伝説の聖剣に選ばれたのは俺じゃなくて幼なじみの美少女剣士だったので、俺は別の方法で英雄になるべく塔を登る   作:ケツアゴ

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筆記試験のその後で

 つ、疲れた。頭を使うのは前から苦手だったけど、今回のは頭を使うとかそんなんじゃねぇ。もっと根本的な物から色々と間違ってるだろ……。

 

 精神的な疲れが肉体にまで及んだからか、俺はフラフラと歩きながら廊下を進む。俺がテストを受けた部屋の番号は666。他の部屋までの間に明らかに絵の扉が続き、離れた所から聞こえる他の受験者の声が余計に疲労を際立てた。

 

「これ、直ぐに実技試験があったらヤバいぞ……」

 

 弱音を吐いても仕方が無く、変なのを引いた運の悪さも実力の内だと言われればそれまでなんだが他の連中との違いが凄いなら理不尽だぜ。

 

 そんな風に考えれば曲がり角の向こうから聞こえて来たのは仲間の声だ。

 

「へぇ。シォンマオは各地域の特徴だったのね。じゃあ旅をしているのが役に立ったんじゃないの?」

 

「それが郷土料理に関して知っている事を記載しろって内容で困ったヨ。郷土料理は確かに旅の醍醐味ネ。でも、食に関するチャレンジ精神って失敗を重ねたら削れて行くアル」

 

「まあ、独自の料理が必ず美味しいって訳でも無いしね。私はFランクとGランクの(バベル)についてそれぞれ十個ずつ名前と内部の特徴と出現モンスターに関する事だったわ。……自己採点じゃ八十点って所ね」

 

 いや、ミントの奴も厄介なのを引いたんだな……。俺だけが理不尽なのを引いてしまったのではなくて良かったが、俺の問題が変だったのは間違いないらしい。

 

 そんな事よりも今は二人に会って落ち着きたい気分だ……。

 

「俺も大変だったぜ。一見すればマルバツ問題なんて楽で直感で答えれば言い様に思えたが、問題文と解答の内容が全然関係ないのばかりでよ」

 

「あら、アッシュ……って、馬鹿っ!」

 

「へっ?」

 

 二人に会える安心感からか安全確認を怠った俺は曲がり角の先で台に乗って掃除をしていた奴にぶつかってしまう。

 

 幸いな事に台はそんなに高くなかったし、相手が倒れて来たのは俺の方だったからとっさに手で受け止められた事だ。これで相手に怪我させてしまったとか最悪だからな。

 

「ひゃんっ!?」

 

 不幸だったのは相手の身長と台の高さの関係で胸の高さに俺の顔があって、手が服とスカートの中に入り込んで胸と尻を掴んでしまった事だ。聞こえたのは聞き覚えのある若い女の声。どうやら俺への印象は最悪で……ん? この声って……。

 

 顔を胸に埋めたまま見上げれば羞恥で顔を真っ赤に染めて涙目になったマリアと視線が重なり、同時に向こうは俺の頭を抱き締めて密着して来た。

 

 より強く感じる心地よい感触と甘い香り……そして息苦しさ! まさか此奴、俺を窒息死させる気かっ!? 冗談じゃないと胸を掴んで押し退けようとするも俺の頭を拘束する力は強まるばかりだ。てか、疲れのせいで力が……。

 

「アッシュ様ったら大胆ですわね。そんなに胸を乱暴に扱われてしまっては私……。いえ、構いません。未来の夫の趣味ならば、人前でも乱暴な方法でも……」

 

 何やら甘ったるい声で言っている気がするんだが窒息寸前の俺の頭の中には入って来ない。おいおい、俺ってこんな所で終わって……。

 

「あーはいはい。窒息してるから。アッシュが息出来ていないんだから落ち着いて一旦離れなさい」

 

 意識が完全に途切れる瞬間、俺の頭は解放される。慌てて吸い込めば肺に入って来る新鮮な空気。今、俺は自分が生きているって実感……痛っ!? 今、何で殴られたっ!?

