伝説の聖剣に選ばれたのは俺じゃなくて幼なじみの美少女剣士だったので、俺は別の方法で英雄になるべく塔を登る   作:ケツアゴ

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修羅場(笑)

「……うわぁ。いや、すまんな」

 

 買い物から戻った俺達を出迎えたルノアんところ姉ちゃんの開口一番がドン引きの顔でのこの言葉だ。でも、うん、仕方無いよな。

 

 俺は今、両側からハティとロザリーに抱き付かれていた。両手に華って言えば聞こえは良いんだが、俺の腕はガッチリと掴まれて若干痺れて来たし、何か連行されている気分だ。

 

「はっ! 貴様のせいで散々な反応だな。そもそも罰としてアッシュは戻るまで私の馬になる筈だったと言うのに」

 

 右腕に抱き付くのはハティ。購入したブラを着ているのか感触は若干変わったが押し当てられる胸の弾力は凄いままだ。全部弾き返そうなのを力を込めて押さえ込んでいるから押し当てる力が尋常じゃない。それにズッシリとした質量も凄かった。

 

「……そんなの罰じゃない。罰だとしても、代わりに私が与えるからハティは離れて」

 

 対して左側から腕に抱き付くのはロザリー。ブラをしていても胸の柔らかさは健在で、強く押し当てる事で自在に形が変わって俺の腕を包み込む。挟まれている所が温かいし、フワフワと軽く感じる。

 

 二人共全く違った感触を俺に与え、男冥利に尽きるって奴だ。……ああ、そうだな。本当だったら夢見心地なんだし、ハティは微妙だが好意だって伝えられてるんだ。

 

「「……」」

 

 だが、俺を挟んでいがみ合うのは勘弁してくれ。余裕綽々って感じのハティと僅かに眉間にシワを寄せるだけのロザリー。但し、間近で居る俺には感じるんだよ、飛び散る火花を。さっきから腕に抱き付く力が徐々に強くなってるし、腕の痺れが凄くて力が入らない。

 

「なあ、ちょっと離してくれ……」

 

「ロザリーが離せば離そう」

 

「ハティが離したら離す」

 

 あっ、駄目だ。この二人、引くに引けない状態になってやがる。ロザリーは微妙に膨れ面だし、ハティは相変わらずの笑みだけれど、二人して此処で先に離したら負けな気がするからってムキになってるんだ。その代償が俺の腕で、二人の胸はより一層強く押し付けられる上に掴まれる。誰か、助けてくれ! せめて当てるんだったらもっと優しくしてくれないと感触を堪能出来ないから!

 

「こんな事になるんじゃないかって思ってたけれど、まさかこんなに早いだなんて……ちっ!」

 

 助けを直接口にしたら何か怖いので呆れ顔でやって来たミントに視線で助けを求めると、俺の腕の状況を見て頭が痛そうにしている。こりゃどうやって助けるのか悩んでいる顔だな。言葉にせずとも俺の救援要請は通じたんだ。流石はミント。駄目人間のルノア姉ちゃんの世話を焼き続けているだけあるぜ。……所で二人の胸を見てから明らかに舌打ちを……。

 

 

 ああ、何だかんだ言っても気にしてるんだな。ニーナ姉ちゃんじゃなくてルノア姉ちゃんに似ちゃった事をさ。驚異的な差が有るもん。

 

「……助けないわよ?」

 

 心を読まれた!? い、いや、ナインテイルフォックスの後始末係のミントならその程度……いや、無理だろ。

 

「顔に出てるっての、顔に。ほらほら、二人共離しなさい。アッシュの腕が限界よ」

 

 ふぅ。どうやら助けてくれるみたいだな。渋々ながらも二人に手を離せって促してくれている。それでも離さない二人だが、想定内だったのかミントに焦った様子は無い。腕が本当にヤバいから焦ってくれよ。

 

「ハティ、離さなかったらアンタだけお茶の時間にケーキ無し」

 

「ぐぬっ!?」

 

「ロザリー、アンタが何歳までおねしょしていたのかちゃんと覚えているから」

 

「……むぅ」

 

 ミントの説得によって漸く俺の両腕は解放される。やれやれ、胸の感触は良かったけど痺れが酷いから助かった助かった。ミントには感謝だな。

 

「助かったぜ、ミント」

 

「あーはいはい。今度からは痴話喧嘩は自分で解決しなさいよね。それでロザリーは何の用? まあ、(バベル)の破壊についての事でしょうけど」

 

 争いが再燃しない為かミントが急に話を切り替える。破壊依頼を受けたから手伝わないかって言われたけれど、詳細は忘れてたからな、あの人。

 

「あっ、そうだった」

 

 実際に正解だったらしく、ミントが取り出したのは何処かの平原らしい場所の地図だ。広大な面積に幾つもに枝分かれした道が通っている。地図の上の方、正しい道を選んだ先は大きく広がった場所になっていた。恐らくこれが目的の(バベル)だろ。

 

「団長に言われて持って来た。これ、副団長が忘れた地図。置いていくね」

 

「了解。こりゃ面倒な所やな。ミント、道を覚えておきや。こんな所は道を無視して直進する方が面倒になるさかいにな」

 

 ……こりゃ随分と広いな。折り畳んだ地図はテーブル全体にまで広げても半分以上残っている。(バベル)は何階層もになってるけど地図には上に行く階段らしい表記が無いし、階層が一階だけな分、面積は広大って訳だ。

 

「そう。姉さんが言うならそうするわ。ロザリーは此処に行った事あるのよね?」

 

「うん。ちょっと面倒だから遠回りした方が良い」

 

「はっ! 欲を刺激して獲物を誘い、引っ掛かった間抜けを生け贄にする。連中が好みそうな事だ」

 

「連中? なんや、何か情報有るなら教えてや」

 

「……口が滑った。今のは聞かなかった事にしろ。私もこれ以上は語る気はない。……今はな」

 

 蛇行や枝分かれを繰り返す道を無視して真っ直ぐ進んだ方が楽な気が楽に見える。道以外の場所に金の皮が採れる木が点在してるんだし、話を聞かなかったら俺も道を外れていたかもな。いや、実際外れた奴は多そうだ。でも実際に行ったロザリーが言うなら大人しく従うか。

 

「しかし、たかがGランクなら貴様程の力が有れば別段苦にはならんのでは?」

 

「此処は特別。道を外してまで金の樹皮を集めるなら、もっと強い所に行った方が効率が良い」

 

 ……どうもハティが重要そうな情報を隠すのが気になる。要するに俺達が弱いから教えられないって事だろ? 今に見てろ。近い内に認めさせて聞き出してやるからよ。

 

「それで(バベル)の名前は?」

 

「Gランクの(バベル)死霊の合戦場(しりょうのかっせんじょう)』。……ちょっと面倒な事になっているって団長が言ってた。副団長に伝えたのにあの人は忘れていたけど」

 

「面倒な事?」

 

 俺の問い掛けにロザリーはハッキリと感情を表情に出す。嫌悪と怒りだ。此奴がこんな顔するって事はもしかして……。

 

 

 

「違法探索者が目撃されている。それも秘宝狙いらしい。……死んでも自業自得だけれど、死んだら面倒な事になる」

 

 ああ、矢っ張りな。どうやらモンスター以外も叩きのめす事になるかも知れないぜ。

 

 




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