Witch Defense Forces(WDF)(完結) 作:ハヤモ
連合軍との調整
書類作業
備考:
誰か助けて下さい〜(泣)!
装備:
通信機器とかペン。
みなさん、おはこんばんちわ、です。
ストーム・ワンのオペレーターです。
オペ子と呼ぶ隊員もいますが、私は気にしてませんよ?
それより今、何時でしょう。 眠いです。
でも寝るのは許可されていません。
このデスクにある、天井まで届く勢いのペーパータワーを処理するまで撤退は許可出来ないそうです!
うわあああんッ!?
本部も少佐もヒドイ!
こんなの、私ひとりで終わるワケないじゃないですか!
そりゃ、異世界に来るのに色んな移動や調査、会議は ありましたよ。
それで書類仕事が発生するのは分かりますよ。
でも多過ぎですって!
何ですか! もう!
私が歪んだ希望を求めちゃって「神を探しています」とか、戦時に言ったのがマズかったですか!?
ポンコツオペレーターだからです!?
眠い目をこすりこすり、書類に目を通します。
情報部の私ですが、本部の人手不足から、そこの仕事も一部受けてます。
人事とか、承認とか……。
でもこれ、一部じゃなくないですか?
とか訴えても、黙ってやれとか言われるのでやるしかありません。
人類の為、地球の為です。 ぐすん。
「なになに……ビークルの現地改修の許可ですか? 除籍してないものも? 必要なら自分達でやっちゃって下さいよ、という訳で許可のポンッと」
ポンッとハンコを押して次の書類へ。
「…………フェンサーの機関砲を、グレイプの砲塔に搭載したい? 運用と安全性に問題無いなら良いですよ、ポンッと」
次の書類へ。
「現地で救助した兵士や魔女を戦場に送り出す許可? この世界の、特殊な女の子達の事ですかね?」
魔女……ウィッチ。
主に10代の女の子達で、魔法を使える特殊な女の子たち。
お伽話に出てくるような子たちが、この世界では当たり前なんだそうです。
そして、若くして戦場へ…………。
既に防衛線に試験的に投入されたようですが、本格的に投げ出すつもりなのでしょう。
「許可、出来ませんよね……普通は」
少佐が発動した、operationΩを思い出します。
生き延びた全人類を、EDFの兵士として戦わせる、最後の作戦を。
辛い出来事の、悲劇のひとつでした。
あの後も、EDFには戦力らしい戦力は殆ど残っていません。
いえ……少しは回復しましたけれど。
それは生き延びた民間人を基地に連れて来たりして、戦力化している話です。
良い話じゃありません。
「うぅ……戦力は無い、でも欲しい……ウィッチはでも、軍人で……うぅ」
頭を抱えて悩みます。
今度は、本部の言葉を思い出します。
我々は軍人だ。 現実と戦う、と。
「現実……これも、この世界も現実ですよね」
ウィッチが軍人として、戦う世界。
軍人なら、当たり前なら、良いのではないか?
「許可……しましょう」
震える手でポンッ、と押してしまう。
逃げるように、私はポイと その紙を投げました。
つぎ、つぎです!
「ウィッチの魔法料理をスプラッシュグレネードに混ぜる許可? 何を書いているのか理解不能なのですが」
これは開発班からの申請ですね。
料理を兵器に混ぜる?
意味が分かりません。
嫌な予感もするので、コレは……。
「不許可!」
ダメー! と、バッテンを書いて次へ進みます。
意味不明なものに、許可は出せませんね。
「次は……うん?」
通信機器から音が。
もう。 忙しいのに、誰ですか。
「はい。 オペ子です」
しまった間違えた!
寝不足であだ名を言ってしまったぁ!
うぅ……恥ずかしい!
「こちら本部だ。 オペ子、頼みがある」
ツッコミ無しかよ!?
普通にオペ子とか言ってきやがりましたよ本部のオジサマ!?
「はい。 なんでしょうか?」
落ち着いて、対応。
さすが私。
もう昔の私じゃないのよアピールもしなくては!
