伝説の聖剣に選ばれたのは俺じゃなくて幼なじみの美少女剣士だったので、俺は別の方法で英雄になるべく塔を登る   作:ケツアゴ

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挿し絵投稿

to4koさんに依頼しました

書き方ちょっと挑戦 今回だけ


いざ、塔の中へ   (挿し絵)

 これはロザリーが地図を持ってアッシュ達の所に行く少し前の事である。

 

「……独断とはいえ、話を通してしまった以上は仕方無いだろうな。ルノアとは親友だとしても公私混同はしない主義の私だが、塔喰らい(バベルイーター)が居ると聞けば納得せざるを得ない。……ロザリーも友達や好きな人と過ごしたいだろうしな」

 

 複数の(バベル)の破壊任務の内の一つに対して副団長であるダイナが他の探索団に独断で協力要請を行ったと知った時、団長であるセレスティナ・メビウスが烈火の如く怒り、ダイナに仕置きをした後で冷静に語るのをロザリーは慣れた様子で眺めていた。

 

 艶めく夜色の髪に翠緑の瞳、均整のとれた肉体を持つクール系眼鏡美人、それがSランク探索団『光熱の剣』団長であるセレスティナであり、伝説の聖剣であるレーヴァンティアの主となったロザリーが変な相手に利用されないようにと入団を勧めてきた昔からの知り合いというのがロザリーの認識だ。

 副団長であるダイナがセレスティナにキツいお仕置きをされるのが日常茶飯事というのも認識の一つであり、偶にロザリーもされている。

 

 そんなセレスティナは話が通ったならば撤回すべきでないと口にしているが、実際はロザリーがアッシュ達と行動したいのを団長であるセレスティアの体面を気にして控えているのを知っているし、それ故に許可したのはロザリーにも通じていた。

 

「ありがとう、団長」

 

「別に他の団員以外の前では名前で構わんぞ? お前が寝小便していた頃からの知り合いだからな」

 

「相変わらず一言余計」

 

「はっはっは! 拗ねるな拗ねるな。まあ、下の者達には適当に話を通しておくし、建て前はお前のお供としておくが、気にせず好きに行動しろ」

 

「分かった。じゃあ準備する」

 

「……まあ、一言だけ言わせて貰うが、塔喰らい(バベルイーター)に関しては大っぴらに口にするな。聞かれれば面倒な事になりかねん連中が多いからな」

 

「うん。そうする」

 

 本当に分かっているのかと疑念を持つセレスティアだが、厳格なようで身内に甘い彼女はロザリーを信じる事にした。

 何かやらかしても自分がフォローすれば良い、そんな程度にはロザリーを気に入っているセレスティア。

 

 ……その優しさを自分にも分けて欲しいと切に願うダイナであるが、大体彼が悪いので分配される日が来るのかは甚だ疑問であるし、恐らく来ないだろう。

 

 

 荒れ野の中にそびえ立つ塔の前、光熱の剣所有の馬車に乗って辿り着いたアッシュ達だが、今から冒険をしようとする顔ではなく、何処か辟易とした様子だ。

 

「おい、これはあれか? 違法探索者ってのは馬鹿なのか? それともギルドが馬鹿にされているのか?」

 

 苛立ちさえ感じさせる声色でアッシュが蹴り飛ばしたのは焚き火の燃え残りの木々だ。

 辺りを見れば野営の痕跡が隠した様子も無く残されており、放置された料理の匂いに誘われたのか獣や野鳥の姿さえ見えた。

 これでは自分達の存在を大々的にアピールしているのと同じであり、その程度も分からない馬鹿なのか、それとも知られても困らないという随分な自信家なのか判断に困るが、アッシュは馬鹿だと判断したらしい。

 

「まあ、違法探索者ってのは探索団から逃げ出したり、犯罪に手を染めて解散になった探索団の連中が多いからなぁ。普通の奴なら辞めた後はエナジーストーンの強化を阻害する薬を定期接種するんやけれど、そういった連中は素直に受けんわ。強化した肉体を好き勝手に使うんや。……何処かの国がそんな連中を囲ってるって噂も有るし、本当に面倒やで」

 

 馬車の手綱を握ったルノアはアッシュ同様に野営跡を残した者達に呆れて居るが、それでも目には警戒の色が残る。

 

 今の自分は最低ランクであるGランク探索団の団長に過ぎないが、それでもリタイアした訳ではないので実力はAランク探索団の若手のホープだった頃と変わらない。

 前線は退いて腕は錆び付いていたとしても、痕跡を残した者達を雑魚とは侮っていなかった。

 

「にしても……小さいわね」

 

「うん。Gランクでも下位だから。確かに金の樹皮が採れるけれど、他に珍しい物は無い。なのに面倒」

 

