MCU『ブラック★ロックシューター』 作:おれちゃん
『ダメです、そうは問屋が卸しませんよ。貴方はまだ生きています』
「イーディス……」
『緊急時プロトコルを宣言。権限の格上げを申請」
「いいんだイーディス僕はこのままで……」
『いえ、生命の危機は良い状態ではありませんので推奨しかねます』
「いやそうじゃなくて……」
経験を積んだF.R.I.D.A.Y.やカレンなら意図を察せるが、イーディスにそんな経験はないので文字通りにしかまだ受け取れない。
「格上げ申請の受理を確認。管制下にドローンを配備、大気圏突入準備を開始します」
「そんなドローンて言ったって……」
『緊急大気圏降下の為二百十四機で安全マージンを確保、病院も手配を行います』
「えっ何えっ? 二百……え?」
腹の傷の痛みも忘れてベックは呆けた。偶然にもロンドンの直上だった為、すぐさまサポートの為待機していたスタークインダストリーの衛星からそこへ続々とドローン達がやってくるのを見てベックからは変な笑いが漏れることとなった。
その頃地球、一人残されたピーターは涙を拭い立ち上がる。自分はヒーローだ。誰か来た時に情けない姿は見せられない。先程の吸引で周囲を飛んでいた投影ドローンも全て無くなりボロボロになった公園は激戦が繰り広げられていた事を物語っている。
「わーわー! うー!? し! し〜〜ー!?」
そこへ悲鳴を上げながら空を飛んでくるのがいた。MJとステラだ。先程までクラスメイトから質問攻めに遭っていたのだが雑に切り上げて、どうやらMJはスパイダーマンの正体を知っているようだったのでついでに連れてきた。
「スパイダーマン、何があったの?」
「あーテリア……じゃないブラックロックシューター、この事件の黒幕は倒せたよ……ミステリオがその身を呈して……」
『あの』
「……そう」
言葉の端から滲み出る悲しみを察し、ステラが目を伏せてから、ピーターを見据えた。
「ならせめて、笑顔でお別れをしよう?」
「……っそうだね!」
『もしもし? ピーター?』
ピーターはカレンの言葉を受け取る余裕もなく、ベックが飛び込んだ穴のあったところへ向け、黙祷を捧げる。マスクで見えないがその内では精一杯の笑顔を浮かべていた。それにMJとステラも従う。
「MJ、ニューヨークに戻ったらデートしよう」
「ええ、いいよ」
「やった……」
黙祷を終えてMJがピーターを慰めるように抱きしめた。
『あの、ピーター』
「……どうしたのカレン」
『トニー様から通信が来ていますが』
「大丈夫、繋げて」
『やぁパーカー君。しんみりしてるところ悪いんだが……良い知らせととっても良い知らせがある。どっちから聞きたい?』
「え、なんですか? 僕のヨーロッパ紀行が映画化するとか?」
戯けた態度のトニーの声にピーターは少し普段の調子を取り戻す。
『それもいいな。まず良い方。今回の件で死傷者はゼロだ。よく頑張った。スパイダーマンに
「それは良かった」
『じゃ二つめだ。ちょうどいい、空を見ろ』
「空って……え?」
空を昼間にも関わらず流れ星が流れていく。それはロンドン上空を通り、東の方へ一直線に。しかし流れ星にしては遅い。燃え尽きることもない。
『……やぁピーター』
「えっベック!!??」
『サプライズだ。今空を駆けてベルリンの最新の病院にミステリオが直行中。言ったろう?