「この世界の連合軍上層部から、色々とイタ電が来るんだ。 回線を回す、適当な対応を頼む。 以上」
は? え?
いきなり言われて、いきなり切られましたよ!?
ねぇ私に拒否権は!?
選ぶ権利はないんですかー!?
私だって忙しいんですよぉ!
ひぃっ!?
再び通信機器から音が!
どうしましょどうしましょ!?
「は、はい〜お電話代わりました、戦略情報部のオペ子ですぅ」
意味不明過ぎるのに、意味不明な話し方で通信に出ちゃったよ私!
うわ〜ん! だれかたすけてぇ!
『ふざけてるのかね? まあ良い。 EDFのオペ子さんとやら、EDFは我々を助ける気はあるのか聞きたいのだ』
うぅ。
下手な事を言えないですよ!
「え、えと……我々EDFも欧州を救えるほどの戦力が無いんです」
『だから物資や土地を分けてくれと?』
「は、はい……そうして頂ければ、EDFも幾分かは助けに行けるかと」
『異世界から来たのかなんなのか知らんがね、はいそうですかと連合国も貴重な物資を分けられないのだよ』
高圧的な声で、怖いです!
でも挫けちゃ駄目!
ストーム・ワンから学んだでしょ私!
「ガリアが占拠されているから、ですよね?」
『それもあるがね、敵か味方かも分からない軍隊を助けたいと思うかね?』
うっ。
確かに。
昔、攻めて来た最初のエイリアンが、人間と酷似しているから意思の疎通を取ろうとしたら、交渉団が全滅しましたし。
そんなパターンを、この世界の連合軍は恐れているのかもです。
『それに君達EDFはカールスラントを占拠している。 これはもう立派な領土侵犯だ』
なっ!?
EDFを侵略者扱いだなんて!
反論しなくちゃ!
EDFの名誉の為です!
「そ、そんなぁ! カールスラントに偶然、我々とこの世界を繋ぐゲートが出来ただけですっ!」
『ほぅ? ゲートとな?』
し、しまった……!
これは機密情報だったっけ!?
「言葉のアヤですよぉ、ははは」
『そうですかな。 ただそれなら、自分達の世界から物資を運べば良いではないか』
「そんな人員は いないんです」
『ほうほう。 "そんな人員もいない"ほどEDFは疲弊していると』
うぐぅっ!?
またも情報を抜かれました!
情報部なのに、私は何してるの!
もうやだぁ!
「うわーん! ナニが望みですかー!?」
『単刀直入に言えば、EDFの技術を寄越して欲しいのだ』
EDFの技術を!?
そんな、駄目です!
この世界にとって、我々の技術はオーバーテクノロジーなのが分かってます!
「ダメよ、ダメダメですっ! 我々の技術は使い方を誤れば、世界を掌握出来ちゃいます!」
『掌握ですか。 ネウロイに苦しめられているので、ますます欲しいですな。 なのにEDFはソレをやる人員が足りない……可哀想に。 連合軍には、人員がいるというのに』
「……うぐぐっ」
『ならこうしましょう。 我々連合軍から人員を送ります。 その代わり技術を提供して頂きたい。 これはヨコシマな願いではありません、人類、互いの為です"対等な"取引ですよ、悪いようにはしません』
くっくっくっ。
そんな笑い声が聞こえて来ます。
もう完全に悪者じゃないですかヤダー!
ネウロイに苦しめられている筈の連合軍なのに、なんで そんな企める余裕があるんですかねもう!?
うぅ……昔、storm2の軍曹が少佐に「安全な場所から何が出来る」と言った事があるそうですが。
ひょっとして、今の私と同じ気持ちだったのでしょうか。
私の心は折れかけてました。
大量の書類の山。
何故か対応させられている、連合軍との調整。
少佐や本部からも、見捨てられてる気がして、もう嫌になってしまいました。
「は、はい…………じゃあ、偵察隊を通じて……」
その時。
バァンッと私の部屋が勢い良く開かれました。
驚いて受話器を落としそうになります。
「だ、だ、誰ですか!? ノックもなしに!?」
慌てて引き出しから拳銃を、あれ?
