MCU『ブラック★ロックシューター』   作:おれちゃん

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大いなる責任

「小癪な猿が……なぜ理解しない? サノス様こそが救世主だと。サノスの子である私がその代理人であると」

 

 車椅子がひしゃげ潰れ、その体を浮き上がらせる。

 

「知らないよ! あんた達がやったのは人を消しただけだ!」

「……口も減らないようだな」

 

 このエボニー・マウはデジメーションを起こしたサノスに従ったエボニー・マウでなく2014年から転移して来た存在だ。彼はこの世界の自分を情けなく思う。この世界のサノスが死んだ。すなわち生存はしておらず宿願を果たした主を守ることもできない失態を犯した。

 ピーターのウェブが引き出された瞬間に引っ張られ地面へと叩きつけられる。そのまま公園の土がピーターを埋めようとするのをアイアンスパイダーの足達が頑張り脱出。

 それを援護するように不可視の存在が攻撃をしてくる。エボニーは地面をひっくり返しそれを防ぎ、チラリとドローン操作と映像投影をする二人を見た。違う、違うと顔を振っているがドローン運用しているのはこの場には彼らしかいない。絞め殺そうと服を念動力で操る。

 首から下を不随にしたエボニーはそれの代わりにより強力な念動力を得た。高い精密動作はそれこそ自身をマリオネットにして自在に動けるほどに。それは決戦の際のスカーレットウィッチを上回る程だ。あえて苦痛に苦しむようゆっくりと締めていたが、そこへ横っ面を殴られ怯んだ隙に現れた男に代わり、二人は姿を消した。

 

「……生きていたとはな、猿め、私に反旗を翻すとは」

「翻すも何も、僕は初めからお前の味方じゃない」

 

 二人の操作を失ったエボニー側のドローンが自動行動モードで彼らの周囲を大きく旋回し、外からは見えない空間を作り出す。

 

「お前達は逃げろ!」

「だがあんなのに勝てるわけが」

「スパイダーマンに任せて一緒に逃げた方が」

「僕じゃ勝てない。でもミステリオなら勝てるさ」

 

 その外側にベックは二人を連れ出し、また中へ突撃していく。

 

「お前の企みはもう破綻した! 諦めろ!」

「いいや? 破綻などしていない。お前、ミステリオの計画に沿って今の作戦は構築しただけだ。その必要がないならばあのエネルギー源などどうとでもできる。あれはどこから空間エネルギーを生成する? 捕らえ、それに必要な部位以外は切り落としてしまえばいい。多元宇宙への道は遠いが、アレはその礎となるだろう」

 

 その姿を思わず想像してしまったピーターが怒る。

 

「僕のクラスメイトにそんな事させないぞ!」

 

 同じヒーローとしてではなく、親愛なる隣人としてニューヨークに住むステラ・シェパードの為ピーターは怒る。今なら彼女がピーターの学校に編入して来たのもわかる。ピーターを頼ってきたのだ。ブラックロックシューターと知れてしまえば普通の学校生活は送れない。自分がスパイダーマンである事を隠しているように。

 なお本人じゃなくて周囲の方がそういうのを懸念していた。本人はバレるのを一切気にしていない。ただ芋づる式にピーターがスパイダーマンとバレてしまうのはダメだったのでその辺りには不器用なりに気を遣っていたが。

 ベックが攻撃に合わせドローンによる幻影を生み出しエボニーを混乱させ念動力の集中を避けさせる。集中されれば絶大な破壊力だが分散させればなんとか凌げる。

 対して、浮き上がらせた岩がサイコロ程度の大きさに切り分けられていく。そしてそれらがエボニーの周囲を覆うように浮かび、散弾のように全方位にばら撒かれた。

 威力は高くないがそれにドローンが衝突し統制を崩した幻影の隙間から本物のスパイダーマンとミステリオが覗く。

 それに向け木々を引き抜き、杭に加工し飛ばす。ベックはビームとイーディスのドローンサポートで杭を破壊。ピーターはそれをネットを形成し受け止めるとそのままカウンターのようにウェブを繋いで振り回す。到達寸前に真っ二つに杭が裂けエボニーの両脇に逸れる。が、ピーターが裂けた二つの杭に繋いだウェブを全力で引き反動で飛んできたピーターのドロップキックがエボニーの腹を直撃。しかし不動のエボニーに逆に弾かれ両端の杭の残骸で挟まれそうになるのを不可視化しているドローンへウェブを繋げ飛び上がり回避する。

 ピーターの視界にはイーディスとカレンがデータリンクし不可視のドローンの所在地が投影されている。だからこそできる連携だ。

 

「効いてない!?」

 

 エボニーの体は念動力で動かしている。逆説的に念動力で守られているようなものであった。そのエボニーが指を握り込むと地面に埋没していた謎の装置がせり出てくる。

 

『高エネルギー反応。ブラックロックシューターのものです』

 

 アレこそステラの攻撃を利用して得たスペース・ストーンと同質のエネルギーを溜め込んだ器だ。これ単体ではない。公園に複数配置された装置を使い地球上で最も時空間が緩いこの地で使用する事で宇宙の殻を破り多元宇宙とこの宇宙を繋ぐのがエボニー本来の計画だ。それを開け放つ。

 爆発するように霧散するはずだった青いエネルギー体が器から出ても球体のように固まったままエボニーの前に動いていく。指向性が与えられていないからこそなんとか制御下に収まっているじゃじゃ馬だ。

