Witch Defense Forces(WDF)(完結)   作:ハヤモ

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作戦内容:
ウォーロック撃墜並びに空軍大将の逮捕、お疲れ様でした。
ですが休んでいる暇はなさそうです。
たった今、アントウェルペン港から救援要請がきました。
なんと氷山に紛れてネウロイが港に侵攻してきたとの事。
水が苦手の筈のネウロイが、何故氷山に……。
とにかくコレを迎撃、これを破壊します。
また、必要なら輸送中の"作業用クレーン"を使用して下さい。
なお、スカウトウィッチには話があります。 科学班の人に従い エピメテウス艦内で待機して下さい。
備考:
ブリタニアだけじゃなく、多方面でEDFが活動中の様子。



ネウロイ反抗阻止!
38.MK-1出撃! あの氷山を殴れ!


EDFカールスラント仮設本部

 

基地機能の引っ越しに追われる中でも戦場を見なければならない。

本部は少ない戦力を割いて様々な方面に偵察を送り込んでいた。

それはウィッチだったり、男性一般連合軍兵士であったり、正規EDF隊員だったり。

ブリタニア方面はStorm-1、Storm-2、501の活躍により当初の目的を果たした。

これで連合軍側でのEDFの影響力は高くなるだろう。

して発言力の増加に伴い、物資や予算の都合をつけてくれる事を狙う。

 

 

「ブリタニア方面は これで良い。 スカウトウィッチが2名重症のようだが……狙った様に都合の良い犠牲だな」

 

 

報告書を見て淡々と言う司令官。

10代の少女が傷付いているのに、この言い方である。

冷たい様だが戦場にいる以上、そういった事は常に起こり得るし、本部としては犠牲になる兵士が出るのは予想している。

問題にしているのは被害規模だ。 501が壊滅するとかStormが死ぬとか、基地が吹き飛ぶとか、民間人を巻き込むとか。

ウォーロックが暴走するのは全くの想定外ではなかったが、赤城が巻き込まれたのは良くなかった。

だがStormやエピメテウスの活躍で撃沈は免れて良かった。

これで扶桑にも良い顔をして貰えるだろう。

実に都合が良い被害者である。

それに、スカウトウィッチ2名が傷付いたのも都合が良いのは事実。

それを理由に、エピメテウス艦内に留めておく事が出来る。

 

 

「Storm-1とStorm-2を投入したのだ。 逆にそれくらいで抑えられて当然か……情報部の思惑通り、エピメテウスとも合流したそうだからな」

 

 

報告書を脇に置き、別のバインダーを取り出す。

そこにはWDF計画の文字。

 

 

「WDF計画。 ウィッチに【かの者】のチカラを加えて肉体改造し、驚異的な戦力増加を図る計画……」

 

 

詳細を読む。

戦略情報部 少佐発案。

計画が漏れるのを避けるため、隠密性の高い潜水母艦エピメテウス艦内に被験体を収容、そこで手術を行う。

完了後、運用データを取りEDFの戦力として組み込む事とする───。

 

 

「……連合とやり取りするだけなら良い。 だが、これには反対だな。 こんな事をしてまでEDFを存続させたいのか。 いや……そもそも〈コレ〉はEDFなのか?」

 

 

額に手をやり、バインダーを脇に投げる司令官。

本部とは独立している戦略情報部と科学班が独断で決めた計画だ。

事後承諾すら必要とせず、強制的に推し進めており、本部が知ったのは最近の話である。

戦力も少なく、切迫した中で各個で生き残ろうと足掻いた結果だ。

だが実態は組織の足並みが揃わず、して本部には止めるチカラは無かった。

 

 

「いつから道を踏み外した? 戦前から間違えていたのか……インドの山中で宇宙船の残骸を見つけた時から……EDFを結成する前から……」

 

 

この惨状にボヤきたくもなる。

彼は戦時、戦略情報部の少佐からEDFの成り立ちを聞かされた。

その会話の中で、何故エイリアンが地球を襲って来たのか、その考察を思い出してのボヤきだった。

エイリアンがかつて、地球に文明を授けたのでは、という話や、そもそも"人間そのもの"もエイリアンが"創った"可能性───。

今度は我々が模倣犯のような事を───。

 

 

「嘆いても仕方ない。 出来る事を───」

 

 

そんな時。 頭痛の種を植え付けた戦略情報部の少佐から緊急連絡。

 

 

「大変です。 アントウェルペンから救援要請!」

 

 

切迫した声。

本部もすぐさま対応する。

 

 

「詳細に報告してくれ」

「氷山が港に接近中との事。 このまま衝突すれば港湾設備が破壊されてしまいます」

「氷山?」

 

