MCU『ブラック★ロックシューター』 作:おれちゃん
昼間登ったエッフェル塔の今度は外側にピーターはアイアン・スパイダー(インセクトモード)で張り付き美しい夜景に目を細める。MJとこの景色を見たかった。
先程までの作戦会議の様子を思い出す。
「火のエレメンタルズは金属を吸収し強大化する特性があった。僕の世界では座標からするとシャンドマルス公園付近から出現、対応が間に合わず……こちらではエッフェル塔だったか? あれに似た鉄塔に取り付かれた。約一万トンの鉄を吸収した奴はその場で地殻を貫きマグマからエネルギーを吸収、僕たちの世界の終焉だ」
「つまりエッフェル塔に近づけさせない事が第一だ」
「交渉中ですがフランス政府は懐疑的で避難の必要はないと」
「困った連中だ。五年間消えていたツケだな」
「僕の仲間は大丈夫かな」
「心配するな。世間一般には知られていないがあそこは非常時には核シェルターに使えるほどの性能がある。まぁ、我々が負ければシェルターもへったくれもないがな。だがそれは無いと私は確信している」
「ベックさんと」
「ミステリオでいい」
ピーターがベックの方をみて笑顔を見せた。
「ミステリオと僕なら負けないってことですか」
「ああ、そうだとも」
フューリーが頷いた。
「僕がエッフェル塔から全体を監視します、ミステリオはそれに合わせて遊撃、これでいいですか?」
「ああ構わない」
「幸運を祈っているぞ。二人とも」
そうしてピーターは今エッフェル塔で周囲を警戒している。そこへミステリオ、ベックがやってきた。
「やあスパイダーマン」
「ミステリオ、どうしたんです?」
「君とは話しておきたくてね。君の直向きな姿にがこう……眩しくて」
金魚鉢が外れ現れた顔には影がさしていた。
「僕も、まだまだ未熟だけど僕の手にはみんなから託されたバトンがあるんです」
「敬語はいい、僕たちは対等、むしろ君が先輩だ敬語を使うなら僕が使うべきだしね」
「ありがとう、その重荷に少し苦しんだ事もあるけど、バトンを渡した人たちが言うんだ。投げ出してもいいって、そんな優しい人達の期待なら応えたい」
「アベンジャーズ、か。僕には遠い話だ」
「いいえ違います、あなたもアベンジャーズだ。受け売りだけど"立ち向かう心、戦う意志があるなら誰でもアベンジャーズ"だって」
ピーターが手を差し出す。
「ようこそ、アベンジャーズへ」
「……僕は抜け殻だ。何も成せていない」
「関係ない、僕たちの世界の為戦ってくれる」
「……」
差し出されたピーターの手をベックは取らない。それを無理やりピーターが掴んだ。
「僕たちなら世界を守れる、大丈夫! なんとかなるってだって僕たちのアベンジャーズだから!」
「ああ、そうだな、僕たちアベンジャーズだ。だがあまり人を簡単に信用するものじゃ無いぞ」
「僕の感覚が貴方は信じられるって告げてるんです。それに怪しい人は自分を信用するな、なんて言わないよ」
ピータームズムズと言うと台無しなので誤魔化した。
「さしずめ
「わっそれいい!」
「えっ」
「今度からそう呼びます! スパイダーセンス! おばさんのアレだと言いづらくって!」
「そ、そうかそれは良かった。もうすぐ時間だ持ち場に僕は戻るよ」
飛んでいくベックを見ながらピーターはベックの着ているスーツは彼らの世界におけるアイアンマンスーツみたいなものだろうかと少し考察していた。
一方その頃地上。
「見つけた! テリアもうすぐオペラよ」
「ベティにネッド? どうしてここに?」
「もう、それはこっちのセリフどうしてこんな所に?」
「……散歩してただけだよ」
「嘘言いなさい、声でわかるわよ道に迷ってたんでしょ、ふらふらどこか行くのはいつものお決まりだけれど」
