Witch Defense Forces(WDF)(完結)   作:ハヤモ

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作戦内容:
開発班が暴走中です。
付近にいる警備隊は、現場に急行。
被害が出る前に止めて下さい。
最悪、兵器群を破壊。
発砲許可は下りています。
備考:
開発班には困った。


24.vs暴走ニクス

戦場で壊れたビークル。

直せるなら良いが、元の形に直せない事は今や珍しく無い。

只野がEDFに合流する前にコンバットフレームにやっていたように、装甲板をガスバーナーで溶接して貼り付けて誤魔化す事もある。

 

戦場では、簡単に欲しい部品が手に入らない。

EDF的には人手不足で、整備士も少なければ物資の搬入が遅れている。

ウィッチ世界の部品を使おうにも、連合と仲悪いのもあって手に入り難いし、そもそもEDFの兵器群と互換性がない。

戦力化を図っている、回収した兵士やウィッチに整備させようにも、やはり同じような理由で上手くいかない。

新たに生産しようにも、設備が十分に整っていない。

だから、代用品で改造したり誤魔化す方法も必要なのだ。

前にオペ子が書類上で許可出した、グレイプにフェンサーの機関砲を取り付ける話も、そのひとつである。

 

 

「だからって……コレ、イジメじゃね?」

 

 

通報を受けて、現地に来た只野は頭を抱えた。

目の前では、レールガンの砲塔をカタパルトに改造したビークルが。

航空ウィッチ……ユニット装着の猫耳軍曹ちゃんが、白衣の開発班に無理矢理載せられ、射角を上げられている。

明らかに射出されそうになっている。

 

 

「いやあああ!? 助けてタダノさーん!」

 

「大袈裟だなぁ、お嬢さん。 君もEDFにいるなら、これくらい耐えて貰わないと」

 

「待てやオイ!? EDFでも こんな話聞いたことねぇよ!?」

 

 

駆け寄りながら、ツッコむ只野。

レールガンモドキの車体に登り、開発班をローリングで吹き飛ばす。

素早く軍曹ちゃんを抱え、引き下ろした。

 

 

「ぐすっ……ありがとうございます」

 

 

泣きながら、只野の胸板に顔を埋める軍曹ちゃん。

相当、怖い目に遭ったらしい。

対して開発班。 全く悪びれる様子なく、むしろ呆れ顔で只野にモノを言う。

 

 

「只野くーん。 開発にはね、尊い犠牲が必要なのだよ」

 

「黙れ変態開発班! こんな事をしている暇があるなら、ビークルのひとつでも直せよ!?」

 

 

吠える只野。

最もである。

エトワール作戦で、量産型のブラッカーE1やニクスB型が複数 壊れている。

タイタンなどの修理は難しいだろうが、普及量産型なら部品の余剰はあるはずだ。

比較的、直しやすいだろう。

今後の防衛や作戦行動を考えれば、オモチャ作りなんかしてないで、これらを早急に直すべきなのだが、

 

 

「我々の本分は開発だよ? 限られた物資を有効活用し、新たな模索をする事に、ナニが問題あるというのだね?」

 

 

あくまで開発優先、修理なんて眼中にない発言。

人手不足なので、少しでも技術があるなら修理に回ってくれよと思う。

だが、そのより言いたいことがある。

ウィッチとはいえ、女の子を実験台にしていた件だ。

軍曹ちゃんを背中に隠しながら、只野は変態どもに訴えた。

 

 

「問題だろうが!? こんな小さな女の子を実験台にするとか、酷過ぎだろう!」

 

「彼女はウィッチだ。 して、ウィッチでなければならない」

 

「なんだと?」

 

 

どうやら、一応の理由があるらしい。

怒りの感情から言い訳に感じてしまうが、只野は聞いてやる事にする。

 

 

「このビークルは見ての通り、ベースは自走レールガンの車体。 その砲塔であった電磁誘導砲をウィッチのストライカーユニット用のカタパルトに換装した」

 

「だから?」

 

「そうする事で、狭い市街地や乱戦状態でも素早くウィッチを上空に上げられる。 自走式だから、好きな場所から上がれるぞ。 魔力とやらの消費も抑えられる筈だ。 応用すればウィングダイバーにも使える。 だが実証するにはウィッチがどうしても必要でね。 彼女には、その実験台になって貰ったのだよ」

 

 

理由は分かった。

だが許せない。

はいそうですか、とはならない。

軍曹ちゃんは嫌がっていたし、そうじゃなくても危険な実験だ。

へんてこな部分はEDFらしい兵器とも言えるが、この世界でのEDFの印象が悪くなってしまう。

 