 

ネウロイでは無いのか。

なら無理に兵士を出動させる事もない。

現地の連合軍にでも任せれば良いだろう。

氷山が港に来る理由は分からんが……。

そう思っていたら、

 

 

「それが、氷山から敵性反応を確認。 ネウロイと思われます」

「なに? 氷山がネウロイだと?」

 

 

なんと氷山がネウロイだという。

 

 

「恐らくアントウェルペンを橋頭堡として、カールスラントや各国への反抗に出るつもりだと推測されます」

「くそっ! そういう事か!」

 

 

司令官は慌てた。

アントウェルペンは欧州を代表する港湾都市で、港湾設備も充実している。

故に民間人にとっても軍隊にとっても重要な補給基地であり、ここが堕とされるとなると、かなりの痛手を負わされる。

しかも、そこからカールスラントや各国に散るように侵攻が出来る事を考えると、ネウロイがココを橋頭堡としてようとしているのは想像に難しくない。

氷山でやって来た理由は分からないが、人類が「ネウロイは水が苦手」という概念を持っているから、油断させる為に氷山に身を隠してやって来たとも考えられる。

或いは進化しているのか。 なんにせよ、戦局は好ましくない。

 

 

「現地にいる連合軍とレンジャー51だけでは危険だ! 各方面隊に緊急電! 戦闘可能な部隊は直ちにアントウェルペンに集結させよ! EDFは氷山型ネウロイを迎撃する!」

 

 

慌ただしく動き回る本部。

氷山型ネウロイ。 3期に出てきたアレである。

本当は、もう少し未来の話なのに現れるとは。 これもEDFの影響か。

正史では、帝政カールスラントの首都ベルリン奪還の為の大規模な軍事作戦計画【オペレーション サウス・ウィンド】の当初の補給予定地であった場所。

人類がベルリン奪還の為の基地を、この世界ではネウロイがベルリン(以外もだろうが)を奪い返す為の橋頭堡にしようとしていると考えると……皮肉なものだ。

 

 

「Storm1にも連絡! 彼らも現地に向かわせろ! それと現地に輸送中の"鉄クズ"は、そのまま投下! 氷山にぶつけさせる!」

 

 

して、アレが再び役に立ちそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー EDFーーーーーー

只野二等兵視線

 

 

「で、俺たちはアントウェルペンに向かっていると」

 

 

俺とストーム隊長は本部の無茶振りで再び空を飛んでいる。

ブルートに燃料補給をして、簡単な軽食をして、直ぐテイク・オフだ。

休暇はいつ貰えるんですかね?

 

 

「文句言うな。 仲間を助けるぞ」

 

 

隊長は正義感が強いね。

さすが、かの者を倒した英雄は違う。

 

 

「うぅ〜、苦しい……ッ!」

「また缶詰か」

「ぐえぇ」

「少しは休ませてぇ」

「EDFは人使いが荒いな」

「仲間の為だ、我慢しろ」

「訓練だと思えば良い」

 

 

でも背後に乗っている客は苦しそうですね。

エースと英雄は似て非なる存在なのかも知れない。

ゆうて、彼女らも10代の女の子だしな。

……むぅ。 可哀想に思えてきた。

 

 

「501、聞こえるか? 降下5分前! 高度はこのままだ、急ぎチェック」

「501了解しました」

 

 

やり取りを交わす隊長とミーナ。

悲しいかな、戦場だ。

少女達もチカラがある以上、銃を持って押し寄せる敵を撃たねばならない。

 

 

「本当は現地まで輸送したいが、そんな悠長な事をしていられない。 最低限の航続距離を稼いだら、ストライカーユニットの方が速い以上、先に行っていて貰う」

「ええ。 分かってるわ」

 

 

将来の夢があっただろう。 可愛い服を着て街に遊びに行きたいだろう。 愛していた者がいただろう。

でも戦争が、ネウロイが奪ってしまった。

して軍隊に組み込まれ、消耗品の兵士の1匹として振舞わなければならなくなった。

俺もだけどさ。 俺は……ほら。 軍隊って格好良いなーとか、そんな軽い気持ちで入隊しちゃったからな。

でも少女達は違うワケで。

平和だったからね、あの頃は。

今や遠い記憶になっちまった。

 

 

「チェック大丈夫!」

「了解。 合図で扉解放、飛んで行け!」

 

 

おっといかん。

仕事中だ、集中しなきゃ。

 

 

「ブルートコース良し! よーいよーい!」

 

 

赤色の、扉の解放ボタンに指を当て、

 

 

「降下降下降下ーッ!」

 

