Witch Defense Forces(WDF)(完結) 作:ハヤモ
どうやら生き延びた様だな。
生還を喜びたいところだが、そうも言っていられない。
思い出せ。 魔女の料理を。 アレが再び口に捻じ込まれ胃袋に到達した時、俺は今度こそ お終いだ!
俺は魔女料理を"食い止める"。
もし生き延びられたなら仲間に伝えてくれ。
「魔女に料理を作らせるな!」と。
備考:
軽食を各自に作って貰ったところ、魔女の料理は危険な事が判明した。
死守せよ! 魔女から食べ物を守れ!
「はっ!?」
気が付いた時、俺はどこかの家に転がっていた。
隣には俺同様、寝かされている子がいる。
この子は……バルクホルンだったか。
白目を向いているが、大丈夫か?
「ナニが起きて……くッ!」
何故だか、記憶が曖昧だ。
それに腹が微妙に痛い。
「落ち着け俺。 思い出すんだ」
俺は確か、浜辺で501の皆と自己紹介しあって、野営準備に入った。
ストーム1の的確な指示で、全てが順調だった筈だ。
して、島にあった空家を間借りして、台所で魔女の皆が料理を始めて……。
ダメだ。 そこから先が思い出さない。
「生き延びた様だな」
声がしたので起き上がれば、ストーム1だった。
最も信頼出来る隊長がいた事で、一先ずの安心感を得る。
「隊長! ナニがどうなって、むぐっ!?」
「しっ。 声が大きい」
グローブの手で口を押さえられた。
声色からただ事ではないと悟る。
「……すいません。 記憶が曖昧で」
「無理もない」
「一体ナニが」
「魔女の料理を喰らったのだ、お前は」
なん…………だと。
瞬時に記憶がフラッシュバック。
そうだ。 俺は美しく可愛いウィッチが共同で作った【なんか得体の知れないもの】を笑顔で強制的に摂取させられたんだ!
「うわああああッ!?」
「落ち着け只野!」
「魔女料理!? いやああああ!」
錯乱!
頭を抱え、床を転がり悶え苦しむ!
俺は勘違いをしていた。 騙されていた。
見た目に騙されてはいけない事は、戦時中に学んだ筈だというのに。
美しき魔女達と南の島でギャルゲな展開を心のどこかで妄想していたのかも知れない。
だが、俺たちはEDF。 ある意味で呪われている組織。
行く先々で不幸な目に遭う。 盲点だった。
「俺は死ぬ! 今度こそシヌゥ! 俺は知っているんだ!」
「お前は生きている」
「隊長は魔女料理の恐ろしさを知らない! あの理解不能で死臭のする、地獄の深淵を!」
「喰った事はないが、兵器足り得る危険物なのは承知している。 お前を幾度と救ってやれず、すまない」
「すまないで済んだらバルガはいらないんだよおおおお! 作業用クレーンを兵器に転用する様な事をせずに済んだんだァアアアァァアアア!」
錯乱のまま、意味不明な言葉を口走らせてしまう俺。
でも仕方ないでしょうよ。
ナニをナニしたら食材から即効性の猛毒を生み出せるのだ。
ネウロイの瘴気は耐えられるのに、料理が駄目とか。 ある意味、魔女が1番の敵。
「うぅ……もうヤダァ……基地に帰りたい」
「俺たちがナニしに来たか思い出せ。 サバイバルだろう?」
「その意味が かなり違います!」
サバイバルって、島で食糧を現地調達するとかテントを設営する事だと思った。
それなら、俺が欧州で逃げ回っていた時より楽かと。
だが現実はコレだ。 魔女から生き残る意味だったとは。 料理に殺される。 ホラーかよ。
「あの……じゃあ、ココで白目剥いているバルクホルンは?」
倒れている真面目魔女を指さす。
魔女が敵なら、この子は隊長が倒したのだろうか。
「お前と同じだ」
「は?」
「毒を喰らい、気絶した。 あのままだと更に喰わされて危険だから、ここまで背負って退避した」
違った。 被害者だった。
「まさか魔女が魔女に殺されるなんて」
「死んでない。 気絶しているだけだ」
いや、そうだろうけど。
後遺症残らない?
