伝説の聖剣に選ばれたのは俺じゃなくて幼なじみの美少女剣士だったので、俺は別の方法で英雄になるべく塔を登る 作:ケツアゴ
「うぉおおおおおおおっ!? どんだけ…どんっだけ出て来るんだよ、此奴らっ!?」
枯れ草を踏み荒らしながら騎馬隊が迫る。悪路だろうと何のその。朽ち果て掛けた鎧を着込んだ首無し騎士達を背に乗せた首無し馬が蹄の音を踏み鳴らし、騎士達が手に持つボロボロのハルバートやランスが振るわれた。
「……どれだけって、沢山?」
前方を埋め尽くしながら迫る大群に思わず叫べば戻って来たのは疑問系。おいおい、ロザリー。お前は何度も来てるんだろ?
「沢山なのは見て分かってる!」
「正確な数は知らない。だって普段は範囲攻撃で一掃してるから。でも、倒すしかないからアッシュとミントは頑張って。……それとも私が倒そうか?」
「結構だ!」
「ならば私が助力しようか? ふふふ」
死霊の合戦場のボスモンスターの一種であるデュラハン。出現エリアに足を踏み入れると同時に地面から現れて、あっという間に今の数にまで膨れ上がった。ハルバートの先を切りとばし、そのまま馬を切って崩れた所で騎士を切り裂く。
「一体一体は弱いんだが、こりゃハンドラーの数倍厄介だな……」
切っても切っても一向に減る気配の無い大群に嫌になるが、だからってロザリーとハティの力は借りられない。……そう。この群れが出て来た時、俺は二人に下がっていてくれって頼んだんだ。ロザリーにもハティにも勝負で負けて、俺はちょっと本格的に鍛え直す必要が有るって感じてな。
……このままじゃエナジーストーンを金で手に入れて物見遊山気分での探索者ごっこをする連中に毛が生えた程度だ。能力を上げるだけじゃなく、そのこうして苦境に追い込まれる必要が有る。
「グチグチ言わないの! てか、アンタが言い出したんじゃない。付き合ってやってるんだから口じゃなくて手を動かしなさいって! ウインドスラッシュ!」
広範囲に風の刃を放ち、咄嗟に構えた武器も馬も鎧も一度に切り裂いたミントは怒っている。怒りに任せて次々にデュラハン達を倒すんだが、正直言って近い。本来は遠距離から戦う筈の回収士が精々槍使い程度の距離で戦ってるんだからな。
だが、それが問題にならない位に軽い身のこなしで攻撃を避け、時に投げナイフで応戦しながら強力な威力の魔法で一気に仕留める。正直言って秒単位の撃破数は俺より上だ。……って言うか四人の中で俺が一番低い。
って言うかミントも付き合ってくれる辺り同じ焦りを感じていたみたいだ。そりゃそうだよな。魔法の威力は普通より高いのに、魔法の長所の射程が短いんだ。だから本来は魔法の訓練を優先して疎かになりがちな体術を鍛えての接近戦を強いられる。
……俺達は今のままじゃ弱小のまま。父さん達の様な最盛期に追いつくなんて夢のまた夢って事だ。俺達は他の連中の数倍頑張らなくちゃ駄目だよな。
「やってやるよ!」
「やる気が空回りしないようにね? アンタ、昔から熱くなると周りが見えないんだから。馬鹿は馬鹿なりに頭使ってよね」
肩を竦めながらもミントは気合いを入れ直した顔でスピリッツライトを構える。こうなったら俺もとことんやってやるしか無いよな? でも……。
「あんまり馬鹿馬鹿言うな! 自分で言うなら兎も角、そんなに言われる程に馬鹿じゃないだろ!」
「馬鹿よ」
「馬鹿だろう」
「……大丈夫そんなアッシュが好きだから」
「俺の味方に味方が居ないっ!?」
お前達だって貧乳と痴女と天然だろうがよ!
