Witch Defense Forces(WDF)(完結)   作:ハヤモ

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作戦内容:
ウィッチの治療及び事情聴取。
今後の行動目標の確認。
備考:
ウィッチは10代。 殆どが女の子だが、戦闘に参加している。
装備:
リバーサー
説明:
ナノマシンを噴霧する特殊機器。 見た目はグリースガンを派手にした様な形。 上部や下部にナノマシンを収めているのか、缶かボトルの様な部分が見て取れる。
ナノマシンは付着すると硬質化。 付着物の周囲に不可視の装甲を形成。 破損したアーマーを一時的に修復するために用いられ、乗り物の耐久度や兵士の体力を回復することが可能。
ナノマシンに長時間接することは有害であるため、使用者自身には効果がないよう処理されている。
ナノマシンは生成が難しく、装備量が限られる。
なお、このリバーサーはプロトタイプを経て、実用レベルまで上がったもの。 更なる改良型も存在する。
欧州に配備されていたのだろうが、残量がある状態で手に入れたのを考えると……。
どっちにしろEDFの技術はチート。


3.そして、なんとなく情勢を知ったのさ。

 

 

「ここまで来れば、大丈夫だよ」

 

 

拠点に少女を拉致……じゃなかった、救助した俺は、優しい声色で語り掛ける。

子どもの扱い方なんて知らない。

でも、やらなきゃな事はしてみるつもりだ。

 

 

「今から簡単な手当てをする」

 

「……はい」

 

 

少女は困惑顔をしながらも、受け入れてくれた様だ。

少女をボロのベッドに寝かせて、医療品を取り出す。

早速治療モドキを始めよう。

衛生兵じゃないが、基地や仲間から習った簡単治療なら出来るからな。

それに、幸いにもアレがある。 女の子が好みそうなアレもあるワケだし。

 

 

「患部を見せて」

 

 

先ず寝床に寝かせ、どこぞの軍服みたいのを脱がそうとして、

 

 

「……あ」

 

 

手で服を抑えられた。

頰を染めている。

え、ナニ。 俺が悪いの?

謎の犯罪臭。

 

 

「イヤ……だよね?」

 

「…………」

 

無言。

俯く視線。

分かっているけど、やりたくない。

知らん男に肌を見せたくないという事を暗に語る。

 

めんどくせーマジで!

 

思春期の子ども。 ザ・女の子。

軍人ぽい服をしているといっても、心はドライに出来ないか。

雰囲気が新兵ぽいしな。

 

いや、逆に考えるんだ。 都合が良いと。

 

訓練不足な分、懐柔出来る余地がある。

アレコレと世話すれば、心を開いてくれるかも知れない。

そうしたら情報を引き出そう。

何でも良い。

この世界そのものも知らんのだ。

さっきのα型に酷似した化け物の話くらいは聞けるだろう。

 

 

「分かった。 じゃあ、服は着たままで。 消毒液と包帯渡したら、俺は背中を向く。 そうしたら出来るかい?」

 

「はい。 その……ごめんなさい」

 

「良いんだ。 女の子だもんな」

 

 

ぽんと頭を撫でて、貴重な医療品を渡し背後を向く。

そうすると、直ぐに声を掛けられた。

 

 

「あの」

 

「どうした?」

 

「これ、どうやって使うのでしょうか?」

 

 

は?

俺、間違えた物を渡したか?

心配になって再度少女を見やる。

小さく可愛い手には渡した消毒薬と包帯。

消毒薬はプッシュ式。

薬局でも見かけるだろうものだ。

 

 

「いや、普通に使えば良いよ」

 

「包帯は分かるのですが、消毒薬の使い方が」

 

そう言うと、消毒薬のプラ容器をひっくり返す。

フタは空いてるのに、出ないのは変だという主張らしい。

マジかよ。 いや、仕方ないのか?

ひょっとしたら、この世界には このデザインが馴染みないのかも知れない。

 

 

「ココを押せば、消毒液が出るから……そう。 怪我してる所に塗って、包帯巻いて」

 

「す、すいません」

 

 

教えて、また背後を向く。

直ぐに手当てを始めたのか「うっ」とか「ひゃっ」とか聞こえてきた。

痛いのだろう。

結構、擦りむいていたからな。

逆にあの程度で済んでるのが不思議だ。

あんなに派手に堕ちただろうに。

俺らEDF隊員なら、分かるのだが。

 

……何を考えてるんだ。

 

俺は仲間を見捨てた。

逃げた。

だから、もう俺は。

 

 

「兵士じゃないよな」

 

「えっ?」

 

 

女の子が疑問の声を上げた。

しまった。 声に出したか。

 

 

「ああ、いや…………君は兵士かい?」

 

「はい。 カールスラント空軍の……」

 

「カールスラント?」

 

 

は?

本日何度目かの「は?」だよコレ。

 

カールスラントって、どこだよ。

欧州にそんな国があったか?

