伝説の聖剣に選ばれたのは俺じゃなくて幼なじみの美少女剣士だったので、俺は別の方法で英雄になるべく塔を登る   作:ケツアゴ

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昨日、メモで書いてたタブレット忘れ物しちゃってさ


試練の時と大熊猫
騒動の幕開け


「では、神聖王国の動向については今後も注視するとして、今は密偵に監視を任せるに留めましょう」

 

世界各地に支部を持つ探求ギルドの本部にて支部長や本部の幹部が集まっての話し合いが行われていた。

 

 肌の色も瞳の色もバラバラの老若男女が居並び、共通点は決して権力に影響されぬ絶対中立を表した白い制服。四角い部屋の壁には四種類の紋章が描かれ、それぞれの壁の背中向ける人数には少々バラつきが見える。

 

「次にワルキューレについてですが、パステト神に関わる(バベル)の動きが活発になりつつあります。このままでは新たな擬神が降臨するのも時間の問題かと」

 

「確か活動地域に拠点を持つ探求団で高ランクのは……」

 

 参加する者達は一様に頭を捻って意見を出し合い、揃って真剣な表情を作る。……いや、例外が一人。この場において唯一ギルドの制服を着ぬ者が竜の紋章が描かれた壁を背にして声は出さずとも愉快そうにしていた。

 

(ククククク。まあ、随分と悩むものだ。神に仕える身からすれば感心すべきではあるがな)

 

 この場にて異様な存在でしかないが、この場でなくとも異様な姿でもある。腕を組み椅子の背もたれに体重を掛けて内心笑う彼の表情は他の物からは見て取れない。何せキグルミを着ているからだ。詳しく言うならハシビロコウのキグルミだ。

 

 彼に向けられる視線は不審者に向ける物で無いのを考えれば彼が居るのは当然と認識されているのだろうが、顔は見えずとも真剣でないのは態度で伝わっているのか向けられる視線は厳しい。それは本人も気が付いているが平然と受け流して気にも止めていなかった。

 

「続いて無視出来ない報告が上がっています。闇の塔喰らい(バベルイーター)ことクロウ・クルワッハがワルキューレと共に行動していたそうです」

 

「何だって!?」

 

「そんな馬鹿な! 彼はバロール神の忠臣の一人だった筈だぞ!」

 

「……ほぅ」

 

 深刻そうな様子で告げられた報告に会議室がざわつき、ハシビロコウは姿勢を正して興味深そうに呟いた。キグルミの下で喜色を濃くし、瞳は興味深さを示す。それは周囲にも伝わっているのか彼に視線が集まる中、進行を行っていた男は咳払いで視線を戻し、新たな書類を取り出した。

 

「この件については調査途中であり、他の塔喰らい(バベルイーター)の様子と共に調査を続けます。次に期日が近付きました恒例のあれについてですが、今回の試験官は……パンダーラに決定しました」

 

 再び会議室に声が満ちる。殆どが驚愕と反対意見であり、快く思っていないのは確かだ。但し、ハシビロコウを除いて。

 

 

「決定した事だ。全て神々のご意志として従うべきだろに、諸君。私達も全力で行うと誓おう。団の名誉に懸けて誠心誠意取り組もうではないか」

 

 姿勢を正し、丁重な語り口。まるで聖職者がミサで信者に語り掛けるかの様。だが、彼の姿を目にした者達が覚えるのは不信感。ハシビロコウのキグルミという場違いな姿だからでも、トラブルメーカーであるパンダーラの一員だからでもない。

 

「ククク。おやおや、随分と信用が無い様子だが、その様な相手に頼らざるを得ないとは憐れみを誘う。まあ、不安がる事は無い。この世界を厄災から守る為に忙しい主に代わって私が指揮を任されているが、引き受けたからにはベストを尽くそう」

 

 この男の全ての言葉が薄っぺらく空虚で一欠片も信用ならない。誠実さの欠片も感じられず、一切信用するに値しない。今この時まで明確に裏切りや謀略を働いた事は一度も無く、寧ろ期待以上の成果をもたらして来たのがこの男だ。

 

(我ながら理不尽な言い掛かりにさえ感じるが、それでも信用ならんぞ、この男は。これまでの全てが信頼を裏切られ苦悩する私達の姿を愉しむ為の布石に思えてならんのだ・・・・・・)

 

 とある支部長が抱く思い。それはこの場の殆どの者が抱く物。それ程までの何かをこの場の全員が感じ取り、もしかすれば感じ取らさせられていたのかも知れない。

 