 

ボタンを押し、解放された青色へ。

 

 

「いっけー!」

「行ってきます!」

「解放されたー!」

「お待ちしておりますわ!」

「着く頃には仕事は無いさ」

「油断するな!」

「ヒャッホー!」

 

 

口々に言いながらスカイ・ダイブ。

高度を自由落下で一気に下げて、速度が乗ったところで水平飛行へ戻していく501のウィッチーズ。

スゴいね。 蜘蛛の子散らす……じゃなくいけど。 そんな感じ。

 

 

「みんな……無事で」

 

 

コックピット越しに、少女達を見送る。

あっという間に点になり、見えなくなっていく。

心配だ。 親の気持ちって、こうなのだろうか。

 

 

「大丈夫だ。 あの子達は強い」

 

 

隊長が言うならそうなんだろう。

俺より見てきたんだ、そうに決まってる。

 

 

「そうですね」

 

 

心配、といえば。

 

 

「曹長ちゃん、軍曹ちゃんは大丈夫でしょうか」

 

 

エピメテウス艦内に待機命令を下された2人が気になる。

なんでも治療の為に残されたらしい。

曹長ちゃんは発狂してしまったし、軍曹ちゃんは……診察されて何か悪いモノでも見つかったのだろうか。 不安だ。

 

 

「…………エピメテウスは人類の切り札、今日まで生き延びてきた潜水母艦だ。 隠密性は高い。 何より水の中にいる以上、ネウロイも簡単には手を出せない」

「ですよね」

 

 

でもさ、直ぐに面会出来ないよな?

潜水母艦にアプローチなんて、おいそれと出来ないだろうし。

まさか、このまま会えない、なんて事にはならないよな?

 

 

「心配か?」

 

 

不意に隊長が尋ねる。

 

 

「まぁ、人並みには」

「そうか」

 

 

言って暫く無言になる隊長。

ローター音だけが世界に響く。

なんだ。 隊長は何か知っているのか?

確か隊長には戦略情報部のオペレーターが付いていた。

だからってワケじゃないが、エピメテウスが この世界にいる事、ウィッチが艦内に留まる理由も───。

 

 

「隊長」

「後で話す。 今は任務を遂行しろ」

「約束ですよ」

「ああ」

 

 

隊長なら約束を守ってくれる。 そんな気がする。

なら今を集中しよう。 守る者がいる。 少なくとも、この世界には。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー EDFーーーーーー

アントウェルペン港

レンジャー51

 

 

《緊急放送。 アントウェルペンにネウロイ接近中。 お住まいの方は至急、避難して下さい。 繰り返します───》

 

 

非常放送がラジオで流れ、連合軍が避難誘導、アントウェルペンの人々は悲鳴を上げながら港から遠ざかっていく。

 

欧州を代表する港湾都市アントウェルペン。

突如として接近する大型氷山に、現地にいたレンジャー51は身を震わせ戦慄するよりなかった。

 

 

「おいおいマジかよ」

「氷山が動いてるぞ」

「デカい」

「コッチに向かってきている!」

 

 

レンジャー51は輸送されてくる"作業用クレーン"の為に港のパトロールをしていたに過ぎない。

だから重火器なんて持ち合わせておらず、いつものPA-11である。

そんな装備で大丈夫なワケがない。

彼らが何時ぞや遭遇したエイリアン幼生体なら兎も角、氷山をどうにか出来る武器ではない。

 

 

「どこから やって来たんだアイツは」

「普通じゃないのは確かだ」

 

 

船が通れるとはいえ、入り組んだ所にある港に器用に突進してくる氷山。

センサーには敵を表す赤丸表示が映る。 どうやら氷山は普通ではないらしい。

 

 

「アントウェルペン市民の避難が遅れています。 避難を優先させますか?」

「自主避難させろ。 細かい事は連合軍に任せておけ」

「了解」

 

 

EDF以外にも駐在連合軍がアントウェルペンにいるし、連合軍の要塞砲が地味ながら氷山に砲撃を喰らわせている。

が、しかし。

氷山は時々表面の氷が壊れつつも、止まる気配を見せない。

やはりEDFも頑張らないと ならなそうだ。

 

 

「本部の話だと、あの氷山はネウロイらしい。 危険だ、破壊するぞ!」

「しかし、我々の武装では!」

「救援が来る! それと、あの"クレーン"だって来る! それまで要請でもなんでもして、時間を稼げ!」

「"アレ"か! あれならば、或いは!」

「何とか出来る……ッ!」

 

 

