伝説の聖剣に選ばれたのは俺じゃなくて幼なじみの美少女剣士だったので、俺は別の方法で英雄になるべく塔を登る   作:ケツアゴ

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意外な一面

 門を開けて内部に突入した時、目の前には別世界が広がっていた。血が乾いた跡がある剥き出しの地面に空を覆う鉛色の雲。雲に覆われて太陽の代わりを果たす球体の明かりは鈍く、薄暗い世界が何処までも広がって行く。

 

「此処が死霊の合戦場。……不気味な所だわ。オバケでも出そうね」

 

 (バベル)の中は異空間だって身を持って知っている俺達だが、所詮は入った事があるのは一個だけ。此処まで違うもんだなとミントの呟きに同感だと感じつつ足元を見れば骨が散乱していた。合戦場の名前の通り亡くなった人の骨……かと思いきや、事前の説明じゃこの(バベル)で生み出された物らしい。随分と趣味が悪い事だぜ。

 

「しかしミントじゃねぇけど本当に出そうだな、幽霊でもよ。まあ、実際にアンデッド系のモンスターが出るんだっけ?」

 

「うん。骨とか幽霊とか、そんな感じのモンスターが出て来る。……怖いからくっついて良い?」

 

 怖い怖いと言いながらもロザリーは表情を変えないまま俺の背中に張り付いて胸を押し当てる。……防具が邪魔だな。あの柔らかさを何もない状態で感じた後じゃ満足出来そうもない。にしても……。

 

「モンスターって(バベル)の内部で生まれるんだよな?」

 

「そうだけど、アッシュはそんな事も忘れちゃった?」

 

「いや、そうじゃなくって……」

 

 誕生した時には既にお化けってのも変な話だよな。いや、モンスターの材料のエネルギーって回収しなかったら再利用されるんだし一度死んでても変じゃないのか? 俺の問いにロザリーが真剣に心配するが、俺はそんな考えが頭の中をグルグル回って混乱しそうだ。

 

「……おい。さっさと行くのではなかったのか? あの女の仲間とやらが死のうが助かろうが私には興味が向かんが、助けると約束した以上は力を尽くせ。例え相手が気に入らぬ者達だとしてもな」

 

 そんな考えは横からハティが声を掛けた事で中断される。言葉の通りにヨッシーって奴の安否に興味は無いけれど、俺達が約束を破るのは気に入らないって様子だ。ああ、そうだな。何処かやる気が無かったのは認めるけど、引き受けた事に全力を出さずに失敗したらナインテイルフォックスの名折れだ。父さん達にも顔向け出来なくなる。

 

「おっと、そうだったな。行こうぜ、二人共。……ありがとうな、ハティ」

 

 大切な家族から受け継いだ物を汚す所だったっていう危ない所で踏みとどまれたのは間違い無くハティのお陰だ。ミントもロザリーも何処か見捨てたいって心の闇が有ったのを見透かされたから少しバツが悪そうだが、それでも俺の言葉に頷いてくれた。んじゃ、さっさと行きますか! 俺は二人と頷きあって進もうとするが、その前に思い出させてくれたハティの肩に礼の言葉と共に手を置く。……あれ? 何で不機嫌そうなんだ?

 

「……おい、何処を触っている?」

 

「え? 何か不味かったか? 肩だぜ、肩。お前、今更怒る様な奴じゃないだろ? だって痴女じゃんか」

 

「誰が痴女だ、誰が!」

 

 まさかベッドの中で誘惑して来たり風呂に突撃して来る奴が肩を触った程度で怒って来たから驚いて口が滑ったが流石に言い過ぎたな。にしても何を怒ってるんだ? まさか胸や尻を触れって言うんじゃ……。

 

 そんなまさかと思った俺だったが、ドレス姿のハティの胸元にはついつい視線が向かうし、少しは期待してしまう。

 

「……触れる場所が違う」

 

 あっ、矢っ張りまさかの方だった!? ハティは俺の手を掴むと上の方に持って行く。俺は抵抗する素振りだけは見せるが本当は大した抵抗はせずになすがままにして、そのままハティの体に手が触れた。

 

「誉めるなら頭を撫でろ。お祖父様は私や姉様を誉める時は頭を撫でてくれたぞ」

 

「お、おう……」

 

 言われるがままにハティの頭を撫でればサラサラとした絹糸みたいな手触りが伝わって来る。何時もの尊大な態度は何処に行ったのか撫でられてる姿は子供・・・・・・いや、子犬みたいだな。

 

「わふぅ。・・・・・・はっ!?」

 

 犬耳とブンブン振られる尻尾さえ幻視した時、すっかり心地良さに気が緩んだハティの口から出た声。可愛いとさえ思ったが我に返った本人は咳ばらいで誤魔化しているし意図して無かったんだな。美人系かと思いきやギャップで攻めて来るなんて予想外だ。うん。頭を撫でれて良かった。

 

 ・・・・・・胸じゃないのは残念だけどな。自分から触らせて来るってのが・・・・・・。

 