俺も心配なんだけど。 軍曹ちゃんの時は何とかなったが。
「料理を作れる数少ない1名だった。 惜しい子を失くした」
くっ、と手で頭を抑える隊長。
まるで戦死者を嘆く姿である。
いや、それよりも。
マトモに料理が出来る子がいるってマ?
「料理を作れる子がいるんですか」
「いる。 バルクホルン以外だと、宮藤とリネットが代表だな。 後はサーニャか。 他は破滅的だろう。 ミーナは味音痴だし無自覚で、消化に良いからと希塩酸で軽く溶かした料理を振る舞う程に酷い。 お酒と称して薬用エタノールを使おうとした時は全力で止めた」
「料理に希塩酸とか初めて聞いたんですが!?」
とんでもねぇ話だなオイ!?
どんな気持ちで料理してんだよ!?
「ハルトマンは書面で禁止されている程。 坂本はオニギリを綺麗に作れない、ペリーヌは塩と砂糖を間違えていたか。 リネットはまあ……作れるんだが、英国面だから……日本人好みでは無いな。 他の子は知らん」
「他は分かりますがハルトマンは一体、どんな酷いモノを」
「聞いた話だが良くて病人、悪くて死人だ」
「ヤベェ。 魔女料理ヤベェよヤベェよ」
「エイラも。 固有魔法が未来予知なんだが、悲惨な未来を予知出来ないのか」
「どうしたんです」
「シュールストレミングを持ち出した」
おう…………。
世界一臭いとされる缶詰か……。
でも、それは"食べ物"だ。
食べたことはないが。
「それだけで兵器、爆発物扱い出来そうですが……まぁ魔女料理よりマシでは」
逆に爆発物がマトモに感じるとか末期だなハハッ!
「それが、ナニをトチ狂ったのか。 納豆やらチーズやら発酵食品と混ぜ始めたんだ」
「ファッ!?」
いやいやいやナンデ!?
臭いモノ同士を合体させて、どうしたのさエイラちゃん!?
「どうやら日本の……ああ、こちらでいう扶桑の発酵食品からヒントを得て」
「どう受け止めたのおおお!? 場合によっては異世界な日本人も怒るよ!?」
「"臭いは美味い"と。 それが美味い料理を作る真髄だとしたらしい」
「結末は知りたくありません。 もうお腹いっぱいです」
「気持ちは分かる。 そんな子たちが、俺や宮藤という子が来るまで持ち回りだったんだ。 良く死人が出なかったよ」
なんて悪夢なんだ……。
コレが夢なら覚めてくれ。
「今後も死人を出さない為にも作戦を立てる」
「この島で逃げ回るんですか」
「無理ダナ。 相手はエリート軍人11人、いや7人だ」
うん?
ひとりはバルクホルンが殉職(気絶)したから分かる。 後の3人は?
そんな疑問を言葉にする前に、隊長が答えてくれた。
「宮藤とリネット、サーニャは味方と仮定している」
「やはり」
「なお料理未確認のシャーリー、ルッキーニは敵だ」
「何故」
「両名は面白い事に協力するような性格だからな。 今頃、ミーナ達による捕獲作戦に悪ノリしているだろう」
「怖ッ!?」
ブルッちまうよ……。
でも、なんで半部外者な俺たちを捕獲しようと?
「何故 捕まえに?」
「アレの所為だ」
アレとは。
バルクホルンを回収するとかなら、分かるんだが。
「アレ?」
「アレだ。 501の食糧」
指さす先は部屋の隅。
そこには大きな袋。
隙間から缶詰がコロリと落ちた。
「そりゃ追われるでしょうが!? なんで持ってきたんですか!?」
ふざけんな!
食べ物の怨みは恐ろしいぞ。
例え壊滅的料理スキル者でも、食う事に変わりないからね!
