Witch Defense Forces(WDF)(完結)   作:ハヤモ

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作戦内容:
敵の殲滅及び生存者救出。
備考:
EDFは仲間を見捨てない。 本当だな。
装備:
PA-11
T4ストーク
その他
説明:
T4ストーク
次世代型高性能ライフル。 抜本的な構造の見直しが図られた結果、総合的な性能向上に成功。 欠点のない優秀なアサルトライフル。
レーザーサイト装備。 SFぽいデザインをしている。
戦争で生産能力が著しく低下したであろうEDFだが、使用可能な武器を投入しようとしたのか、今回はモブ隊員も使う。


10.「仲間を見捨てない」

歩兵隊に随行し、空軍や砲兵隊、基地や衛星、潜水艦等に座標を伝達して部隊を援護するのが主任務の兵科エアレイダー。

日本語で言うなら、空爆誘導兵。

その兵科には、伝説の男が属している。

 

コードネームはストーム・ワン。

 

EDFの世界にて数ヶ月以上前に派遣された、欧州救援隊の隊長を務め、当時の只野二等兵にとっては上官であり見捨てた ひとり に当たる。

欧州を辛くも生き延び撤退した隊長らは、その後、敵司令船コマンドシップを撃墜し、エイリアンの神……かの者を倒した伝説の遊撃部隊ストームの、ストーム・リーダーとなっていた。

 

そんなEDFの生きる伝説である隊長は只野二等兵を責める事はなく、寧ろ労う。

そして今、不倶戴天の敵と対峙する。

恐怖を感じさせない、勇ましい勇姿。

最後にあった時と変わらない。

して、彼の勇姿に呼応するように、多くのEDF隊員が集合していく。

 

 

「ストーム・ワンに続けェッ!」

 

「うおおおおおおおおおお!!」

 

「ストーム・ワンがいれば敵なしだァ!」

 

「ヤツらを包囲しろッ!」

 

「第3隊は後方に回り込めッ!」

 

「キャリバン救護車両、前進して負傷者を収容せよ!」

 

「間も無くAFV他、イプシロン自走レールガン及びコンバットフレーム隊が指定座標に到達ッ!」

 

「EDFの力を思い知れ!」

 

「EDFッ! EDFッ!!」

 

 

雄叫びを口々に上げながら、銃撃を喰らわしていく隊員ら。

只野二等兵のセンサーには、ネウロイを囲い込むように味方表示の無数の青丸が浮かび上がる。

それらは増えに増えて津波となり押し寄せ、群がるネウロイを飲み込んだ。

PA-11以外にも、新型アサルトライフルT4ストークを所持している隊員もいる。

SFぽく、銃に似つかわしくない鮮やかな水色が配色されており、しかし従来のライフルを上回る性能を遺憾無く発揮中。

本気度が伺える戦力だ。

鳴り止まぬ銃撃音。

勇ましい数多の雄叫び。

数の暴力。 EDFの力。

戦時では時に虐殺レベルで圧倒されていたEDFが、この世界では立場が逆転していた。

 

 

「立てるか?」

 

 

不意に声を掛けられた。

隊長だった。

只野二等兵は、慌てて立ち上がる。

 

 

「ッ! は、はい……くっ!」

 

「タダノさん!」

 

「タダノ!」

 

 

立ち上がるも、痛みでよろける只野二等兵。

それを脇にいるウィッチが支える。

それに合わせるように、駆け付けたカールスラント兵も駆け寄った。

 

 

「……グッ……すみません、俺なんかの為に」

 

「そんな事ないですっ」

 

「それはこっちのセリフだ」

 

「助けられたんだ、助けもするさ」

 

 

その"仲間たち"の様子に、隊長はヘルメットの下で口角を上げて頷く。

 

 

(ふっ。 頼もしい仲間が出来たな)

 

 

部下が孤独に苦しんでるかと心配していただけに、妙な安心感を覚える隊長。

 

欧州での戦闘で行方不明になった只野二等兵。

欧州から撤退する時、斃れる屍の中に彼の姿を確認出来なかった隊長ら救援隊員。

きっと爆散したり、喰われてしまったのだろうと諦めムードが漂っていた。

だが、隊長は心のどこかで生存していると思った。

生き恥を晒そうとも、この絶望を生き延びて欲しい。

そう願い、彼は日本へ帰還した。

 

その願いは、どうやら届いたようだ。

 

まさか別世界に飛ばされていたとは想像出来なかったが、生きて再会出来たのは大変喜ばしい事に違いはない。

 

