MCU『ブラック★ロックシューター』 作:おれちゃん
「マジかその情報すごい通な奴しか知らないやつ!」
「そうなの?」
「なのにスパイダーマンにあまり詳しくないんだな」
「あまり知らなくて」
「なら話してやろう」
テリアとフラッシュが楽しそうに喋っているが内容はヒーローファンの会話だ。どうやらテリアはアベンジャーズファン、それも最初の七人が好きなようでコアなファンしか知らないような話もスラスラと出てくる。逆にフラッシュはスパイダーマンの話をしまくる。テリアはフラッシュの話すワシントンでの出来事なんかを楽しそうに聞いていた。
男女の色気はゼロである。
テリアの巻いていたパーカーを見せてもらいフラッシュはご満悦だ。初めの七人パーカーは人気度が高く、特にブラックロックシューター のモノは本人が着ているものの再現なのでよりプレミア度が高く倍率も上だった。
「おおー再現度高いなやっぱりって、あれ、これ通し番号入ってないけど限定レプリカパーカーじゃないの?」
限定レプリカ品は左袖の中抜きの星の中に通し番号が書かれているが、それがない。
「うん、レプリカじゃなくて作ってもらった」
そう聞いてフラッシュが震え出す、
「す……すげえ! すげえよ手作りでこの再現度! 今度ぜひ俺にも紹介してくれ!」
「いいよ」
フラッシュが想定していたのは手先の器用なヒーローオタクであるが、後日マジで紹介された人物にフラッシュは内臓を全部吐き出しそうな勢いで驚愕絶叫する羽目になる。
「昨日は言えなかったけど、エッフェル塔登らない?」
「あれは人を洗脳する電波を出して操ってるんだって、最高じゃない?」
「そうだね最高」
その頃ピーターとMJはいい感じで物騒な会話をしていた。話題がブラックである。ブラッドが歯痒そうにそれを見ているが、ピーターがフェアにテリア切り離しをしたのを思い出すとあまり卑怯な手に打って出るのはブラッドの男としての矜持が許さない。一人ブラッドは悶々としていた。
そうしてネッドとベティはイチャイチャしていた。
花の都パリではハルクとブラックウィドウのミューラルアートが多く存在していた。ハルクスマッシュのアートに出迎えられ十八時間の旅路を終えて豪華なホテルに着いた一行は豪華なホテルに驚きつつ翌日に備えて眠りにつく。
「さあみんな! 今日こそはだ! 三時にみんなルーブル美術館前に集合だ!」
「夜にはなんとオペラだぞ!」
「「オペラ!?」」
「しかも本場も本場、本物のオペラ座でオペラだ!」
ネッドがピーターを見る。時間を確認すれば炎のエレメンタル襲撃時間と一致している。仲間の安全の為の措置だ。
「みんなドレスコードをしっかりな! タダで借りられるからカタログをよく見ておくといい」
そこでピータームズムズが反応する。ピーターの背後からブラッドが今ピーターの正面にいるMJに向かっている。ピーターは反射的にMJに近づく。
「MJ! ぜひ僕と"二人きりで"エッフェル塔へ登ってくれませんか!!」
声が緊張で震えながらも言い切った。あえて皆に聞こえるように。バスで了承してくれているとはいえまるで天に祈るように目を瞑り返事を待つ。
「いいよ行こうか。頭にアルミホイル巻いてね」
MJが微笑んでピーターの手を取る。クラスの皆が指笛を吹いたり拍手したりでテンション爆上げだ。手を取ったMJとピーターが駆け出していく。
「やりやがった! やりやがったぞあいつ!」
フラッシュがハンカチを持って振る。
ブラッドは一人悔しそうに、だがピーターの勇気ある行動に賞賛するようにピーターに聞こえないよう小さく小さく、その背に向け拍手をした。
ピーターとMJは当日券を買うと、MJを抱えて階段を凄い勢いで上っていく。男子としての力強さアピールである。登っていくエレベーターを追い越す勢いで、それでいてMJには負担をかけないような細やかな登り方だった。
そうして第二展望台に到着したピーターとMJは即座にエレベーターに乗り第三展望台へ。
そんな事をやっているエッフェル塔だがこの塔も五年の間に倒壊の危機があった。ペンキ職人の多くがデジメーションで消えメンテナンスの為のペンキ塗りが滞ってしまったのだ。残った職人達が大慌てで育成をしながらギリギリの維持を続けていたところに皆が復活し事なきを得たのだ。これは日本の東京タワーにも似たような事態が起きていた。
