伝説の聖剣に選ばれたのは俺じゃなくて幼なじみの美少女剣士だったので、俺は別の方法で英雄になるべく塔を登る 作:ケツアゴ
俺が父さんから受け継いだ魔剣の指輪の呪いは厄介で……本っ当に厄介で俺を困らせる。ラッキースケベの呪い、こんな風に口にするだけ文字にするだけなら大した事はないかに思えるが、よく考えて欲しい。
「ひゃわぁああああああああっ!?」
怪我をした女を背負いながら目の前から走って来た男は
俺の眼前には薄ピンクでレース付きの布。手にはロザリーやハティよりも大きくずっしりとした重量感の塊が二つ。弾力や柔らかさは二人の中間辺りか。
「いや、離しなさいって。何時まで掴んでる気なのよ、どスケベ馬鹿」
「あでっ!」
何処をどうしたらあんな体勢にって感じの体勢になって急には動けない俺の頭に容赦無く蹴りが打ち込まれる。こんなのが日常茶飯事だなんて、父さんの形見の品じゃなかったら手放してるぜ、この秘宝。
……ほら、大変だろ? こんなのが頻繁なんだぜ? ったく、嫌になるよ……。
「……落ち着いた? ごめんね。あの変態馬鹿には私達からしっかり言っておくから」
「え、ええ……」
俺の頬には真っ赤な紅葉で、向けられるのは冷たい視線。ミント達が宥めて漸く落ち着いた少女は転んだ拍子に気を失った小男を気にしながら話をしている。ミントは魔法で怪我の治療をしながら相手を落ち着かせる為に話をしていて、何とか落ち着いたのか名前を教えてくれた。
「助けていただき感謝致しますわ。私はアンナ・マリーア・デ・ラ・フィレンツァ。其処の男は家の庭師でミヤーノという男です」
「あら、長い名前ね。もしかして貴族かしら?」
「え、えっと……秘密ですわ」
それにしても……此奴、探求者か?
ああ、ちょっと聞いた事が有るな。金でエナジーストーンを集めて力だけ得た金持ち連中が探求者ごっこを楽しんでるって。事前研修が必要になった犠牲者の増加だって、そんな風な連中を減らす為だってキュアさんが言ってたよな。面倒だから勝手に入る馬鹿が困るって愚痴ってたよな。
いや、にしては身元を隠したがったりボロい服装の理由が分からない。不信感は募るばかりで俺はアンナを見ていた。
「あ、あの、私が何か?」
「いや、何でもない。気にしないでくれ」
おっと、危ない危ない。知らず知らずの内に無遠慮な位に見ていたらしく、さっきの事も有ってかミントの陰に隠れながらアンナは俺を見て来た。流石に顔面に座ってしまった上に胸を掴まれた相手がジロジロ見てたら警戒するよな。照れてるみたいに見えたけれど……気のせいだろ。
ミントは俺に非難する様な視線を向け、ルノア姉ちゃんはニコニコしながらアンナに近寄って行く。気さくそうな笑顔だし、アンナも大して警戒してないみたいだ。まあ、危ない所を助けたのも有るだろうな。その助けた張本人のハティは我関せずって風に離れて座ってるがな。ロザリーも近くには居るけれどアンナには無関心って様子だ。
そんな中、アンナは急に真剣な表情になり、頭を下げて来た。育ちが良くて気位が高そうなのに一切迷わずだ。
「あ、あの、それで皆様は手練れの探求者とお見受けします。どうか、どうか私達を逃がす為に残ったヨッシーをお救い下さい!」
おいおい、仲間が残ってるのかよ! こりゃあ話を聞いた以上は知らん振りは出来ないよな。俺だけじゃなく、ミントやロザリーも同じ意見なのか武器を手に立ち上がろうとする。二人が怪我してたんだし、一刻を争う状況だろうからな。
「良いぜ。じゃあ、残ってる場所まで案内を……」
「待てや。勝手に決めるなや、阿呆」
だけどルノア姉ちゃんがそれを征する。言葉を遮って、片手を横に伸ばして止まれって合図。一体どうしてだと文句を口にする前にルノア姉ちゃんがアンナに問い掛ける。俺達に向けた事が無い問い詰めるみたいな静かな怒りの声だ
「……自分ら、違法探求者やな? それも金目当てで……妙な連中と連んでるやろ。挑発なのか残されとる野営の跡、手慣れとる上に痕跡が三人分じゃ足らんわ」
「うっ……」
射殺す様な鋭い視線と冷たい声にアンナは身を竦ませる。肯定って事だな。さっきまで疑い言葉。怒鳴り散らしはしないが怒っているのは明らかだ。
そして怒ってるのは俺達も同じ。お嬢様の火遊び程度なら別に気にしなかったよ。でも、此奴はそんなレベルじゃねぇ。どうやら随分と悪質な類の違法探求者らしいからな。
違法探求者。本来はギルドによって管理される名簿に乗った正規の探求者しか入れない
冒険に憧れた世間知らずの火遊びや、他でも採れる鉱石や薬草程度の売買程度なら強く取り締まっちゃいない。ギルドだって忙しいし、本当に危険で世の中に大きな影響を与える物は厳しいけどな。
だが、悪質な連中は居るもんだ。正規の探求者を襲って秘宝を奪ったり、奪ったり内部で得た秘宝や秘宝の箱を裏で売ったりな。箱から秘宝を出す術はギルドが徹底管理しているが、その箱が本当に申告通りかまでは分からない。
……そしてだ。中にはボスモンスターが強力な秘宝を落とす事やコアを破壊すれば膨大なエネルギーが手に入るからと
「……おい。手を組んでる連中は九年くらい前に
自分でも威圧する声になっている事に驚いた。でも、本来
「答えろ」
「ひっ!」
思わずアンナに詰め寄る俺に怯えた様子だが逃がさない。どっちにしろ妙な連中の片棒を担いだんだし、手掛かりになるなら容赦する気はなかった。腰が抜けた様子のアンナは後ずさって逃げようとするが俺の方が当然速いから逃げられない。
「まあ、待てや」
「ぬおっ!?」
そして一歩前に踏み出した所でルノア姉ちゃんの足が伸びて俺の脚を払い、見事に転ばされていた。転んだ瞬間に思わず手を前に伸ばし、突っ伏した姿勢のまま何か柔らかい物が指先に引っ掛かる。ったく、急に何するんだよ。
「どうせ其奴は利用されただけやろうし、未だ内部に居る連中の方が情報持っとるわ。さっさと行って、さっさと捕まえて、んで帰って宴会にしようや」
「……だな」
ちょっと熱くなりすぎていたのを反省した俺は地面にくっついていた顔を上げながら起き上がる。指先に引っ掛かっていた物が破れる感触が伝わり、起き上がった俺はそれが何かを理解した。
「パン……!?」
「だからいい加減にしなさいってのっ!」
指先に絡みついた薄ピンクの布切れが何か口にする前に背後からミントの怒号が響き、続いて股の間から脚が振り上げられる。感じたのは途轍もない衝撃。
「この呪い、マジで何とかしたい……」
一瞬激痛で意識が飛ぶ寸前、俺は切にそう願った……。