Witch Defense Forces(WDF)(完結)   作:ハヤモ

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作戦内容:
偵察隊が戦闘を観測しました。
銃撃音や機械音からして、コンバットフレームの様です。
その方向には部隊を展開していません。
恐らく回収目標が危機に晒されていると思われます。
直ちに救援。 最寄りの部隊から向かって下さい。
備考:
今回は砲兵隊もいる他、空軍や海軍の支援を受けられる。
その為、空爆誘導兵がいる。 砲撃や空爆、ミサイル群、ガンシップの機銃掃射等に巻き込まれない様に注意。
装備:
CX特殊爆弾
ミニオンバスター
その他
説明:
CX特殊爆弾
特殊工作用爆弾。 設置可能数が非常に多く、運用の幅が広い。 破壊力も高く、強力な武器だといえる。 見た目は箱状で、電子機器やコード類が見て取れる。 起爆用リモコンを使用し、任意で起爆。


たくさんの評価、感想ありがとうございます。 励みになります。


9.再会。

激しい爆音。

激しい銃声。

兵士の雄叫び。

 

カールスラント本土の とある街にて、それは響き渡る。

現地正規軍が撤退した筈なのに、ネウロイが占拠した筈なのに。

 

 

「誰かが……誰かが戦っている。 誰かは分からない…………」

 

 

取り残された生存者は、確かに聞いた。

皆が諦め、静かになった筈の この街で。

 

 

「タダノか!?」

 

「分からないが、助けに行かなくては」

 

「よせ……じきに聞こえなくなる」

 

 

兵士は恩人かも知れないと考えたが、助けに行く事を躊躇った。

もはや片手で数える程度しか、動ける兵士がいない。

武器も歩兵銃のみで弾薬も少なく、ネウロイに到底太刀打ち出来る武装ではない。

 

結局、保身を優先して彼らは耳を塞いだ。

絶望の声を聞きたくない。

恐怖からの現実逃避は、身に巻いた綺麗な包帯を汚していく。

 

見捨てたんじゃない。

すまないタダノ。

俺らは、無力だ。

だが、ココを守らなくては。

 

矛盾した言い訳を、心で復唱する。

ネウロイというバケモノ。

普通の歩兵じゃ、良くて時間稼ぎしか出来ない圧倒的な敵。

相手をし、その力を見せられた。

人間なんて、無力だと。 勝てやしないと。

俺らに、何が出来るってんだ。

 

どうせ聞こえなくなる声、止んで欲しいようで欲しくない勇ましい声。

それが兵士の鼓膜を震わせ続ける。

 

 

(くそっ、幻聴か! 声が聞こえ続ける!)

 

(やめてくれ……俺らを責めないでくれ!)

 

(許せ許せ許せ許せ許してくれ……ッ!)

 

 

そんな兵士達を責める声は、聞こえ続ける。

本当にそれで良いのかと。

後悔は無いのかと。

 

互いに顔を上げ、仲間を見合った。

民間人も同じだったのか、お互いの顔色を見合っている。

やがて震える声を掛け合う。

 

 

「幻聴……じゃないよな」

 

「まだ……まだ戦ってるのか?」

 

「ネウロイ相手に……たったひとりで?」

 

 

答えるように、遠くからの爆音と共にパラパラと埃が落ちてくる。

時々、聞いた声の兵士の雄叫びが聞こえる。

銃声が聞こえる。

現実のようだ。

 

 

「兵隊さん」

 

 

背後の民間人らが、声を掛けた。

皆もボロボロで、今にも消えてしまいそうな衰弱した様子の子もいる。

それでも、目にはしっかりとした気力が見て取れた。

かつての絶望の目をした者は、誰もいない。

 

 

「私たちは大丈夫です。 どうか、行ってあげてください」

 

「しかし」

 

 

言い淀む兵士たち。

対してボロボロの少女兵が前に出る。

ウィッチだ。

 

 

「私も、後悔はしたくない。 ここで死ぬくらいなら、戦いの中で死にたい」

 

 

それが総意だったのか。

皮切りに、皆は声を出していく。

 

 

「そうだ! あの扶桑軍人が、唯一の希望なんだろ!? なら行くべきだ!」

 

