伝説の聖剣に選ばれたのは俺じゃなくて幼なじみの美少女剣士だったので、俺は別の方法で英雄になるべく塔を登る   作:ケツアゴ

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衝動に耐える十六歳

 絹糸を思わせる質感の銀髪は僅かな風の流れによって揺れていた。金の瞳は見詰めるだけで吸い込まれそうな妖しい輝きを放っていて、呼吸と共に動く大きな胸は数時間前に俺が顔を埋めた物だ。吸い付くような肌と触れても押し返さそうになる弾力。両手で掴んで感触を堪能したいとさえ思うぜ。くびれた腰も細く長い手足も魅力的何だが、最も視線を集めるのは間近に迫った美貌だ。

 

「おや、客人か。その様子からすれば我が主に恋慕しているらしいが、別に混ざっても構わんぞ? 先に私と此奴で初めてを交換した後でな」

 

 小悪魔、もしくは夜魔だろうか? 未だ少女のあどけなさを残していながらも歴戦の娼婦を思わせる色香を感じさせる笑み。眺めるだけで魅了されそうなその笑みを浮かべたハティは挑発する口調で俺に顔を近付ける。今度は急にキスなんかしないが、俺がその気になれば直ぐに可能な距離。俺からしろと暗に告げているのだろう。

 

「……」

 

「どうした? 貴様は滾る欲望を思うがままにぶつければ良い。さすれば私が存分に快楽を与えてやろう。私を愛さずにはいられない程にな」

 

 此処まで来れば俺だって我慢の限界って物があるし、向こうが良いってんならガバッと行ってしまいたい……んだが、目が釘付けになって離せない筈の視線を外し、ドアの方に向ける。……何か可愛いのが其処に居た。

 

「……駄目。アッシュのお嫁さんは私」

 

 此処で地獄の悪鬼羅刹みたいに睨んでいたり、今にも泣きそうなら俺はビビるか自己嫌悪に陥ったんだろう。だが、ドアの向こうに立つロザリーは子供みたいに頬を膨らませて拗ねていた。まるで餌を口の中にため込んだリスみたいで微笑ましい。

 

「……うん、何か一気に冷めたな。ハティ、もう離れてくれ。ロザリーにも説明したいからよ」

 

 さっきまで爆発寸前だった俺の衝動はロザリーに癒された事で消え失せる。首に回された腕を軽く振り払い、密着する体を軽く押せば殆ど抵抗無くハティは離れた。……只、押す時に少し指先が胸に触れたんだが凄かったな。冷めたはずの衝動が戻って来そうになったぜ。

 

「良いだろう。女に恥を、だの醜く食い下がりはせんさ。何せ私は貴様と共に有るのだからな。……今度は風呂場で誘惑しよう」

 

「うぇ!?」

 

 最後に不吉な言葉を残したハティは不意に俺に口付けをするなり姿を消す。だが、今回は何処に消えたのかハッキリと見えた。枕元の台に置いた魔剣の指輪に吸い込まれて行ったんだ。

 

「お、おい! ロザリーも今の見たか!?」

 

「見た。あの女、アッシュとチューしてた。ついでに指輪の中に入った」

 

「うん。まあ、急にキスしたんだから驚くよな。……って、重要なのはそっちかよ!?」

 

「何で指輪の中に入っていった方だと……あっ」

 

 よ、良かった。流石にロザリーが天然でも俺がキスされた事よりもハティが指輪の中に消えた事の方が驚くよな。先にキスされた方に驚いていたのはロザリーだから仕方無いけどよ。幼なじみの天然に少し振り回されながらも俺は少し安堵する。

 

 ああ、本当にロザリー達と一緒に居れば癒されるってな。今日は色々有り過ぎた。さて、結局パティから話を聞き出せてないから二人が五月蠅そうだけど今日は寝るか。

 

「指輪の中に入ったって事は何時もアッシュとあの女が一緒って事になる。……何とか追い出さなくちゃ」

 

「……うん。矢っ張り天然だよな、お前」

 

「所であれって誰?」

 

 少しは機嫌が戻ったのか膨らました頬を戻して首を傾げるロザリーの姿に、そもそもハティに関して話をしていない事を思い出す。ああ、ちょっと面倒だけれど話をしておいた方が良いのか? まあ、このまま気にしているのを放置も駄目だしな。俺は上体を起こすとロザリーを手招きしてから椅子を指さす。

 

「座れよ。彼奴、ハティに関して説明するからさ」

 

「分かった。座って話を聞く」

 

 そのままロザリーは俺の部屋に入り込み、一切の躊躇を見せずにベッドに上がり込んで俺の膝の上に向かい合って座り込んだ。

 

「何処に座れとは指定されてない。アッシュは座れとだけ言った。……ちょっと座り心地が悪いけれど我慢する」

 

 言葉の通り、野郎の膝の上は落ち着かないのか何度も位置を調整する為にロザリーがモゾモゾ動くから小さい尻が擦り付けられるのを嫌でも感じた。因みに嫌じゃない。ロザリーの尻は小さく引き締まっていて、多分両手で楽に鷲掴み可能だ。実際、今の体勢なら簡単に掴めるよな? ……って、俺は何を考えてるんだ

