MCU『ブラック★ロックシューター』   作:おれちゃん

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Chapter:5 源

 ────スティーブ達から連絡が返ってくる少し前。

 

「ねぇ、みんなの宇宙はさ……どんな所なの?」

 

 それは興味だったか、各々で何があったかを探る意図があったのか定かではないが、ピーターは荒涼としたこの虚の次元(ホロウディメンション)で無言のままいる事が耐えられなかった。

 

「どんな所か……と言われてもな。俺にとっちゃ当たり前の景色だ。普通にみんな生きてて、仲間がいて、大勢の人が生きてる」

 

 クリントが口を開く。

 

「逆に君のところは宇宙からの脅威はあったのか?」

「ああ、サノスさ。ピンクのアリクイみたいな奴だ。ヒーローも大勢死んだ」

「私の世界ではそれに会ってないな……この事態が解決した後、気をつけるに越したことはないか……」

「そっちのサノスはピンクのアリクイなの? 僕達のところのサノスは紫のゴリラみたいな奴だった」

「ゴリラか」

「サノスなんて奴はいなかったわね。あなた達の世界のデッドマスターは誰なの?」

「デッドマスター……僕は知らないけど、ステラは?」

「私もわからない」

「私の地球には居ないのは確定しているが……宇宙のことはわからん」

「俺も把握してないな」

「じゃあどうやって命を循環させてるの?」

 

 命の循環? と疑問が湧いたがアメリカの首都がバラバラなくらいだ死生観の言い回しに違いくらいあるだろうとピーターが口を開く。

 

「えーと……僕の世界だと宗教的にはみんな天国で裁判待ってる〜とか死んだら輪廻転生して〜とか色々言われてる」

「……へぇ、いいじゃない」

 

 デッドマスターは心底羨ましそうに微笑んだ後だまりこんでしまった。

 

「みんなの世界ではどうして石が一つだけに?」

 

 沈黙を誤魔化すようにピーターは話を切り出した。

 

「そもそもウィ……ピーター・パーカー、君の世界では石が全て失われた筈なんだろう? 原石を丸々持っている我々と引き合う位の力を持ってるガールはなんだ?」

「さあ……僕もその辺りは……」

「ならそっちの……ソーサラースプライトは?」

「予期していたら我々魔術師も対処していた。空間の歪みが見つかったのも最近だ。それと、私は至高の魔術師(ソーサラースプリーム)だ。炭酸飲料じゃない」

「スプライトはアイスの名前のつもりだったんだが」

「……わーお、マルチバース。ところで、お前達の世界の石が全て無くなった理由、サノスだろ」

「そうだね」

 

 宇宙ごとの違いに謎のカタルシスを感じつつクリントがそうステラに聞いた。ステラが肯定すると腑に落ちたような顔をクリントがする。

 

「あのピンクアリクイめ、どこの宇宙でも石集めか。俺の宇宙でもサノスが石を集めようとしてた。それを俺たちは妨害して、勝った。石も片っ端から砕いたんだ。今後の厄災にの種になるってな。でも、どうしても……ナターシャの犠牲で得たこのソウル・ストーンだけは壊せなかった。結果として宇宙全体を危険に晒すことになってるがな」

「私だってそうさ。リアリティ・ストーンを狙う他のストーンの使い手に襲われた。だから勝ってその度に石を砕いた。私のリアリティ・ストーンだけあればいいってね。宇宙崩壊なんて想像してなかった、軽率だった」

 

 ステラとピーターが首を横にぶんぶんと振る。

 

「そんな、砕くのはその場で判断できる最善に違いないよ! 悪い奴にストーン全て集められちゃったら好き放題されちゃうんだもの! 僕たちの宇宙ではそれが実際に起きたんだ!」

「ストーンが全部あればなんでも思い通りにできる。サノスはそれで私たちの世界の人口を半分にした」

「……それは地球の人口をという事でいいか?」

「違う()()()()()()()()を把握して、一瞬で無作為に半分の命を奪った。その後、またストーンの力を使って全て元に戻せたけれど」

 

 宇宙全体に散らばる命を半分にするなどという荒唐無稽にさえ思える力が全てをそろえたインフィニティ・ストーンにはあった。単独で恐ろしいものとは言え全て揃った際の脅威の跳ね上がり方が凄まじすぎた。

 

「それは、例えば命を奪う以外もできるの?」

 

 デッドマスターが興味深そうに聞いてきてステラは少し思案した。

 

