MCU『ブラック★ロックシューター』   作:おれちゃん

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ヴェネチア

 水の都、といえば誰しもが思い浮かべる都市ヴェネチア。五年前は環境の変化で高潮による浸水被害などが多発していたがこの五年でそれらは減少傾向にある。

 が、ピーター達の泊まるホテルは一部水没していた。

 

「まあ、これもこれで旅の醍醐味だ。ヴェネチアで靴下が濡れるって言うのもね。みんな、荷物を置いて三時にダヴィンチ博物館に集合! さあ行った!」

 

 MJとテリアにピーターが合流する。ブラッドもいる。四人でヴェネチア観光とあいなった。

 

「わぁ」

「こらテリア。勝手に行っちゃダメよ」

「はーい」

 

 サン・マルコ広場を中心に観光を開始した一同は、多くの人々が行き交う様を見る。消えていた人々は想像だにしないが、五年の間は地元の人間以外人がほとんどいなくなっていた。観光業は打撃を受けピーター達の泊まるホテルが荒れていたのもその辺りに事情があった。

 

「ほらテリア。よそ行っちゃダメだぞしっかりピーターについて行って」

 

 ブラッドがピーターにテリアを押し付けMJとブラッド、テリアとピーターという男女二組状態を作ろうとしている事をピーターは察した。

 だが結果としてMJとテリア、ブラッドとピーターの女女男男二組状態になっていた。ブラッドとピーターはなんとも言えない顔で互いに顔を見合わせる。視線はこう語る。

 "まず共同戦線を張るべきじゃないか?"と。

 

「二人とも! 写真撮ろう!」

「ああいいとも!」

「うんそうだね!」

 

 弾かれたように二人が笑顔でそれに応える。

 鳩に乗っかられたピーターとブラッドの記念写真が撮られた。撮影はMJである。代わりばんこでMJとテリアの写真をピーターが撮る。テリアは鳩が乗ってくれなくて少し拗ねていた。きゃっきゃしている女子二人の後ろで男子二人が違うそうじゃないとなっていた。

 その頃ベティとネッドは絵を描いてもらっていた。

 

「じゃぁ僕、お土産見てくるね」

 

 ピーターかそう切り出した。

 

「それなら私も、お父さんへのお土産探しに行ってくる」

 

 ブラッドが顔を上げる。ある種MJの無敵の盾と化していたテリアをMJから引き離すことに成功する妙手。ピーターを見れば小さく頷く。

 

「なら俺も土産を探すことにするよ」

 

 ここは紳士協定だ。テリアという盾を除いたピーターへの男としての返しである。この後MJがどうするかはまさしくMJ自身に委ねられた。

 人はより大きな困難(不思議ちゃん)に直面すると争うことをやめ団結するのである。

 そうして別れたピーターは事前に調べておいたガラス細工屋さんでMJが好きなブラックダリアの花を模したネックレスを入手。黒いガラスを用いた見事なネックレスである。ちなみにMJがこの花が好きな理由はまあMJの趣味からお察しの通り殺人事件由来である。

 これでプラン三は何とか成功、ピーターの顔が綻ぶ。大切に大切にカバンに仕舞い込んでガッツポーズを取る。ちなみにプランニはプラン一と連動していたので既に破綻済みである。

 

「ボゥ!」

「わぁ!? ええええMJ! ボゥって何だい?」

 

 突如現れたMJにピーターがテンパりつつも二人で並んで歩き出す。言っては何だが待望の時間だ。白い絵のプリントされたシャツにデニムを履いた彼女らしいファッション。ピーターの買ったネックレスもきっと似合うだろう。

 

「覚えたてのイタリア語」

「意味は?」

「何にでもなるよ。さあね、とか、うせろとか意味わかんないとか。イタリアが産んだ宝だね。エスプレッソもそう」

「ねえお姉ちゃんドイツ人? アメリカ人? 良かったらお茶でも」

「ボゥ」

 

 通りかかったナンパイタリア人をボゥで撃退するMJにピーターが感心した。胸はドキドキである。大量のカニが橋桁を這い回っているのを見つけてMJが写真を撮る。

 

「あ、ピーターだ」

「ふおぁっ誰!?」

 

 ヴェネチアンマスクをつけた何者かに声をかけられてピーターが仰け反った。どうやらピータームズムズはMJに夢中であったようである。

 

「私」

「なんだテリアか」

「わぁテリアイカすねそれ。処刑人って感じがする」

 

 テリアはチェック柄の入った半袖のシャツにショートパンツを履き腰に黒いパーカーを巻いている。それにマスクはなかなかに面白い事になっている。

 

「MJもつける?」

「いやピーターがつけた方が似合うんじゃない?」

「ん、わかった」

「いや差し出されても」

「いいじゃない、つけて写真でも撮りましょ」

 

