伝説の聖剣に選ばれたのは俺じゃなくて幼なじみの美少女剣士だったので、俺は別の方法で英雄になるべく塔を登る 作:ケツアゴ
機密情報
……
いや、違う。俺だけじゃない。だって同じ目標を持つ奴は、復讐心で探索者になった奴は多い筈だ。だけどスコルの言葉が本当なら全部の前提が覆る。全て無意味になるじゃねぇか……。
「……その様子だとハティは教え損ねてた。むぅ。姉妹として恥ずかしい」
「姉妹だったのか。……そういや似てるな」
本当だったら子供の妄想だの悪い冗談だって否定する所だが、ハティの存在が嫌でも信じさせちまう。秘宝の代わりに現れた明らかに人間じゃない存在と、出会う前からその存在を知っていて、同じく
「お前、
ショックも合わさって興奮した俺はスコルに詰め寄って肩に手を置く。少し乱暴だったのに小さな体は微動だにせず、銀色の瞳で俺の瞳を見つめ返す。相手は小さな女の子だってのにその瞳と目を合わせた瞬間、意識が飲まれた。建物の中に居るのに太陽の真正面に居るみたいな感覚で少し意識が飛んで……。
「……あっ」
ラッキースケベが子供相手に発動した。俺の腕はスコルを抱き締める形になり、ソファーに押し倒している。それでもスコルは無表情で一切騒がず、扉が開く音がした。
「……今、扉を開ける瞬間、出来るのか、そう聞こえましたが……」
「そう。アッシュ、我にそう言って肩を掴んだ後でこうなった」
「誤解だ! 違わないけど違うからな!?」
スコルは淡々と事実を述べ、キュアさんは無表情だったのが怪訝そうなのに変わって行く。この人が此処まで感情露わにするの初めて見るよ。負の感情だけどなっ!?
「まあ、ラッキースケベですね。流石に子供を意識したのかと思うと嫌悪感が発生しまして」
「いや、今のは呪いは関係無いから。普通に事故でああなっただけだから!」
魔剣の指輪の呪いであるラッキースケベの発生条件は俺が気を抜いた瞬間、目の前に少しでも異性として意識している相手が居るって事は伝えてある。つまりこの瞬間、キュアさんの中では俺が十歳程度の女の子を異性として意識しているって認識になる。……ピンチだっ!?
何せ担当のギルド職員と探索団は切っても切れない関係だ。下手に悪感情を持たれれば敢えて危険に晒されたりはしないけど気不味い!
「そうですか。では、話し合いを始めましょうか。こうしている間にも私の残業時間が増えて行きますので」
「あ……ありがとう。信じてくれてありがとう!」
思わず手を握りそうになるけど、此処でラッキースケベが発動したら一巻の終わり。俺は咄嗟に堪え、只信じてくれた事へ感謝の気持ちを伝える。
「ですが一応お願いしますけれど、北区の孤児院には近寄らないで下さい」
……半信半疑だな、こりゃ。うなだれたくなる気持ちを抑え込み、俺は今から話す内容に迷いを生じさせる。
「じゃあ、話すぜ? 先ずはさっきも言ったけれど新しいエリアに入ったんだが……」
幾ら馬鹿だって言われる俺でも話すべきかそうでないかは分かる。此処は最低限に留めるべきだよな。……ハティについてはややこしいから黙っておくか。
隠し事をするのは心苦しいが、内容が内容なだけに黙っているしか出来ない。俺は隠しエリアの事だけをキュアさんに伝え、ハティに関しては黙っておいた。
「……そうですか。こんな事ならばミントさんにもお越しいただいておけば良かったですね。私の判断ミスです。……それで、パンダーラ所属の貴女はどうして隠しエリアの事を先にギルドに報告しなかったのか。そして同行した理由をお教え願えますか?」
「げっ!?」
「……げっ? アッシュさん、何か不都合でも?」
そ、そうだよ。隠しエリアはスコルから教えて貰ったんだし、それならパンダーラが既に知っていたって事になるよな。その上、わざわざ同行した理由。……どうやって誤魔化せば良いんだ!?