 

「……はいはい。もう良いよ。んじゃ、俺とミントが新しいエリアに行ったんだが、モンスターコアがエリアの入り口付近に現れて……」

 

 ロザリーは頑として動く気が無いみたいだし、昔からこうと決めたらテコでも動かない頑固さは理解している。煩悩に傾いているのを悟られたくない俺は冷静な演技を続けて誤魔化した。

 

「お前、ちゃんとコミュニケーション取れてるか? 入って来る噂じゃクールビューティだの冷徹だの見当外れな内容ばっかりだぞ。本当は感情豊かで可愛い奴なのにな」

 

「照れる」

 

「その照れてるってのが他の連中に通じてないんだって……」

 

……本当に所属してる探索団で上手くやってんのかな? 少し心配にながらも俺は真正面を直視せずに語り始める。いや、ロザリーって俺の膝の上に座って向かい合ってるだろ? 顔の直ぐ前に胸があるんだよ。

 

 ……ハティの方が少し大きいか? それでもロザリーも十分大きいけどな。普段から頻繁に密着するから触った時の感触は分かっている。ハティが押し込んだ指に抵抗する弾力なら、ロザリーは触れた指を包み込む柔らかさ。静まったムラムラとした衝動を何とか抑え込んで俺は隠しエリアについて話した。

 

「……ミントを投げちゃ駄目」

 

「うん、まあ、明日辺りに報復されるっぽいからよ……」

 

 話の途中でロザリーが口を挟んだのはモンスターコアを破壊する時のやり取りの時だけ。それ以外は一切感情を表情に出さずに偶に頷き、口を開いたのはハティが消えた時だった。

 

「じゃあ、私も……」

 

「うぷっ!?」

 

 頭を抱きしめられ今度はロザリーの胸に顔面が包まれる。ハティと違って呼吸が可能な程度の力加減で押し付けられ只感触と香りを堪能しつつ押し倒された。……駄目だ。一度は抑え込んでた衝動が倍増して蘇った。

 

 押し付けられた胸に感触を比べてみての感想だが、どっちも気持ち良いが性質が大きく違う。ハティは興奮させられるって言うか気分が無理にでも上がるんだが、ロザリーの場合は安心感が有る。例えるなら体を動かしたりした時の心地良さと風呂に入った時の心地良さの違いだな。

 

「もう此処までだ……」

 

 ロザリーの腰に手を回して抱き寄せ、指先でロザリーの肌に触れた。抵抗する様子は一切無い。

 

「……誘ったのはお前だからな。止めるなら今だ」

 

 もう我慢する気は無い。一応最後に警告だけしてロザリーの胸から顔を上げ、唇を重ねようとして……スヤスヤ眠る穏やかな寝顔が目に入った。完全に安堵して熟睡する姿。

 

「こりゃ駄目だ。寝てる女を抱けるかよ」

 

 こうなったら精々抱き枕にでもなってやるか。俺はロザリーを抱きしめながら目を閉じる。そのせいで匂いやら感触やらが余計に強く感じられて中々寝付けなかったけどな。……起きてくれないかな、マジで。

 

「糞っ! ムラムラして来た……」

 

 キス程度なら良いんじゃないかって悪魔が囁くのを無視し、何とか寝ようとする俺。ここぞって時にロザリーが動くから本当に辛かった。

 

 

 

「……結局一睡も出来なかった。一旦便所で落ち着こう」

 

 横でスヤスヤと眠るロザリーの姿を眺めつつ俺はベッドから立ち上がる。未だ空が白く染まりだした早朝。ギルド職員の中には既に働いてるのが居る時間帯だ。

 

「起きるなよ、頼むから」

 

 俺はロザリーを起こさないように注意しながら、前屈みの姿勢で足音を忍ばせて便所に向かった。

 

「うおっ!? ……その内壁に穴開くぞ、マジで……」

 

 相変わらずの寝相の悪さでミントが壁を殴打する音やルノア姉ちゃんのいびきを聞きつつ進めば便所に続く曲がり角が見えて来る。やれやれ、これで落ち着いて……。

 

 

 

「いや、どうして朝っぱらからウチの便所の前で居るんだよ、スコル」

 

 何故か便所の扉の前では眠そうな瞳を擦るスコルの姿が。これじゃあ落ち着けないぞ、どうするんだ。そんな俺の気持ちなど察してくれる筈もなく、パンダの着ぐるみパジャマを着たスコルは俺を見るなりトコトコと寄って来た。

 

「さっき玄関から来て、アッシュの部屋に向かう途中で足音が聞こえた。……昨日はお楽しみだった? この言葉、我と添い寝した次の日の朝にリゼリクが皆から言われてる」

 

「いや、何やってるんだよ、リゼリク」

 

 この会話で落ち着けた俺だが、今度は友人が色々と心配になって来た……。

 

 

 

 

 

「アイヤー!?」

 

 ……何だ? 外が騒がしいな。トラブルは勘弁して欲しいんだがよ。

 

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