Witch Defense Forces(WDF)(完結)   作:ハヤモ

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作戦内容:
収容したスカウトウィッチの様子を見る。
概要:
曹長ちゃんは重体。
軍曹ちゃんは軽症だが心的ショック状態。


チカラが欲しい。


37.弱者の痛み

エピメテウス艦内医務室

 

案内された場所にいたのは、ベットに横たわる知り合い。

 

 

「軍曹ちゃんに曹長ちゃん?」

 

 

なんだよ……なにがあったんだ?

 

軍曹ちゃんは無気力状態で、ベットに座っている。 怪我は……見当たらないが死んだような目をしている。

俺は知っている。 絶望した目だ。

一方、ガラス越しには曹長ちゃん。 酸素マスクを取り付けられ、何本ものチューブが身体に取り付けられている。 目は閉じたままだ。

 

 

「……只野さん」

 

 

遅れて気付く軍曹ちゃん。

蚊の鳴くような声。 光のない目で俺を見る。

 

 

「なんでここに……いや。 それよりも、なにが起きたんだ?」

 

 

側に駆け寄って尋ねるも、それがいけなかったらしい。

責められた子どもが泣いてしまうように、軍曹ちゃんは涙をポロポロと流し始めた。

 

 

「ごめんなさい……ッ! ごめんなさいッ!」

 

 

俺に抱きついて許しを乞う。

どうしたんだよ、本当に。

 

 

「私のせいで! 只野さんや皆の役に立ちたいって。 でも迷惑を掛けて……曹長さんが私の身代わりになって!」

 

 

よく分からない。

でも、軍曹ちゃんがポカしてしまい、それで曹長ちゃんが犠牲になったという形か。

 

 

「落ち着いて。 曹長ちゃんは死んでない」

「でも……でも……ッ!」

「俺に謝っても仕方ないよ。 目を覚ましたら、直接謝れば良いさ」

 

 

ビンタくらいは、されるかもだが。

仮にも軍属だ。 でも、それで学べば良い。

それを思ってか否か。 案内してくれた隊員が説明してくれる。

 

 

「もうすぐ麻酔が切れて目覚めます。 その時、お話しましょう」

 

 

微笑んで語りかける。

優しい人だな。 迷惑をかけられたというのに。

 

 

「それに、エピメテウスの皆には謝ったじゃないですか。 皆は許してくれましたし。 後は曹長ちゃんだけです」

 

 

あ、そうなの。 皆に直ぐ謝ったのか。

して皆、良い奴ら過ぎる。

切り札な艦だがら、皆気難しい連中かと思っていた。 真逆らしい。

 

 

「偉いぞ軍曹ちゃん。 皆に直ぐ謝ったんだね」

 

 

そう言って頭を撫でて褒めてやる。

少しは落ち着いたかな?

 

 

「うっうぅ……ぐすっ。 優しくしないで下さい」

「罪を与えられたいって? それは自分で背負うしかないんだ」

 

 

少し厳しいけど、優しい口調で言う。

俺たちEDF隊員もそうだから。

隣の仲間を守れなかったり。 民間人を守れなかったり。

俺は……欧州の時、逃げ出したし。

 

 

「そう……ですね」

 

 

涙を拭う軍曹ちゃん。

目元が赤くなって、くしゃくしゃだけど。

うん。 さっきよりは良くなったよ。

 

 

「私」

 

 

して、真っ直ぐな瞳で俺を見て言う。

 

 

「強くなります。 皆に迷惑かけないように。 皆を、ウィッチも世界も守れるくらいに」

 

 

もう絶望した目じゃないや。

俺は莞爾として微笑むと、もう1度、頭を撫でてあげた。

 

 

「その意気だよ」

 

 

して、タイミング良く。

 

 

「あっ。 曹長ちゃんが目覚めましたよ!」

「丁度か」

 

 

ガラスの向こう。

ムクリ、と起き上がる曹長ちゃん。

直ぐに医療班が入っていき、安静にと姿勢を整えていく。

 

 

「面会出来ますか?」

 

 

俺より先に軍曹ちゃんが尋ねた。

恐怖心はない。 決意した声だった。

 

 

「もちろん。 少し、待っていて下さい」

 

 

言って、駆けていく隊員。

良かった。 現実は、そこまで俺の事を嫌ってなかった。 それこそ軍曹ちゃんや曹長ちゃんも。

 

 

「はいっ、お待たせしました。 面会は大丈夫との事です。 ついて来て下さい」

 

 

言われてついて行く俺と軍曹ちゃん。

このまま、絶望し続けなくて良かったよ。

希望は、必要だ。

 

でも。

 

それが歪んだ希望になっていくなんて、この時の俺は……EDFは思いもしていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー EDFーーーーーー

 

目覚めた時。

そこはEDFの潜水艦の中だった。

 

そこで只野二等兵と軍曹に"生きて"再会した。

 

して謝られた。

独断専行した事を。

して宣言された。

もっと強くなります、と。

 

続いて笑顔で報告される。

 

連合軍の新兵器。

ウォーロックは撃墜した、と。

安心してくれと。

続く報告。

ブリタニア第501戦闘航空団基地はEDFの精鋭部隊の活躍で制圧、マロニー空軍大将は逮捕、指揮していた第1特殊強襲部隊は全滅。

だからもう、何も心配しなくて良いと。

 

 

「あ、ああぁ…………?」

 

 

なんで?

なんでだ?

 

なんでEDFは勝つんだよッ!?

 

私がEDFから情報や技術を盗み、連合に流していたのに!

その技術を盛り込んだのに!

正面からのEDFの圧倒的な火力を正面から受けても平気になるような技術を!

 

勝てない。

本物には。 EDFには勝てない。

怖い。 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!

ネウロイなんかより、よほど!

 

それに。

なんで私は生きているんだ!?

それも恐ろしい!

 

EDFの医療技術も怖い。

治癒魔法の比じゃない。

死者すら蘇らせられるんじゃないか!?

悪魔だ……! EDFはバケモノだ……!

 

あのビームは、いくらウィッチでも確実に命を削ぐチカラをもっていた!

軍曹に死なれては後味が悪く、つい情に流されて庇って被弾した。

でも、誰かを救って死ねるなら良いとさえ思った。

こんな裏切りに葛藤する人生を終わらせられるから。 EDFが倒されるのを見れなかったのは残念だと思ったけど。

 

でも結果はコレ!

 

 

「生きてる……生きてるよぉ、あ、ああぁ」

 

 

現実は非情だ。 いつだって分かっていた。

分かっていた、つもりだった。

でも。 分かっていなかった。

 

EDF。 理不尽な存在。

神がいるならば問いたい。

 

何故、私を生かしたの?

何故、死神に私を助けさせたの?

 

 

「ひゃああああああああああッ!!?」

 

 

声にならない悲鳴を上げる。

私の喉が潰れるんじゃないかってくらい。

ううん。 そもそも、これは私の喉なの?

それも分からなくなって……両手で掻きむしったり、締め上げる。

苦しみが唯一、救いの感覚で───。

 

 

「曹長さんッ!?」

「発狂!? 錯乱状態だ!」

「いかん! 麻酔を打て!」

「肩に打ち込め! 眠らせるんだ!」

 

 

次には激痛が走って。

私は再び、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「WDF計画。 都合の良い被験体が出来たな」

「ええ。 2つも、ね」

 




ウォーロック撃破、ブリタニア空軍大将逮捕。
そして……発狂。

EDFは どうなるのか。

水面下ではWDF計画が動き出す……?
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