MCU『ブラック★ロックシューター』   作:おれちゃん

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Chapter6:出血

「おい弾頭が足りないぞ!」

「一体撃破!」

 

 P.S.S.のメンバーは地下から現れた、ステラ救出時に暴れていたロボと同種の敵と戦闘をしていた。こちら側もその予想はついた為対策装備をしてきたもののクインジェットが墜落した際に予備弾薬の多くが消失し数によるジリ貧となっていた。問答無用でクインジェットがミサイルに落とされた都合上航空支援を飛ばせず陸路での援軍も最も近い基地がそもそもドラコの為、他基地からは離れており、一時間以上時間がかかる事が確定しているのだ。

 

「よしっ撃破っ!」

 

 ロスコルがロケットランチャーを放ちロボに風穴を開け停止させるがその陰から別のロボが迫ってくる。不意を突かれ避ける事ができない。

 

「ロスコル‼︎」

 

 フォボスが叫び、ロスコルが足掻くようにライフルを連射する。

 

「死ねない! お嬢さんに約束をしたんだ!」

 

 どうしようもない質量の暴力にライフル弾では押し返せない。それでもロスコルは目を瞑らない。だからこそ見えた。

 ロボに黒いものが衝突する瞬間を。

 

『ごめんなさい』

 

 通信機からステラの謝る声が聞こえた。

 質量の暴力ならば、それを打ち破ったのは質量と速度の暴力である。

 装甲で構成されたフロントカウルが一トンの質量と時速百六十キロの衝撃力を余す事なく伝えロボを撥ね飛ばし、着地時にトライクを横向きにして減速、停車する。そこに乗る人物を見た全員の顎が落ちた。

 

「「「「おっお嬢さん⁉︎」ちゃん⁉︎」」」」

 

 そのままハンドルを押し込みねじりロックを解除。フロントカウル装甲とハンドガードが持ち上がり内に内蔵された機関銃が二丁姿を現した。

 周囲の敵に向け引き金を引くが、弾が出ない。

 ロボの攻撃を避けるシャオミンが絶叫した。

 

「ごめんステラちゃんそれ弾入ってない‼︎」

 

 趣味の産物なのと安全の為機関銃の弾倉は取り付けられていなかったのである。するとステラが機関銃を引っ張ってジョイントが折れ配線が引きちぎれ捥げる。

 

「おワーーーオあーーー⁉︎」

 

 シャオミンは絶叫した。

 フロントカウルとハンドガードの装甲を使った無骨な大剣のようになった物を全力でロボに叩きつければシャオミンを狙っていたロボが粉砕される。そのまま残っていたロボを全部破壊すると崩れ落ちるシャオミンの元へやってきた。

 

「その……ごめんなさい」

「いやいいんだ……使ってもらえてブラットライクも満足さ……」

「鼻水と涙拭けよ」

「うるせぇ!」

 

 ロスコルがステラの下に駆け寄ってくる。

 

「お嬢さん! ありがとう……でもどうして来たんだ? 待っててくれって」

「仲間のピンチには駆けつけるのが……私は正しいと思った。だから来た。でもごめんなさい、言いつけを破った」

 

 しょんぼりとしたステラの様子に、ロスコルはもう苦笑するしかなかった。ガシガシと乱暴にステラの頭を撫でグラグラと頭を揺すった。

 

「いいんだお嬢さん。いやステラ、改めて助けてくれてありがとう」

「いいの?」

「仲間だからな!」

「おうとも!」

「ダイナマイトガールがいれば百人力だぜ」

 

『P.S.S.コール。援軍が到着したようだがどうか?』

「最高だよクソッタレ、あやべ、お嬢ちゃん今の真似しちゃダメだぞ」

「重火力は消費したが損害は軽傷者とクインジェットに……そこのビークルだ。パイロットは?」

『脱出に成功して離れた場所に待機している』

「それは良かったではP.S.S.はこれより施設に突入する。おらてめえら気合入れろ! タリホー‼︎」

「「「タリホー!」」」」

「たりほー!」

 

 ロボが這い出してきた場所は外から見れば巧妙に廃墟に偽装されていたが中はエレベーターシャフトのようになっており、ロープで降下すればその先は軍事施設というよりは研究所のような姿をしていた。

