Witch Defense Forces(WDF)(完結) 作:ハヤモ
生存者の今後を考える。
備考:
これ以上、死者を増やさない為にも何とかしなければ。
後方にいるだろう、この国の正規軍に頼れれば良いが……。
装備:
リバーサー
ミニオンバスター
※ストパン世界の、実際の戦史や設定とは異なります。 でも、ひょっとしたらのモブ兵士達の話。
生きてるのが謎とか、作戦と、その時期に突っ込みをいれてはいけない(暴論)。
只野二等兵による全力の救援活動は、EDF副装備力を使いつつ行われた。
食事も取らず、拠点を行き来し、溜め込んだ物資を運び込む。
それを何往復も、何往復も。
拠点で缶詰を用意していたウィッチは驚いたが、事情を理解し、荷作りを手伝った。
一方で現地では殆どの者が動けなかったが、その姿に感化された民間人が手当てを手伝ってくれた。
大変有難いが誰もが医療の知識は無く、家庭レベルの粗末な治療しか出来ない。
只野二等兵はリバーサーのナノマシン残量を気にせず、止血剤代わりにと無理矢理傷口を塞ぐ等の荒治療。
だが、何もしないより絶対マシだ。
輸血が必要な兵士、感染症が進行した者は助ける手段が無く…………辛かったが、多くは安楽死用の薬品を投与。
せめてもの救いをと、眠らせていった。
だが只野二等兵のお陰で、多くの民間人や兵士が助かったのは確かである。
「……天国で、エンドウ豆のベーコン添えをたらふく食べてくれ。 俺もそのうち行く。 そしたら……うぅっ……みんなでまた……食べような」
苦痛から解放され、安らかに旅立った仲間達を前に、涙を拭うカールスラント軍人達。
治療の甲斐あって、小康状態になった兵士達だ。
軍服は血や泥でボロボロで、擦り傷も多い。
だが血泥の包帯は綺麗で清潔な包帯に変えられており、白い部分が多く見受けられる。
だが殆どの仲間が死んでしまった。
元凶はカールスラント撤退作戦であった。
本土に侵攻してきたネウロイから多くの民間人を逃す為、軍は足止めするべく交戦。
勿論、ウィッチも投入されて激しい戦闘が巻き起こった。
しかし奮戦虚しく、あまりの力の差に押されていき、逃げ切れなかった民間人や部隊が街に取り残される。
それが、只野二等兵が見つけた生存者達だ。
退路が断たれたこの部隊は、まともに戦って撤退出来る体力は残されていない。
ならばと当時の部隊長の命令で、民間人と共に建物に立て籠もる。
時間を稼ぎ、救援部隊を待つ事にしたのだ。
絶望を受け入れるのは難しい。 誰にとっても。
来るかも分からない希望に、皆が縋った。
しかし、ネウロイは容赦をしない。
瘴気の問題もあるが、位置がバレたのだ。
建物は激しい攻撃を受け、多くの民間人や兵士が崩れてきた瓦礫で負傷、或いは死亡。
このままでは建物は全壊。 全滅は免れない。
部隊は動ける兵士と使える武器を引っ張り、ネウロイを建物から遠ざけるべく、自らを囮として外に飛び出し、誘導。
鬼ごっこのような戦闘を繰り返し……更なる負傷兵と死者を生み出した。
だが、それをしたからこそ、今の生存者達である。
他に手はあったかも知れないが、少なくとも意味はあったと思いたい。
こうして"救援隊"が来てくれたのだから。
「感傷に浸っているところ、申し訳ありません。 俺はEDF陸軍欧州救援隊、只野二等兵です」
その"たったひとり"の救援隊である只野二等兵が、彼らに敬礼。
カールスラント兵も返礼する。 やつれてるが、まだ生きようとする気力が目に宿る。
「そうか……タダノ、ありがとう」
「救援隊と言っても、今は俺しかいませんが。 物資は……かつての仲間の物ですが、遠慮せず使って下さい」
「すまない。 互いに色々あっただろうが……お前には助けられた。 本当にありがとう」
地獄で得た微かな安らぎ。
薄笑いだが、久し振りに笑みをこぼす兵士達。
普段は軍規がどうと煩いのが多いカールスラント軍人も、今は所属も階級も関係なかった。
「しかし、よくココが分かったな」
「ネウロイの群れの中を来たのか? 凄いとしか言いようがない」
「お前は勇敢だ。 俺達よりもな」
「EDF? 部隊名か? 見たところ扶桑人だが、その装備は……いや、今は良い」
口々に褒めたり、疑問の声も出たりはしたが、それより今後の事を考えねばならない。
「後方の防衛線に救援を要請出来ないのでしょうか?」
「無線が通じないんだ。 本隊は撤退出来たと思うから、最悪の事態にはなっていないと願いたいが…………」
「ネウロイによる電子妨害?」
「可能性はあるな。 或いは無線域に味方がいないのかも知れん」
聞いて、只野二等兵の表情は暗くなる。
援軍が来ないとなると、自力での脱出か此処で生き残らなくてはならない。
しかし物資は限られているし、敵の勢力圏のど真ん中に取り残されている。
只野二等兵自らがEDFの兵器で、ヤツらを殲滅出来れば良いが……そんなワンマンアーミーな芸当は無理だろう。
小康状態の彼らも、こんな不衛生でストレスが凄まじい環境下だ。
いつ具合が悪化するか分からない。
依然、状況は最悪。
はっきり言って、絶望的だ。
(諦めちゃダメだ。 後方にいるカールスラント軍が、ここにいる生存者に気付いて貰えれば、或いは)
兵士達とウンウン唸るも、良い案が出ない。
だが、ここに籠るのは現実的ではなくなってきた。
何とかしなくては。
「俺が後方の防衛線まで直接救援要請をしに向かうのは、どうでしょう?」
「やめとけ、距離が遠過ぎる。 移動中に見つかって、殺されるのがオチだ」
コレは否定された。
兵士の言う事は最もである。
「そうするくらいなら、そうだな。 他の残存部隊と情報交換した方が良いだろう」
「残存部隊?」
只野二等兵は首を傾げた。
ココの他に生存者がいるのだろうか。
だとしたら、更に重い事態だ。
危険に晒されている命が増えたと思うと、気が減ってしまう。
「そう遠くない所でな、昨日辺り戦闘があった。 激しい爆音と銃声だった……かなり景気が良く元気なんだ。 物資の蓄えもあるかも知れないし、そっちを頼る方が現実的だろう」
この崩壊した街で、元気の良い部隊?