地理に詳しくないから分からないぞ。

 

 

「待って。 今、地図を持ってくるから」

 

 

そう言って、どっかの住居で拾った世界地図を引っ張り出す。

その時には治療は済んでいて、軍服の隙間から包帯が巻いてあるのが分かる。

うん。 良かった。

うっかり裸を見たら互いに最悪だからね。

 

 

「カールスラントって、この地図のどこ?」

 

「え、えと……この地図、私の知っている地図と少し違いますね」

 

 

しまった。

世界が違うのだ。

地形も異なる可能性を考慮していなかった。

 

 

「あ、でも。 この辺り……です」

 

 

そう言って、人差し指で教えてくれる。

そこは、ドイツ……かな。

やはりココは一応欧州と言っても大丈夫か。

まるで世界や時代が違うようだが。

 

 

「そうか。 ありがとう」

 

「はい。 貴方も、兵士なのですか?」

 

 

まあ、聞かれるよな。

一方的なのはフェアじゃない。

それに信用も獲得しなければ。

でも兵士、ねぇ。

逃げた身としては……それを言うのは気が引ける。

 

どうする?

 

話を円滑にする為に言うべきか。

俺の格好、ここの武器や装備を見られてる。

下手に否定して「じゃあ、これらの装備は?」と聞かれたら言葉に詰まるぞ。

 

 

「そうだよ」

 

 

結局、そう答えた。

 

 

「EDF……地球防衛機構陸軍 日本支部 欧州救援隊の只野 仁 二等兵」

 

「EDF?」

 

 

これも知らないか。

元の世界では世界規模の軍隊だったから、知らない人は少なかったと思っているが。

コッチの世界にEDFは存在しないようだ。

 

 

「地球を守る軍隊さ」

 

「連合軍?」

 

「そんなところ。 信じるのは難しいよね、名前だけで怪しいでしょ。 ははは……はぁ」

 

 

結局、言っても駄目だった系じゃね?

チープな名前だもんな、地球防衛軍とか。

でも実際に存在しているんだもん。

EDFはいるんだもん。

 

 

「いえ、信じます。 貴方の持つ銃や後ろにある武器なんて、今まで聞いたことも見たこともありませんから」

 

 

やべぇ良い子じゃん。

将来、悪い大人に騙されないと良いが。

 

 

「そうか……ありがとう」

 

「はい。 その、他の仲間は?」

 

 

言葉に詰まった。

痛いところ突いてくるねチクキョウ!

見捨てたとは言えない。

生き残りがいたとしても、どこにいるのか分からない。

欧州現地空軍は壊滅していたと言うし。

生存者はゼロではないらしいが、陸戦隊等の部隊がいるのかどうか……。

適当に、言っておこう。 軽蔑されたくない。

 

 

「はぐれちゃってさ。 今はひとりぼっち」

 

 

なんなら世界とはぐれたからね俺。

どういう理屈なのか。

エイリアンの新兵器だったのだろうか?

 

 

「私と一緒ですね」

 

 

君も逃げたのかい?

そんな事を言いそうになって、直ぐ口を閉ざす。

そんな侮辱は出来ない。 する価値は俺に無い。

 

 

「タダノさん?」

 

「あ、ああ。 ごめん、大丈夫」

 

 

ネガティブになっている場合じゃない。

質問を続けよう。

この世界の事を知らなくては。

 

 

「その足の筒は、なんだ?」

 

 

第二次世界大戦時代に使用されていた、戦闘機を思わすデザインの筒を指差して聞く。

こんな装備は、恐らくEDFには無い。

どのようにして飛んでいるのだ。

ウィングダイバー装備も大概だが。

 

 

「これはストライカーユニットです。 話くらいは聞いてませんか?」

 

 

また妙な単語が……。

 

 

「いんや全然」

 

「これに魔力を込めて、空を飛ぶんです。 それで私たちウィッチは戦って」

 

「は? 魔力? ウィッチ?」

 

 

魔女じゃんそれ。

箒が戦闘機風になったの?

そういう時代なの?

お兄さん、ついていけない。

 

 

「ウィッチ、ご存知でない?」

 

「分からん。 全然分からん!」

 

 

頭が痛い。

なにか。 現代にファンタジー要素をスパイスしている世界に来たのか俺は。

 

 

「じゃ、じゃあ……さっきのα型は?」

 

「あるふぁー?」

 

「ごめん。 さっきのバケモノの事」

 

 

あのバケモノは、なんだ。

この世界にもエイリアンがいるのか。

それで人類は侵略されている?

 

 

「あれはネウロイです」

 

 

もう頭が壊れちゃう。

 

 

「人類の敵です。 突然欧州に現れて、侵略を始めました。 多くの国が占領され、住んでいる人々が疎開を余儀なくされています」

 

「エイリアンが侵略してきたと思おう、うん。 それが第二次世界大戦時代に起きたって事にしよ」

 

「え、えーと?」

 

「コッチの話だよ。 気にしないで」

 

 

これが夢だったら、どれだけ良かったでしょう。

絶望に絶望を重ねられている気分だよ。

 

いや……元の世界よりマシだと願いたい。

 

ココには溜め込んだ物資がある。

それに弱い部類のライフルに当たるPA-11でも、奴等は怯んだ。

なんなら、表面装甲を削っていた。

ならば他の武器を駆使すれば、個人でネウロイに対処する事は十分可能。

流石に群れや新型に、どこまで有効かは分からないが、ココでひっそり芋る分には何とかなる……か?