「賛成だ! 俺だって、グッ、まだ戦える!」

 

「ネウロイに教えてやれ! 簡単に勝てやしないとな!」

 

「……みんな」

 

 

絶望の淵にいておきながら、自らを鼓舞し立ち向かう姿勢を見せる面々。

それは、あの兵士の為した事だ。

大したヤツだと、カールスラント軍人は鉄帽を深く被りなおす。

目元は暗く見えない。

だが、口元はニヤリ、と笑みを見せている。

もう恐怖は消えた。

ならやる事をやるだけだ。

 

 

「ここまで言われて やらないのは男じゃねえ!」

 

「カールスラント軍の誇りにかけて!」

 

「やってやる! 直ちに援護に向かうぞ!」

 

「シールドなら、まだ張れます!」

 

「頼む!」

 

 

勝てる勝てないじゃない。 やるんだ。

歩兵銃に弾を込め、ウイッチを背負い、兵士は音のある方へ走っていく。

無力だ。

無駄だ。

そんなの、分かりきっている。

それでも向かう。

タダノの為、希望を掴む為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 

 

只野二等兵は、狭いコックピット内に雄叫びを響かせながら、ニクスで暴れていた。

コックピット内の音声はスピーカーを伝い外部に増幅して漏れ出し、街中に響いている。

だが、それを上回るロケット弾による爆音、大口径マシンガン(ニクス用なので、機関砲といっても良いかも知れない)による銃撃音が世界を支配していた。

対するネウロイの群勢は臆する事なく、たかだか1匹の機械人形を圧殺せんと攻めに攻める。

近いネウロイから爆散、ニクスが圧倒している様に見えるが、その防衛範囲は確実に狭まってきた。

数が多いのもあるが、問題はニクス側にあった。

 

 

(くそっ! 動きがッ!?)

 

 

鈍くなるニクス。

滝の様に出していた空薬莢の排出量も、明らかに減っている。

原因は知れている。

ニクス・バトルシステムのダメージ・コントロールが、教えてくれた。

複数の警報がコックピット内で鳴り始めているが、診断パネルでは残弾警報と装甲耐久の低下、動力の低下とある。

この為、転回速度や移動速度の低下を招いているのだ。

残弾の低下もあり、節約する為にバーストショットとなり、それがネウロイの前進を許してしまっている。

装甲もビームを散々乱射されたのだ、融解してしまい、一部は稼働部が剥き出しだ。

 

 

「流石に中古品か!?」

 

 

只野二等兵の言う通り、これは中古品。

それに彼はニクスの訓練を受けていない。

だから、仕方ない部分もある。

欧州の街に放棄されていた拾い物であり、その時点で装甲も削れていたし、残弾も多くは残っていなかった。

知識の無い只野二等兵は、それでも使えるようにと半ばスクラップ同然の、ブラッカー戦車の装甲板等をガスバーナーで溶接。

追加装甲モドキをしたり、稼働部を隠したり。

修理とは名ばかりの、誤魔化しをしていたに過ぎない。

いくら仕方ないとはいえ、こうして命掛けになると笑えなかった。

 

 

(ダメだ! 押されてる! 何とか、何とかしなくては!)

 

 

背後にはウィッチの女の子がいるのだ。

そして、待ってくれてる生存者達。

ここで死ねない。

背面のブーストは生きている。

これで飛べば、逃げられるかも知れない。

だが、それは許されない。

只野二等兵自身が、何より許せない。

 

 

「まだだ! ニクスだけがEDFじゃない!」

 

 

空になったマシンガンをネウロイに投げつけ、ドゴンッドゴンと残ったロケット弾を全て叩き込む。

ネウロイが噴き出し花火のように、景気良くあがり、ボトボトと落ちては周りを巻きこんだ。

 

 

「まだだッ!」

 

 

ペダルを踏み込み、ニクス背面で青白い炎が上がる。

 

 

(ごめんな、ニクス。 そしてありがとう)

 

 

瞬間、ニクスの足が地面から離れ、勢い良くネウロイに突っ込んだ。

自らを弾丸とした、捨て身の攻撃。

地面スレスレを飛行する質量ある金属の塊。

特攻としか見えない行為は、人間相手なら轢き殺せただろうが、ネウロイを倒せるとは思っていない。

だが、考えはあった。

 

 

「ッ!」

 

 

只野二等兵は、ネウロイの群れに衝突する瞬間に脱出。

ニクスはパイロットと生き別れ、慣性で群れに突っ込んだ。

ネウロイは、その質量に多少はよろけたが、それだけだ。

直ぐに態勢を立て直し、飛び出た中身を殺そうと向き直った……その時。

 

 

ドゴォンッ!!