どこだっけ、あれれ?
って、うわぁ!
書類の山が倒れて来ます!?
「キャー!?」
『な、何事かね!? 大丈夫ですかな!?』
ドササッと音と共に、書類の山に埋もれる私。
何者かが近付いてくる音。
うわーん!
人類の神さま、私を助けて下さーい!
「……通信を代わった、ストーム・ワンだ」
えっ!?
ストーム・ワン!?
書類の山から顔だけ出して、外を見ます。
整備士の格好をした、だけど確かにストーム・ワンがいました!
私が使っていた通信機器で、連合軍の偉い人と話をしています!
え、え!?
なんで!?
なんでストーム・ワンが!?
なんで当たり前のように連合軍と!?
『誰だね、君は』
「EDFでは"大将"だ。 上と話すのに問題があるか?」
『い、いや。 しかし、突然変わるとは……人員が足りてなければ統制がなってませんな』
お、おお?
高圧的な立場が逆転しましたよ!
さすがエイリアンの神、かの者を倒したストーム・ワン!
でもストーム・ワンの階級って大将でしたっけ?
storm2の隊員や一部が、そう言っているのは知ってますが。
なんだか私も怖くなって来ました。
書類の山に引っ込みましょう。
モゾモゾモゾモゾ………………。
「そうだな、その人員と統制で大きな土地を保有する"帝政カールスラントをネウロイから奪還"出来たがな」
『そ、それは連合軍にネウロイが釘付けになっていたからだろう。 EDFは我々をオトリにしたのだ、恥も知らずにな』
「だとしたら? 我々からしたら連合軍は足並み揃わぬ烏合の衆だ。 数だけ揃えられれば良いのなら、撤退戦なんてなかった。 カールスラントも陥落しなかった。 EDFが占拠する事もなかったな。 ああ、生存者を取り残す事も無かったか」
『貴様ッ! 先程から聞いていれば……!』
「実力行使をするか? だが気付いているだろう。 ネウロイに占拠されたガリアと黒海側、その間のカールスラント。 そこを"維持出来ているEDFの強さ"を」
『ぐぬぅッ……!』
「逆にガリアに部隊を送ってもいる。 地味な嫌がらせ程度にはネウロイを攻撃しているよ。 それで連合軍側の戦線は少しは余裕が出来ている筈だ。 それなのに行動を起こしている素ぶりがないな。 如何に連合司令部が無能か疑うな」
淡々と煽ってますね……。
ストーム・ワンって、あんな事も出来るんですね。
怒らせないようにしなきゃ……。
ああ、でも。
あの堂々と受話器を持つ姿勢、英雄です、格好良いですぅ……!
『501JFWがガリア奪還の為に動いておるわッ! 奪還した次はカールスラント、そしてEDFだ覚悟しておけぇ!』
「ほう501。 統合戦闘航空団だったか、そこも定員割れしていると聞くが」
『精鋭部隊だ、問題は無い!』
「随分と反対意見を唱える軍人や政治家もいるそうだが。 501の司令官が可哀想だよ」
『黙れ! とにかくだ! EDFが技術提供をしないなら、支援は しない!』
「あー、それは困るなー、待ってくれー」
うわっ。
急にストーム・ワンがわざとらしい声を!
『く、くくっ。 なら、どうするのだね? 最後のチャンスをくれてやる、技術を寄越すなら考えてやる』
そんで引っかかるんかーい!?
チョロいなオイ!?
それだけ必死なの? 冷静を欠いたの!?
「ああ、良いぞ。 取り敢えず簡易的なモノを送る事にするよ」
え、ええっ!?
ちょっと、勝手に決めて良いのですか!?
ナニか、ナニかアテがあるんですかー!?
『くくっ、分かった。 待っておるぞ』
「遠慮せず受け取ってくれ。 以上、通信終了」
がちゃん、と受話器を置くストーム・ワン。
えぇ……止めなかった私も悪いですが、どうしてそんな事を……。
「オペ子、いつまで隠れている?」
「ひゃいっ!?」
さ、さすがにバレてました。
このまま隠れていたら、怖い目に遭いそうです。
観念して、モゾモゾと書類の山から出ます。
「あぅ……対応、ありがとうございます。 でも、なんでストーム・ワンが?」
「本部と少佐に頼まれた」
へ?