「あの隠しエリア、運命に選ばれた者が居ないと入れない。選ばれたのアッシュ」
「運命……ですか?」
「そう。アッシュを奥に封印されてる我の姉妹であるハティの主になる運命にした。お前、アッシュの担当。だから説明する。我、
「ちょっ!?」
スコルの奴、一切迷わず言いやがった! おいおい、凄い重要な事だろがっ!? 大体、
「……成る程。それならば納得出来ました」
「はい? キュアさん?」
あれ? 一瞬だけ驚いた顔をしたけど、あんまり驚いてない? まるで最初から知っていたみたいな反応に俺は面食らった。
「一定以上の地位のギルド職員は知ってる。Cランク以上の探索団にも教えられる。我、SSランク探索団所属だからもっと重要な機密も知ってる。凄い?」
「……えっと、多分?」
此奴、矢っ張り中身は子供だな。無い胸を張って得意そうにしているよ。……てか、こんな口が軽い子供に重要な情報教えるパンダーラって一体。リゼリク、本当に大丈夫なのか?
「ああ、ルノアさんならAランクだった頃からナインテイルフォックスの所属なのでご存知でしょうし言われるでしょうが、一応私からも。規定により
……ああ、成る程。俺は昔の事を思い出す。故郷を失って
それにしても一切ブレないよ、キュアさんって。
「……あれ? 所でギルドは何処でそんな情報を得たんだ?」
「機密情報です」
……規定って面倒だな。
「おーう! ご苦労さんご苦労さん。……あのチビは帰ったんか」
「ん。ああ、何時の間にかな」
キュアさんへの報告が終わったのは夕暮れ時。あの後ミントも呼び寄せて転移トラップの検証をしようとしたんだが何処の石を触れば良かったのか分からなかったし、詳しく知ってる筈のスコルは途中で帰っちまったし、残業が長引くからってキュアさんが壁を殴るし……。
取り敢えずスコルのメモに書かれていた通常ルートの道も調べて漸く終わった頃にはヘトヘトだ。特にキュアさんからのプレッシャーに精神的にゴリゴリ削られた。
「……あ~、なんや。色々黙っといて悪かったな」
「別に良いわよ、姉さん。秘密にしてるのも辛かったでしょうし。……ちょっと一眠りして来る」
「別に気にしなくて良いから。俺は風呂……」
「……すまんな。んじゃ、ウチは飯買って来るわ」
……そう。俺もミントもルノア姉ちゃんが秘密にしていた事は気にしちゃいない。多分ロザリーもリゼリクもな。ってか、彼奴等も知ってて俺達に黙ってたんだろうしな。ミントはソファーに寝転がるなりスヤスヤと寝息を立て、俺は風呂場に向かう。もう既に風呂の用意はされてたし、今直ぐ入れるのは助かったな。
「……ふぅ」
熱い風呂に入って一息付いて天井を見上げる。体から疲れが溶け出るのを感じていた。風呂はこうやって一人でのんびり入るに限る。風呂屋の広い風呂や露天風呂も最高なんだがな。
「アクアスフィアの分だけでも結構な額になったし、温泉でも行きたいよな……」
手で湯を掬い顔を洗う。普段は二人が五月蠅いから一番風呂で長風呂が出来ないが今日はラッキーだ。天井を見上げ、機嫌良く鼻歌を歌った時だ。この至福の時間が終わったのは……。
「随分と上機嫌な事だ。なら、そのままの流れで私と楽しもうではないか」
不意に聞こえる上機嫌な声。聞こえたのは入り口。声の主は……当然ハティだ。
「既にスコルめから話を聞いているのであろう? ならば良し。……所でこの服はどうだ? 裸以外のアプローチだぞ」
声の方を向けば立っていたのは矢っ張りハティだ。ただ、全裸じゃなくてドレス姿だけどな。胸元の大きく開いたノースリーブの黒いドレス。
「ドレスか……」
いや、裸を期待した訳じゃないぞ? ちょっと残念だったけど……。
「気に入らなかったか? ならば脱ぐが……脱がす方が好みか?」
「いやいやっ!? そもそも俺に迫る理由は何なんだよ!?」
そうだよ。俺に自分を好きになれとか言って誘惑して、本当に何が目的なんだ? 俺が疑問を口にする間にもハティは俺に近寄りながら胸元に指を引っかけて前屈みになる。……矢っ張りデカいよな、此奴の。
「ああ、簡単だ。私達
「理由は分かったが思い切りが良すぎるだろ!?」
「いや、だって遠回しなのは性に合わないからな。……姉さんに負けたくないし」
……はい? お前が妹?