「できる……と思う。でもソウル・ストーンの犠牲になったクリントを……蘇らせようとしてもできなかったから、どこまでできるかわからない」

「そうなのね」

「あなたの世界はどうしてタイムストーンだけに?」

「……そんなの知らないわよ。この石以外にあったなんて事も初耳よ。あとあまりこっち見ないでくれない? 知ってる顔と同じ別人でなんだかもやつくのよ」

「わかった」

 

 デッドマスターはステラに見られるのが心底嫌そうでプイと顔を逸らしてしまった。顔を背けたまま別の話題を切り出す。

 

「それにしてもよく昔の魔術師はこの事を予想できてたわね」

多元宇宙(マルチバース)のことに関しては我々魔術師でも未知の部分が多い。触れることさえ許されない危険な禁断の魔導書などもあるが……」

「触れなくちゃ内容もわからないわね」

「しかしアレは危険すぎた。人の欲望は限りがないが物理的な限界がある。だが多元宇宙にその限りはなく、()()()がそれこそ無限に存在する。どれだけ自制心があったとしてもいずれ魔導書の誘惑に抗えなくなり欲望のまま動く怪物になるだろう。だから触れてはならぬ禁書なのだ」

 

 カッコよく決めたウォンがしかし頭を抱える。

 

「禁書庫の中でも格段に厳重に封印されているんだが……大丈夫だろうか」

 

 必要とあれば見るだろう。ストレンジはそういう男だ。自制心どころではない己を律する精神もあるが……虚の次元に関してはその本は本流でないのでスルーしていることを願うウォンだった。

 ふとステラの隣にマトがやってきた。そのフードの下は暗闇に包まれていて顔を伺うことはできないが何か言いたげであったのでステラはどこにあるかわからないなりに目を合わせたつもりで見つめた。

 

「傷つき、傷つけられる痛みを知っている、それでも先へと進む勇気を持つあなた達に私は敬意を表する」

「ありがとう。……あなたの世界はどうしてパワー・ストーンだけが残ったの?」

 

 ステラの問いに少し間を置いてマトは口を開く。

 

「私の世界は、心が形を作っている。私やそこの住人思念体。顕現体がいる限り思念体に終わりの概念はないけれど、その心の澱みから私たちは生まれて、戦い、死ぬ。そうすることで心の安寧を守っている。その中で石の力を得た存在をホロウズと呼んだ。石の力を得て戦いで死ななくなった。でも私以外のそれらはみんな顕現体に何かあったのか、石の力のごと消滅してしまった」

「顕現体?」

「私たちを形作る人たち。私たちの宇宙だけど、私たちとは別のところにいる」

「君は我々で言えばアストラル次元(ディメンション)のアストラル体に近いのか?」

「たぶん、そう。私たちが死なないと心の澱みが消えることはない。溜まった澱みから顕現体に何かがあったのかもしれない」

「石の力を保持しながら虚の次元(ホロウディメンション)に閉じ込められてる私達の方がよほどホロウズな気がするよ」

「あなた達は違う、彼らみたいに消えずに元の世界に戻れるはずだから」

「それはありがたい言葉だ」

 

 ふとピーターはフード内の暗闇の下でマトが笑ったような気がした。声と体格からして女の子なのはそうだが、ロングコートの隙間から覗く足は病的に白く彫刻のように華奢な印象を受ける。なんとなくではあるが、初対面の頃? のテリアに近い印象を抱いた。

 そしてそこでバビロンの腕輪に反応が返ってくる。ウォンが飛び跳ねて魔術を行使、ステラも手伝いで再びエネルギーを送り始める。

 

 

「ストレンジか? どうだった?」

『解決手段は見つかった。ストーンを一つに纏めて虚の次元を破壊するんだ。以前サノスが行った指パッチンに近い。ステラの体に存在するスペース・ストーンのエネルギーを抽出する装置、タイマー式にサノスの指パッチンを再現する装置の開発も成功した。今からそちらに送る』

 

 火花が散り無理やりこじ開けるようにゲートウェイが開き始める。

 

「……ストーンを一つにまとめる」

「ウォン、たぶんタイマーで指パッチンをやってもダメ。あれは人が行使する必要がある」

「なんだって? おいストレンジ聞こえるか? タイマーで指パッチンは無理だとステラが────」

「待てスプライト、輪が溶けてるぞ」

 

 リアリティ・スタークの言葉にウォンが魔術の中心にあるバビロンの輪を見れば赤熱し溶解し始めていた。

 

「不味い……みんな逃げろ!」

 

 開いたゲートウェイからナノマシンで覆われたアタッシュケースが飛び込みゲートが閉じた途端、輪と魔術、そして閉じた場所からとてつもない衝撃波が発生し、一同は吹き飛ばされた。

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