MCU『ブラック★ロックシューター』   作:おれちゃん

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ミステリオ

「じゃ、また後で」

「うんまたね」

 

 夜中、遅効性のヴェネチアの運河の細菌により腹痛を起こした事になったピーターをディミトリが車で搬送し、ピーターは問題なく一行と別れることができた。

 

「細菌というのは何日もしてから腸内で繁殖して大暴れする事もあるみたいだ。みんなもちょっとでも体調不良を感じたら言うように」

 

 先生方はディミトリの場合わせの説明に納得しているようだ。すっかり専属運転手みたいな扱いになったディミトリと共に翌朝ロンドンへ海路を進む。

 ピーターはディミトリに実際には駅に送ってもらっていた。そのままベルリン行きの始発電車に乗り眠りについた。翌朝日が登ってからベルリンに到着するとピーターは指定の場所になっていた建設途中のビルの中へと入っていく。

 

「ミステリオ! 来たよ」

「来たか、スパイダーマン」

 

 ビルの中でベックの姿を確認しピーターが手を振る。振り向いたベックの表情は無表情だ。

 

「では死ね!」

「ベック!?」

 

 突如構えをとったベックがビームを放ちピーターはそれを回避する。鉄筋コンクリートを穿つビームは確かな破壊力を持っている。

 

「どうしてベック!」

「簡単な事だ! 今までは嘘! これこそが真の目的だ!」

「そんなはずはない!」

「簡単に騙されすぎだぞスパイダーマン、トニー・スタークの後継者!」

「なんでスタークさんが!?」

 

 攻撃を避けながら会話を続ける。

 

「僕は! トニー・スタークに捨てられた者だ! ミステリオなんて虚像だ! 後継者を潰すことが僕の真の目的!」

「そんなこと嘘だ!」

『データ照合中……解雇された元スタークインダストリー社員と一致』

 

 F.R.I.D.A.Y.のデータ照合がその言葉を事実と告げてくる。

 

「全ては虚像、真実は闇の中に、今虚像が実像を成す!」

 

 ビームがピーターが隠れていた柱を砕き回避したピーターが着地する。その身にはアイアンスパイダーを纏わず、ウェブシューターだけを構成している。

 

「何故スーツを纏わない? 僕はお前を殺せる。舐めているのか!」

「着る必要なんて無いよ。あなたが付けてくれた名前だ。……スパイダーセンスだよ」

「そんなもの!」

『回避を推奨』

 

 ベックの攻撃をピーターは一切目を逸らすことなく、そしてF.R.I.D.A.Y.の警告を無視し避けなかった。

 

 ビームがピーターを貫く。ベックが驚愕の表情を浮かべ、ピーターの後ろの壁が爆発した。ピーターはウェブを後ろに向けて放つ。何もなかった空間にあったものが壁に磔にされる。多目的ドローンだ。

 放たれていたビームが歪んで消えれば、ピーターの腹部にはなんら傷はない。あれはただの映像の投影だ。

 

「な……何故」

「あなたの攻撃から害意を感じなかった。本気ならあなたはビームを実際に放てた筈だ。でも万一を考えて撃つことさえしなかった。まだあなたはアベンジャーズの仲間だ」

「…………」

 

 ピーターがさらに放ったウェブでドローン達が拘束されベックに掛けられていたホログラフィックが消失、しかし見た目を変えていただけでベックのスーツは実際に強力な殺傷力を持っている。

 だがそれをせず、ベックはピーターに負ける気だった。

 

「成る程、アベンジャーズ……僕もアベンジャーズになれたのか」

 

 ベックの頭部を覆っていた、金魚鉢と同じ大きさの円形バイザーが開かれる。その顔は微笑み、悔恨を滲ませていた。

 

「僕の負けさスパイダーマン。遺言がある、黒幕がいる。本当の狙いは君じゃない、君と旅行を共にした仲間だ」

『高エネルギー反応、自爆シーケンスと思われます』

「裏切った駒には死を、と言うことだ。さようなら、スパイダーマン」

「そんなことさせない! F.R.I.D.A.Y.!」

 

 ピーターがウェブシューターに変形していたアイアン・スパイダーをひっぺがして投擲、ベックのミステリオスーツにくっついた。それが瞬く間に全体を覆うように広がる。

 

『システムハッキング、自爆命令を解除、ミステリオスーツを掌握しました』

「さっすがF.R.I.D.A.Y.!」

『当然です』

 