 しかしほとんどのものは破壊され、床には消化剤の痕跡さえもある。フォボス達がクリアリングしていく中で幾つか身元不明なほど損傷した死体などが転がっていた。外での激戦に比べ中は呆気ないほど何もなかった。西側の大部分が完全に崩落しており何かが起きたことを感じさせるがロスコルが調べるもコンピューター類はどれも完全破壊され何も分からずじまい。

 東へ施設内を進んでいくと、軍事施設としての様相を呈してくる。のと、電源が生きている事がわかり、より一層警戒を強めた。

 

「砂漠の地下にこれだけの空間を? どういう資金力だよ」

 

『やあP.S.S.の諸君』

 

 音声が放送され、全員が物陰に隠れる。

 

『そう警戒する事はない。いや、旧人類には未知とは恐ろしいものか』

 

 カツン、カツンと誰かが歩いてくる。フォボス達は陣形を整え十字砲火の準備を整えた。

 

『君達には是非お帰り願いたいね。もう時間稼ぎの必要もない』

「撃て!」

 

 全員の一斉射撃の轟音が響き歩いてきた人物に直撃する。しばらくの間斉射していたが目標の人物が倒れ射撃を中止する。

 

「いやぁ、まいった参った」

「なっ生きて⁉︎」

「新人類なんだから当然だろう……とまあ手品と言うわけではないが」

 

 

 仰向けに倒れていた男が起き上がる。立ち上がると融けた銅と鉛が滴り落ちた。その手にはステラがもぎ取ったブラックトライクの一部よりもさらに大きな大剣が握られていた。

 その姿は血のように赤い髪に瞳。頭部にはまるで左目に眼帯をするように金属質のアクセサリを付けた男が気怠そうな笑みを浮かべている。

 

「さすがに知人を殺すのは忍びない。帰ってくれないか?」

「俺の知り合いにそんな色男はいねぇなぁ!」

 

 フォボスの発砲を剣を盾に防ぐと切っ先をフォボスの方へ向けた。切っ先が開き、そこには銃口が口を見せていた。いや、その口径は明らかに砲の領域だ。

 

「残念だ」

「させない!」

 

 発砲の瞬間にステラが割り込みフロントカウルを盾にし攻撃を防ぐ。爆発し吹っ飛ばされたが、フォボスもステラも何とか無事だ。

 

「成る程、流石はヴァイス計画の完成形。命拾いしたなベイリー君」

「ゲホッゴホッ! ありがとよ嬢ちゃん……で! てめえは結局誰なんだよ色男さんよ!」

 

 大剣を振ると大きな薬莢がはじき出され、床に当たり金属音を鳴らした。その音の反響が鎮まり、勿体ぶるかのように男は口を開いた。

 

「マズマ」

「……は?」

 

 その言葉をロスコル達は理解できなかった。

 

「おや、よく聞こえなかったかな。私はマズマ・ユーリス。元はしがないただの医者だった男さ」

 

 その男は先日ステラを検査した医者の名を名乗った。

 

「そんな馬鹿な……どう見たってユーリス先生には……」

「そうとも、そこのステラ君の血を使用(ネブレイド)し新人類として覚醒したのだから面影がないのも当然だ」

 

 まるで出来の悪い生徒に諭すかのように微笑むマズマに、ロスコルは怖気が走った。

 

「さあステラ君。君の体は君にはわからない程の利用価値がある。こちらに来なさい」

「いやだ」

「ステラ君、悪いが君の意思は聞いていない」

 

 そう言うと再び大剣を発砲。今度はステラが防ぐも吹き飛ばされずその場で踏ん張った。その背後にはフォボスがいる。

 

「クソッタレ俺達がお嬢ちゃんの邪魔になっちまってる! 一時撤退だ!」

 

 P.S.S.が撤退していくと、ステラは踏ん張ることをやめボロボロになったフロントカウルを捨てるとマズマに突進する。マズマは大剣を振りかぶりステラを迎撃する構えを見せた。

 神速で振り抜かれた大剣の斬撃を上へ間一髪躱す。その鋭さは凄まじく近くの鉄筋コンクリートの柱を容易く両断する。しかし躱した勢いのまま交差法気味にかかと落としがマズマの脳天に直撃、地面に叩きつけ破片が宙を舞う。

 

「無駄だ」

 

 叩きつけられた足をマズマが掴んで全力で振り投げると、ステラはその速度のまま吹っ飛ばされ壁を二枚ほど突き破り床に転がるのだった。


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