Witch Defense Forces(WDF)(完結)   作:ハヤモ

55 / 91
作戦内容:
キール奪還の為、道中の状況を知りたい。
只野はスカウトに随行、偵察を頼む。
EDFは陸路を調べるが、空路は501部隊のバルクホルン大尉とハルトマン中尉が調査している。
互いに連絡を取り合い、任務を遂行してくれ。
!?
ハルトマン中尉が墜落しただと!?
備考:
航空ネウロイがいるが、陸は森。
奴等がどのように此方を認識しているか不明だが、目視の様なものなら、こちらが見つかり難い筈だ。
只野は対空兵装有。
補助装備、多重ロックオンシステム



48.ハルトマンを救助せよ!

◆キール手前の森

只野二等兵視点

 

スカウトと合流し、俺を含んだ偵察部隊は森を歩いて進軍ルートを探っていた。

人手不足から、純粋な偵察要員だけでは足りないらしく、俺も駆り出された形だ。

つっても、こんな森の中だ。

どこをどう言っても木々が邪魔なものだし、専門外の俺がいる意味あんのか?

 

 

「いっそ森を焼き払うのは?」

 

 

森を歩きながら、ボヤいてみた。

Storm1が空軍に要請して、ナパーム弾を投下してくれれば直ぐに済む。

レンジャーの歩兵用ナパーム弾をグレランでばら撒く方法もある。

後は火炎放射器で焼き払うとか。

その点、フェンサーのフレイムでも良い。

火力ならレンジャー装備よりダントツだ。

 

 

「却下された」

 

 

前を歩きながら返答するスカウト。

ありゃ、ダメか。

 

 

「燃えている間は進軍出来ないし、空の脅威から身を隠す場所が無くなれば攻撃を受ける為だ。 それから」

 

 

それから?

ここまででも、十分な理由だが。

 

 

「エイラ少尉が会議室に乱入してきてな、森を焼き払うのに断固反対したらしいぞ」

 

 

マジか。

隊長にダイレクトアタックしにいっただけじゃなかったのか。

 

 

「あのダナダナのエイラが? サーニャにベタベタで自分の意思が無さそうな、あのエイラが?」

「結構、酷いな お前」

 

 

ナニか言われたが気にしない。

向こうにも非はある。

 

 

「まあ確かに。 501じゃリトヴャク中尉と共にいる事が多かっただろうが、自分の意思くらい あるだろう」

 

 

スカウトも何気に酷くね?

自分たちで調査した結果から言っているのもあるだろうが、やっぱ同じ事を考えてるじゃないですかヤダー。

 

 

「なんでも森に住む生物の生態系がどうのって理由で反対したそうだ」

 

 

へぇ、エイラにそんな心が。

森や湖、自然豊かだろうスオムス出身だからかな。

 

 

「それだけなら少尉とはいえ、子どもの言い分だ。 いや、階級だけで見ればStorm1は大将。 戦力比の面からもEDF側に決定権があったが」

 

 

俺は僅かながら、眉間に皺を寄せた。

それ有効なの?

曹長ちゃんも階級どうので絡んできた時があったけど、連合とEDFだ。

俺は詳しくないが、管轄どころか世界が違う。

仲間とはいえ、それぞれに大将、司令官がいるのを考えると、本来なら命令系統は混ぜられない。

仲が悪いのも考えると、溝は深いぞ。

人類連合軍と全地球防衛機構軍。

"人類"と"地球"の組織は似て非なるものだ。

 

……エイリアン連中も"EDF"だったのだろうか。

侵略性外来生物の体液には環境を改善させる謎の能力があったとかなんとかだし。

緑の変異種なんか、コンクリートを食べて、人類がいた痕跡を消していたという。

人類ではなく"地球"を考えれば、それこそEDF……地球防衛軍だったのかも知れない。

 

それは言わないが。

今、議題にする事ではないし、言っても仕方ない事。

それこそ二等兵の、下っ端がナニ思おうがナニも変わらないのである。

当然、責任も発生しない。 着の身着のまま気楽な武士道。 刀はないが。

それらを所持している坂本辺りが聞いたら激昂されそう。

それもまた、違うところだ。

でも仲良く出来ない理由にはならない筈だ。

そう信じたい。

それを確かめるように、俺は言った。

 

 

「エイラの言い分に従った、と」

「ああ」

 

 

スカウトは続ける。

 

 

「さっきも言った、デメリットを理由にしていたがな。 結局はそうなる。 大将もエイリアンや怪異に強くても、子どもには弱いらしい」

 

 

成る程、と互いに笑った。

こうやって人間味のある会話や内容に救われる。

Storm1も救世主だの英雄だの死神だの言われるが、やはり人間なんだなと思うと安心するよ。

して、連合とも分かり合える。

それは思っただけだが、無慈悲で冷血に思えたエイリアン連中とは違うところだ。

 

 

『任務中だぞ。 私語は慎め』

 

 

うおっ、無線がきた!