 渋々つけるとMJと密着してテリアが写真を撮ってくれた。ピーターは心の中で狂喜乱舞していた。

 

「その箱何?」

「サン・マルコ寺院の模型。お土産」

「すごいお土産だね、誰にあげるの?」

「知り合いのえーと、狸みたいな人」

「へ……へえ」「面白い形容の仕方するのね。ちょっと顔見てみたい」

 

 狸みたいな人とはどんな感じなのだろうかと二人は思いを馳せた。宇宙のどこかでアライグマがクシャミをして宇宙船の片隅に置かれたエッフェル塔の模型を眺める。

 そんな感じで和気藹々と過ごしていると、急に水が引き出した。水位が下がっている。

 

「嫌な感じする。高い所行こう?」

 

 ピーターが違和感を持っているとテリアが二人を押して高いところに行こうとする。

 

「どうしたの?」

「水が引くのはtsunamiの前触れって聞いた」

「そんな不味いじゃないか!」

 

 ピーターが時計に向かって小さく声をかける。時計の一部がほつれてインカムになりピーターの耳にF.R.I.D.A.Y.の声が届く。

 

『否。観測機器からは海底地震や噴火の類は計測されていません……衛星よりエネルギー波を検知。運河です』

 

 ピーターが顔を持ち上げた瞬間運河が爆発した。大量の水飛沫と共に現れたのは体を水で構成した巨人だ。

 ネッドとベティが乗っていたカヌーが転覆し二人が運河に投げ出される。パニックになるベティをネッドが自分を浮き袋がわりにしながら抱きしめ支える。

 

「MJ! 逃げて! 僕はネッドを助けてくる!」

「わかった」

 

 聞き分けが良い事に感謝して助けようとしているとテリアが先に運河に飛び込んだ。二人の元にスイスイと泳いで行くとベティを担ぎそれをネッドが落ち着かせる。そこへ水の巨人が狙いを定めて腕を振り上げた。

 

「スパイダーマンってバレないようにできない!?」

『偽装モード起動』

 

 ネックレスと腕時計が解け体をナノテクアーマーが覆っていく。しかしその見た目はスパイダーマンを黒く染めたような感じで少し厳つい。背のアームも四本から二本に統合し太く長くなっている。

 三人に襲いかかる巨人の反対側の建物にウェブを接着。それを引く力とアーム、そしてピーター自身の脚力で足場を粉砕しながら全力跳躍。振り下ろそうとしていた巨人にピーター砲弾が直撃し上半身が木っ端微塵に吹っ飛び砕ける。

 

「あれ何!?」

「知らない」

「ととととにかく逃げようベイビー! 君の安全が第一だ!」

 

 水飛沫を三人がおっかぶりつつ岸へ到達。三人が離れていくのを見てピーターは安心したように頷いた。

 しかし上体を吹き飛ばされたのにも関わらず水が集って再度体が構成される。水飛沫を上げながら巨人が咆哮した。

 水のパンチを回避し橋の上に立つ。

 

「よくわからないけど、やるっきゃないでしょ僕の夏休みのために!」

 

 ウェブでの拘束は水ゆえに効かない。ピーターは周囲を飛び回り物理攻撃を加えていくが効果がないようだ。

 そこへ緑色の光線が飛び巨人に直撃した。

 

『飛行物体接近』

 

 そこに足から緑色の炎を吹き出しながら現れたのは頭に金魚鉢を乗せたような人物だった。その手から放たれるビームが直撃すれば水の巨人が怯む。

 

『そこの君! 運河からそいつを引き離すのを手伝ってくれ! 水の元素が傍にある限りそのエレメンタルズは不死身だ!』

「わかった!」

 

 金魚鉢マンがビームを放ち気を引き巨人を運河から引き離す。丁度ヴェネチア博物館前の広場が空いている。

 

「何だあいつら!?」

「わからないが……水の化物をやっつけようとしてる!」

 

 そこに到達し金魚鉢マンが全力でビームを放つ。だが水圧の暴力に押し負けそうになった所をピーターが再び砲弾となって水を弾き飛ばす。体を再構成しようとする所に金魚鉢マンが全力でビームを放ち、水の巨人が爆散した。

 水飛沫が収まり降り立った金魚鉢マンとピーターに周囲の人々から喝采が贈られる。金魚鉢マンが手を差し出し二人が握手をするとその歓声はよりと大きなものとなった。

 

『ありがとう()()()()()()()

「えちょっと!?」

 

 そう言って空へ飛んで行く金魚鉢を見送り、ピーターもウェブで移動し姿を隠し、偽装アイアン・スパイダーを解除して皆と合流した。

 自分のヒーロー名を偽装していたにもかかわらず言い当てた金魚鉢マンに、ピーターはなんとも言えない不安を感じずにはいられなかった。

 

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