そんな元気があるなら撤退してるか、ネウロイを殲滅して街を奪還していても良いのではないか?
ナニか妙なモノを感じながら、しかし他に頼る場所も無い。
只野二等兵は、その情報を頼りに向かう事にした。
「そうですか。 分かりました、そっちへ行ってみます」
「俺らも付いて行こう」
「いえ。 少ない人数の方が、見つかる危険が減ります。 それに、ここを守る兵士が減るのはマズいでしょう」
「わかった……すまない、世話になりっぱなしだな……気を付けて行ってくれ。 頼んだぞ」
「はい。 行ってきます」
只野二等兵は、再度敬礼をすると建物を後にする。
いつだって希望に縋って生きてきた。
今も、これからもそうする。
だが、そんな姿勢は哀れだと言わんばかりに、現実が襲ってきた。
「わぷっ!?」
不意に新聞が只野二等兵の顔を覆う。
どこからか流れてきたのだろう。
驚いた只野二等兵だったが、新聞だと気づくと、苦笑しながら手に取った。
「新聞か、驚かすなよ…………ネットが普及していた俺らの時代じゃ、需要は減っていたんだろうな」
直ぐ捨てようと思ったがしかし、貴重な情報源だと思い立ち、見出しを読み始める。
カールスラント語が読めるのかとか、突っ込んではいけない。
そんな事を言っていたら、現地の人達と普通に会話してるし。
「なになに……カールスラント撤退作戦成功。 全ての民間人及び軍隊は本土より後方の防衛線まで避難完了だあァァアアッ!?」
思わず叫んでしまった。
書いてあることは、虚実も良いところだ。
都合の良い文章が纏められており、書いた記者や出版社をヌッ殺したくなる。
いや、半分は嘘で塗り固められていると訂正しておこう。
実際、大部分で見れば撤退に成功している。
逆に細かく見れば、戦闘を行った以上、書いてなくても死者が出ているのは子どもでも分かる話だし、ああいった取り残されている生存者がいるのも分かるだろう。
だが新聞社は、その辺は書かず、さも全員助かったという過去形で綺麗に締めくくっている。
いつの世も、新聞はこうなのかと怒りと悲しさが込み上げる。 マスゴミめ。
「ぐっ…………落ち着け俺。 戦時中なら検閲も入るだろう。 民間人の不安を助長させない為にな……軍の大本営発表的なのを鵜呑みにしてはいけない」
なんとか、理性でこれ以上の怒りを抑えつつ、目的地周辺へ向かう。
向かいつつ、現実に打ちのめされそうになる。
あの新聞内容は、兵士達は見たのだろうか。
もし見てないなら、見ない方が良い。
何故なら、あの書き方が軍の考えだとしたら、暗に生存者は見捨てると言ってるものだろうから。
只野二等兵も、軍人だ。
大の為に小を切り捨てる思考は分かる。
なんなら、彼は仲間を見捨てたのだ。
保身の為に。
カールスラント軍の本心は分からないが、自身の経緯と照らし合わせると……やはり、軍は見捨てたのだと考えてしまう。
「国を守る為、か。 上層部は小の為に貴重な戦力を減らしたくない筈だ。 やはり、絶望的……だな」
先が真っ暗になっていく感覚に襲われながら、それでも前に歩き続ける。
八つ当たりするように、只野二等兵は新聞をビリビリに破いて、捨ててやった。
この世界の情勢を知れば知るほど、嫌になるのは否定出来ない。
だが、見つけた人々だけでも救いたいと思う。
それが、今の生きる理由にもなっている。
「…………よし。 話だと、この辺だな」
ネウロイをセンサー反応や今までの経験をアテにしつつ避けて移動し、やがて目的地周辺に辿り着いた。
何か目立った地形も建物も無い場所だったが、明らかに激しい戦闘後である。
建物の多くが倒壊し、未だプスプスと黒煙を上げているナニかがある。
空薬莢が大量に地面に撒かれており、気を付けないと、うっかり足を滑らしそうだ。
「むっ、アレは!」
只野二等兵は、何かを見つける。
大きな鉄の塊のようだ。
駆け寄って行くと、それは戦車だった。
大破しており、砲塔は歪み、履帯は外れてしまっている。
しかし、現代的な平べったいデザインで、かなり小型である。
人がひとり、寝そべって入れるかというくらいしかない。
だが、このデザインは大変見覚えがあった。
だって、それは拠点にもあるビークルだったのだから。
「EDFブラッカー戦車!? なんでこんな所に!?」
そう。
それはEDFのAFV……戦闘車両のひとつ。
市街戦を想定して開発された、小回りの効くEDF主力戦車。
この世界に、本来は無い種類の戦車。
ブラッカー戦車だったのである。
ツッコミどころもあるかもですが、お兄さん許して。