「委託したら、この島が食材の墓場になりそうでな……つい」
「ついで持ってこれる量じゃないでしょうよ!? 1個戦闘航空団+αの2週間分の食糧じゃないですか!」
「いや、実際は少ない。 元々サバイバルが目的だったからな、向こうも現地調達が基本なんだ」
「だとしても非常食でしょ!? あくまで訓練なんだし!」
「あの子達は逞しい。 何とかするさ」
「何とかするでしょうね!? 俺たちを捕まえようと!」
最悪やでぇEDF……。
別のベクトルで絶望の未来を生きている。
体育座りをする俺。
そんな姿を見た隊長、いつも通りの勇ましい声で励ましてきた。
「絶望するには まだ早い。 作戦を立てると言っただろう?」
勘違いするな。
一部はアンタの所為です。
でも他に道はない。
生き残る為には協力しなければ。
「作戦とは」
「逃げ回るのは却下だ」
「数に劣り、地理に明るくないからですね」
「それもある。 だがミーナがいるからな」
「優れた指揮官なのですか」
「ああ。 加えて固有魔法が感知系でな、三次元空間把握能力がある」
「我々のセンサーみたいなもので?」
「三次元だ、性能はもっと良い筈だ。 範囲の限界はあるようだが、詳細は不明」
それは厄介だな。
と言うことは、下手すると俺たちの居場所もバレているのでは。
「ココも危ないですね」
「すぐに移動する。 隠れていても助かる保証はない」
そう言うと、俺にPA-11SLSを渡してくる。
魔女相手に銃口向けるの!? マジで!?
「戦え。 その銃で」
「ちょっと隊長! 仲間に銃を向けるのは!」
「心配するな。 魔女はシールドを張れるし、頑丈。 なによりソレは全部模擬弾。 実弾じゃない……だが、急所は外せ」
言われてマガジンを外して確認。
本当だ。 模擬弾である。
いやでもさ……戦うのは気が引ける。
「迷いは捨てろ。 初めてエイリアンの歩兵部隊と対峙した時もそうだ。 撃たなきゃ殺られるぞ」
そうだ……撃たなきゃ殺られる(料理に)。
あの時、初めて見たエイリアンは人間そっくりだから撃ちたくなかった。
そんな甘い理由でトリガーを引く瞬間が遅れて……それだけで死んだ仲間は少なくない。
交渉団も全滅。
平和的解決を望む者もいたが、ヤツらは破壊破壊の虐殺オンリーなデストロイ。
今回、相手は魔女。
だからって交渉出来るとは限らない。
最悪は撃たなければ。
俺は生き延びたい。 もうオゾマシイモノを口に入れたくないんや!
「了解!」
初弾を込めてセーフティ解除。
やってやる……やってやるぞ!
「最悪は空軍や海軍に支援を要請する」
無線機を持つ隊長。
まさか魔女料理如きで要請されるとは、空軍も海軍も予想出来ないだろう。
でも それくらいヤバいんです。
許せ。 航空ドローンやら歩く前哨基地やらを破壊してきた陸軍歩兵隊だけど、もうダメかも知れない。
「いや……生きるんだ! 2週間の辛抱! 今までも欧州でも生き延びてきたんだ、今度も大丈夫……大丈夫だ!」
「その意気だ。 先ず現在地の建物を放棄。 食糧を持って島中央部、山奥へ向かう」
「ゲリラ戦ですか?」
「そうなるかな。 相手は陸戦に慣れていないだろう。 それは向こうも分かっている。 代わりに得意とする空中から索敵、攻撃する可能性が高い。 だが森や洞窟に入れば空からは見つからない。 ミーナや……サーニャの全方位広域探査能力が厄介だが、果たして501が"陸"相手に 何処までやれるかな?」
フッ、と笑う隊長。
なんか楽しんでるね。
俺は捕まったらナニされるか分からなくて怖いんだけど。
「バルクホルンは?」
「申し訳ないが、ココに置いていく。 そうだな、置き手紙と少しの食糧を置いていこう」
「争いを避けるためにも、いっそ全部 置いていくのは?」
「これも演習だよ」
やっぱ楽しんでるよ隊長殿……。
俺は楽しめないんですがソレは。
「ではこれより、operation:Food Defense Forcesを開始する」
本当にこんなんで良いのかよ!?
いや、もうどうにでもなーれ。
魔女料理を食わされるよりマシだと願って。
にわか知識なので、間違いやツッコミがあるかも。
EDFの武器とかウィッチ要素を出さないとと思ったり。
お気に入り、感想、評価者の皆様。
ありがとうございます、励みになります。
次回。
魔女料理から逃れる為、食糧を守る為。 只野達は武器を取り、空軍や海軍を巻き込んでウィッチと対峙する……!(未定)
本部「空軍大将の逮捕に当たっての、予備戦力的な立ち位置だからね君たち? 有事の際は頼むよ〜」
どうなることやら(他人事)。