「さて、どの様な試練を与えるべきか。神のもたらす災禍を乗り越える英雄となるのを期待される者達が相手だ。多少理不尽でも構うまい。力が足りねば何時か死するだけだ。ククククク」

 

 一つだけ確かなのはキグルミの中で邪悪に笑う彼が修正が不可能な程に性格が歪んでいるかの様。これでは神父服を着ていても騙りにしか見えはしなかった・・・・・・。

 

 

 

 

「うーあー……」

 

 ウチの朝は絞り出す様な声と共に始まった。

 床と天井が逆転していて、すわ天変地異かと思ったら何の事は無い。

 昨日ベッド代わりに寝ていたソファーから落ちただけだった。

 頭に血が昇ってるし、ズキズキ痛むし本当に最悪や。

 

「完っ全に二日酔いや。酒の無い国に行きたいなぁ……」

 

 フラフラしながら立ち上がり、水を求めてキッチンに向かう。

 昨日はマジで浴びる位に飲んだからな。

 ミントが漸く禁酒令を漸く解除してくれて、ウチは早速飲み歩きに行ったんやけれど、この街に昼間から酒出しとる店は少ないし、安酒しか置いとらん。

 

「こんなんじゃ満足出来へん。こうなったら質より量や! 質は夜から求めたる!」

 

 酒のツマミなんざ洒落臭いとばかりに酒だけを腹に詰め込み、幾つかの店の酒を空にした所で気が付いてしもうた。

 

「やっば。飲んで良いのは夜からやった……」

 

 ちゃんと飲む量は考えなさいって言いながら出掛けたさかいに店に行く時は咎める奴が居らへんかったけれど、酒の臭いプンプンさせて帰ったら確実に叱られるわ。

 

「ウチ、二周り近く離れとるのに頭が上がらへんからなぁ。さてさて、どうするか……。そうや!」

 

 ちょっと散歩にでも行った事にして、ニーナの所にでも行けば良いのだと思い付く。

 酒は買い込んで持って行って、適当な時間に夕飯をご馳走になったって誤魔化せば良い。

 何故かって言うかウチと違ってミントに信頼されとるし、一緒に謝って貰えば怒られへんやろ。

 

 

 

 

「……うん。本当に浅はかやったわ。痛たたたたた……」

 

 結論から言えば失敗に終わった。

 ウチが飲み歩いてるって出先で耳にしたミントはニーナの所で待ち伏せしとったんや。

 

「あらあら、随分とご機嫌ね、姉さん?」

 

「あわわわわわあわわっ!?」

 

 ニーナの家のドアを開けた途端に腕組みして待ち構えとったミントと遭遇、首根っこ掴まれて家に戻ってのお説教が長々続き、本日以降は再び禁酒令を言い渡された。

 

「……まあ、散々飲んだのに買った酒は飲んで良いってのは温情やろうな。にしても本当に二日酔いが酷い。み、水……」

 

 水瓶に手を伸ばし、ちょっと自分の臭いを嗅げば酒臭いし、少し酔いが残ってる。

 

「まあ、これで暫くの間は飲み納めって事で遅くまで飲んどったし……二日酔いには迎え酒~」

 

 実はこんな時の為にって隠している酒があるんや。

 壁に飾ってる絵の裏、其処に実は隠された引き戸が有って酒を隠しとる。

 さてさて、ミントが起きる前に……んげっ!?

 

 壁を強く殴る音が響き、思わず身を竦ませるけれど誰も現れない。

 

「……ミントの寝相やな。彼奴、あんなんやと男が出来ても直ぐに逃げられるんとちゃうか? こりゃ年齢イコール彼氏居ない歴のまま……ウチもか」

 

 盛大な自爆発言によって絵に伸ばした手が止まり、何となく絵を眺める。

 昔描いて貰ったナインテイルフォックスの集合絵、ウチが腐って停滞する前の栄光の時代や。

 

 今、アッシュ達はこの時代に追い付こうとし、更に先を目指して進もうとしとる。

 

「望んでも望まんでも道は続いとるし、進む奴はさっさと行く、か……」

 

 何か知らんけれど飲む気も失せたし、大人しく水でも飲んで二度寝決め込むかと思ったウチはベッドに向かおうとして玄関前で足を止める。

 

「……ギルドからのお知らせ?」

 

 郵便受けから中に入れられた封筒にはギルドの刻印が押されていた……。

 

 

 そして、これが新たな騒動の幕開けなんやけれど、今も外から何か騒がしい声が聞こえて来た。

 

「内容からしてアッシュやな。まーた何かやらかしたんかい、あの馬鹿は」

 




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