「さ、散歩してただけだよ」
どう聞いても嘘くさい。テリアは嘘が下手くそである。
「まぁいいじゃない、こうして見つかったんだ、さあ戻ろうベイビー」
「ええそうね戻りましょうベイビー、もう始まっちゃってるかしら」
テリアがどっか行かないよう手を繋いで戻っている最中、突如周囲の電灯が停電を起こす。
「何?」
電灯が赤く灼熱し融けだす。そうして液体となった鉄は人の姿を形作り咆哮を上げた。ベティとネッドが悲鳴を上げ、テリアが二人の背を押して逃げる。
「出た!」
『予想地点と違うな、向こうも都合よくとはいかなかったようだ』
エッフェル塔付近、もしくはエッフェル塔直下に直接出現することを警戒していた二人は出現したエレメンタルズへ向け急行する。
それでも凱旋門付近に出現したフレイム・エレメンタルは暴れながら付近の乗用車を爆発させながら取り込み巨大化していく。
『させるか!』
ミステリオのビームが直撃しエレメンタルズにダメージが入る。解け落ちた腕がそのまま足から融合し再び腕として再構成され、振るわれた拳から放たれた火炎弾がミステリオを直撃して吹っ飛びビルに叩きつけられる。
「大丈夫だベイビー、ミステリオが来てくれた隠れてれば安心だよ」
「ねえちょっと、テリアは!?」
「あれ!?」
ベティとネッドは屋内に避難したがテリアがいない。外に探しに行こうにも外は危険だ。二人はテリアの無事を祈るしかなかった。
そうして二人と別れたテリアは暴れ回るエレメンタルズを建物の上から見据える。無秩序に金属を得て破壊を繰り返しているようで、徐々にエッフェル塔へ向けて進軍を続けていた。
テリアが眼鏡を外し踏み出そうとした時、通信が入り止まる。
「何? ……それは必要なこと? ううん、疑ってない。わかった」
通信を終えたテリアは頬をパチンと叩いてビルから飛び降りた。
「んん?」
一瞬スパイダーセンスにすごい気配が引っかかったのだがそれがすぐさま消失してピーターは首を傾げた。だが今はそれを気にしている場合では無い。果敢に攻撃し弾き飛ばされたベックをウェブで作ったネットで受け止めその反動を利用してベックが再び突撃、攻撃を続ける。
やはりベックの攻撃はエレメンタルズに特効があるようだが、崩れた端から路上の車を吸収している為キリがない。幸にもドライバー達は異常事態に車を乗り捨てて逃げていた。
夜間とはいえ凱旋門付近の交通量は多く、救いなのは熱し、融かして取り込むプロセスを取るため水のエレメンタルズに比べ再生自体は遅いことだ。
『推定温度1800度。アイアン・スパイダーの耐熱範囲ですが触れれば中のあなたが蒸し焼きになりますよ』
「君は援護を!」
ピーターの得意分野はウェブを用いた拘束攻撃だ。あまりの熱にウェブが焼き切られてしまい叩き付ける物が金属製ではエレメンタルズの餌になってしまう。
「うおおおおおお!!」
全力で放たれるビームとエレメンタルズが拮抗する。
ピーターが援護の為消火栓へインセクト・アームの一方を突き刺す。変形し内側に管を形成、反対のアームから放水機のように吐き出す。
かけられた水はすぐさま蒸発するが、エレメンタルズが怯んだ。そこをベックがビームの出力を上げ追い詰める。するとエレメンタルズはビームを受けながらも逃げ出す。
「逃すか!」
「っ! 待ってミステリオ!」
追撃を仕掛けるベックの先、エレメンタルズがタンクローリーを蹴り上げた。満載されたガソリンに引火し大爆発が起き、吹き上がる爆炎が生き物のように蠢き圧縮されエレメンタルズに宿る。業火を纏い熱量を上げたエレメンタルズはエッフェル塔へ向け邁進する。そこでスパイダーセンスが働いた。進む先に人が二人いる。
