伝説の聖剣に選ばれたのは俺じゃなくて幼なじみの美少女剣士だったので、俺は別の方法で英雄になるべく塔を登る 作:ケツアゴ
太陽の放つ光は強い。闇夜を照らす炎の光も白日の下では無いも当然だ。つまり太陽の光はあらゆる光を飲み込む光って事で……。
「エプロンは服を汚さない為の物。どうして裸の上から着てる?」
そんな太陽を思わせる金の瞳のスコルはドアの隙間からロザリーを指差して問い掛ける。そして今の俺の状況だが、ベッドの上で裸エプロンになってるロザリーに背を向けた状態で半裸だ。
そんな状態で誤魔化した場合、他の奴に聞く時にこの状況を話されるんじゃないか? ……ヤバいな。俺だったら完全に事の最中だって思うぞ。おいおい、まさか外堀を埋める為にこんな状況に陥らせたんじゃないだろうな、ロザリーの奴。
「……どうしてだろう? この格好ならアッシュが喜ぶって教えて貰った」
あっ、違うな。この天然にそんな事を企める筈がないもんな。チラリと視線を向ければ胸の前で腕組みして本気で悩んでいる。こうして見るとエプロンが少し大きいのが分かるし、少し動いたら肩紐がずれ落ちそうだな。……って、今ちょっとだけ胸が見えた。もう少し近くで見れば隙間から上も下も丸見えだな。
「何故その格好で喜ぶ? 我、分からないから教えて」
っと、そんな風にロザリーに意識を向けている間にスコルは俺の真ん前まで来て顔を見上げる。無表情じゃないのに何を考えているのか分からないのは少し不気味とさえ思えるぜ。そして一言……教えられるかっ!
「……リゼリクに聞け。てか、何で俺の所に来てんだ?」
取り敢えず彼奴に丸投げするとして本当に何でこっちに来たんだ? 探索団に所属してるんなら別に興味を引かれる物なんて無いだろうし、初めて来た場所の探検でもしたくなったって所だろうな。
「ほれ、一旦リゼリクの所に行っといてくれ。ロザリーも俺が部屋に戻る前に着替えておけよ」
俺はスコルの肩を軽く掴んで反転させると部屋から追い出す。扉を閉める時、部屋の隅に脱ぎ捨てられたロザリーの服やら下着が見えた。……ピンクか。
「……」
思わず下着姿のロザリーを想像してしまい、慌てて頭を振って追い出す。危ない危ない。下着姿で迫られた方が理性が保たなかったかもな。
「我、お前を見に来た」
「アッシュだ。初対面の敵でない相手をお前とか呼ぶな。……俺を見に来た?」
「分かった。我、アッシュが気になる。ねじ曲がらなければ神に……これ以上は内緒だった」
「いや、何か気になるんだが……」
「駄目。これ以上はアンノウンに怒られる。我、食後のデザート抜きは耐えられない」
神がどうとか意味深な事を言っておいて黙ったスコルはそれ以上は何も語らない。最後にデザート抜きって辺りで嫌そうな顔をしたが、飯の話題に反応したのと合わせて二回目だな、何となく考えが読めたの。
「まあ別に良いさ。話したくないのに無理に聞き出すのもな。……アンノウンか」
何だかんだ言ってもリゼリクの仲間だし、変に疑うのもな。それに餓鬼の言葉だし、妄想やらが混じってるんだろ。そんな事よりも気になるのは最後に出した名前だ。リゼリクが入団した……本人曰く気に入られたのか入団させられたらしい。そしてアンノウンはSSランク探索団『パンダーラ』の団長の名だ。
曰く、取り込もうとした国の王宮がお菓子の城に変えられた、だの、ギルドに届く探索団宛の苦情の七割が此処向けだの、明らかに作り話な逸話だらけだが、間違い無く世界一の探索団だ。
「パンダーラが気になる?」
「……まーな」
何せナインテイルフォックスを壊滅に追い込んだ
「何せ神を名乗る化け物を二体も倒した連中だ。アポロンは俺がぶっ倒して父さんの敵討ちをしたかったのによ……」
狙っていた獲物を奪われた事に改めて少しの苛立ちと不甲斐なさに拳を握りしめ、窓から遙か遠くの故郷の村があった方向を睨む。父さんの敵は討てなかったが、故郷の皆の敵は残っている。Dランク認定がされた青い