 

 

ニクスが大爆発、炎上。

衝撃波と爆炎、破片がネウロイをズタズタに引き裂いた!

 

 

「どうだ! CX特殊爆弾の味は!?」

 

 

只野二等兵が爆炎に消えるネウロイに叫ぶ。

手には爆弾起爆用のリモコンが。

ニクスに取り付けた爆弾が爆発したのである。

 

ゲームでも似た経験のある隊員は多いと思うが、只野二等兵は脱出した瞬間、ニクスに素早くCX特殊爆弾という、箱状の爆弾を取り付け、起爆したのだ。

威力は同系統な爆弾と比べると低いものの、EDFの爆弾である。

ネウロイを吹き飛ばすには十分で、この攻撃で多くのネウロイが減った。

 

 

「センサー反応をアテにすれば、もう少しで殲滅出来る……!」

 

 

後退し、別のビークルに乗り換えようと踏み出した時。

 

 

「ガァッ!?」

 

 

強烈な痛みが片足を襲い、地面に転がる。

生き残ったネウロイが、爆炎の中からビームを撃ち当てたのだ。

通常の兵士なら吹き飛んだだろうが、EDFの強靭な戦闘服だ。

ボロボロとはいえ、そう簡単には千切れやしないし、死ぬ事もない。

だが衝撃は凄まじく、痛いものは痛い。

只野二等兵は激痛に苦しみながらも、上体を起こして反撃した。

 

 

「イテェぞ、クソネウロイがァッ!!」

 

 

ミニオンバスターで徹甲榴弾をばら撒く。

いくつかは爆散し、いくつかは死なずに突っ込んでくる。

仲間の仇を討たんと、道連れにしてやると死兵と化した様だ。

 

 

「止まれ止まれ止まれッてんだクソッ!!」

 

 

猪突猛進。 絶対ブッ殺す。

ビームも撃たずに特攻してくる1体のネウロイ。

只野二等兵は恐怖に目を見開きながら、全弾を叩きこむ!

 

 

「来るな! 来るなッ!! 来るなぁッ!!」

 

 

表面に火花を散らし、内側で爆発が無数に起き、装甲を弾き飛ばしながらも、尚もネウロイは止まらない。

 

もう駄目だ!!

 

只野二等兵は、死を悟る。

覚悟した。

せめての抵抗で、空になったミニオンバスターを投げ捨てると。

CX特殊爆弾を自らに括り付けリモコンを手に持ち……目を閉じる。

 

 

「ふぅッ! ふぅ……ッ!」

 

 

死を前に、息が荒くなる。

守れなかった。

みんなを。

 

後悔の念と共に、只野二等兵は自ら命を散らそうとした時。

 

 

「撃ちまくれえええええッ!!」

 

 

雄叫び。

旧式歩兵銃の、銃撃音。

ネウロイに火花が散る。

驚き、視線をやる只野二等兵。

そこには、只野二等兵が助けた生き延びた兵士達。

ここに駆けつけ、援護をしてくれたのである。

しかし、この世界の銃ではネウロイに損傷を与えるのは難しく、ネウロイは止まらない。

 

 

「駄目だ、間に合わねぇ!?」

 

 

只野二等兵は、笑みを浮かべた。

微かな満足感を得たから。

仲間を見捨てたが、この世界に新たな仲間が出来て、こうして助け合った事実。

出来れば皆を救いたかった。

だが、ちょっとは……満足。

最期は、俺の勇姿を見せて終わろう。

 

フッと笑い。

スイッチを押そうとして。

 

 

「タダノさぁああんッ!!」

 

 

聞き覚えのある、女の子の声。

運命は、簡単に死という安らぎを与えない。

 

只野二等兵とネウロイの間。

グレイプに隠れていた筈のウィッチが割って入り、魔法陣……シールドを展開。

 

