。彼は動いた。
「なあ、俺の前に座ってるおっさんが馬鹿みたいにコロン臭くってさ、ピーターが鼻炎やばくなりそうで、ベディ良ければピーターと場所変わってやってくれない?」
「鼻炎?」
「ああそう、ピーターってアレルギー性鼻炎なんだけどこう、なんか持病が悪化する感じなんだよ。ピータームズムズって感じ」
「ピーターがアレルギーだって?」
後ろの席にテリアと並んで座っていたハリントン先生が顔を出した。
「僕も経験あるから気持ちはわかる。それは辛いな思い出すだけで鼻水が出そうだ。ブラッド、MJ立って前に行ってくれ。ピーターは僕の席に、なるべく離そう。僕がブラッドのところに座ろうネッドはMJのいた所に。知らせてくれてありがとうネッド」
席をずらした結果MJはブラッドと同じ席になった。ピーターはテリアの隣、ネッドはベティの隣になる。ピーターが真顔でネッドの方を見ているのをネッドは努めて見ないようにした。ピーターがテリアの隣を獲得したのをフラッシュが真顔で見ていたがピーターはそれどころではないので気付かなかった。
「鼻大丈夫?」
「ああ……うん大丈夫ここなら平気だから気にしないで……」
席に座るとテリアが心配そうに見つめてくるが意気消沈したピーターは真顔である。
「……ねえ、よければアベンジャーズやる?」
「やらない」
「今までPCゲームやった事は?」
「ない」
「そう……」
『ご搭乗ありがとうございます。機長よりイタリア、ベネチアまで八時間四十九分のフライトです』
ネッドとベティの席は席でちょっと気まずい感じになっていた。
ピーターのプラン一はいきなり破綻する事になった。MJとブラッドがデュアルアダプターで楽しそうに映画を見ているのを尻目にピーターは何か映画を見ようかと画面を開く。
『ビッグジャガーvsメカパンサー:ワカンダ決戦編』
『アイアントルネード:F6・スーパーサノス』
『ホークアイ・ヒストリー』
『ファーフロムアスガルド・ニューアスガルドカミング』
『ディスイズアベンジ』
画面を閉じて見るのをやめた。
隣で『ホークアイヒストリー』を観ているテリアが泣きそうになっていたのでハンカチを貸してあげた。ネッドは一人アベンジャーズをプレイ。ブラックロックシューターの砲撃モードで敵を吹き飛ばしまくって悦に浸っているとベティが見ていたのでもう一つのコントローラーを差し出した。ベティは少し恥ずかしそうに手に取った。ベティのセンスが良くハルクで大暴れを始め有名なブラックロックシューターとの共闘がゲーム内で実現してテンション鰻登りであった。
ピーターが眠ろうとした所で気付く。いつのまにかピーターの方に寄りかかって寝ているテリアからめっちゃ良い匂いがする。ピーターは静かに毛布をかけてあげた。どこかで嗅いだ香りだなと変に意識した結果寝れなくなった。
揺れる機内でネッドとベティの手が重なる。二人は見つめ合った。
そうして約九時間の空の旅を終えて空港に降り立ったピーターがネッドに駆け寄る。
「機内のMJとブラッド見てた? 二人で映画見て楽しそうに笑ってた」
「大丈夫何もないって心配するなよ」
まるで世界の理を知って悟りを開いたかのようなアルカイックスマイルを浮かべるネッドが首を横に振る。
「ベイビー、これ持っててくれない?」
「任せてくれベイビー」
ベティが通りかかってネッドとイチャイチャし止めにハグをして行った。信じられないものを見た目でピーターが自分の頬をつねった。
「ね、ねえ何今の」
「え、ああうん飛行機の中で話しかけたら意外と共通点があって……今は彼氏彼女の仲って感じ?」
「え、アメリカンボーイヨーロッパでモテモテ物語は?」
「……ピーター、そんな青臭いことを言う男は真実の愛を知って成長したんだ」
「ベイビー」
「ああ今いくよベイビー」
釈然としない顔をしながらピーターも先へ進む。
空港の検査所でバナナが入っていて少し止められるトラブルがあったものの無事ベネチアに降り立つこととなった。