伝説の聖剣に選ばれたのは俺じゃなくて幼なじみの美少女剣士だったので、俺は別の方法で英雄になるべく塔を登る   作:ケツアゴ

34 / 56
あのオッサンは……

「……本当に面倒だった。本っ当に面倒だった!」

 

「うっさいわよ、アッシュ」

 

 本当にどうなってるんだって位多くのボスモンスターの出現数にいい加減嫌気が差し、それでも続くボスラッシュに今すぐ帰りたいとさえ感じても先に進むしかなかった中、俺達は漸くヨッシーらしき男を発見した。ヒョロヒョロの痩身で高身長、髭が立派だが顔付きが小悪党っぽいから逆に滑稽に見える。先にアンナから聞いていた情報の通りだ。……いや、普通に酷くないか? まあ、分かりやすかったし、俺が仲間内で馬鹿って呼ばれるのと同じか。

 

「にしても最初は稼ぎ放題だって思ったけれど、流石にキツかったな。やれやれっと」

 

「……うん。他人様の所の人間関係に口出しするのは止めとくか。忠義とか信頼はちゃんと有るみたいだしな。それにしても……」

 

 気絶しているがロザリーの治療を受けているから大丈夫だろうヨッシーの姿や地面に突き刺さった折れた剣、そして発見した時の事を思い起こした。

 

 

「……ねぇ、彼処」

 

 次々に現れるボスモンスターを薙ぎ倒しながら進む事数時間、視界の端に誰かが戦っている様子が映ったのに最初に気が付いたのはロザリーだった。指差した先では、かなりの数のモンスターを倒したらしく濃霧みたいに広がった膨大な量のエネルギー。そして、地面を這って進む巨大なモンスターの姿だった。

 

 巨人の物かと思わされるドクロが向きをバラバラにして一列繋がり、全身を包む青いオーラと眼下の奥の怪しい赤い光。それが向かう先に助けに来た相手らしい男の姿が見えた。

 

「急ぐぞ!」

 

 アンナを逃がす為に戦い始めてから何時間も経ってるだろうし、流石にあのモンスターを倒すのは無理だろう。そう思って走る速度を上げるが、このままじゃ間に合わない……かに思えた時だった。

 

「おい、マジか……」

 

 男が向かって来る相手に飛び掛かったかと思った瞬間、先頭のドクロが切れた。右斜め上から左顎に掛けて斬撃が走って両断する。思い掛けない痛手に仰け反った瞬間に二番目のドクロが後ろから切り離され、宙を舞ったまま光の粒子になった。

 

「うひゃあ。確か警備隊の隊長だったっけ? 強いわね」

 

「うん。でも……もう限界」

 

 アンナ達が逃げ出して俺達が到着するまでの数時間の間ずっと戦い続けたんだろう。三番目のドクロを真横に切り裂いて倒すと同時に剣の刃が真ん中辺りで折れて飛んで行き、気を失ったのか男は空中で動きを止めて落ちて行く。だが、モンスターは完全に倒された訳じゃなかった。三番目のドクロを斬った一撃が届いてたのか今の先頭のドクロにも横一文字の亀裂が入っているが動いている。

 

「まあ、死んでなくて何よりだ。助けるって約束したからな」

 

 視界の先で男に襲い掛かろうとしたドクロが砕け散る。その次も、更に次も。剣が折れた瞬間に既に動き出していたハティは素手で次々と巨大なドクロを一撃粉砕していたんだ。

 

「……ん?」

 

 一瞬だけハティの頭に犬の耳が見えたんだが今は見えないし気のせいか。ロザリーもミントも何も言わないし、今はさっさと様子を見に行って怪我をしてるなら治療しないとな。

 

 

「にしても本当に強かったよな。殿を引き受けて主の命と引き替えに死ぬつもりだったと思ってたんだけど、これじゃあ生き残れる自信も有ったんだろうよ」

 

「そうね。見た目は弱そうなんだけど凄いわ。……回収終了。これ、結構な儲けになりそうだわ。他人の成果を掠めとるみたいだけれど、こっちも救助を優先して殆ど回収せずに来たんだから別に良いわよね?」

 

