伝説の聖剣に選ばれたのは俺じゃなくて幼なじみの美少女剣士だったので、俺は別の方法で英雄になるべく塔を登る   作:ケツアゴ

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リンボーをしているのは誰だ? パンダ

 一次試験はまさかの筆記試験だと発表されて俺は戸惑うが、意外な事に俺以外の連中にはそんな様子を見せているのは殆ど居なかった。……あれ? 筆記が不安なのって少数派?

 

「見なさい。これが普通なの。幾ら探索者の基本が戦闘能力の高さだって言っても知識が必要なのは変わらないわ。馬鹿なら馬鹿なりにもっと頑張りなさいよ」

 

「ぐっ! わ、分かったよ……」

 

 ほれ見た事かとミントが説教して来るが何も言い返せない。何だかんだ言って馬鹿な事とミントに甘えて疎かにしている自覚は有るからな。今後はもうちっと頑張るか……。

 

「む、むう! こうなったら馬鹿を補える位に力と技を磨くアル!」

 

「いや、馬鹿を少しはどうにかする努力をしなさいって。ほら、行くわよ。何か番号を引かされているみたいだし……」

 

 俺と違ってシォンマオは開き直ってるのか、俺と同じ馬鹿なのを直す気は全く無いらしい。ミントも今回限りの仲間とはいえ少し心配そうにする中、他の連中はあのウサギのキグルミが差し出した箱から数字が書かれたボールを取り出していた。

 

 ちゃんと話を聞いていたミントの説明によればカンニング防止と運試しを兼ねて全員違う問題を受けるらしい。つまりは結構簡単な問題の場合もあれば難しい場合も有るって事だ。……引くのが怖いな。

 

 ん? 何か数字を引いた連中の様子が変だな……。

 

「二十四番……って、臭ぁっ!? 触った手に臭いが着いちまったよっ!」

 

「五十五番。……このボール、ネチョネチョしているな。うぇ。糸を引いてる……」

 

「七番。おや、僕のボールには何も……インクが安物なのか手に着いてる」

 

 いや、おい。アレって何がどうなってるんだ? 運試しか? 運試しだよな? じゃなかったら試験開始前から意味不明な悪戯をされてるって事になるし……。

 

「……引くのが怖いな」

 

 だが、試験を受ける為には引かない訳にはいかない。こんな事でビビっていられるか!

 

「次は貴方ですね」

 

「簡単なの来い!」

 

 箱の中に手を突っ込み、一番先に触れたのを取り出す。臭くもなけりゃネチョネチョもしてなくてインクがハゲて肌に付着もしていない。はっ! これは大当たりだろ。

 

「666だ! ……あれ? そんなに居ないよな? それに数字の表記が……」

 

「666ですか……」

 

 あれ? ウサギさんの様子が変だ。まあ、キグルミの時点で……。

 

「私が何か?」

 

「……いや?」

 

「まあ詳しくは聞かないでおきましょう。貴方も余計な考えはお止めなさい。それにしても……」

 

 あっぶねぇ!? 今、顔に出ていたのか知らないが凄い威圧感があったぞ。……にしても何か様子が変だって言うか、同情されてる? ”それにしても”の続きを知りたいような知りたくないような……。

 

「十二番……ひゃっ!? 何で番号のボールが破裂するのよ! ちょっと責任者呼んで来なさいよ、責任者!」

 

「ワタシなんて嫌な毛でモッサモサになってるヨ。……八十番ネ」

 

 数字を確認した瞬間に高い音を立てて割れたミントのボールや手触りの悪い毛が全体に生えているシォンマオのボールを見ると余計に不安になる。他の連中も全員別々の悪戯が仕掛けられていたし、それだけなら当たりかもってb思うんだが、あの反応を見たらなぁ。

 

 

「俺、余程ハズレを引いたんじゃ……」

 

「さて、皆様に行き渡りましたので試験の詳しい説明を。これから番号別に個室で筆記試験を受けて頂き、平均点が五十点以上の探索団が最終試験に挑む権利を与えられます。

 

「ミント、ワタシが頑張って五十点以上目指すから多少間違っても平気ネ」

 

「そうね。目指すは私達で合計百五十点よ。アッシュは。部分点とか有るかも知れないから思い付いた事を兎に角書きなさい。奇跡が起きる可能性だってあるわ」

 

「任せな! 手当たり次第に書いて……えっと、何故か馬鹿にされてる気がするんだが。てか、何で百五十点を目指すんだ?」

 

「アンタがその答えを即座に出せない奴だからよ」

 

「変に考えるだけ無駄ネ。ワタシも馬鹿だけれど、アッシュはそれ以上なんだから無駄に考えるのは止すヨロシ」

 