 

「成る程、だが嫌がっている子を無理矢理ってのは良くないよな? それに本部からの許可は貰ってないらしいな?」

 

「いちいち お上の許可を求めていたら、間に合うものも間に合わない」

 

「事故が起きたら責任取れるのか」

 

「必要な犠牲だ。 それに、我々は経験を無駄にしない」

 

 

鼻で笑う開発班。

聞く耳持たない。

只野は止む無しと、コイン状の小さな物体を鷲掴みにして見せた。

 

 

「ならコイツを見てどう思う?」

 

「それは【スプラッシュグレネード】!」

 

「ご名答。 さすが開発班。 じゃ、とことん喜ばせてやるからな?」

 

 

スプラッシュグレネード。

小さなグレネードで、元は暴徒鎮圧用の兵器である。

御誂え向き、といったところだ。

これを鷲掴みにして沢山持ち、豆撒きの要領でばら撒いて広範囲を攻撃するのが運用方法である。

群れなす暴徒に使用する事を想定したのだろう。

只野が持ち込んだのは、流石に殺傷能力のないものだが、痛い事に違いはない。

只野はこれで脅し、あわよくば開発を辞めさせようとした。

が、しかし。

 

 

「ふっ。 言っただろう? 経験を無駄にしないと」

 

「まさか前にも制裁を?」

 

「その通り。 だから護衛を連れてきた」

 

「なんだと!?」

 

「カモン、ニクスさん!」

 

 

そう言うと、コンバットフレームが只野の前に立ち塞がった!

中古品らしく汚れて、被弾により装甲がヘコんでいる。

他の特徴としては、両肩に大きなショルダー・シールドをつけている。

これ、元々は緑塗装の機体で、シールドに白文字で【EDF】と書かれた格好良いヤツだ。

武装は両腕に多砲身のリボルバーカノン。

他は見当たらない。

これはプレイヤーが要請出来ないタイプである。 なんでや。

 

 

「ナニィッ!?」

 

「コンバットフレーム……ニクスという兵器ですよね、これ?」

 

「フワーッハッハッハッ! その通りだお嬢さん! 良くEDFの勉強をしている。 だが、ただのニクスさんにあらず。 なんとAI搭載によりパイロット無しでも動くオートパイロットモードなのだぁ!!」

 

 

なんと無人機と化したニクスさん!

人手不足のEDFには有り難い技術になりそうだが、敵となるなら迷惑だった。

 

 

「脚が故障したヤツもあるが、ソッチは上半身をトラックの荷台に乗せて運用させる予定だがね。 開発班としては泣きたい苦肉の策だが、歩行システムは複雑で金もかかるし、部品点数も多くメンテも大変だから仕方あるまい」

 

「それは兎も角、AI……自立行動可能なニクスだと!?」「えーあい?」

 

「さあヤッておしまいなさいニクスさん! 只野を倒し、軍曹ちゃんをカタパルトに載せるんだ!」

 

「くっ! 下がって軍曹ちゃん!」

 

「で、でも! あのニクスさん、とても強そうです!」

 

「なんとかする!」

 

 

するとニクスさん。

マニピュレーター……機械の手で変態開発班を鷲掴みにしてしまう。

 

 

「「「へ?」」」

 

 

この場にいる人類が理解する間もなく、ニクスさんは そのままカタパルトに素早く載せ、シュコーンと変態開発班を射出してしまった!

 

 

「ぎゃあああああッ!?」

 

「ああ!? 開発班の人が!」

 

「やったな、実験出来て。 同時に被害者の気持ちも分かっただろうよ」

 

 

キラーン、と星になる変態。

ある意味、お約束な光景。

只野は同情はしない。 報告が面倒だと思っただけである。

それより目の前のニクスさんだ。

 

 

「コマンドミスか? 搭載されているAIも、そこまで高性能じゃないのか。 てか、カタパルトは自動発射なのか。 だとしたら軍曹ちゃんが射出されなかったのは……何か安全装置があったのか。 いや、あの変態開発班に安全装置なんて概念があるのか」

 

 

ブツブツ言いながら、取り敢えずスプラッシュグレネードを投げつける。

表面装甲でパチパチと弾けるグレネード。

だがしかし、非殺傷まで抑えられた威力でニクスさんを倒せる筈もない。

 

 

「やっぱダメだよなぁ」

 

 

ニクスは市街地でのテロリストとの戦闘を考慮し、堅牢な装甲が施されている。

小銃弾、一般的なハンドグレネード程度ではビクともしない。

こんな時は対コンバットフレーム用に開発された、徹甲榴弾を撃てる小銃【ミニオンバスター】が有効だろうが、今はない。

 

 

「中に入って!」

 

「はい!」

 

 

軍曹ちゃんと共にレールガンモドキに搭乗する只野。

遮蔽物がないなら、ここに隠れる他ない。

だがレールガンの車体は装甲に覆われている。

狭いから互いに身体が密着してしまうが、仕方ない。

その光景をカメラの目で見ていたニクスさん。

イラッときたのか両腕をこちらに突き出し、リボルバーカノンを回転、情け容赦なしのフルオートを浴びせてきた!