 実際、あと少し体力が残っていて武器が壊れなかったらあのデカい奴を倒せていただろうしな。周囲を見渡してもモンスターは音を聞きつけてやって来た動く骸骨やら人魂やらのボスじゃないのばっかりだし、周囲を漂っていた光の粒子の量も既に吸収されたのも入れたら相当な数を倒したんだろうな。

 

「それで一旦戻るか? リターンチャイムの転移先の座標は馬車にしてるから野営をして明日にでも入ろうぜ。時間が余ってるけど気絶した怪我人連れてコアを守るボスモンスターを倒すのは大変だろ?」

 

「そうね。ロザリー。その人の治療ってどの位掛かる?」

 

「怪我は治した。でも疲労が凄いから暫く起きない。……迷惑」

 

 うーん、少しは軽減されたけど違法探求者への敵意が残ってるって感じだな。ヨッシーの治療をしているロザリーは不満を隠す気は無いみたいだ。でも、放置して行こうって言わない辺り、同じ様に(バベル)で人生を狂わされたって事が関係してるんだろうな。

 

 んじゃリターンチャイムを持っていないヨッシーを連れて帰る為に入り口を目指すか。Gランクだからロザリー一人でボスモンスターの討伐が可能だけれど、それじゃあ俺達が同行した意味が無い。今日は諦めて明日通常ルートで奥を目指そうっと。

 

 取り敢えず同じ男の俺が背負うべきかと思ってミントに荷物を預けようとした時、さっきから落ち着かない様子のハティが勝手に奥の方へと進んでいた。

 

「おい、ハティ。一人で何処行くんだ? 便所か?」

 

 あっ、ずっこけた。マジで転ぶ奴が居るんだな。冗談でも試してみるもんだ。。俺の言葉がよっぽど意表を突いたのか前のめりに転けて尻を突き出してドレスの裾が捲れている。白い尻が見えて……んっ?

 

「……おい。どうしてパンツ穿いてない?」

 

「どうも下着は落ち着かん。正直言えばドレスも脱ぎたい。……自宅内なら構わんのではないか?」

 

「構う! 凄く構わない事無いからなっ!? おい! 二人も何とか言ってくれ!」

 

 ハティの事だ。このままじゃ拠点内を全裸で歩き回るに決まってる。いや、流石に困るからっ! だから俺は二人からも何かを言って欲しくて視線を向ければドン引きしている時の目だ。俺が馬鹿やった時に向けるのと同じだから分かるんだ。

 

 

 

「……アッシュ、今のは流石に無い」

 

「うわぁ……」

 

「すいませんでしたっ!」

 

 俺が馬鹿やった時に向けるのに似ているんじゃなくて、俺が馬鹿やった結果向けられた視線だった! 

 

 

「おい。もう行って良いか? ……どうも気になる奴の匂いがしてな」

 

「いや、アンタも流石に無いからね? 全裸で家の中歩き回ったら晩御飯抜きだから」

 

「……悪かった」

 

 ……うん。この瞬間俺は理解したよ。今のナインフォックステイル最強はロザリーなんだってな。

 

 

 

 

 

「それで用事ならさっさと終わらせなさいよ? ほら、アッシュ。アンタも一緒に行きなさい」

 

「へーい」

 

 さてと、ハティの知り合いってどんな奴だろうな。……姉が不思議系ロリで本人が箱入り痴女だし、変な奴なんだろうけど……。

 

 

 

「……ハティちゃんかぁ。嫌な時に会ったなぁ」

 

 俺がハティに連れられて向かった先に居たのは、無精髭にボサボサのダルダルのシャツをズボンからはみ出しただらしない格好のオッサンとフリフリのドレスを着た藍色の髪のツインテールの女の子。デカい盾を持ってるが秘宝か?

 

 駄目だ。このままじゃ情報が足りない。あの男が知り合いなのが分かるだけだ。それともう一つ……。

 

「久しいな、クロウ。此方に来る準備の時に顔合わせをして以来か。して、其処の小便臭い小娘は何だ?」

 

「オジさん、君のストレート過ぎる所は好きじゃないなぁ…」

 

 

「も、漏らしてましぇん! ……あっ、噛んじゃった」

 

「えっと、危ないし話がややこしくなるから下がっててくれる?」

 

 

 取り敢えずあのオッサン、絶対に苦労人だな。

 

 

 

 




感想随時募集中
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。