 なーんか納得行かないが、反論の内容が思い浮かばない。そろそろ移動の時間だし、帰ったらルノア姉ちゃんに教えて貰うか。

 

 そんな風に気持ちを切り替え、番号が書かれた扉を探す。案の定殆どの数字を飛ばして見付かる666の扉。ドアノブを手に取って開こうとした時、突然地面が揺れた。

 

「なんだ、地震か」

 

 地震だったら数秒で止まるし気にする事でもないと扉を開く。アンノウンが横に伸びた棒の下を体を反らしながら潜り抜けていた。

 

「リンボーダーンス! リンボーダーンス! パンダのパンダのリンボーダーンス! ヘイヘイヘーイ!」

 

 陽気なリズムを口ずさみ、少しずつ前進するアンノウン。口ずさむリズムに合わせる様にしてスコルがドラムを素手で叩いているがペチペチと鳴っているだけだ。いや、ハティの姉だってんなら普通に鳴らせるんじゃ? そんな風に思った俺が部屋の隅に目を向ければ無残に叩き壊された無数のドラム。

 

「力が強すぎて壊しちまったのか?」

 

「そう。この世界のドラム、少し壊れやすい。我、実家ではもっと頑丈なの持ってた」

 

「そうかよ……。お前達の実家って?」

 

「秘密。合格したら教える。我、凄く寛大。偉い? えっへん」

 

「普通に見れば微笑ましいのに見事な棒読みだな」

 

 そう、スコルは一切の感情を感じさせない声色と何考えているか分からない無表情で無い胸を張ったんだ。これで小さい子が背伸びしている感じなら可愛げが有ったんだが。

 

「所で入った時点でテストの時間は始まってるけれど良いのかい?」

 

 俺がスコルと話をしている間に棒を潜ったらしいアンノウンが俺の肩を叩き、机の上の砂時計を示す。砂はゆっくりだけれど確実に流れ落ちていた。

 

「げげっ!? 聞いてないぞ、そんな事っ!」

 

「だって言ってないも~ん!」

 

 クルクルと回転しながら陽気な声でしれっと告げるアンノウンの姿で同情された理由を把握する。此奴、性格悪いぞ!

 

「だって僕はパンダだも~ん。人間とは価値観が違うのさ。ほら、そんな事よりも急いだらどうだい? 時間が過ぎても全問解けなかったらこの部屋に……スコルは先に出て行ったら? 僕ならギリギリで退避出来るしさ」

 

「我、アンノウンが心配。アッシュが全問解答出来なかったらあんな事になるから」

 

「どんな事になるんだっ!? あ~も~! やってやるよ! ……ん? んんっ!? これって……マルバツ問題っ!?」

 

 慌てて答案用紙に目を通せば全部で二十問。その問題文の横にはマルとバツが。正解だと思う方に印を付けろって……。

 

「ま、まあ良いさ。……最悪直感で解答すれば良いし」

 

 これで0点だけは免れるかと一問目に目を通し……固まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『第一問 アンパンと食パンが徒競走をした。アンパンは食パンの食事に下剤を仕込み、食パンはアンパンのレーンに落とし穴を仕掛けた。では、審判のカレーパンは焼きカレーパン?』

 

「知るかっ!」

 

 おいおいおいおいっ! 何だよこの問題っ! 訳分からないにも程が有るだろ!

 

「試験中に問題に関する質問は受け付けないよ。それが君がやってる奴みたいに全く意味不明な問題だとしてもね!」

 

「意味不明な問題出してる自覚が有るのかよ!」

 

「じゃあ……”3 以上の自然数 n について、x^n + y^n = z^n となる自然数の組 (x, y, z) は存在しない”、これを証明しろ、とかの方が良かった? まあ、君の所には友達の家族がお世話になってるし、特別に……」

 

「今のままでお願いしますっ!」

 

 

 こうして俺の孤独な戦いが幕を開けた。今まで学んだ事が一切役に立たないって言うか、こんな問題に役立つ事って絶対に存在しないって問題を続け、遂に最終問題にまで辿り着く。砂時計を見れば後少し。これは問題をパパッと読んで答えるしかないか。

 

 

 ……読まずに答えるのはプライドに関わるし、後でマトモな問題だったと気が付いたらショックだもん。そんな風に考えて十九問まで裏切られて来たんだが。

 

「えっと、何々……」

 

 

 

『第二十問 アポロちゃんことアポロンは太陽を司る本物の神である』

 

 ……バツだな。自称神だろ、擬神なんてよ。最後の最後で胸くそ悪いぜ……。

 

 

 

 

 

 

「……いや、最初から最後まで割と最悪だったか」

 

 




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