Witch Defense Forces(WDF)(完結)   作:ハヤモ

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作戦内容:
センサーに味方の反応。 1箇所に多数。
警戒しつつ、確認に向かう。
備考:
センサーは不調。 敵味方の識別に誤認が生じている可能性。
依然、周囲は敵の勢力下にある。 直ちに確認、臨機応変に対応する。
装備:
ミニオンバスター
説明:
対コンバットフレーム用に開発された特殊ライフル。 徹甲榴弾をフルオートで発射出来る。
徹甲榴弾は爆薬と遅延信管を内蔵。 標的の装甲を貫通し、内部で炸裂。
弾頭が大きいため、弾速は遅く、射程距離も短いが、破壊力は凄まじい。


6.絶望の深淵で。

昨日の夜は驚いた。

お子さま扱いしていたのが、不服だったのだろう。

淫らなポーズを取って誘惑してきた。

一体どこで覚えたのだよ……。

教育上宜しくないと思い、デコピンしておいたが。

 

戦場は過酷だ。

精神的に参ってるのもあるだろう。

狂わずとも、本能が温もりを求めるのは理解出来る。

俺も、そうだ。

だが、やはり規律や風紀はある程度守らなくては。

相手は子どもだし。

世紀末ヒャッハー連中みたいには、なりたくないんでな。

 

 

「また、外に出るの?」

 

 

おでこを未だに さすりながら、少女が聞いてきた。

潤んだ目で見上げてくる。

行って欲しくないのか。

そう思うと可愛くて、つい頭を撫でた。

 

 

「ごめんな。 でも、近くに生存者がいるかも知れないのが分かったんだ」

 

「えっ! 本当ですか!?」

 

「ああ。 ちょっと調べに行ってくるよ」

 

「なら私も!」

 

「危ないから、ついて来ちゃダメ」

 

「私だって軍人ですっ。 戦闘訓練は受けています!」

 

「怪我が完治してないでしょ。 それに君の武器が無いじゃないか」

 

 

それに空軍なんだっけ、君。

陸戦隊じゃなければ、陸での戦闘は不慣れじゃなかろうか。

どんな訓練を受けているかは分からんが。

空にしても新兵ぽいから、どっちにしても不慣れだろう。

 

 

「ここに、いっぱいあるじゃないですか。 少し教えてくれれば」

 

 

どうしても、役に立ちたいのか。

食い下がってくる。

でもな、戦場に投げ出すなんて俺には出来ない。

せっかく助けたのに、君に何かあったらと思うと困るんだ。

 

 

「ダメダメ。 EDFの銃火器は並大抵じゃ扱えないよ」

 

 

少し嘘をついた。

PA-11のように、操作が簡単なら引き金を引けば良いだけだ。

低反動に確実な動作性。

命中率には目を瞑ろう。

民間警備員でも扱えるんじゃないか。

でも、やっぱり彼女には戦場に出て欲しくない。

 

 

「そんな」

 

「こうしよう。 君はここの拠点で飯の用意でもしていてくれ」

 

「用意といっても、ヒモ引くだけとか缶詰を開けるだけです」

 

「それでもだよ。 待ってくれている人がいるってだけでも、かなり助かるんだ」

 

 

しゅん、としながらも渋々了承してくれた。

ごめんな。

俺にとっては、君は民間人なんだ。

 

 

「じゃ、行ってくる。 留守は宜しくな」

 

 

もう一度、ぽんと頭を撫でて出発する。

何が起きるか分からない。

装甲持ちに囲まれても、抵抗出来るように今回はミニオンバスターを装備した。

時間稼ぎや突破口を開く糸口にはなるさ。

 

大丈夫。

大丈夫だ。

今日も、俺は生き残る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

建物の影や内部を通り、接敵を避けつつ目的地へ到着。

そこは大きな役所のような建物だった。

周囲と比べて破損が激しい。

原型はあるが、廃墟のソレだ。

だが、こうもココだけ崩れているのは不自然である。

やはり、生存者がいるのだろうか。

もしくは、敵か。

もし生存者を見つけても、助けられるか分からない。

それでも、かつて仲間を見捨てた罪の意識から、只野二等兵は意を決して内部に入る。

 

 

(な、なんだよ……これ!?)