第三展望台の人の少ないところへ行き、ピーターは唾を飲んだ。
「え、え、え、MJ、きょ、今日僕言いたいことがあるんだ」
ガサゴソと鞄から大切にしまわれていた箱を取り出す。
「まずはこれ、受け取って」
開かれた箱にはヴェネチアングラスで作られたブラックダリアのネックレス。
空気を読んだ観光客は距離を置いて離れていく。
「ブラックダリア……!」
「そう」
「「殺人の花」」
ピーターとMJが顔を見合わせる。
「MJ、僕の気持ちを伝えたい……君のことが、好きだ。時折合う君との目線に、僕は射抜かれたんだ」
「……いや」
「え゛っ」
ピーターが膝から崩れ落ちそうになるのを慌ててMJが支えて否定する。
「あっ違うのそうじゃなくて! 私、人と仲良くなるのが得意じゃなくて、今ね嘘つきそうになった」
「……なんて嘘?」
持ち直したピーターが問う。
「貴方をスパイダーマンだと疑って貴方のこと見てたって」
「え゛っ」
ピーターは今度こそ膝から崩れ落ちた。
「いや僕スパイダーマンじゃないよ」
「うん。あなたがスパイダーマンかは今はいい」
崩れ落ちたピーターの額にかすかに柔らかい感触がして、ピーターは顔を上げた。
「え? 今キスした?」
「ほら立って。女から男への額のキスは母性を意味するらしいけれど、今のは違う。わかるでしょ?」
ピーターが立ち上がりMJと見つめ合う。
「はい」
「私も貴方のこと好きよ」
そうして今度は唇と唇が触れ合った。ピーターは茹で上がって顔が真っ赤。ファイナルプラン大成功である。
「僕も、僕も大好きです!」
ピーターがMJを抱きしめくるくるとその場で回る。警備員さんも若者の熱い青春にあえて注意せずただ深く頷き、周囲の人々と共に祝福の拍手をした。
「それでピーター、私たち恋人になったんだけれど。恋人に嘘はつかないわよね」
「えっうん」
「貴方スパイダーマンでしょ」
「え、あはい僕がスパイダーマンです……」
祝福してくれる周りの人々の拍手に紛れ、MJにピーターはスパイダーマンの秘密を明かした。その後花の都パリを観光し、三時にルーヴル美術館前に手を繋いで現れた二人にネッドとベティは温かい祝福をした。
日が暮れ、夜のオペラに向け皆がスーツやドレスを借りる。場は本場というだけあり結構混み合っていた。
「それ似合ってる」
「あ、ありがとうMJ……でもごめん」
シンプルなスーツに身を包んだピーターは白を基調としたシンプルなフレアドレスを纏ったMJにドキドキである。だからこそピーターは悲しそうな顔をして謝った。
「もしかして何かあるの?」
「うん……パリで世界を賭けた戦いが、皆には安全の為にここに来てもらってるんだ。僕絶対に勝つから安心してオペラを楽しんでほしい」
「ギロチン台に立つマリーアントワネットの数百倍ここは安全だから気にしないで。親愛なる隣人さん」
「うん、行ってきます」
MJと別れをかわしてネッドに目線で会釈をしピーターは席にはつかず立ち去ろうとするのを出入り口ですれ違いそうになったブラッドに止められる。
「おいふざけるなよ? 俺が身を引いたのになんのつもりだ彼女に一人オペラ観させるつもりか? ぶん殴ってでも連れ戻すぞ」
「ごめんブラッド、後で百万発殴られても構わない、MJを頼むよ」
肩を掴まれ懇願するようなピーターの表情にブラッドが動揺する。掴まれた肩を振り払うと襟をただして目を細めた。ニヒルに笑みを浮かべる。
「早く戻ってこないと俺がまたアタックするぞ。人の心は変わる。そうだろう?」
「すぐ戻るよ!」
ピーターの背を見送ったブラッドはMJの隣に座る。男と男の約束をしてしまいMJの方をチラリと見てため息を吐いた。
「ねえネッド、テリアがいないわ? ピーターも」
「え、ああうんそうだね」
「探してあげないと可哀想よ、道に迷ってるのかも」
テリアの借りるドレスを選んであげたのはベティである。折角の格好なのに見れないのは悲しい。
「えっ……あっちょっま待って!」
ベティとネッドが席をたったのを見て、MJは不味いと思い二人の跡をつける。男の約束をしたブラッドもまたMJを追うようにオペラ座を後にした。