伝説の聖剣に選ばれたのは俺じゃなくて幼なじみの美少女剣士だったので、俺は別の方法で英雄になるべく塔を登る 作:ケツアゴ
探求団の力を示すランクってのは結構大切だ。ランク以上の
……いや、本当にギルドの技術力はどうなってるんだ? 独自の技術だから製法は非公開ってなってるし、調べられないように色々としているから全然分からないんだよな。
「昇級試験の案内!? おいおい、マジかよ! 酔っ払って何処かから持ち帰ったとかじゃないよな?」
「アッシュ、お前はウチの事をどないな風に思っとるねん。ちゃんと届いた奴や!」
そんなランクを上げる為に必要なのが昇級試験を突破する事。毎回高ランクの探索団が試験官を行うんだが、試験の参加を許されるのは同じランクの中でも上位の探索団だけ。つまりはナインテイルフォックスはランクを上げても大丈夫だろうって評価されたって事だ。
ルノア姉ちゃんが見せてくれた手紙にはギルドの紋章が刻まれていて正式な書類だってのを示している。俺とミントが正式に探索者になったのは極最近なのに招待されたって事は活躍が高く評価されたって事だろうな。
正直言って嬉しい。力を認められて評価されるってのは本当に良いもんだ。
「よっしゃ! 張り切って行くぞ、ミント!」
「ええ、そうね。ちょっと不安があるけど全力で行きましょう。じゃあ、今日から早速特訓ね。今までの試験内容を調べてみるわ」
かつてはAランクだったのが壊滅を機にGランクまで下がってしまったナインテイルフォックス。栄光を取り戻す? 違う。もっと上だ。父さん達が辿り着いた先へと進むのが俺の目標だ。じゃないと英雄なんざ夢のまた夢だもんな。
だから俺は張り切っているし、ミントだって同じだ。俺と同じくやる気だし、俺が苦手な頭脳労働を任せられるのはミントしか居ない。おっと、今は俺達だけじゃない。新入団員のハティにだって頑張って貰わないとな。
「おい、先に言っておくが私は参加出来んぞ?」
これも仲間の結束を更に高める機会だと思ったんだが、まさかの本人から横槍が入った。
「はぁっ!? おいおい、何言ってるんだよ! お前だって俺達の仲間、ナインテイルフォックスの一員だぜ!」
「……ミント、まさかとは思うがアッシュは例の事を忘れたのか?」
「みたいね。予想は……いえ、確信していたわ。どうせ忘れてるだろうって」
二人は呆れの表情を俺に向ける。俺、何かやらかした? 理由が分からず、助けを求めてルノア姉ちゃんの方を見れば同じく呆れ顔。あれ? スコルも何となく呆れている気がするぞ……。
「私は一応新入団員……研修中の身だぞ? 本来なら
「……あっ! そうだった!」
数打ちゃ当たるの原理で無闇矢鱈に探索者を増やして大勢の犠牲者を出した探索団があった事から始まった研修制度。ハティは本来ならば完全に壊せない
「あまり目立つ行いは避けろと言われたであろうに……はぁ」
「ちょ、ちょっと忘れてただけだっての! ……あっ! そうだ、うっかりしてた。おい、スコル。クロウ・クルワッハって奴が自分をバロール神と関わりが有るみたいな事を言ってたんだが。……教えてくれ。
仲間なら何でも話せって言う気は無いし、好奇心からだけで訊いてるんでもない。ハティが誤魔化すのは何か理由があるんだろう。でも、それを分かった上で俺は知りたい。ハティと俺が運命で決まっていた
「ワルキューレにも
「……そうね。ハティが話したくないならって聞き出そうとはしなかったけど、巻き込む巻き込まないって話じゃないし、知ってビビろうがビビらまいが待っている物は同じよ。この機会に話して貰えないかしら?」
俺に続きミントも意志を示し二人でハティ達姉妹を見詰める。二人はハティは困った様子で、スコルは相変わらず表情から何を考えているか判断出来ない顔で見つめ合い、ハティが折れた。溜め息混じりに肩を竦めるとギルドからの手紙を指し示す。
「ランクアップしろ。ランクアップすれば教えてやるさ。貴様達が相手取ろうとしている者の正体を。待ち受ける存在が一体何なのかをな。……期待しているぞ」
そう言うなりハティはおもむろに立ち上がって階段を上がる。大きなアクビをしているし、研修として受けている基礎知識の座学の勉強を遅くまで頑張っているから二度寝でもするんだろう。その場に残ったスコルだが、そういや何しに来たか話してないな。
「我が来た理由? ハティの顔、暫く見れないから会いに来た。……次の試験、試験官はパンダーラ。多分会わない方が良い」
唯一無二のSSランク探索団パンダーラが次の試験官!? 嘘みたいな噂が流れ出る上に入団したリゼリクが変になっちまったから少し怖いな。だって見た目より年上だからって見た目十歳の奴に手を出したんだぜ、彼奴は。……親友だったら信じてやるべきなんだし信じたい。でも、親友として性癖やらを知っているからこそ信じられないんだよな……。
「……まあ、完全に納得してはないけど、別に良いわ。試験に受かってランクを上げて、知りたい事も知る。やるべき事も道も一つだけなのは楽で良いじゃないの」
「相変わらず男らしいな、ミント。実際男なんじゃ……待て待て待てっ!? こんな至近距離で、しかも室内で魔法を放ったら……」
「生憎とポンコツ魔法使いだから近距離でしか魔法が発動しないのよね。それと安心なさい。アンタにのみ被害を出すから部屋は大丈夫よ」
「全然大丈夫じゃない!」
ミントはニッコリと笑い、俺に向かって魔法を放つ。……うん、ちゃんと後で治療してくれたよ。だけど凄く痛かったし、男扱いは口に出すのはマジで止めよう……。
そしてこの日から俺達は精力的にランクアップを目指して特訓を始めた。早瀬の塔のエリアは奥の方まで進出が許可されたから時間いっぱいまで粘り、戻った後も基礎的な修行や試験対策の勉強(ミントのみ。俺は頭を使うだけ時間の無駄だって言われて筋トレ)を続けていた。
そんなある日の事だ。ロザリーが何時もみたいに突然やって来たのは。
「アッシュ、約束のデート行こう。行きたい
……デートは別に良いんだが、行き場所が
「そんなんじゃ俺以外に嫁の貰い手無くなるぞ?」
「アッシュのお嫁さんになるから構わない。アッシュがお婿さんでも可。ランクアップの試験受けるなら頑張ろう。デートのついでに特訓特訓」
「まあ、それで良いや。普通のデートは今度行こうぜ」
色気の欠片もないデートだが、俺達はそれで良いんだろう。まあ、デートのついでとして頑張るか。
この時、俺達は未だ気が付いていなかった。ランクアップ試験の対策に重大なミスが有る事に……。