 

 

「うおっ!?」「きゃあっ!?」

 

 

だが、ペチペチペチと音が車内に響くだけ。

多少揺れるが、実弾を受けるのとは違うそれに、只野は気付く。

 

 

「模擬弾か。 助かった」

 

「そうですか……良かった」

 

 

安堵する只野と軍曹ちゃん。

だが、これではニクスを倒せない。

 

 

「タダノさん! このまま運転して、救援を呼びましょう!」

 

「いや、それだとニクスが連絡所や難民キャンプを襲ってしまうかも知れない」

 

 

いくら実弾ナシでも、質量あるビークルだ。

暴れたら簡単な建物は吹き飛ぶし、人間は薙ぎ払われてしまう。

 

 

「じゃあ、どうすれば」

 

「コイツに武装は……自衛用のマシンガンはそのままだが、こんなんで何とかなる相手じゃない」

 

 

どうしたものか。

無線を繋いで、救援を呼ぼうか考えていたとき、

 

 

「あっ! トラックが来ますよ!?」

 

 

外部モニターを見ていた軍曹ちゃんが、声をあげた。

 

 

『助けに来たぞ、只野!』

 

 

無線越しの声。

それは我らが隊長、ストーム・ワン!

まだ501基地に再出発するべく荷造りしていたのだが、助けに来てくれたらしい。

 

 

「隊長!」

 

 

遅れて外を見る只野。

そこにはトラックに乗って やってくるフルフェイス・ヘルメットの、エアレイダーの姿。

荷台には大きな機械を載せている。

例によって汚れており、ボロボロで整備されているようには見えない。

下手すればスクラップな見た目だ。

 

 

「荷台のは、ニクスの上半身!?」

 

『ああ。 歩行機能を失ったニクスを戦場で運用する為に、無理矢理トラックの荷台に乗せている。 バランスも悪い。 反動や重心の問題で、ニクス用マシンガン一丁のみ。 元整備士目線から見ても色々と粗末だが、今は役に立つだろう』

 

 

どうやら開発班の言っていた、苦肉の策なニクスの様だ。

 

 

『だが、運転席からは操作出来ない。 只野、乗り込めそうか?』

 

「模擬弾を我慢すれば、なんとか」

 

「タダノさん、私を背負って下さい。 シールドを張って援護します!」

 

 

汚れて欲しくないからか、演習だと思っているのか、提案する軍曹ちゃん。

只野は甘んじて受け入れた。

 

 

「頼む」

 

「はい!」

 

 

せーの、で飛び出すふたり。

只野はすぐさま軍曹ちゃんを背負う。

カメラ越しにふたりを捉えたニクスさん、ビークルからふたりへ砲を向けフルオート。

だが、そこはウィッチ……軍曹ちゃんが展開した魔法陣……シールドに阻まれ、1発も被弾する事なくトラックへと駆け寄る。

その様子を見た隊長、ニクスの銃身が暴走ニクスさんに向けられる角度で停車。

直ぐに降りて、赤い銃【リムペットガン】を構えた!

 

 

「援護する。 ニクスに乗り込め」

 

 

そう言って、トリガーを引く隊長。

大きな銃口からは、赤く点滅する缶ジュースのようなものが射出され、ニクスさんにへばりついた。

 

 

「アレは?」

 

 

シールドを張りながら、それを見た軍曹ちゃんが疑問の声。

只野は走りながら答えてあげた。

 

 

「吸着爆弾だよ」

 

「起爆する。 爆風や破片に気を付けろ」

 

 

隊長が言うと、リムペットガンの下部にある、別のトリガーを引く。 刹那。

 

ボカンッと爆発。

表面装甲がヘコみ、怯むニクスさん!