 ピーターのスパイダーセンスが極大の警告を発した。それは体感八ヶ月ちょっと前、デジメーションで自分が気絶する寸前まで発せられていた感覚と同等だった。

 回避に徹っしようとしたピーターの足を念動力で形を変えた土が掴む。前方の最大級の危険にジャミングされスパイダーセンスが働かなかったのだ。

 ピーターは咄嗟に防御の姿勢を取る。背中のアームも稼働しエネルギーシールドが形成。それに向けエボニーがエネルギーを解放する。

 それに割って入る存在があった。

 ドローンだ。それぞれがバリアを形成し一列に並びピーターの盾となった。

 放たれたエネルギーはドローンを次々と貫通し、それに伴って先細りしていく。しかしそれでもピーターに到達し貫こうとしたそれはベックがピーターを突き飛ばし、その脇腹を貫いた。

 

「ベック!!」

 

 ピーターが倒れそうになるベックを受け止め外部へ退避、イーディスがベックのドローン操作パターンを模倣し妨害を行う。

 

『イーディスへナノマシンの一部権限を委譲』

 

 外に寝かせられたベックへアイアン・スパイダーのアームが自切したように落ちて溶け、まるで空間ごと削り取られたかのような傷口を覆い隠す。あの攻撃はステラのブラックブレードを用いて空間ごと切断する攻撃の突きバージョンと言った代物だろうか。

 

「大丈夫だ、僕のことは気にするな、いけ!」

「でも!」

「頼む、僕がピーター、君を庇ったのは勝てる道筋を見つけられると思ったからだ。僕が正しいと証明してくれ」

「……わかった、任せてミステリオ!」

 

 ピーターが頷き覚悟を決めた表情で、先を見据える。

 

「イーディス、ドローン操作はピーターの言う事を聞いてくれ」

『かしこまりました』

「ドローンでさっきのエネルギー容器、掘り出せる?」

『可能です』

「じゃあお願い!」

 

 そう言ってピーターは再びエボニーとの戦いに舞い戻る。そこではドローンがまた一機、念動力で押しつぶされ鉄塊になっているところだった。

 

「どうした? 猿の分際でその顔は。ああ、死んだのか」

「死んでない! そしてお前は僕が倒す!」

 

 そうして戦いが再開される。脅威度を正しく認識したスパイダーセンスはジャミングされる事なく的確に攻撃に対処していく。

 空間エネルギー、その元となったスペース・ストーンは四次元キューブとして存在していた。その使い方は2012年のニューヨーク事件で周知されている。ピーターも知っていた。空間と空間を繋げる力がある。

 そしてエボニー・マウは一度アイアンマンと共にピーターは倒していた。

 

『容器、スタンバイ』

「あいつにカモフラージュをぶつけて!」

「無駄な事を!」

 

 エボニーが無秩序に念動力を振り回してイリュージョンを見せ攻撃をするドローン達を破壊していく。でもそれでいい。必要なのは目眩しだ。最後のドローンが破壊されイリュージョンが解けた瞬間、エボニーの目の前で衝突したのは二つのエネルギー容器。ピーターがウェブでそれぞれを叩き合わせたのだ。そこへティザーを全力で流し込む。衝突による容器の破損と高圧電流による誤作動で収まっていた空間エネルギーが暴発。二つの暴発が衝突した地点に空間の穴が空いた。サノスとステラによる二度の指パッチンで起きた地球規模での空間の緩み、そして九つの世界の惑星直列発生地点となり得る最も空間の壁が薄いロンドンだからこそ発生した穴だ。

 繋がる先は宇宙のどこか。ニューヨークの時のようにお上品な空間接続ではない。それこそ五年前のサノスの宇宙船と同じ事態が起きる。

 周囲の一気圧から宇宙空間のゼロ気圧に向け猛烈な吸引が発生、その効果を顕著に受けるのは当然近くに居たエボニー、だか自身を念動力で動かしていた都合ギリギリのところで堪えられてしまった。

 ピーターがしがみつきながらなんとか手を考える。早くしなければ穴が閉じてしまう。そこへ通信が入った。

 

『ピーター、行動には責任が伴う』

 

 ベックが全速力で飛翔し、エボニーに突撃する。

 

『僕はミステリオという大いなる力を使った。その責任を、今取る時だ!!』

「ベック!!?」

 

 ギリギリのところで堪えていたエボニーはその全速力の突撃に耐えられず、共に穴の先、宇宙空間に放り出される。

 

「ベックゥゥゥゥ!!」

 

 ピーターの叫びを背に、無常にもその穴は塞がることとなった。

 規模が小さい故にあまり遠くに繋がったわけではなく青い地球を眼下にベックは暴れるエボニーを掴んだまま離そうとしない。ミステリオスーツは水のエレメンタルズの演出などに備え高い機密性を、火のエレメンタルズの演出用に高い耐熱性を備えている。対してエボニーはいかに凄まじい念動力といっても生身だ。日に当たる部分は焼け焦げ沸騰し、影になる部分は凍結していく。

 真空ゆえにヘルメット越しに届かなくとも、ベックは宣言をした。

 

「お前は僕の妻を殺した。これが僕のアベンジだ、このイカ野郎……!」

 

 エボニーが絶命するのを見届け、ベックはその場に漂う。

 

「僕のアベンジは終わった。終わったよ……今そっちにいくから……」

 

 目を瞑り、いずれ訪れる死をただベックは待った。

 一人残されたピーターは公園で地面を殴り、ただ泣いていた。

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