伝説の聖剣に選ばれたのは俺じゃなくて幼なじみの美少女剣士だったので、俺は別の方法で英雄になるべく塔を登る 作:ケツアゴ
地響きがしたと最初に気がついたのは町の外で遊ぶ子供達だった。SSランク探探索団のパンダーラの拠点が存在するグナロクでは巨大なパンダが定期的に踊ったり、パンダーラの団長であるアンノウンが騒動を巻き起こすが、最近では驚くのは外の住人だけで元から町に住んでいる者達はすっかり慣れた様子で驚きもしない。それが良いのか悪いのかは別として人間は順応する生き物なのだ。
「地震? でも昨日起きたばっかよね?」
「それに地震にしてはちょっと変だよ。まるで足音みたい・・・・・・」
この世界において地震とは世界全体で起きる現象であり、数秒間地面が揺れるのが定期的に発生する程度の物だ。古い文献、それこそ探索団が存在する前の物には何時起きるか分からず規模もその時によって違う災害とされているが、今の地震とは全くの別物だと研究者達は首を傾げるばかりだ。
故に子供達も最初は気にしていなかったのだが直ぐに何かが変だと気が付いた。一回の揺れの間が通常よりも長く、音は遠くから聞こえて来る。何よりも普段ならば既に収まっている時間になっても揺れは続く。
「まさかパンダーラが何かやった?」
思い起こすは頻繁に起きる騒動と団を代表して頭を下げて回るリゼリクの姿。パンダーラの発表に拠れば主犯格らしいが、それにしては妙だと聡い子供は気が付いていても敢えて素知らぬ振りをして、大人は不可思議な迄に信じ込む。だから真っ先にパンダーラの名前が出たのは仕方無いのだが、今回は些か特殊だ。
確信でも予想でもなく願望。どうかそうであって欲しいとの願いであり、予想は的中する。但し的中したのはパンダーラの仕業だというのではなく、足音みたいだという奴。山の向こうから大地を揺らし足音を轟かし木々を掻き分けながら巨大な姿を現した存在を目にした子供達は固まり、十二分に姿を見た後で叫んだ。
「格好良い!」
「化け物よ!」
目を輝かしたのは男の子。恐怖で顔が引き攣ったのは女の子。その巨体は正しく異様な風体。重厚な全身鎧に似ているが胴体に比べて手足が太くて短く、首が無くて頭と胴体が一つになっている。全身は黄色に染まり、胸には四神の一人を示す象の紋章。
この世界には一般的に存在を認識されておらず名前さえ知らないがロボットと呼ぶのが正しいだろう。事実、緑のモノアイが光る頭部には少女が乗り込んだコックピットが存在するのだから。モニターやレバー、複雑に伸びたコードなどコックピットの内部は機器で埋め尽くされ、中央に操縦者の小柄な体に合わせた大きさの操縦席が何とか収まっている。
「ふふふふふ! このテンマオー
巨大ロボットを操縦するのはオレンジ色の髪をツインテールにした白衣の少女。九年前、金毛のパンダのキグルミを捕獲しようとして、ウチワで飛ぶ奇妙な乗り物を操縦していたのをアッシュに目撃された少女だった。あれから九年の月日が経ち、操縦する物の技術は成長している様子。技術とは成長する物故にそれは問題でも不可思議でもない。
奇妙なのは彼女の容姿。九年前から一切成長していないのだ。あの時と同じ七歳前後の容姿のまま変わらず、動かす物だけは確実に成長している。
テンマオーⅥは地面を揺らしながら前進し、コックピット内のモニターにはグナロクが小さく見える。このまま接近すれば一分と掛からず到着するだろう時、その動きが止まった。
「……おや? 何か来るんだね。……望む所なんだよ!」
ハーネスで固定された体を前に乗り出し、レバーやキーボードを慌ただしく操作しながら歯を見せて笑う少女。好奇心で目を光らせて向けた視線の先には後ろ足のブースターから炎を噴き出して空を飛ぶパンダーラの拠点の姿。いや、少し違う。全体的にメカっぽくなっており、瞳の部分が透明になってレバーを握るアンノウンことパンダのキグルミとウサギのキグルミの姿が見えていた。
「……ねぇ、自分勝手な行動は止めなって言ったよね? 何時も好き放題に行動してさ。少しは周りの事を考えなよ。……って事で団の活動費を注ぎ込んで改造したこの拠点……大熊猫三号が相手だよ!」
「……三号って一号と二号は何処に? いえ、言わなくて構いません。私、帰って良いですか? 明日は息子の幼稚園の参観日なので準備をしませんと」
「早退は僕の気分次第だし、今日は……オッケーさ! お土産にコサックダンスを踊るパンダ人形を持って帰りなよ!」
マイクを通してのブーメラン発言がアンノウンから放たれ、ウサギのキグルミの至極どうでも良さそうな声が響き、ウサギの乗った席だけがパンダの口から排出されて空の彼方に消え去った。それを慣れた顔で見上げる子供達。その一人の目の前に拳でボッコボコにされたパンダ人形の残骸が落ちて来た。見事な不法投棄である。
「……先手は貰うんだね!」
見なかった事にした少女がレバーを引くと何やらテンマオーⅥの右腕が音を発しながら光輝き振動を始める。それは秒単位で激しくなっていた。
「リビドーエネルギー充填! 波旬バイブレーション発動! 必殺! パーピーヤスロケットパアァァァァァァンチ!!」
テンマオーⅥの右手は高速振動しながら切り離されロケット噴射によって大熊猫三号へと向かって行く。音速を超えた腕は衝撃波を発生させ、触れる物を確実に滅する正しく必殺の一撃へと変わった。だが大熊猫三号も棒立ちになって破壊を受け入れはしない。その前足には笹の付いた竹が握られていた。
「秘技! バンブーパンダーブレェェェェェド!」
竹と拳が正面から衝突する。火花を散らし衝撃を周囲に撒き散らしながら拮抗する二つ。やがて竹にヒビが入って砕け、拳も弾き返された上に装甲を破壊された事で露出したコードから放電が起きていた。
「……中々やるんだね」
「君もね。……じゃあ、次はパンダに相応しい必殺技を見せてあげるよ! その前に……変形合体だ!」
テンマオーⅥは右手を損傷し、大熊猫三号は武器を破壊されている。だが、それだけだ。互いに被害は軽微。戦いは此処からであり、大熊猫三号の前足が光ったかと思うと三体のロボットが接近する。完全に世界観を台無しにする展開の中、大地を駆けるエリマキトカゲ、空の彼方より飛翔するハシビロコウ、そして川を遡ってタツノオトシゴが現れた。
「変形合体!」
「……危ないから逃げようよ」
男の子達は更に目を輝かせ、女の子達は冷め切った様子で距離を取る。テンマオーⅥのコックピットの画面に映し出される映像に少女が驚愕する反面知的好奇心に心を動かされる中、大熊猫三号の姿が消えていた。
「あれ? 何処に行ったん……だね!?」
コックピットに走る衝撃。緊急事態を示すアラームと赤い光が満たし、損傷率が重篤な状態である事が表示された。
「秘技……パンダドロップキック」
背後から叩き込まれたドロップキックによって背後から破壊され、機体は前方へと飛んで行く。直後に起きる爆発。残骸となった機体の中で黒こげアフロになった少女が痙攣しながら倒れていた。
「ぜ……全然パンダらしくないん……だね」
「え? パンダとドロップキックだよ? ……全然らしくない! 所で君って本当にさぁ。それでも四神の一人なの? ねぇ、マーちゃん」
一方その頃、アッシュとロザリーは青い
「デート、デート。アッシュとデート」