ピーターがそれを聞いてその場で跳ね回る。
「やった! やった! やったああぁ!!」
大喜びだ。
「じゃ二人とも! みんなのところに戻ろう!」
「わかった」
テリアの武器類がカバンの姿に戻り眼鏡が分離して腰にパーカーを巻き直す。縛っていたツインテールを解いて三つ編みポニーテールを作ろうとしているがうまくいっていない。MJがやってあげながらそれを眺めるピーターの方を見る。
「……ねぇピーター、テリアがブラックロックシューターって知ってた?」
「えっ……うんまぁ、同じヒーローだからね!」
ピーターはカッコつけた。
「うちの学校どうなってんの……?」
そう言いながらテリアに戻ったステラを連れてアイアン・スパイダーを解除したピーターはみんなと合流を果たす。
「ちよっとテリアあれは一体!」「ブラックロックシューター!? まじよテリアクラスメイトが」「フォファーーー! テリアサインを!」「あピーター腹痛から復帰したんだな良かった」
クラスメイトたちに囲まれるテリアがチラリとピーターを見た。
「ブラックロックシューター? なんのこと?」
「「「「いや無理があるだろ!!?」」」」
テリア、嘘が下手くそである。よく考えたらピーターの正体バレに繋がるのではと誤魔化してみたがバレバレに程がある。
みんなの目の前で変身しておいてその言い訳は無理がある。だがクラスメイトはため息を吐きながら安堵した。ブラックロックシューターであっても、テリアはテリアであったと。
「なあピーター、知ってたの?」
「ごめんネッド、知らせなくて」
うしろで小声でそんなやりとりをピーターとネッドがした。嘘は言っていない。知らせてなかったのは事実だ。ピーターも知らなかったのだから。
「さあみんな! 波乱はあったがクラスメイトの仲間である事には変わらない! 今度こそ帰ろう! アメリカへ!」
先生がそう宣言をして、今度こそロンドンの空港からアメリカへ向け飛び立った。ピーターはMJの隣に座れてご満悦である。プラン一と二が帰りに達成される事になり、ピーターのプランは全部達成されることとなった。ダブルデートに誘ったのだがなんか旅が終わったらベティとネッドが恋愛を終えていてピーターは困惑した。
空港につけばメイおばさんが迎えてくれる。
「大変だったわね」
「うんだけどなんとかなったよ」
「というかあの子ブラックロックシューターだったの、すごいクラスになってるわねもう一人くらいヒーロー現れるんじゃない?」
「なんか大変な事になりそうだから勘弁してほしいよ……」
疲れた顔でメイおばさんの車に乗り込み飲み物をのみながら走っていると、隣から重低音が聞こえてそちらを見る。
ブラックトライクを例のテリアのお父さんが運転し、後ろに乗るテリアが手を振っていた。
「Foooo!」
「ゲホッゴホッ!?」
メイおばさんがテンション爆上げで手を振り返す。ピーターは飲み物が気管に入ってむせた。
後日、アイアン・スパイダーではなくハイテクスーツを見に纏いピーターは摩天楼を駆ける。MJとのデートの約束だ。一緒にウェブスイングしようという。結果はMJの髪がすごいことになった。
「私誰かに担がれて飛ぶのダメかも」
「人には得意不得意があるよね……じゃ、またね!」
ピーターがウェブスイングで去っていくのをMJは笑顔で見送り手を振る。そのピーターはとあるテレビ局に着地、中に入っていく。
「フラッシュ、紹介するよ、私のパーカー作ってくれた人」
「やあどうも、フラッシュ君」
「ファッフ!? オッファ!!!? じゃない!! はははははじめまして!!」
とある街頭カフェでフラッシュとトニーが握手をした。周りから見えないようこっそりイリュージョンが掛けられている。これを担当したのは一人のヒーローだ。
フラッシュが緊張しながら会話をしていると、大型ビジョンで生中継映像が流れ始める。
『みなさんこんにちは! ぼくはスパイダーマン! 本日は! 新たな仲間を紹介したいと思います!』
ステラ、トニー、フラッシュがそちらを見る。
「あ、スパイダーマンだ! 大ファンなんですよ!」
「なんだってそれは良かった。ぼくも鼻が高いよ」
『新たなるアベンジャーズの仲間! ミステリオです!』
『皆さんよろしく』
そこにはトニーの協力でナノテクアーマーで幻影版だったミステリオの姿を再現したベックの姿が映されていた。
「ニュー・アベンジャーズって所かな?」
トニーがそう呟きながらサングラスを外し笑顔で映像を眺めていた。