 

「くうッ……!」

 

 

ネウロイはシールドに阻まれたが、怨念からなのか。

ネウロイはシールドを突き破り、ウィッチと只野二等兵を弾き飛ばす。

かつての侵略性生物γ型を思わす光景だった。

 

 

「きゃあああッ!?」「がはっ!?」

 

 

ふたりの悲鳴が上がり、吹き飛ばされる。

だが、シールドによって威力が減衰した事で命を取り留めたウィッチと只野二等兵。

しかし以前、状況は最悪だ。

ネウロイは只野二等兵が生きてるのを確認し、再び突撃を敢行。

駆け付けた兵士が、せめて注意を逸らそうと必死の銃撃を喰らわしているが、気にも留めない。

 

 

「グッ……に、逃げるんだ……ッ!」

 

「いや……イヤですッ! タダノさんが死んじゃう!」

 

 

首を横に振り、ワガママを言う女の子。

そんなドラマも気に留めず、ネウロイは走り続ける。

このままではふたり揃って あの世行き。

 

今度こそ駄目だ!

 

只野二等兵は、女の子を庇う様に抱いてうずくまる。

せめて、女の子の生存率だけは上げようとしての行動。

きたる衝撃に全身の筋肉を強張らせ、再び目を閉じた、その時。

 

再び誰かの声。

だけど、懐かしい声がした。

 

 

『バルカン砲、ファイヤッ!』

 

 

久し振りの無線音声と共に、空から弾丸の雨が降り注ぐ!

それは突撃をかましていたネウロイの脳天や周囲にバラつきをもって着弾。

ネウロイを一瞬でバラバラにしてしまった。

 

 

「な、なんだ!?」

 

「カールスラント空軍か!?」

 

「い、いや違う! 知らない攻撃だ!」

 

 

兵士の驚く声に顔を上げる只野二等兵と、庇われた女の子。

その驚いた正体。

EDF隊員である只野二等兵は知っている。

それを理解するより早く、無線音声と空からの攻撃は続いた。

 

 

『ロケット弾、ファイヤ!』

 

 

今度は離れたところにいた、ネウロイの群れが爆発と共に吹き飛んでしまう。

ロケット弾による攻撃だ。

して、この威力と精度。

この世界の、技術の攻撃ではない。

 

 

「カールスラント軍の、新兵器?」

 

「…………DE202……」

 

 

只野二等兵は、空を見上げながら言う。

釣られて見る面々だが、そこには何も見えない。

ネウロイが形成したのか、黒い暗雲が立ち込めているだけだ。

 

 

「え?」

 

「地上制圧機、ガンシップの攻撃だ」

 

 

嗚呼。

やはりEDFがこの世界にいる。

 

して、EDFがこの攻撃を出来るという事は、空爆誘導兵がいるという事。

その誘導兵は、只野二等兵が知る人物であり、伝説の英雄。

 

 

「待たせたな」

 

 

懐かしく、頼もしい若い男の声。

振り返る。

 

そこには、自身のレンジャー装備とは、大きく異なるEDFの兵士が立っていた。

 

 

「あぁ……ああ!」

 

 

フルフェイスヘルメット。

剣道の防具のような、やや丸みを帯びた防弾着を着用。

大きな無線機器を背負い、腰道具類や様々な無線機が付いている。

 

空爆誘導兵の装備だ。

そして、かつての隊長。

 

 

「ストーム・ワン隊長……ッ!」

 

 

まさか、この世界で再会するなんて。

そして生きて会えた喜びと、罪の意識からの困惑。

 

返答に困っていると、隊長から声を掛けられた。

決して責める言葉ではない。

寧ろ、労う言葉だった。

 

 

「よく頑張った。 後は任せろ」

 

 

そして、隊長は振り返る。

そこには、未だ攻撃の意思を感じさせるネウロイの群勢。

 

 

「さて」

 

 

そして隊長は、そいつらにビーコンガンを構えて……冷酷に言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「部下が世話になったな。 礼はたっぷりしてやる。 覚悟しろ」

 

 

 

 

 




作中設定では空爆誘導兵であり。 主人公の隊長。
伝説の兵士、ストーム・ワン登場。
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