MCU『ブラック★ロックシューター』 作:おれちゃん
「どいてろ少年。これは大人の問題だ」
現れるクレイドル・アーマーロボット達がアイアンマンスーツを着たピーターに迫る。だが先ほどのデッドマスターへの大攻勢に比べればその数は少ない。
「我慢で誤魔化してるけど、それ疲れるんでしょ! スタークさん!」
見た目アイアンマンがそれにあるまじきスパイダーマン的な躍動感を以ってクレイドル達を足場にし、捕まえ振り回して叩きつけて壊しながらリアリティ・スタークに迫る。
ストーンのサポートや影響を受けていないヒーローとしては最高峰の身体能力を存分に発揮していた。ナノテクアーマーでなければピーターの動きについてこれず機構が破損していたことだろう。
「クレイドル……いや、私の戦闘パターンにずいぶん詳しいみたいだな? そっちの
クレイドルは自律行動ではなく用意された無数の行動パターンから指示に対する最適解を出して動いている。そのモーションの元になっているのは当然アイアンマンだ。
「そうだね! スタークさんは確かにスパルタだ! でも、それだけ僕たちを信頼してくれているのさ! その経験とスパイダーセンスが合わされば……この通り!」
横から格闘戦を仕掛けようとしていたクレイドルの下に潜って、怪力のままに放り投げる。
するとピーターの死角から攻撃しようとしていた別のクレイドルに衝突、攻撃が逸れてまた別のクレイドルに当たり怯んだ所にはもう跳躍したピーターが待ち構えていて、リアリティ・スタークに向けて渾身のキックでクレイドルを蹴り飛ばした。
ナノテクアーマーが逆に弾けてしまう程の威力で蹴られたクレイドルが砕け散るほどの凄まじい速度だ。リアリティ・スタークは冷静にそれをビームで切断する。
その隙をついてそのままピーターが突っ込んできているのを察知していた。ピーターの全力で振りかぶった拳を迎え撃つ為リアリティ・スタークも右腕に加速用ブースターを増設し打撃力を高める。
勢いのまま衝突する刹那、ピーターが慣性の法則に真っ向から反抗したかのように急停止した。
よく見ればピーターの纏うアーマーの背中から糸のようなものが伸びていて、地面と繋がっている。
そしてピーターはパンチで衝突するはずだった、握っていた拳を開いた。リアリティ・スタークのブースターで加速された拳がリストバンドのような装置を砕く。
瞬間、充填されていたウェブの原液が爆散し、リアリティ・スタークをアーマーごと包み込んだ。そこへピーターがさらにウェブを発射し、雁字搦めにして動けないようにする。
「高分子の糸……成る程スパイダーマンとはそういうことか」
「スタークさん。ストーンの力を使う時はあなたから湧き出すみたいに出てくる。これくらい隙間なくみっちりなら出せないでしょ」
「出せると言ったら?」
「えーと……説得するしかないというか」
「私を? どうやって」
パンチを繰り出した姿勢のままウェブの塊になっているリアリティ・スタークの前でピーターが顎に手を当てて悩んだ。
「たとえば、スタークさんには実はストーンが必要ないとか!」
「ほう?」
「スタークさんの宇宙にも……ウィリアムズって僕がいるんだよね? だったら、他にもいっぱいいるはず。その人達みんなとスタークさんが力を合わせればストーンが全部あるより凄いパワーを発揮できると思うんだ」
「希望的観測だな」
「うん、希望的観測だよ。まずウィリアムズがスタークさんの中でどれくらいの希望になってるか次第」
「つまり抵抗するなら
ウェブの繭から赤い光と共に大量の剣が突き出して拘束が切り裂かれた。だがクレイドル・アーマーと共にアイアンマンスーツも霧散し、生身になったスタークが座り込む。
「流石の私もそこまでじゃない。弓使いの……ホークアイも出てこい。私は抵抗するのやめだ。私の宇宙の揺籠は今日で店じまいだ」
「気づいてたのか?」