 

 

「しかし、君は若過ぎないか。 まだ16かそこらにしか見えないぞ」

 

 

この世界の兵士の年齢って、こんなにも若いのか?

 

 

「ウィッチですから」

 

 

さも当然のようにマジックワードを言い放ちやがった。

 

 

「ウィッチは、魔法を使える年齢が10代くらいまでなんです。 20歳になる頃には、もう魔法は使えないとされています。 皆が皆ではないらしいのですが」

 

 

そんな情報が何だというのだ。

もう俺は俺。 魔女は魔女だ。

無理に理解しようとすると、頭のイカれ具合が加速しそうだよ。

 

 

「あ、あー。 君の部隊がどこにいるかは分からないけど。 その飛行機モドキで帰れそう?」

 

 

助けておいてなんだが、手元に置いておく余裕は無い。

主に精神面で。

彼女も兵士だというなら、部隊に戻るべきだ。

俺が言えた話じゃないがな。

この歳で逃走兵な扱いをされるのも可哀想だ。

国や家族に攻撃される心配もあるし……。

俺の世界には、そんなヤツは殆ど残っていないが。

 

 

「すいません。 ユニットは、故障してしまって。 魔力を込めても動かないんです」

 

 

ですよねー。

黒煙上げてたもんね。 堕ちる時。

今は煙を上げてないが、表面に穴が空いていたりと素人目に見ても明らかに壊れている。

 

 

「俺も隊長みたいに、元整備士だったら少しは直せたかも知れないが……悪い」

 

「いえいえ。 タダノさんは何も悪くないです。 寧ろ助けていただいて、ありがとうございます」

 

「でも……アレを使えば、直るか?」

 

「アレ?」

 

 

今度は、リバーサーを引っ張り出す。

グリースガンみたいな見た目で、清潔感を漂わす白いボディ。

 

 

「油指し?」

 

「まあ、見てて」

 

 

彼女のユニットとやらに構えると、トリガーを引く。

すると煙のようなものが出て、ユニットを包み込む。

次に、軽く穴を指でつつく。

 

 

「うん。 塞がった」

 

 

透明で見難いが、穴をナノマシンが塞いでくれた。

 

 

「す、すごい。 タダノさん、ひょっとしてウィザード? 固有魔法?」

 

 

また頭が痛くなる言葉が。

 

 

「違うよ、こういう道具なんだ。 破損した部分を一時的に直す為のモノでね……といっても、透明の装甲を表面に作るだけだから機械的に直るワケじゃない」

 

 

簡単に説明する。

乗り物やアーマーの修復に使われるが、見えない装甲を表面に作るだけであり、身体が治るとか回路が直るとかの効果は無い。

 

 

「動かせる?」

 

「…………ダメみたいですね」

 

 

やっぱダメかぁ。

穴を塞ぐだけで直るワケないか。

 

 

「ごめん。 チカラになれなかった」

 

「そんな、謝らないで下さい」

 

 

そう言いつつ、彼女は筒を脱いでいく。

大変そうだから抑えてやったり、軽く手伝いをする。

 

 

「ありがとうございます。 私は、これから後方の防衛線に後退しようと思います」

 

「それなんだが、今はよした方が良いと思う」

 

「えっ?」

 

 

サングラス・ディスプレイを軽くコンコンしつつ、俺は言う。

今、ディスプレイに映るセンサーを真に受けるなら……外は、あのバケモノだらけだから。

 

 

「もうこの街は、バケモノの占領下だ」

 

「そんな……! まだ、味方もいました!」

 

「残念だけど撤退したか、居ても俺らと同じように篭ってるだろうね」

 

 

街を渡すまい、侵攻させまいと奮闘していた兵士には悪いが、そう言い放つ。

こんな時、どうするかって?

昔みたいな事をしようと思いますよ、ハイ。

 

 

「今は建物に隠れてるんだ。 そのうちチャンスが来る」

 

「で、でも! いつまでここに?」

 

 

昔だったら、隊長が生存者を集めてクソ共を一掃したんだがな。

残念ながら、今EDF隊員は俺だけだろう。

でも、きっと何とかなる。 生きていれば。

 

 

「生きていれば、何とかなる」

 

 

だから、今は そう言うしかない。

でも敵勢力下のど真ん中に取り残されているワケだ。

 

守らなくては。

 

せめて この子だけでも。

 

俺は久し振りに、熱く滾る血を感じている。

守るべき者がいる。

その事実が、俺に生きる気力を与えてくれた。

 




更新未定。

モブ兵士達は、今後どうなるのか。
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