MCU『ブラック★ロックシューター』 作:おれちゃん
「親睦会って、何をするの?」
「なにをするってそりゃぁ……親睦を深めるのさ」
「大学の人たちも来るからはめの外しすぎはダメだよ」
ミッドタウン高校でほぼ最後のイベントである親睦会にピーターやステラは参加していた。そこにはMITの副学長や有名大学でで選考を担当している人物達の多くが訪れていた。有名なスーパーヒロインに会いたいという下心も少しありつつ、ミッドタウン高校の生徒たちと学校関係者達の時間は楽しげに進んでいた。
そこへ外から小さなざわめきと黄色い歓声が近寄ってきていることに気づきステラがふと顔を上げれば、そこにいたのはフォーマルスーツに身を包んだドクター・ストレンジであった。
「ご機嫌よう。ステラ」
「こんにちは。ストレンジ」
「そこはドクター・ストレンジと呼べと言いたいところだが……君ならまあ良いだろう。少し相談したいことがあるんだが……来てもらえるかな?」
「わかった……皆さんそれでは」
ぎこちないながらも親睦会の面々に礼をしてステラはストレンジと会場を後にした。
「ピーター行くのか?」
「うん行ってくるよ。MJ、ネッドまた後で」
裏でこっそりとピーターも抜け出して着替えて行くと、駐車場に停められたブラックトライクの所で同じく普段着に着替えたステラと魔術師の服になったストレンジが待っていた。ピーターが近寄るとストレンジが隠蔽の魔術をかけ三人の存在が隠される。
「待っていたよピーター」
「ドクター・ストレンジ、何があったんですか?」
久しぶりの再会を果たした二人だが敬語のピーターにストレンジが微笑んだ。
「君はわかっているな。だが私たちの間に敬語は要らない。宇宙の半分を救った仲だろう?」
「え……わかった。スティーブン、何があったの?」
「そこまでだと変な気分だが……まあいい。時空間の異常が見つかった」
少し戸惑うもピーターは切り替えてフランクに、ストレンジも小さく頷いて本題を切り出した。
「時空間の異常?」
「ああ。これだけなら我々魔術師の仕事だ。君たちにわざわざ声をかけたりしない。問題なのはステラ、これが君を中心に起きていることだ」
「私?」
「そこでだ、君にはこれを持ってニューヨークのサンクタムまでそのバイクで来て欲しい」
差し出されたのは金のブレスレットのようなものだ。無地に見えてかなりよく見れば非常に細かい紋様が刻まれていた。
「これは?」
「古代バビロンの魔術……いや、わかりやすく言えば発信機兼観測装置だ」
二人は魔術のことはさっぱりわからないのでそういうものだと納得しステラは左手にブレスレットを通すと大きかった輪が縮んでステラの細腕にピッタリのサイズになった。
サイズ変更自体はナノテクではよく見かけるものだが、それと違いナノマシンのブレがない縮小に二人は小さく感心した声を出した。
「ピーター、君はどうする? ステラの後ろに乗ってくるか? それとも先にサンクタムに行って待っているか?」
「うーん……」
「危険はないみたいだから先に行ってて良いよ。終わったら私も、サンクタムの見学したいな」
どうするか逡巡するピーターにステラが提案すると彼もそうすることにしたようだ。
「そうだね、見学しても良い?」
「あー……危ないものに触るなどしなければ大丈夫だろう」
「「やった!」」
ステラもピーターも科学側の人間だ。魔術という仕組みに検討もつかない技術と魔術師の館というものにロマンを感じていた。意外にも二人ともサンクタムには行ったことないのである。そんな若者二人のワクワクした顔にストレンジは思わず顔を逸らして呟いた。
「……あまり期待はしない事だ」
「それじゃ、出発するね」
ヘルメットを被りブラックトライクに乗って走っていったステラを見送るとストレンジがゲートウェイを開く。するとそこはもうニューヨークのサンクタムの前だ。咄嗟にタオルで顔を覆いながら扉をくぐれば、中は一面の銀世界であった。