ウェブシューターで急接近すればブラッドがMJを庇うように車の影に隠れようとしていた。ネッド達を追いかけていてこの状況に遭遇してしまったのだ。
「なんで!? 二人が!?」
二人を抱き抱えエレメンタルズの進路から退避する。
「い、インセクト……」
状況はわからないがブラッドはMJを守ろうとしてくれていた。ピーターはブラッドに言葉は出さずサムズアップをして礼をし、すぐさまエレメンタルズのもとへ戻る。
「くそ! くそおおおお!」
ベックのビームも身を削るが道端の車を即座に吸収、融解速度が格段に増し削られるより吸収ペースの方が早く意に介した様子もない。
「フューリー! 聞こえる!?」
『聞こえている』
「エレメンタルズはエッフェル塔に向かってる、そこの前に橋があるでしょ!」
『イエナ橋か』
「そこの上の人の避難とありったけ爆薬をしかけて!」
『……わかった』
「ミステリオ! 一旦攻撃をやめて!」
「しかし!」
「お願い僕を信じて!」
「……!」
ベックが攻撃をやめて離脱する。そうして進撃するエレメンタルズにピーターはウェブで貼り付けた車を次々と投擲、融合しどんどんとエレメンタルズが巨大化する。
「スパイダーマン何を!?」
「大丈夫! 橋の方で待機してて!」
ある程度大きくなったエレメンタルズを追い越しピーターも橋へ先回りする。
「フューリーこれ使わせてもらうからね!」
『防弾仕様の特別車だが……まあ世界に比べれば安いものだ』
橋のエッフェル塔側に最終防衛線を築いたフューリー達の車三台をウェブで雁字搦めにくっつけて塊にする。
『発煙筒が見えるか、アレの位置が爆薬の設置地点だ』
橋の中腹で煙が立っている。その先では巨大化し迫りくるエレメンタルズの迫力は凄まじい。アレがエッフェル塔を飲み込めば世界が滅ぶというのも頷ける。
「念のため待機を。何、救護活動中? 確かに信じろとは言ったが」
小声で通信するフューリーにマリアが肩を竦めた。
「ミステリオ! 僕の攻撃に合わせて!」
迫るエレメンタルズを見据え橋の上でピーターがウェブを車塊に繋げてその場で回転を始める。ハンマーなげの準備動作に近いがあまりの重量にアームの補助が無ければピーターが振り回されてしまうだろう。
そして最高速度に達したピーターが車塊を投げた。その先にいるエレメンタルズは回避不能だ。橋の上に到達し両端は既に川。体が大きすぎてしゃがむこともできない。大質量同士の衝突、エレメンタルズが怯むが衝突した車塊を取り込もうとする。
「ミステリオ!」
「任せろ!」
そこへベックの突撃。融解に向けられていたエネルギーがベックの方を向き特殊仕様車は通常の車両に比べ融けにくいのを利用しそこにウェブを接着、ピーターがあらん限りの力でそれを引っ張った。
融合しかけていた車塊が無理矢理引き剥がされ体勢が崩れる。そしてその場の下では発煙筒が輝いている。
「今だ!!」
「やれ!」
ピーターの合図に合わせ爆薬が爆発。下の桁が破砕されるがそれだけでは橋は崩落しない。ここでピーターがわざわざエレメンタルズを肥大化させた意味が出た。体制を崩し尻餅をついた瞬間桁が破壊され崩れかけた橋の剛性が完全に破綻、そのままエレメンタルズは川に叩き落とされ水蒸気爆発が発生する。沸騰する川にしかしマグマからエネルギーを得ていないエレメンタルズの熱量は川の水量に比べれば些細なものだ。
「うわあ!」
確認の為崩れた橋の脇に立ったピーターに向け水面から手が飛び出す。それをベックが飛来し庇うが、すんでのところでエレメンタルズは固まり、醜悪な金属の像に変化した。
「終わりだ」
ベックがそれへビームを放ち砕き、全てが水没していく。
「やった!」
ピーターが大喜びする。降りてきたベックがピーターが差し出した手を握った。火のエレメンタルズとの戦いはここに終結したのだ。