クリントが弓を構えて、スタークを見据えていた。
「私たちが争い始めてすぐに隠れてたな?」
「俺の世界のスタークが一人でなんでもやろうとした時は世界滅亡の危機に陥ったからな。警戒するに決まっているだろ?」
「どこの私もそんなか。ほら、その装置を渡せ」
ピーターがストーンの抽出装置を渡すと、リアリティ・スタークが自分の体に突き刺す。赤いリアリティ・ストーンが体から吸い出され、吸血鬼のようだった姿から血色の良いピーターの知るトニー・スタークに近い姿になって、疲労でぐったりした様子で地面に寝転がった。
「もうあとは煮るなり焼くなり好きにしろ」
「ありがとうスタークさん」
「礼を言う暇があったら向こうをどうにかしろ。希望があっても拗らせた私より向こうのほうが様子は深刻だぞ」
「そこはステラならなんとかしてくれるかなって」
「……成る程信頼ということか」
ピーター達が見つめる先で、ステラとデッドマスターは対峙していた。戦闘において、場面場面だけを見ればステラが一方的に優勢だった。
ブラックブレードの斬撃で髑髏は容易く真っ二つになり、拳銃のビームは容易くデッドマスターの体を貫通する。アベンジャーズにおいてソーに比肩する火力を持つステラの攻撃を耐えられる物体はそう多くない。
「いつまでやるつもり!? この空間が崩れるまで!? 上等よやってやろうじゃない私の宇宙丸ごと死ぬなら本望よ!」
髑髏が切り裂かれようと体が貫かれ血が吹き出ようと、緑色の光と共に逆回しされ元の状態に戻る。ステラはかすり傷程度ならすぐ治ってしまうが、宇宙同士がいつ衝突するのかわからない以上衝突を避けたいステラが不利だった。
「私は私の世界を守りたい。お願い!」
「ブラックロックシューター……ブラックロックシューター! どこのアナタも守りたいなんて軽々しく言うのね!! どの口が!!」
ブラックブレードに全力で鎌が叩きつけられる。力任せの余りデッドマスターの腕が骨折して、すぐに音を立てながら元に戻る。
「未来を奪うと言え! 命が巡らない宇宙の停滞を肯定していると言いなさい! 自分の力が失われるのが惜しいとはっきり言いなさいよ!」
「…………わかった」
斬りはらい、全力でデッドマスターを蹴り飛ばす。足裏にデッドマスターの骨と内臓が潰れる嫌な感触を感じながら、ステラは飛翔してストレングスとマト、そしてベッドで寝てるウォンの近くに着地して、ストーンの抽出装置を手に取った。
それを見てデッドマスターは満足そうに笑いながら鎌を回転させる。
「さあ奪えるものなら奪ってみなさい!」
髑髏二体とステラが交錯し、切り刻んだ髑髏が再生しようとするのを殴りつけると花火のようにカケラが飛び散った。
鎌とブラックブレードが衝突し、ブラックブレードの刃を立てずに腹で受けてからませ、ブラックブレードごと腕力のままに鎌が吹っ飛んで、その先にいたストレングスが鎌を剣をキャッチした。
ステラの左手とデッドマスターの右手の指が絡む。万力のようにきっちり固定されていて、どれだけ力を込めてもデッドマスターは逃げることが出来ない。
「それでいい、それでいいのよブラックロックシューター。自分たちの為奪うのが正しい選択なのよ。私の世界のあなたは大馬鹿だった」
愛憎入り混じった、しかしどこか嬉しそうな顔をしたデッドマスターの頬を一筋の涙が流れた。
目の前にいるステラは、デッドマスターの世界のブラックロックシューターととてもよく似ていた。冷たそうな顔つきで何考えているのかわからない無表情で、それでも温かい雰囲気を出している不思議な少女だった。
「私はあなたの知ってるブラックロックシューターじゃない。でも────」
そんなことはデッドマスター自身よくわかっている。けれども、ステラがデッドマスターを見ながら微笑む顔が、あの時の顔と重なった。
ステラは手に持ったストーンの抽出装置を自分の胸に突き立てた。