だが、今は戦闘中。

この世界の仲間に、只野を任せて集中しなければ。

隊長は見ず知らずの兵士に"お願い"する。

 

 

「すまないが、只野を連れて安全な場所に退避してくれ」

 

「りょ、了解!」

 

 

突如現れた隊長の、堂々と勇ましい雰囲気に圧倒される兵士たち。

それが上官による"命令"ではなく"お願い"だとしても、本能的に上官"命令"だと身体が反応してしまう。

 

ただ者ではない。

そう思った。

 

だが、只野二等兵は曇った顔になる。

見捨てた件、その罪の意識。

隊長は、みんなは、どう思っているのだろうか。

 

恨んでないのか。

何故助けるのか。

何か利己的な理由が絡んでいるのでは?

 

 

「……隊長、俺は」

 

 

言い淀む只野。

気持ちは分かる。

だからこそ勇気づけ、安心させねば。

部下を安心させるように、隊長は優しくも力強い言葉を返していく。

まるで父親の様な、そんな声だ。

 

 

「良いんだ只野。 良く生き延びてくれた。 これからも生き延びろ、命令だ」

 

 

赦された。

瞬間、涙が溢れそうになる。

 

 

「……ッ! りょ……!」

 

「聞こえないぞ。 はっきり言え」

 

「了解ッ!!」

 

 

頷いて見せる隊長。

ヘルメット越しに、ニコリと笑う。

 

 

「早く行け。 ここは戦場だ」

 

 

只野は、支えられながらも敬礼。

支える兵士も倣って敬礼する。

その後、直ぐに兵士たちが後方の建物の中に退避したのを見届けると、おもむろに無線機を取り出した。

 

 

「展開中の全部隊へ! 空爆を開始する! 敵の群れから離れていろ!」

 

 

そして"いつも通りの空爆誘導"が始まった。

しゃがみこみ、無線に早口で何かを言い始める隊長。

早く、冷静に、正確に、効率良く、絶望の戦局をひっくり返してきた魔法の呪文。

 

 

「フォボス編隊プラン10、指定座標───、突入角度───」

 

 

言い終わるのが遅いか早いか。

隊長が立ち上がると、空に大きなエイのような航空機の群れが轟音を立てて戦闘領域上空に突入してきた。

この世界には無い、ありえない、重爆撃機の群れである。

その数、10機。

 

 

「な、なんだアレは!?」

 

「ネウロイか!?」

 

「い、いや……EDFの航空機か!?」

 

「速い……!」

 

 

兵士たちが驚く中。

やがてネウロイの群れ頭上に差し掛かると、

 

 

「空爆開始! アタック!」

 

 

またも只野二等兵を始めとする、EDF隊員らに無線越しの若い男の声がする。

重爆撃機フォボスのパイロットの声だ。

只野二等兵は、その声を聞いてニヤリと笑んだ。

その声は、痛みなんて忘れさせてくれる。

絶望を勝利への希望に変わる合図だから。

 

 

「勝ったな」

 

 

それを合図にして、フォボスから無数の爆弾が投下。

ネウロイや建物、地面に着弾すると次々と爆発。

 

 

「うわああああ!?」

 

 

その威力や凄まじく、地面を揺らし、轟音は街を包み込む。

同じ座標に10機が規則正しく直列して突入しては、爆弾をひたすらに投下して、4秒、5秒と爆撃は終わらない。

 

 

「なんて威力だ……ッ!」

 

「乱戦の中なのに、敵の群れだけに攻撃を当てている!」

 

「す、すごい……!」

 

「EDFは……何者なんだ!?」

 

 

残存するネウロイは街ごと吹き飛び、塵も許さぬ猛爆撃。

ネウロイに制空権を握られ、中々出来なかったソレ。

いや、出来てもネウロイには威力不足だった爆撃。

痒いところを掻いてくれた、圧倒的で快感の攻撃に皆は勝利の雄叫びを上げ始める。

 

 

「うおおおおおお!!」

 

「空爆万歳だッ!」

 

「空軍万歳!」

 

「ストーム・ワン万歳!」

 

「最高だぜエアレイダー!」

 

「さすがは我らが隊長!」

 

 

纏まりのない隊員らの歓喜の声は、やがて爆音の増加と共に ひとまとまりになっていく。

 

 

「「「「EDF! EDFッ!!」」」」

 

 

全地球防衛機構軍。

魔女とネウロイがいる異世界の1940年代欧州の地にて。

 

著名な魔女達が知らない所で密かに、だけど派手で大きな勝利を、この地にて納めたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっ、只野! 無事だったか!」

 

 