 F.R.I.D.A.Y.がアイアンスパイダーをハッキング装置として利用、ベックのスーツの管制を奪取し自爆命令を取り消すと共に管制側には自爆が遂行された偽命令を送りつけた。

 

「……また、助けられてしまったなスパイダーマン」

「どう言う状況なの? 説明をしてよ!」

「僕がトニースタークを恨んでいたのは事実さ。でもそれは昔の話」

 

 伏せた目をピーターに向ける。

 

「黒幕はハゲのイカ野郎だ。八ヶ月前の戦いで生き残ったサノスの残党、奴は大量のエネルギーを求めている。それこそ多元宇宙への扉を開けるほどの」

「でもそれがどうして僕の旅行に」

「狙いはブラックロックシューターだ。奴は言っていた。空間を司る無限の力、それこそがサノスを復活させる鍵だと」

「サノスを復活…!? それにどうしてそこでブラックロックシューターが!? 彼女はニューヨークにいるは……ず……」

 

 そこでピーターは思い当たる。一人、一人だけブラックロックシューターと類似する人間がいる。そして黒幕の目的。現れた二体のエレメンタルズに始めに襲われていた人物。

 そしてベックの口から答えが齎される。

 

「君の学友、ステラ・シェパード。彼女がそのブラックロックシューターだ」

「テリアが!?」

 

 そのテリアはMJの隣、ディミトリの運転するバスの中にいた。ロンドンではストーンヘンジでの一件からブラックロックシューター関連のストリートアートが多い。テムズ川を通りタワーブリッジを通過していた。フラッシュはテムズ川をバックに一人配信中だ。

 

『ステラ、聞こえるか?』

「どうしたの?」

『ロンドンでエレメンタルズの反応が検出されている、その影響かロンドン外部との通信精度が著しく低下しベルリンに居るらしいスパイダーマンとミステリオとも通信が取れない』

 

 フューリーとマリア達が控えるビルの観測計からはテムズ川の底からエネルギー反応がでている。それは先の火のエレメンタルズの十倍以上の反応だ。

 

「わかった、気をつける」

「テリア誰と電話?」

「えっ、えーと、知り合い」

「なんか深刻そうな顔だけど」

「その」

 

 そこで衝撃波が走った。防弾仕様のバスだから無事で済んだが、大きな音と共に周囲の車のガラスが粉砕され事故が発生、バスはディミトリの運転技術でなんとか安全に停車する。

 

『これは……デカイな』

 

 フューリーのいるビルからでも目視できる。

 テムズ川から起立したそれは巨大な、あらゆるエレメントを複合したかのような姿をしていた。それぞれが互いを相克せず相乗しあい強さを増していく。

 暴風が吹き荒れバスが大きく揺れた。悲鳴が上がる。

 

『ステラすまない世界の危機だ。学校生活は一旦終了だ』

「わかってる」

「危険だ降りろ!」

 

 ディミトリが扉を開けて皆を避難させる。そんな中テリアはいつの間にか旅行カバンを持ってバスの上に立っていた。

 

「テリア危ない何やってるの!」

 

 ベティがネッドと共に避難しようとしてそれに気付き悲鳴をあげる。他の皆の注目も集めていた。

 そこで旅行カバンをおもむろに開けた。暴風に吹っ飛ばされ中に入っていた下着やら衣服やらがすっ飛んでいく。ベティ含め女性陣が余計に悲鳴を上げた。

 

「なにやってるの!!?? ……え?」

 

 ポニーテールの三つ編みを解き、艶やかな髪を雑にツインテールに纏め直す。その間踏みつけていた旅行カバンが溶けショートパンツを履いた足に纏わり付き足甲に、残りは小型の大砲に変形、金属フレームの眼鏡もそれに合流し黒いブレードがバス天井に突き刺さる。腰に巻いていたパーカーを着ればその背には白い星。ベルトのパンクな金属類も溶け出し変形して小型のスラスターウィングに早変わりだ。

 装備のスケールは少し小さいが、ブラックロックシューターの姿がそこにはあった。

 

「おわーーーー! うおわー! ふぉっふぁ!?!?」

 

 動画配信していたフラッシュが変な声を上げた。ベティとブラッドとネッドとMJは顎を落としている。ちょっと現実を認められずコスプレでは? と正常性バイアスがかかりかけるが、ステラを認識して襲いかかってきた複合エレメンタルズの腕に向け光条が放たれ破裂、ブースターを吹かしてテリアが飛んでいくのを見て。

 

「「「本物だーーー!!!」」」

 

 と逃げるのも忘れているとディミトリに小突かれて大慌てで避難を開始した。

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