クレーンのアレ。

それは勿論アレである。

政府主導の下で天文学的な予算を注ぎ込まれ、十数機が建造された、全高47mの超大型移動式クレーン。

胸元に「安全第一」の文字が書いてあるアレ。

運用にあたっての安全性やコスト面での欠陥が露呈、関係者の責任問題にまで発展した挙句にEDFに譲渡、倉庫に死蔵されていたアレ。

活躍に恵まれない日々が続いたのもあって、戦前から、とある作戦で有用性を見出されるまで【鉄屑】呼ばわりされていたアレ。

Storm-2の職場であった228基地にもあったアレ。

衝突回避プログラムを切る事で、質量兵器と化したアレ。

E1合金製で、エイリアンの歩兵部隊の集中砲火にも耐えるアレ。

1940年代の西暦世界でも怪生物が出るかも知れないし、港湾設備に何とか使えるかもだし……つーかぶっちゃけ邪魔だからという理由でアントウェルペンに押し付ける形で輸送されているアレ。

 

 

「分かったか! 絶望するレベルじゃない!」

「イエッサー!」

「EDFッ!」

 

 

言って発煙筒を投げる51の隊長。

モクモクと空に赤い煙が上がると、直ぐに輸送機がやって来てコンテナ投下。

中から、どうやって コンテナに収まっていたんだというビークルがドドンッと現れる。

 

 

「これはEMC!?」

 

 

大きなパラボラアンテナを取り付けたような大きな車両が現れたのだ。

その名もEMC。 研究段階の超兵器「原子光線砲」を搭載した大型車両。

製造コストは1台1億ドルとも言われているが、原子光線砲は山を一瞬で消滅させるほどの高圧エネルギーを生成、照射する事が出来る。

 

 

「よく要請出来ましたね!?」

「使えるモノは何でも使えって本部がな」

「とにかく、これで氷山なんか吹き飛ばせますね!」

「救援いらなかったんじゃないですかー?」

 

 

フラグを立てつつ、51の隊長が乗り込み、操作。

 

 

「吹き飛べ氷山ー!」

 

 

氷山にズビビビビ〜ッと電撃のような、パラボラから原子光線が放たれる!

 

刹那、氷山は瞬時にバラバラ。

中に隠れていたネウロイもろとも破壊してしまった。

 

 

「よっしゃー!」

「さすがEMC!」

「救援なんていらなかった!」

 

 

が、直ぐに良くない事態が起きる。

 

 

「待て! センサーに反応多数!」

「目視で確認しろ!」

 

 

そう。 赤丸が点々とセンサー上に現れたのである。

慌てて51が確認すると、そこには。

 

 

「ひょ、氷山多数!」

 

 

なんと、同じように氷山が押し寄せて来るではないか。

 

 

「へ、へへ! 何個来ようとEMCがいるんだ! 怖くないぜ!」

「てな訳で。 やっちゃって下さい隊長!」

 

 

部下がEMC任せの発言をするも、ウンともスンとも言わないEMC。

 

 

「ど、どうしたんですか?」

「…………それが、EMCのエネルギーは1発分しか無かったんだ」

「「ナニィッ!?」」

 

 

なんと再度の発射が出来なかった!

変なところでコスト削減か。

これでは氷山を食い止められない!

 

 

「くそっ! ここまでか!?」

 

 

51が挫折しそうになった、その時。

 

 

『絶望するには、まだ早い!』

 

 

無線が入る。

どこかで聞いた事があるような、そんな声だ。

 

 

「誰だ!?」

「上だ! 上を見ろ!」

 

 

言われて上を見ると。

そこには輸送機ノーブル数機で輸送されてくる、黄色いボディの超大型ビークルが!

 

 

『こちら【ギガンティック・アンローダーバルガ】MK-1! 氷山を食い止める!』

 

 

そう。

人型の移動式クレーン、ギガンティック・アンローダーバルガである!

 

 

『切り離す! 衝撃に備えろ!』

 

 

港を背中にし、守るような海上の位置でバルガは輸送機に切り離される。

して、バシャーンと大きな水飛沫を上げ、バルガが この世界に降り立った!

 

 

「うおおおおおおっ!」

「EDFッ! EDFッッ!!」

 

 

応援を受けつつバルガは前進。

 

 

『バルガ、バトル・オペレーション!』

 

 

操縦者が叫び、目の前の氷山をブン殴る。

圧倒的な質量のパンチで、氷が一気に砕け散る。

 

いつ見ても、巨人が戦う光景は凄いものだが、

 

 

「「なんじゃ ありゃあ!!?」」

 

 

初めて見る連合軍、駆け付けた501は見て、驚愕するほか なかった……。

 




バルガで氷山を殴らせたいだけだった……(殴。
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