「……待ってろ。どんな奴が居たとしても俺は負けないからな。お前を破壊するのは俺だ」
これは九年前から続ける誓いだ。ロザリーやリゼリクにさえ抜け駆けはさせないし、他の連中に譲る気も無い。だから強くなろう。意志を貫けるように。もう無力感に打ちひしがれない為に。
「お待たせしました。焼き肉盛り合わせ十五人前です。ごゆっくりお召し上がり下さい」
全員が着替えた後、俺達はリュウさんの店に(俺持ちで)飯を食いに来ていた。肉体労働な仕事だから当然食う量も多い。接客モードのリュウさんは普段の怖い顔が別人みたいだ。んじゃ、先ずはニンニクダレで……。
「それとこれは当店からのサービスです」
「肉! リゼリク、肉早く」
「はいはい。ちょっと待ってね。美味しい焼き方で焼いたのを食べさせてあげるから」
……うっ。肉ばっかり注文したからか大盛のサラダが各自の前に置かれる。こうやって甥っ子のリゼリクが一緒の時はサービスしてくれるんだが、どうせだったらサラダを頼んでおいて肉をサービスで貰った方が良かったな。そしてリゼリクなんだが、何故か膝の上にスコルが乗って随分とご満悦な様子だ。
「……後で話がある。例の記事の件も合わせてな」
「は、はい……」
そして甥っ子が色々と心配になった様子のリュウさんは接客モードを一旦止めてリゼリクの肩に手を置いて呟いている。そりゃ甥っ子が幼女を肩車してて任意同行求められたり、幼女を膝に乗せてデレデレしてたら心配になるよな。
「ア、アッシュ……」
「そろそろカルビが焼けるな。ロザリー、タレ用の小皿を取ってくれ」
助けないのかって? いや、友達でも親戚の問題に口を出すのはリュウさんが怖いからやらないって。
「肉、美味しい」
「って、早っ!?」
俺がリゼリクに意識を向けた一瞬の隙に七輪の上の肉は消え失せ、リスみたいに頬を膨らませたスコルの姿があった。
「……おい、リゼリク。スコルって一体何者だよ?」
「ひ、秘密かな? 別に隠す事なんて何もないけど、何となく秘密」
それじゃあ何か喋れない事が有るってバレバレだろ。もう少し上手く隠せよ、リゼリク。
「……そうか。何もないなら別に良い。ったく、次は肉を食ってやるからな」
まあ、黙っていたいなら俺は無理に聞かない。ミントやロザリーも同じ意見みたいだ。ってか、ロザリーの奴、ちゃっかり取り皿に肉を確保してるじゃねぇか。
「おい、ロザリー。少し分けてくれ」
「分かった。じゃあ……あ~ん」
目の前に突き出される肉。脂が滴り落ちて凄く美味そうだ。第一体を酷使した後だから腹が減ってる。肉の焼ける匂いで既に限界なんだ。
「……はい、あ~ん」
「……くっ!」
勘違いするなよ、ロザリー。俺はお前に屈したんじゃない。焼き肉に屈したんだ!
「……いや、もうさっさと付き合ったら? それとスコル。お肉だけじゃなくて野菜も食べなさい」
そんな俺に呆れた様子のミント。深く溜め息を吐きながらスコルの皿に山盛りの野菜を盛り付ける。……ちゃっかり時分のサラダのピーマンまで盛っていた。
「……いや、ピーマン食えよ」
相変わらず昔からピーマンが苦手なんだな。ルノア姉ちゃんも苦手で、ニーナ姉ちゃんは平気だったな。……もしかして色気の有無はピーマンの好き嫌いで決定するのか、この姉妹は……。
「馬鹿馬鹿しい……」
「あ~ん」
幾ら何でもそんな訳があるかと思いながらロザリーに焼き肉を食べさせて貰う。この日の夜はこうして更けていった。
「スコルはリゼリク待ってる。アッシュとロザリーはまた会おう。ミントは別に良い。……それと、これ」
その別れ際の事だ。野菜の恨みかミントの名前を呼ぶ時だけ不満を顔に出したスコルは俺のポケットに何かの紙を入れる。それを広げて見てみれば早瀬の塔の地図の一部。俺達が漸く進入許可を得たフロアの物だ。だが、どうしてこれをくれたんだ?
「既に持ってるんだがよ。……ん? 隠し通路?」
よく見れば地図の一カ所に汚い字で隠し通路の入り口が記されていた。
「此処でアッシュの運命が待ってる。馬鹿だけど宜しく頼む」