「まあ、そんなに怒るでない。ちゃんと評価に値する戦いを見せれば私が褒美をやろう。そうさな……膝枕などどうだ? 男はそういったのが好きなのだろう?」
ハティはドレスの裾をまくって太ももを見せながら笑みを向けて来た。白いスベスベの肌。あれに頭を乗せて眠る事を想像してみると……。
「俺、枕が変わると寝付けないんだよな」
「むぅ。だったら私の膝に枕を乗せてだな……」
「いや、それだと首が痛くなりそうだろ」
「ならばあぐらだ。足の中心に枕を置いてしまえば良い」
「それだ!」
「二人揃って馬鹿ね。バカップルね」
「ミント、違う。アッシュとカップルなのは私」
「バカップルトリオだったかぁ……」
「さて、緊張が解れたしさっさと終わらせるか。ミント、例の奴を試そうぜ」
馬鹿な話をしている間にデュラハン達が密集して前方に武器を向けての突進の陣形になっている。さっきからバッタバッタ倒してたし、少しは追い詰めたって事か。
「……アレって、こんなぶっつけ本番で? ちょっと不安ね……」
俺の提案に後込みしたミントだが、それもそうだ。俺がやろうって言ってるのは危険な事だからな。こんな時はミントも女の子って感じる……。
「上等じゃない! 何時か、その内、またの機会、そんな事言ってたら何時まで経っても変われないもの! さっさとぶちかますわよ、アッシュ! ナインテイルフォックス此処にありって見せてやろうじゃない!」
「ミントの方が男らしい……。アッシュの負け。でも、そんなアッシュも好き」
「お前、本当に俺の事好きなの!? それとも駄目な男が好み!?」
「……アッシュの事を馬鹿にする奴は幾らアッシュでも許さない」
本気だ。ロザリーから本気の怒りを感じる中、土煙を上げながらデュラハン達が迫って来る。あの数だし、真正面から受ければ蹂躙されるだけだな。なら、真正面から叩き潰してやろうじゃんか!
って言うかミントはもう魔力を高めて魔法を放つ準備を終えている。本当に行動力高いな、此奴……。
「それじゃあ行くわよ! ホーリーレイン!」
ミントの眼前に出現したのは直径数メートルもの光の球体。アンデッドに有効な光系魔法ホーリーレイン。空中に浮かび上がった球体が広範囲に雨みたいに降り注ぐ。
……まあ、ミントは威力は高いが根本的な所でヘッポコだから魔法の維持が苦手で途中で消え去っちまうんだけどな。出現した弱点にも臆さず向かって来るデュラハン。球体はそのまま浮かび上がり、雨になるけれど途中で消え去って届かないだろう。
「行っくぜぇえええええええ!!」
なら、届く様にすれば良いだけだ。レヴァティンの刃に炎を宿してホーリーレインをぶっ叩く。本当だったら空中で炸裂する筈のそれは炎に包まれた状態でデュラハン達の先頭へと向かい、地面に激突した瞬間に炎は広範囲に広がって燃え上がった。……あれ? ちょっと激しく燃え過ぎてる気が……。
気が付けばデュラハン達は燃え尽きてエネルギーと化し、炎は普通に枯れ草で燃え広がっていた。煙が凄いし、これって結構不味い?
「ミント、水系魔法で……」
「ホーリーレインって結構魔力使うのよね。……暫く無理」
おいおい、かなりヤバい状況だろ。そうだ、ロザリーなら!
「……ミント、ズルい」
肝心のミントは頬を膨らませてプイッて顔を背けていた。
「おい、何で拗ねてるんだ?」
膨れ面のロザリーがラーヴァティンを振るうと周囲の炎が一瞬で凍り付き、そして砕け散る。周囲の気温が一気に下がって少し寒いがこれで助かった。って、何で俺を抓ってるんだよ!?
「……ほほう。レヴァティンの炎と光魔法を合成したのか。結構な事だ。成る程成る程……」
飛び散った氷をつまみ上げながらハティは笑みを浮かべていた。
「ああ、正解だ。試しにやってみたら上手く行ってな。……どうした?」
「……いや。どうも知り合いの匂いがしてな。だが、どうして奴が?」