 ミントは姉の様子を見て気を引き締めながら塔を見上げれば、首が痛くなるより前に頂上が見える。

 自分達が普段探索している物の半分の高さもなく、この場所に何度も入っているロザリーが少し付け足した。

 この(バベル)は探索で得られる富に対して立地が悪く、だからこそ野営跡から察せる人数に違和感を覚えていた。

 

「この程度の場所に大人数で来る必要がある雑魚か、それとも何か思惑が有るのか。……さて、行くぞ」

 

 ハティは腕を組み、少しだけ思案すると迷い無く入り口の巨大で分厚い扉に手を掛ける。

 その見た目に反さず、エナジーストーンによって強化された肉体を持たなければ屈強な大の男が数人掛かりで漸く開くのだが、小柄な少女の細腕で軽く押しただけで軋んだ音を立てながら開いて行った。

 

「……待って。勝手進まれたら迷惑。今回の任務のリーダーは私」

 

「おや、あくまでナインテイルフォックスは手伝いというのは建て前だろう? 惚れている相手に良い所を見せたいのは分かるが、私にとってこれは初戦だ。惚れる予定の男の前で格好を付けさせる度量を見せて欲しいがな」

 

 だが、それを横からロザリーが止め、自分より少々背が低いハティを上から睨みつけるも相手は何処吹く風と余裕が見えた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「……また面倒な事に。ねぇ、アッシュ。いっその事、二人揃って抱いたら? ハーレムって男の夢なんでしょ?」

 

「王族でもないのに実際にやったら周囲がドン引きだろ!?」

 

 ミントが二人のやり取りに呆れ果てた末の発言の矛先が自分に向けられた事に戸惑いを隠せないアッシュ。

 確かに複数の異性、それも見た目も優れている上に好意を向けられているのなら悪い気はしないし、そんな彼女達を侍らすといった願望が無いと言ったらアッシュは嘘吐きになるだろう。

 

 だが、常識的に考えて、必要だから複数の女性と関係を持つ王族と違って血を何としてでも残す義務が無い一般人のアッシュでは状況が違う。

 アッシュだって複数の異性と関係を持っている相手を見れば羨ましい反面ドン引きするし、知り合いにされるのを想像したくもない。

 

「大丈夫よ。ラッキースケベ連発の時点でドン引きだから」

 

 一体何処に大丈夫な様子が存在するのかは不明だが、どうやら強引に話を進める気が満載なミントからは絶対に痴話喧嘩に巻き込まれまいという確固たる意志が伺え、アッシュを生け贄にする気らしい。

 

 尚、見事に捧げられた場合、生け贄らしく食われるであろう、性的な意味で。

 

「少しも大丈夫じゃないだろ!」

 

「いや、面倒事に振り回されないから私に平穏が訪れるじゃないの」

 

「俺に訪れない!」

 

 そんな事はミントが既に承知だと分かっていても叫ばずには居られないアッシュであった。

 

 

 

 

「じゃあ、私が先行する。三人は続いて進んで。ルノアさんは馬車の番をお願い。……ハティは少し離れて」

 

 

 結局話し合いは暫く続き、アッシュが宥めた事でハティが渋々引いてロザリーが扉を開ける事にしたのだが、ロザリーが振り向けば見せつけるかの様にアッシュに密着するハティの姿があったのだから堪らない。

 

 試合に勝って勝負に負けたとはこの事だとばかりに無茶な要求を口にしながら扉に蹴りを叩き込めば勢い良く開く。

 

 

 

「そ、其処を退くザンス~!」

 

「……誰?」

 

 その瞬間、見慣れぬ小男が頭から血を流す少女を背負って、何かに追われる様に正面から向かって来た。

 

 いや、実際に追われている。

 

 一見すれば茶色が混じった白い甲殻を持つ巨大なムカデだが、その体は大木の如く長く太く、観察すれば巨大なだけのムカデではない事が分かるだろう。

 骨だ、それも複数の人骨を無理矢理押し固めて形作った風に見える悍ましいモンスター。

 ギルドによって『スケルトン・センチピート』と名付けられた存在は人の手や足の骨の脚を頻りに動かして獲物である二人を狙って本能のままに突き進む。

 

 その牙が二人に突き刺さるまで残り五秒……。

 

 

「目障りだぞ、雑魚が」

 

 だが、その五秒後は一瞬にして訪れる事が無くなった。

 スケルトン・センチピートが一歩踏み出すより前に眼前に現れたハティは鋭利な爪が生えた右腕を振り下ろし、骨の大ムカデは頭から尻尾まで引き裂かれ、そして砕け散る。

 

「ふふん。どうだ、見ていたか、アッシュよ」

 

 

 見ていて当然、賞賛の言葉を浴びせられるのは歴然、そんな表情でハティは得意そうに振り返る。

 

 

 

「ひゃわぁああああああああっ!?」

 

 だが、誉めて欲しい相手は何時もの呪いを発動させていた……。

 

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