 

 

中の光景を見た只野二等兵は、絶句した。

 

そこには、"まだ"人間と呼べる状態の兵士達が多く寝かされていた。

いや。 "転がされていた"というべきか。

ぎっしりと転がる兵士達からは、まるでゾンビのような唸りを上げ、木霊し不気味だ。

替えの包帯も消毒液も止血剤も無い為、頭や腕に巻かれた包帯は出血を抑えきれず、血が滴り落ちている。

中には肉がゴッソリと無い、何故生きてるのか不思議な兵士までいた。

床は泥と血が混ざり、エゲツないドス黒い色が広がる。

勿論シャワーなんて、あるわけない。

建物内は"まだ"人間である塊が放つ悪臭と湿気に満ちており、不衛生極まりない。

死者は埋葬もされず端っこに集め、無造作に積み上げられていた。

軍人と共に立て籠もっていたのか。

民間人と思われる人達もいたが、傷ついた兵士の手当てに、唾液程度しかない貴重な飲み水を使用している。

 

戦争の悲惨さ、絶望を体現した地獄絵図のひとコマ。

只野二等兵も経験のある、最悪の光景だ。

 

 

(なんて事だ! これじゃ助けられないかも知れない!)

 

 

そんな光景を次には呆然と見てしまった只野二等兵だが、生存者らは侵入者である彼に気付くのが遅れる。

それ程までに、皆の目は絶望に沈んでいるのだ。

 

 

「……ッ! あ、あ…………う……あぁ…………」

 

 

ようやく彼らが外からやってきた只野二等兵を見た時、暗い建物内に籠っていた所為もあって眩しかった。

だが、外の光が後光のように只野二等兵の背後より差し込む光景は、誰もが神様かと思わずにはいられない。

兵士と共に転がされていた1人の少女兵……ウィッチは、意識が朦朧とする中、その光の方へ向かって這った。

 

彼女は、既にあの世にいるのだと思ったのだろう。

 

若しくは敵だと思って、最後の気力で立ち向かったのかは分からない。

 

だが、気づけば彼女は這っておらず、誰かに支えられている感触を感じた。

只野二等兵だ。

こんな、まだ小さな少女が、命の灯火が消える瞬間まで戦い続けている事に、深い哀しみと怒りが込み上げる。

同時に絶望を和らげようと掬い上げたのだ。

息も絶え絶えな状態である少女に、只野二等兵は言葉をかけた。

下手な慰めの言葉だ。

だが蹴り飛ばすなんて事は、彼には出来なかった。

 

 

「……よく頑張った。 辛かったな、もう大丈夫だよ」

 

 

彼の声を聴いた少女は、薄れゆく意識を再び興すと、途切れ途切れではあるものの、彼に向かって口を開いた。

 

 

「救………援……ッ。 ハァハァ…グッ…感謝…………いた……し……ま…す……」

 

 

消えるような声。

でも確かに、只野二等兵へ届く。

少女は相手の所属と階級も聞かず、とにかく救援部隊だと勘違いして礼を言う。

だがそれで絶望を和らげられるならと、只野二等兵は安らぎの言葉を並べ立てた。

 

 

「ごめんね……遅くなった。 でももう、大丈夫だよ、安心して。 家族のもとへ帰ろう。 君は、君達は、まだ生きなくちゃ駄目だ。 こんな所で死んじゃ駄目なんだよ」

 

 

只野二等兵は、軍隊の階級としては最下級だ。 権限は何もない。

しかも孤立無支援のはぐれ兵。 なんなら逃走兵で処刑されても文句は言えない。 技術も何もない。

そんな彼が、皆を救うなんて夢物語。

だがその声は、まさしく父親のような感情と安心感を少女に与える。

その言葉を聞くと、少女は安らかな笑みと共に意識を失った。

死んだ訳ではなく、少女が気付かない内に只野二等兵が鎮痛剤を使用したため、副作用として眠りについたのだった。

只野二等兵は彼女をゆっくり寝かせると、再び周りを見渡した。

やる事は、決まった。

 

 

「今から僅かですが、医療品を運搬してきますっ! 重傷者優先ッ! 助かる見込みが無い者は、せめての安楽死の選択を考えます! 動ける者は手を貸して下さいッ!!」

 

 

貴重な、溜め込んだ物資を提供する。

それは本来、自分だけが生き残れば良いと集め続けていた物。

 

でも今は、彼らの為に使いたい。

 

罪は消えない。

だが罪を背負い続けるからこそ、人間は行動出来る事があるのだ。




街に取り残されていた瀕死の生存者たち。
そして、罪の意識から行動する只野二等兵。

他の作者様の作品を参考にしつつ書いています。
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