 

 

「きゃっ……あんな武器もあるんですね」

 

「レンジャーの武器じゃないけどね……隊長、軍曹ちゃんを頼みます!」

 

「わかった」

 

 

トラック手前で、背負っていた軍曹ちゃんを下ろしてニクスモドキに乗り込む只野。

イスも使い込まれていたのか、ボロボロだが、まぁそれは良い。

コックピットハッチを素早く閉めてスイッチ群をパチパチパチと上げていく。

ウィーンと鈍く、外部カメラによって外部の光景がコックピット内にモニタリングされる。

そこにはニクスさんが隊長に銃撃を浴びせている映像が出されたが、軍曹ちゃんのシールドや、隊長の持つ……光の壁を作り出してくれるトーチカに阻まれていた。

模擬弾で威力もない。 破られる心配は無さそうだ。

 

 

「コックピット内は、そのままニクス共通か。 操作も同じようで助かる」

 

 

言いながらニクスを操作、機械の右腕がノロノロと持ち上がる。

その手にはニクス用のマシンガンが握られていた。

 

 

「チッ。 動力が弱っているのか、動きが遅いな。 【BMX10プロテウス】以下か……火力も低いが。 安定性も最悪だ。 流石に無理矢理使っている感が否めない。 歩兵よりかは火力が高いのと、腰回転と弾道予測線が生きているからマシか」

 

 

ブツブツ言いながら、操縦桿のトリガーに手を掛けて、

 

 

「撃ちます!」

「撃ってよし」「お願いしますっ!」

 

 

許可を貰って、絞り切る。

瞬間。 マシンガンが火を噴き、大量の空薬莢が金の雨のように排出、トラックの荷台に溜まっていく。

撃った時の振動のまま、震えるトラックとニクス。

放たれた無数の弾丸は、ニクスさんの表面装甲に大量の火花を散らせ、やがては内部にも貫通したのか。

黒煙を胴体から上げて、後ろ向きにバタンと倒れて動かなくなった。

頭部のメインカメラの光も消え失せ、無力化した事を告げる。

 

 

「目標沈黙。 よくやった只野」

 

「はい……いえ。 アッサリいって良かった……隊長と軍曹ちゃんがいたからこそです」

 

「俺は援護に過ぎんよ」「えへへ」

 

「しかし、開発班には困りましたね。 こんな騒ぎを起こして。 また起こさないと良いんですが……ああ、報告が面倒です」

 

「なに、これで少しは懲りただろう。 本部も何かしらは対策してくれるさ」

 

「そうだと良いんですが」

 

 

そう言う隊長だったが、前にもやらかしたらしいので、ちっとも安心出来ない。

隊長はゲンナリする只野に苦笑しつつ、今度は軍曹ちゃんに向き直る。

 

 

「軍曹ちゃん、といったか」

 

「はい。 貴方が、ストーム・ワン?」

 

「知っているのか」

 

「有名だと聞きました。 え、えと……EDFの総大将なんです?」

 

 

総大将だとして、普通の顔で尋ねる軍曹ちゃんである。

徴兵されて間もないので、軍隊の階級とか詳しくないのだ。

 

 

「俺の場合、飾りの階級だ。 偉くも何ともないから、普通にストーム・ワンでもワンちゃんでも良い」

 

「いや隊長ナニ言ってんスか」

 

 

ニクスから降りて、ツッコミを入れる只野。

隊長のお茶目な一面を見て、妙な気持ちになる只野であった。

 

 

「それじゃワンちゃんで♪」

 

「まあ隊長が良いなら良いですが」

 

 

笑顔純度100%軍曹ちゃん、恐ろしい子!

只野も、最早ツッコむまいと諦めた。

 

 

「はっはっはっ! 良いぞ。 しかし、君と只野の協力は素晴らしかった。 良きパートナーだな!」

 

「パートナーだなんて! もう!」

 

 

赤らめて、両手を頬に添えてきゃーきゃー恥ずかしがる軍曹ちゃん。 可愛い。

 

 

「あ……そうだ。 EDFって、別の世界から来た軍隊なんですよね」

 

 

ふと思い出し、聞いてくる軍曹ちゃん。

その話題に、少し顔を曇らせてしまう隊長と只野。

 

 

「あ、その! ごめんなさい」

 

「いや良いんだ。 いつかは話そうと思っていた」

 

「そうですね。 仲間なら、情報は共有した方が良いですし」

 

「…………そうだな。 その意味では、只野。 お前にも聞かせないとな」

 

「えっ?」

 

 

ストーム・ワンはヘルメット越しに、真っ直ぐ見つめ直し……真剣な声で言うのだった。

 

 

 

「軍曹ちゃんには俺たちの地球の事を、そして只野にはEDF最後の作戦【operation:Ω】の事を」

 

 

 




次回、EDFの世界の話(予定は未定)。
軍曹ちゃんに、絶望を君に(話だけ)。
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