MCU『ブラック★ロックシューター』   作:おれちゃん

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Chapter:2 奈落

 ピーターが氷の片づけを手伝っていると特徴的なエンジン音が通りを過ぎてから戻ってきて止まった。ステラのブラックトライクである。地下からウォンとストレンジも出迎えるためにロビーへとやってきていた。

 コンコンとドアがノックされると、ウォンが手を動かしそれに合わせてドアが開く。

 

「こんにちは! 寒いけれど、大丈夫?」

「やあステラ、色々あったみたいで凍ってるけど色々すごいのがあったよ!」

 

 箒と氷満載のちりとりを持ったピーターが微笑む。ウォンもまたステラに会えて嬉しいようだ。

 

「来ていただき感謝する。ここでは何だ、君に起こっていることを確認する為にも別室で落ち着いて話そう」

「わかった」

 

 そうしてステラが建物の中に入り数歩歩いたところでパキン、と音が鳴った。ピーターが思わず振り返る。そこはさっきまで一生懸命掃除してようやく氷を排除できた場所だ。砕けるようなものは何もない。ステラも疑問に思ったのか足を上げる。そこには床の材質とまるで異なるヒビが入っていた。ピーターのムズムズ、もといスパイダーセンスが大きな警鐘を鳴らした。即座にウェブシューターを手首に装着する。

 その時、誰も見ていない地下の天球儀が異常をていた、空中に描かれていた幾何学模様の一部が砕け飛んだのだ。

 ガラスが擦れ砕けると激しい音をたてステラの足元から材質を無視して音の通り鏡が割れたようなヒビが広がり咄嗟に逃げようとしたステラの立ってた場所も砕けて落下する。

 

「ステラ!」

 

 咄嗟にピーターが穴に近寄りウェブシューターで糸を放出、落下するステラの手に接着し渾身の力で踏ん張り引っ張る。

 

「待ってろ今助ける!」

 

 それに続いてウォンが魔術で縄を生成し同じくステラに巻き付け持ち上げようと引っ張る。ウォン単独ならまだしも百人力では足りないピーターと共に引っ張っているにもかかわらずステラが持ち上がらない。

 

「何で持ち上がらない……!?」

「これは……宇宙の裂け目か!?」

 

 サンクタムの中で少しずつ増す空間の亀裂をストレンジが魔術で修復し拡大するのを防ぐ。しかしストレンジを以ってしても徐々に亀裂は広がって行く。

 

「扉開けて!」

 

 ステラの声にさっきまでは氷掃除をしていた魔術師が玄関を開く。するとブラックトライクにくっついていたステラのブースターとブレード、さらに拳銃が一つにまとめられたユニットが縦になって扉から侵入、主の危機に駆けつけた。

そのまま一度上昇から宙返りしステラが落ちた穴に突入、ステラの背中と腰に接続される。ピーターは違和感を感じた。背中に接続されれば重量は増すはずだ。しかし糸から伝わる抵抗は全く変わらない。

 ステラがブースターを吹かし上昇を試みようとした途端、亀裂が一気に拡大、踏ん張っていたウォンとピーターまで足場を失って落下、しかもステラはどれだけ出力を上げても上昇は一切できていない。ストレンジも咄嗟に縄を生成しピーターとウォンを掴んだが、先ほどまで無理やり拡大していた亀裂は二人が引き摺り込まれた後急速に修復され、魔術の縄が千切れた。

 

「クソ、何が起きている?」

 

 何事もなかったかのような静寂に包まれるサンクタムでストレンジは悪態をついた。

 ステラ、ピーター、ウォンは落下しているのか何なのかわからない状態になっていた。ステラが自分にくっついた魔術と糸を引っ張り二人を手繰り寄せて離すまいと二人の手をがっちり掴んだ。

「なにが……!?」

「わからん! この状況では何も判断できん!」

「さっきまでは落ちてたっぽかったのにもう落ちてるかどうかもわからないよ!」

 

 三人で輪を作っているが風の抵抗もなく、重力の感覚もなく光源もどこにあるのかわからない白い空間を漂っているような感覚を三人は味わっていた。

 

「なんだろう……酔いそう」

「これは……まさか…!?」

 

 ウォンが魔術を行使しようとして火花一つでないことに戦慄する。魔術は次元から繋がる力。それが行使できないと言うことは今この空間はどことも繋がりを持たない事を意味していた。

 なすすべなく漂っていた三人だが、徐々に落下しているような感覚がしてきていた。

「ねぇこれ落ちてない?」

「ああ、落ちている気がする」

「二人とも一旦そっちの手を離して!」

 

 輪のピーターとウォン側を切り落下方向側に足を向ける。そこには黒い塊があるように見えた。視覚の速度感だけどんどんと加速していき、その黒い塊がとても巨大であることがわかる。

 

「「「わぁぁぁぁぁぁ!」」」

 

 三人で悲鳴を上げながらステラがスラスターを吹かしても一切減速せずにその塊の中に突っ込んだ。再びガラスが割れるような音。突き抜けた穴もすぐに修復され、今度は速度に合わせしっかり風を切る感覚がある。ステラがウィングを広げてモノクロに近い地面に接触する寸前に減速を試みると今度はしっかりと減速に成功、三人が謎の世界にスライディングしながら降り立った。