「アッシュ、残念そう」

 

 はっ!? 心、読まれた!? ロザリーの声に顔を向ければ不満そうにして少し怖い。いや、それでも可愛いんだけどな。俺の服の袖を掴んで離さないし、少し罪悪感が有るな。今、俺は猛烈にロザリーの相手をしてやりたかった。

 

「そそ、そんな事無いですよっ!?」

 

「じゃあ私の頭も撫でて? 他に触りたい所が有るなら・・・・・・別に良いよ?」

 

「お、おおう・・・・・・」

 

 俺より少し背が高いロザリーが顔を覗き込み、俺の空いた手を掴んで頭に置く。好きに触って良いって言われてもなぁ。今は頭を撫でられて幸せそうなロザリーを撫でていたい。

 

「はいはい、イチャイチャするのも後にして。先に行くんでしょう、先に!」

 

 うっ。流石にミントが怒ったが、これで気持ちを切り替えた俺達は頭を撫でるのを中断して今度こそ先に進む。本当にミントって俺達の保護者役だよな。口に出したら絶対に怒られるけど。

 

 

 

 こんな感じでさ。

 

「自覚が有るなら世話を焼きかせるなっての!」

 

 ああ、その光景がイントネーション含めて思い浮かぶわ。今にも殴りかかりそうな勢いでって言うか実際に一発は入れられるな。……ルノア姉ちゃんが昔から手を焼かすから肝っ玉母ちゃんみたいなのに育っちゃってさ。胸の方は……殺気!?

 

「あら? 一体どうしたのかしら?」

 

「いや、何でも無い。本当に……」

 

 き、気のせいだよな? 俺は自分に言い聞かせて前に進む。入り口から暫くは骨みたいな物が散乱しているだけの荒れ地だが、少し進めば見えて来るのは一面の枯れ草。腰の辺りまで伸びた草に隠れて石やでこぼこ道や尖った先端を真上に向けて転がる骨(みたいな物)が隠されているから草が生えていない代わりに曲がりくねって枝分かれしまくった道を進むのが安全策だ。遠回りだが、それ以上に面倒な理由も有るしな。

 

 

 だが、今は遠回りの道よりも危険だが最短ルートな直線路を進むしかない。俺達は最初気が進まなかったがルノア姉ちゃんにそうしろって言われたんだ。

 

「まあ、捕まえるのも罰するのもギルドの仕事やし、此処はひとまず助けてやろうやないか。……その代わりパンツはぎ取ったのはチャラな?」

 

 ……あの後、俺達はアンナから何があったか簡潔に話をさせた。モンスターの相手をするから金の樹皮を集めろと仮面を被った女達、そう、ワルキューレの連中から依頼されたそうだ。どうも胡散臭い連中だが大金が必要だったアンナ達は引き受け、裏をかいて集めた物を持ち逃げする気だったとか。

 

 

「愚か者共め。貴様達は贄だ。いと尊き御方がこの地に降臨なさる為のな。四神などという忌まわしい存在ではなく、この世界を支配するに相応しき御方の為に死ねる事を誇りに思え!」

 

 まあ、胡散臭いってのは正解で、後で裏切る予定だったのは向こうも同じって事だった。集めるだけ集めた所でモンスターを引き連れて姿を現したワルキューレ達からアンナを守る為にヨッシーって奴が足止めを引き受けたと。

 

 ……何か気になるんだよな。四神は世界で信仰される四人の神。確かロキとバロールと……何だっけか? 地域によって信仰対象が違うからな。残りは忘れちまったよ。

 

 四神じゃない神ねぇ。……擬神に関わりが有るかも知れないし、俺達の故郷を滅ぼす切っ掛けになった(バベル)の破壊に関して何か情報を持っている可能性だって有る。正直言ってヨッシーを助けるよりもそっちの方がメインだ。

 

 

 そうして外でルノア姉ちゃんが待ち構える中、俺達はヨッシーが戦ってるであろう場所をひとまず目指す事にした。でも、ロザリーが言うには草むらに入ると面倒だって話だが、まさか足場が悪いってだけじゃないよな?

 

「じゃあ、面倒だって言った理由を説明するね。見たら分かるけど」

 

 何度も訪れた事の有るロザリーが先陣を切って草むらに入った時、目の前の地面の下から十本の白い柱が突き出した。いや、違う。あれは柱じゃなくて指だ! 

 

 そう。目の前に現れたのは骨だけの指先。それが両手の分だけ存在し、地面から這い出して全体を見せる。人一人を掴めそうな程に巨大な手首から先の骨の姿をしたモンスターだ。

 

 

「……ボーンハンドラー。この(バベル)のボスモンスターの一種。この草むら、細かく分けられた場所に入る度にモンスターが出て来るの」

 

 辟易とした顔で剣を抜くロザリー。銀の柄に青と金の刃を持つ伝説の聖剣、俺が振るう事を夢見ていたラーヴァティンが純白の冷気を纏いながら存在していた

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