戦闘終了後。

設営された医療テントに担ぎ込まれた只野二等兵のところに行く隊員ら。

皆、笑い掛けながら肩を叩く。

 

 

「……みんな」

 

 

そこには憎悪や怨念はない。

階級による上下関係も無い。

ただただ、仲間を案ずる陽気な声が響く。

軍隊というよりサークル仲間のような、家族のような、軽い、互いに気兼ねなく話せる友人にすら感じさせるやり取り。

EDFはそういう者が多い。

人によっては規律の緩さに(カールスラントの機関銃二丁持ちお姉ちゃんウィッチとか)眉間に皺を寄せる組織だが、思いやりがある良い集まりなのだ。

 

 

「俺を……恨んでないんですか?」

 

「はぁ? なんで恨む必要があるんだ?」

 

「いや、だって……欧州で俺は、皆を見捨てて逃げて」

 

 

只野は俯いた。

隊長には許してもらえたが、他の隊員は きっと違う……そう思ったのだ。

だが、隊員らは肩をすぼめて ケラケラ笑う。

全然大した話じゃないと、笑い飛ばす。

 

 

「なんだ。 そんな事を ずっと気にしてたのか」

 

「へ?」

 

「あの絶望を、戦場を生き延びた。 お前も必死に戦ってたのを知っている」

 

「誰だって怖い。 逃げる気持ちは分かる」

 

 

同情してくれる仲間達。

だが、只野としては罰してくれた方が、気が楽だった。

それは、ある種の逃げである。

だから求めるように意を唱えてしまう。

 

 

「で、ですが」

 

「逃げたのが罪って思うなら、そうだろうな。 だがな、役に立ったぞ?」

 

 

それを察してか否か。

隊員は言う。

只野の知らない戦場の続きを。

 

 

「怪物が お前の後を追って、敵の勢力が分散したんだ。 お陰で対処しやすくなった」

 

「ストーム・ワン隊長も褒めてたぜ? 生きて帰って来ると信じてもいた」

 

「……隊長が」

 

 

どうやら、只野の行動は完全にマイナスではなかったらしい。

結果の話だったが、少し明るくなる只野。

そんな彼をさらに励ますように、隊員らも明るく話を続けた。

 

 

「それに! 隊長はエイリアンの司令船を撃墜したんだぜ? プロパガンダの類じゃないぞ、マジだかんな?」

 

「死神みてぇな、ヤベェ強さを持つエイリアンの司令官的なのも倒したぞ!」

 

「えっ!? じゃあ戦争は!?」

 

「あー……、エイリアンの本隊は消え失せたんだがな。 使役していたクローンエイリアン共や侵略性外来生物は、まだいるな」

 

「そう、ですか」

 

 

励ましの言葉を続けるつもりが、少し暗い事実を言う羽目になる隊員ら。

戦争は完全に終わらない。

残された戦力では、人類はかつての栄光を取り戻すのは困難だ。

寧ろ滅ぼされかけているとも言える。

operationΩも言おうかと考えたが、悪いニュースを続ける事もないだろうと言わなかった。

いずれ、知ってしまう時がくるだろうが……それは今ではない。

そんな判断だ。

 

 

「なに安心しろ。 EDFが、隊長がいる限り大丈夫だ!」

 

「お前と一緒にいた兵士や、教えてくれた生存者も仲間が治療してくれているし!」

 

「それは……ありがとうございます。 助かりました。 正直、俺ひとりじゃ何も出来ず」

 

「お前は頑張った。 そう言うな」

 

「あそこにいた兵士達に聞いたが、勇敢だったそうじゃないか」

 

「良くやった。 今は休め」

 

「…………了解っす、ありがとうございました」

 

 

そう"先輩"らに言うと、テントを後にする隊員。

隣近所のベッドは空いていて、只野の他には誰もいない。

外からは、今や珍しく感じてしまうビークルの音や、EDF隊員の喧しくも懐かしい声が響いていた。

 

 

「そうか。 "EDFに帰れた"のか俺は」

 

 

うっうっ、と女々しく嗚咽する声がテントに響く。

サングラスを退かして、片手で涙を何度も何度も拭い、深呼吸して自身を落ち着かせる。

 

皆に、EDFに赦された。

俺は帰れたんだ。 皆の所へ。

 

今後、どうなるのかは分からない。

でも、分かった事がある。

それは。

 

 

「EDFは仲間を見捨てない。 本当だな」

 

 

そう、呟いた。

久し振りの温かさが、只野二等兵の心にこんこんと湧いたのであった。

 




EDFと合流。 今後どうなるのか(未定)。

沢山の評価、感想ありがとうございます。
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