本部と少佐が?
「オペ子が連合と話す。 たぶん、墓穴掘りまくって連合側の機嫌が良くなって油断するから、そこを俺が畳み掛ける、上げて落とす作戦をしろと」
「本部ぅ……少佐ぁ……」
私、信用されてるの? されてないの?
ねぇどっちなの!?
「俺もアッチ側に世話になるからな、挨拶がてら引き受けた」
「へ? ストーム・ワン、連合に下るんですか!?」
「なんだ下るって……裏切る訳じゃないぞ。 501JFWの整備士として潜伏するだけだ」
「ほうほう501に……って、えええ!?」
まさかの事実。
伝説の兵士が整備士として潜伏って、どういう事なの!?
「な、な、なんでストーム・ワンが!? 戦略情報部のスカウトもいるのに!」
「501は定員割れしているが、精鋭のウィッチが集まっている事に違いない。 すると、最新鋭の機材やレベルが高い整備士も集まっている。 それを見て盗む、或いはパクる」
伝説の兵士がパクるとか言っているんですがそれは……。
「でもストーム・ワンが行く理由は!?」
「俺が元整備士だからと、アッチでEDFが作戦行動を取る場合、誘導兵兼、指揮官となる者がいた方が有利だからだ」
そうだったんですね。
なんか、ストーム・ワンのオペレーターなのに、その辺を全く知らされてない私って、なんなんだろう。
「そうですか……ふふふ……頑張って下さいね、応援してます……ふふふ……」
「ありがとう。 だが、EDFと定期的に連絡を取り合う必要があってな。 それはオペ子、君にする事になっている」
「えっ!?」
おお!
私、信用を完全に失ってる訳じゃないんですね!
やった! やったやったー!
「ぐへへー、分かりました、私も頑張りますねっ!」
「うむ。 よろしく頼む。 それと、先程の連合の屑との件だが」
く、くず……。
屑呼ばわりしちゃうのかよストーム・ワン。
いや、私も思います。
もっと言え。 言って良い。
「土産はそうだな、ウィッチと共同開発したグレネードを送るから心配するな」
「へ? ナニソレ怖い。 そも、さきほど私、たぶんソレの開発を却下した筈なんですけど。 提出まだなんですけど」
「……開発班が無許可で制作したんだ。 俺も止めたんだが」
あーもう!
なんでそーいう事しちゃうのー!?
スプライトフォールの女科学者絡みも面倒なのに、開発班は言う事聞かない変態しかいない!
「倉庫に"危険物"と張り紙をして保管されていてな、異臭が周りの兵器を溶かして迷惑しているんだ」
「溶かす!? なんですかソレ!? アシッドガンですか!? 起爆してるんじゃないですかー!?」
「容器がウィッチの料……毒物に耐えられないのだ。 早めに処分する意味で連合に送りつける。 なに、ネウロイにも有効かも知れない、連合なら役立ててくれる。 無理ならEDFの技術を扱うのも無理だって言える」
「今、料理って言いかけましたよね。 それと容器が耐えられない時点でEDFも管理出来てないですよね!?」
その後。
とにかく危険物を処分してくれるのは有難いのでお願いする事にしました……。
また、ストーム・ワンは501JFWへと潜伏するべく旅立ち、私はオペレーターを続ける事になりました。
書類処理と並列してですがね。
……ふ、ふふふ……。
「EDFから送られてきた箱から、毒ガスがああああ!?」
「うおおおおお!?」
「おのれEDFッ!?」
…………連合から、例の件についてクレームがきましたが、それが扱えないならウチの技術も扱えないと言っときました。
EDFも、それ……扱えませんでしたがね。
それと少佐に軽い始末書を書かされました。
ふ、ふふふ……私、体持つかなぁ?
ギャグ回。 それと見切り発車的な。
オペ子を可愛く登場させたかった……。