伝説の聖剣に選ばれたのは俺じゃなくて幼なじみの美少女剣士だったので、俺は別の方法で英雄になるべく塔を登る   作:ケツアゴ

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最大の危機

「はーい! ってな訳で僕がパンダーラ団長で喋るパンダのアンノウンだよ! 皆、宜しくね~!」

 

 SSランク探索団パンダーラは前から嘘みたいな噂を耳にしたけど、実際に団長を目にしたら本当じゃないかって位に変な奴だった。声からして男なんだろうが他はさっぱり分からず、胸の名札に”喋るパンダ”って書かれているけれど、どう見てもキグルミ……いや、違うのか?

 

「成る程。パンダーラの団長ってパンダだったのか」

 

「だから行動が変なんだな。価値観が違うから……」

 

 周りの声に耳を傾ければアンノウンが本物の喋るパンダだって認識している。そりゃ名札に書かれているんだから実際に……はっ!?

 

「お、おい、ミント。彼奴ってキグルミだよな?」

 

「はぁ? 何処からどう見てもキグルミじゃない。アンタ、馬鹿だ馬鹿だって思ってたけれど、まさか其処まで……」

 

 良かった。俺が変なんじゃないんだな。ミントが言うなら間違い無い。しかし、だったらさっきの俺とか周囲の連中はどうしてアンノウンが本物のパンダだって思ったんだ?

 

 登場の時の大掛かりな仕掛けもそうだけど本当に何者なんだ? ランスロットさんなら何か知ってるかもな。後でちょっと訊いてみるか。

 

 

「……事前報告無かった。監督責任……減給……ローンが……」

 

「こりゃ駄目だ」

 

 暫くは話し掛けても無駄だな。目の前の舞台を顔を引き吊らせながら眺めるランスロットさんは見ていて居たたまれない。可哀想に……。

 

「それじゃあ早速だけれど簡単に試験の説明をするね。先ずは一次試験をして、次の試験で合否を決めるよ。以上説明終了!」

 

「簡単っつーか雑っ!?」

 

 ま、まあ良いだろ。一刻も早く始めて貰いたいもんだ。さっき喧嘩を止めた時のミントじゃねぇが、Gランクまで転落したナインテイルフォックスへの悪評をどうにかするチャンスなんだ。証明してやるよ。俺達の力を。

 

 新生ナインテイルフォックス此処にありって事をな!

 

 

「じゃあ、直ぐ其処のギルド所有の建物に入ろうか。一次試験はペーパーテストだよ!」

 

「……終わった」

 

 おい、ミント。俺を見ながら盛大に溜め息吐くの止めろ。始まる前から諦めるなよ。俺に対して失礼だろ! 

 

 

「……まあ、否定はしないけどよ」

 

「でしょう? まあ、多分探索者としての基本的知識と思うわ。合計点数ならカバー可能だけれど……」

 

 新生ナインテイルフォックス最大のピンチに俺の緊張は最大に達する。こりゃ気合い入れて挑まないとな………。

 

「頑張るわよ、シォンマオ」

 

「えっと、もしかしてワタシは馬鹿じゃない前提で話進めてるアルか?」

 

 横から飛んできた思わぬ追い討ち。シォンマオは凄く不安そうに言って来た。……マジでやべぇかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 そのピラミッドは吊す糸など存在しないにも関わらず宙に浮いていた。真下に存在するは灼熱の砂漠。太陽の眩い光を浴びて黄金色に煌めく砂粒は手にとって観察すれば砂粒ほどに細かい砂金であると分かる。それが地平線の彼方まで、地中深くまで続いているのだから尋常な話では無い。

 

 事実、このピラミッドの最奥、玉座の間にて肌も露わな美童達を侍らせながら傍らに控えさせた一人に黄金の酒杯を傾けさせ喉を潤す美女はただ者ではないのだろう。褐色の滑らかな肌に曲線美を追求したかの様な肉体。艶のある黒髪の間からは可愛らしい黒い猫耳が姿を見せ、身に纏う扇状的な下着同然の服や豪華な装飾品を飾るのも金。彼女が座る椅子も、部屋の内部も目が痛くなる程に光り輝く黄金で彩られていた。

 

「……ブドウを」

 

 彼女の言葉を聞いた一人が別の者が掲げた金色の皿の上のブドウの皮を剥いてから咥え、そっと顔を近付ける。その唇を奪うと同時にブドウを口にした美女は妖しく笑うのであった。その表情を見て美童達は陶酔の溜め息を漏らす。何とも甘美な空気漂うこの空間……だが。

 

「パステ……っ!」

 

「その忌々しい名で呼ぶなと言った筈だニャ」

 

 彼女の名前を呼ぼうとしたのだろう。その途中で慌てて口を押さえた彼の表情は恐怖に染まり、周囲の者は慌てて距離を取る。彼女の口から続いて出ようとしたのは謝罪と懇願の言葉。実際に出たのは吐血。美女が軽く指を振るっただけで幼さの残る矮躯はズタズタに切り裂かれた。

 

「肉片が見苦しい。早く片づけるニャ」

 

「は、はい! 直ぐに掃除いたします、我が主よ!」

 

 一瞬だけ表情を消した美女は直ぐに妖しい笑みに戻り、命じられた美童達は必死に恐怖を隠しながら死骸を片付け始めた。それを横目で一瞬だけ見た彼女が己の指先に目を向ければ爪の先に僅かに返り血が付着している。それを自然な動きで舐めとれば、まるで極上の甘露でも口にしたかの様な陶酔の表情となる。それを目にした少年達も同様だ。死骸を片付ける手を止め、彼女をジッと見詰める。

 

「何をしているニャ。”見苦しいから片付けろ”と命じたのが聞こえなかったか?」

 

 少年の返事は無い。今手にしている死骸と同様に無惨な肉片となって血と臓物を床にぶちまけたからだ。やがて壁や天井の僅かな隙間から無数の黒い虫が這い出してカビが広がるかの様に壁や床を黒一色に染め、死骸を飲み込むと再び隙間に戻って行く。虫が消えた後、其処には何も残っていなかった。

 

「……後少し。後少しで私の野望が叶うニャ」

 

 彼女の側から離れはしないが怯えきった表情を浮かべる少年達を一瞥もせずに彼女は天井だけを見詰める。そっと伸ばした手の指先からは鋭い爪が伸びている。光源が無いにも関わらず明るい部屋の中、爪は鏡の様に光りながら彼女の顔を映し出した。

 

「例えゲームのルールを犯そうが降臨さえしてしまえばこっちの物。他のやかましい連中の文句なんて聞き流せば良い。四神を排し、私を崇めさせ……そして名前を取り戻す。その暁には余計な茶々を入れたあのパンダを八つ裂きにして虫の餌にしてやるニャ!」

 

 見詰めれば吸い込まれそうな琥珀色の瞳が細まり、口の中で八重歯が光る。目的を果たした自分の姿を想像したのか思わず笑みが零れる中、彼女は再び侍らせた美童達に己の世話をさせ、享楽の宴を続ける。やがて夜が更ければ天蓋付きのベッドに誰かを呼んで伽をさせる予定だ。

 

 全ては順調で、己の野望は既に叶ったも当然だと、彼女は信じて疑いもしない。

 

「さて、私に裏をかかれたと悟った連中はどんな顔をするのかニャ? あっはっはっはっはっ!」

 

 

 

 その宴を物陰から眺める小さき物の姿が有ったのだが、誰にも気付かれる事無く姿を消した。

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