「え?」
シャリ、シャリ、と足元の氷に滑らないように辺りを見回すと掃除をしている人があまりにも膨大な量の氷に死んだ魚のような目で黙々と箒を掃いていた。
「これは、新しいゲートを開こうとしたら向こうが吹雪でね」
「な、成る程」
淡々と説明するも何処となくストレンジは申し訳なさげであった。やはり子どもの期待には応えたいものなのだ。
「ストレンジ、渡してきてくれたか?」
「ああ、渡してきたとも」
階段の上から恰幅の良い武人といった感じの男が降りてきた。短いやり取りでもストレンジとの間に確かな信頼を感じさせるこの男は魔術師たちを統べる
「あ、コンニチハ。僕スパイダーマンのピーター・パーカーです」
「知ってるとも。スパイダーキャンディはお気に入りだ。それと魔術師式のお辞儀を教えよう。こうやるんだ」
「あ、これはどうもご丁寧に……」
「……一応紹介しておこう、コイツはウォン。至高の魔術師だ」
魔術師式の挨拶をしているピーターを尻目にストレンジが口を開く。ピーターは一つ単語が引っかかってストレンジの方を見た。
「え? それはスティーブンじゃなかった?」
「五年間消えている間まとめる人間が必要だったからな、引き継いだ」
ドヤ顔で言うウォンに対して、だとさ。と言わんばかりにストレンジが肩をすくめた。
「さ、問答は終わりだ行くぞ。掃除頑張ってくれ」
ウォンが掃除してる人を激励しつつ地下に入って行く。ニューヨークの地下はいろいろな配管や何やらでギッチギチのはずなのにどうなってるんだろうとピーターが不思議そうに見回していると、魔術で空間を広げているとストレンジが補足してくれる。さらにはロンドン、香港とも繋がっているなど利便性は計り知れない。トニーが「ヒーロー相手に一般開放しろ」なんて言い出すのもわかるなぁとピーターはしみじみ思った。
ピーターの目からはただの骨董品にしか見えない魔術の品々を目を輝かせながら、しかし言いつけを守り決して触らないようにしながら進んでいく。
「聡い子だ。勝手に禁書庫も見たりしないだろう」
「なんの話かな?」
ウォンが小さくつぶやいてストレンジはすっとぼけていた。そうして暫く歩くと台座に天体を記すために使った天球儀が設置されていた。しかし書き記されてるのは天体ではなさそうだ。
ウォンが魔法を行使しオレンジの火花が散ると天球儀が輝きながら高速回転を始め、そこからホログラムのように幾何学的な図形を吐き出しそれが薄暗かった部屋全体に広がるように展開された。ピーターからはさっぱりわからないがウォンとストレンジはそれを見ながら怪訝な顔をしている。
「妙だな……」
「ああ、妙だ」
「え? どう言う事?」
「少し待て……君にもわかるように……そうだな一般相対性理論の質量が空間を歪め、それで発生した坂が重力といったモデルスケールはわかるか?」
「それはわかるけれど」
ストレンジが魔術で空にグリットを描き。そこに球が落ちてグリットを歪める様子を描く。
「だがステラの付けた観測装置と天球儀から伝えられている情報はこうだ」
そう言いながら球体はその位置を変えず、グリットだけが深く深く歪んでいく。質量で重力が発生する以上球は歪みの底にあるはずなのに、球の位置は変わらずグリットだけが歪んでいる。
「あり得ない事だけれど……起きている以上何か因子がある」
「そうだ」
「僕も何かできる事ない?」
ピーターが決意した目で魔術師の二人を見るが二人ともそれを微笑ましそうに横に首を振った。
「大丈夫だピーター、ロンドンでも以前似たような時空異常があった。確か惑星直列と呼ばれているなそれがニューヨークでも起きるかもしれないが、アベンジャーズを召集するような致命的な危機が訪れているわけじゃないんだ」
「だからそうだな、ステラが来た時がっかりしないよう雪掃除を手伝ってもらうのが現状一番いいだろう」
箒とちりとりを渡されてピーターは弛緩するのだった。