 白黒のガラス質で構成された空間。空にもさまざまな破片のようなものが浮いていて絶景といえば絶景だが、どこか仄暗い水底にいるかのような不安を掻き立てた。

 

「ここは……?」

「ステラ後ろ!」

 

 岩陰から巨大な髑髏が飛んできていた。ピーターがそれにウェブを飛ばして引っ張り床に叩きつける。ウォンは今度は魔術がしっかり行使でき武器を生成しブラックブレードを持つステラとともに構えをとった。空に浮く岩を弾き飛ばしながらもう一体の髑髏が飛来。迎撃しようとした意識の隙間、ステラの目の前に黒い鎌が首を狙うように迫ってきた。咄嗟にブラックブレードで受け止め大きく火花が散る。鎌の先にいたのは悪魔を思わせるツノに小さな翼、黒いロールヘアをした見た目ステラと同い年に見える少女だった。憎悪を込めた目でステラの方を睨んでいる。

 

「貴女、私をこんなところに閉じ込めて何のつもり?」

「私たちもわからない、武器を下ろして?」

「私が何も知らないとでも? 反乱軍のブラックロックシューター 、そうやって私を殺す気でしょう?」

「何の話!?」

 

 弾き距離が空いた隙間を埋めるように鎌を回転させ斬撃を飛ばしてくる。ステラがそれを迎撃しようと拳銃を抜きエネルギー弾を連続発射した。それを見るや鎌女の目が緑に怪しく輝き、振られた手から波動が放たれる。それに触れたエネルギー弾が進路を逆転させ斬撃とともにステラに迫る。

 ステラは驚きつつもブラックブレードに力を込め縦一閃斬りはらい、生まれた隙間をウィングスラスターで飛行し突破、その先にいる鎌女に突貫、鎌とブレードが再び火花を散らす。武器をそのまま掴み奪おうとしたステラの鳩尾に鎌女の蹴りが炸裂、距離が空きその背の翼の内から黒い鎖が生成されステラに巻きつき自由を奪おうとするがステラは腕力で粉砕する。しかし鎖を緑の光が包みステラの体に巻きついたまま再生、振り回され勢いのまま地面に叩きつけられる。

 とどめと言わんばかりに突進しようとした鎌女が姿勢を崩す。ステラが抵抗するのでなく鎖を逆に全力で引っ張ったのだ。その状態で踏ん張り、スラスターで超加速して鎌女の腹に全力の頭突きを炸裂させた。

 

「ガハッ……!」

 

 しかしそれも緑の波動がわずかに鎌女の体を覆いダメージなど無いように再起動、ステラ目掛け釜を振り下ろし、それをまたステラがブレードで受け止め、その鎌の切先はステラの青い瞳の数センチ先に迫っていた。

 ピーターとウォンは大きな黒髑髏相手に苦戦させられている。どれだけ砕いてもすぐさま元に戻るからだ。

 鍔迫り合いの形で止まっていた二人の上から金切り声をあげながら何かが落下してきた。二人が鍔迫り合いを辞め距離を取るとそこに爆弾でも爆発したかのような衝撃とクレーターが生じ、巨大な金属の両手を持った褐色の少女が立っていた。どちらを見ているかも怪しい視点の定まらない瞳がそれぞれ鎌女とステラを見た。

 

「ギッキャアァァァギァァイア!?」

「何よこいつ」

「お願いどちらも止まって!」

「貴女もうるさいわよ!」

 

 構わず斬りかかろうと鎌を振りかぶった所へさらに矢が飛来し三人の床に突き刺さる。威嚇か? と思う間もなく二人は違和感に気づいた。体を動かす事ができない。見れば刺さった矢はまるで床に影を縫い付けているかのようだった。

 

「何だこの状況は? まあ喧嘩せずお嬢さん方、事情を把握してるのかな?」

 

 矢を放った人物を見てステラは目を見開き、思わず口から言葉が漏れた。

 

「……クリント?」

「おやお嬢さん、俺のこと知ってるのか。知名度あるならおじさんは嬉しいね」

 

 そこにいたのはタイム泥棒作戦で命を落としたクリントン・バートン、初代ホークアイその人だったのだ。さらに赤いモヤが岩を生成し、拘束具のように暴れようとする髑髏を押さえ込んでウォンとピーターが一息ついた。

 

「そうとも、争うのは民主的じゃあ無い。何のため口がついているか考えたまえよ」

 

 聞き覚えのある声にピーターは顔を向けた。ステラも固められながらもぎこちなく首を動かして、その声の発生源に目を向ける。

 そこには赤いモヤを纏った鋼の鎧を身に纏った存在が空を飛んでいた全身は赤を主体として塗装され、ところどころのアクセントといった黄金色は赤に蝕まれたように濁っている。

 

「まず自己紹介させてもらおうか」

 

 それがガシャン、と地面に着地する。赤いモヤがまとわりつきながらもその胸には丸い輝きが存在し頭部のパーツが可動、隠された素顔を露わにする。

 

「────私はアイアンマンだ」

 

 ヘルメットが開かれると、そこには白い髪をして屍蝋のように不健康な顔をしたトニー・スタークの顔があった。

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