 

「毎度毎度気をぬくなって言っているのに同じ事繰り返して、挙げ句にとち狂って面倒な状態になったのまで出て来ちゃったじゃないの!」

 

「えっと、ミントさん? アッシュ様にあまり酷い事は……」

 

「アンタも償いで働いているなら職務時間に盛ってるんじゃないわよ! 元貴族以前に乙女でしょ!」

 

「は、はい! 直ぐに仕事に戻らせていただきますわ!」

 

 ミントに威圧されたのかマリアは涙目で逃げるみたいにして去って行く。

 

 

「所で未来の夫って言われた気が……」

 

「二人とヤる寸前まで行っておいて鈍感気取るな! 端で見ていて鬱陶しい!」

 

「す、すいません!」

 

 朧気な意識の状態で聞いていたから何だけれど、多分言い訳したら余計に殴られる。……って、鈍感? 俺、彼奴の股ぐらに顔突っ込んだり胸揉んだりパンツ引き剥がしたり、嫌われる事しかしていないよな? 助けた程度じゃ足りないんじゃ。

 

 じゃないと彼奴、痴女になるじゃんか……。いや、既にそんな事を言ったな。人前とか乱暴にとか。

 

 

「世の中には色々な趣味の人がいるのよ。馬鹿で、有り得ない位に馬鹿で、救えないレベルの馬鹿でも何かが狂えば惚れるのよ!」

 

 ば、馬鹿って三回も言われた……はっ!?

 

 

「どうかした?」

 

「いや、二人分の殺気を感じて……」

 

 気のせいだよな? 誰か自意識過剰なだけと言ってくれよ。四千ミョル払うからさぁ。

 

 父さん。俺、アンタから受け継いだ秘宝の呪いで変な女を続けて引き寄せてるんだが、どうにかならない?

 

「諦めてハーレムでも、ふげぇっ!? か、母さん勘弁!」

 

 幻聴が聞こえたし、俺って本当に疲れてるんだな。……次の試験まで一眠りしたい気分だよ……。

 

 

 

「それでは発表します。個人成績と合格した探索団は此方になります」

 

 あの兎……グレー兎さんが壁に張られた真っ白な紙を示すと黒く滲んで文字が浮かび上がる。

 

「おっ! 平均点三位!」

 

「アッシュとの平均なのに……奇跡だわ。ロキ神のご加護かしら?」

 

 ナインテイルフォックの名前は直ぐに合格リストから発見出来た。これでひとまず安心だ。

 

「名前は五十音順か。ミントは……九十五点っ!? 個人成績トップじゃねぇか!」

 

「此処まで来ると逆に満点じゃないのが悔しいわね。何が違ったのかしら?」

 

 けっ! 頭の良い奴は違うな。何時も頼りにしてるぜ、ありがとうよ!

 

「シォンマオは……あれ? おい、どうして崩れ落ちて……俺の成績?」

 

 なるべく見たくないから仲間のを先に調べたらシォンマオは四十五点で膝を折って手を床に着けてうなだれている。何があったのかと思ったら指差す先には俺の名前で得点は七十点。

 

「まあ、適当にやってもこんなもんか。寧ろ適当じゃなく真面目にやる方がどうにか……ん? おい、まさか落ち込んでるのって……」

 

「違うヨ?」

 

「俺は最後まで言っていないし、露骨に目を逸らして棒読みで言われてもな。せめて目を遭わせろ」

 

「理由は黙秘でお願いするけど拒否するネ。そんな事よりもご飯みたいだから急ぐヨロシ。ワタシ空腹ネ」

 

「ちょっと待てや、コラ! 逃げるな!」

 

 捕まえようと伸ばす腕。飛び退いて避けるシォンマオ。この時、少し前に起きた事と同じ出来事が発生した。

 

 

「……あっ」

 

 俺の指先にシォンマオのパンツが引っ掛かって太ももまでズレる。スリット周辺の布が翻り……俺は横顔に強烈なハイキックを叩き込まれて気絶した。

 

 

 

 本当にこの呪いって厄介だ。ラッキースケベなんてもう沢山だよ!!

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