501部隊の真面目ちゃん、バルクホルンからだ。

やべ、無線がフルオープンだったか。

 

 

「すいません大尉」

 

 

スカウトが謝った。

俺もならって謝る、素直にしよう。

歳下に言われると反抗心が湧く事もあるが、軍事行動中だしな。

言われた事は間違いではない。

でもね、言い訳するとね。

EDF隊員は皆、喧しいんだよ。

諦めて慣れていってね!

 

 

『分かれば宜しい───此方は先程、小型ネウロイの軍勢と遭遇、これを殲滅した。 他に敵影なし。 其方はどうだ?』

 

 

あ、戦闘があったの?

森の中からだと、草の隙間を縫って僅かに青空が見える程度。

空を飛んでいるだろう、バルクホルンと僚機のハルトマンが見えない。

当然、空戦も見えない。

そういや銃声が遠くから聞こえたような。

 

 

「こちらは森の木々ばかりで平和なものです。 ただ、歩兵にとっては進み難いですね」

 

 

いかんな、戦場でボーッとしているのは。

気を引き締めて、センサー反応を確認。

少し離れたところに、青丸表示が2。

高度が高い。

間違いなく、バルクホルンとハルトマンだ。

こういう時、無線含めたEDFの技術が役に立つ。

 

 

『私たちウィッチが空路を確保したら、輸送機に乗る方法もあるだろう』

 

 

パンが無ければケーキを。

陸がダメなら飛行機使えば良いじゃない。

じゃあ、その飛行機は誰が用意してくれるのかな?

リベリオン辺りがフライングパンケーキを寄越してくれるのかな?

 

 

『私たちが抱えて運ぶのかなー?』

 

 

そこにツッコミを入れるハルトマン。

そういう子は好きよナイス(ウー)マン。

 

 

『人数が多過ぎる、無理だ。 ひとりひとり抱えて運ぶのは非効率だし、その間は機動力が落ちるばかりか戦闘に参加する事も───』

『そういう事。 足並みを揃えるのは難しそうだね』

 

 

そうですね、とスカウト。

陸路と空路の差は大きい。

 

 

『そうだ、ウィングダイバーは? EDFには飛べる歩兵隊がいた筈だ』

 

 

飛べるけどね、飛行時間が短すぎるよ。

森の中から、モグラのようにピョコピョコ飛び出しながら移動しろと言うか。

まぁ、それでも徒歩より速いだろうけど。

 

 

「ウィングダイバーの飛行ユニットは、ウィッチのように長距離は飛べない。 速度も違うよ」

 

 

取り敢えず、事実を言っておく。

 

 

『只野含めた、皆がユニットを背負うのは、どうだ? 少しは進軍速度が速くなるんじゃないか?』

 

 

だから速度が……。

それに輸送機共々ユニットが用意出来ない。

その前に男が背負って戦ったなんて話、聞かないんだよな。

ナニか理由があるんだろう。

取り敢えず分かっていることは、

 

 

「ウェイトオーバーだよ。 20キロは痩せないと無理ダナ」

 

 

体重制限に引っかかる事ダナ。

正確な重量は分からないが、そのくらいは痩せろと言われた事があった気がする。

 

 

『なら痩せろ』

 

 

無茶言うな。

 

 

「今すぐ始めても無理ダナ」

『やってもないのに諦めるな。 カラダを仕上げろ!』

 

 

根性論になってきてない?

EDFも、そういう節はあるけどさ。

俺は苦手なんで却下な。

 

 

「別の方法を考えるよ。 その為の偵察任務だからね」

 

 

そう言いつつ、というか任務中に私語を謹んでなくねと思いつつ、センサーをチラ見しての森林浴再開……。

 

 

「むっ!?」

 

 

敵の赤丸表示確認。

ナニかが来る、速いッ!?

 

 

「敵襲ッ!」「敵ですッ!」

 

 

俺とスカウトが ほぼ同時に叫ぶ!

だが、スカウトは流れるように詳細を言う。

 

 

「敵1、北東からダイブ、高度約───、速度約───、なおも加速中、其方を見つけたと思われます、武装形状共に不明!」

 

 

流石は偵察部隊と褒めてやりたいところだ。

やっぱ本職は違う、俺には出来そうにない。

 

 

『ッ!』『見えたッ!』

 

 

刹那、激しい銃声。

センサー上では滅茶苦茶な速さと機動を描く赤丸が映し出された。

バルクホルンとハルトマンは既に視認可能距離だ、くそッ!

 

 

「馬鹿な! なんて動きをしてやがる!?」

 

 

思わず悪態をついてしまう。

センサー上では赤丸が高速の羽虫のように動き回っていた。

速いだけでなく、EDFの戦闘機ですら真似出来ない機動を取ってやがる!

 

 

『うわあああッ!!』

 

 

悲鳴が無線越しに聞こえた、ハルトマンだ!

 

 

『ハルトマンッ!?』

 

 

センサー上にて、ひとつの青丸が高度を下げている。

森の中からじゃ分からないが、恐らく撃墜されたぞ!

 

 

『くそぉ!! このッ、このぉッ! よくもハルトマンをッ!!』

 

 

僚機が墜落したにも関わらず、激しくなる銃撃音。

ダメだ、バルクホルンは感情に囚われて冷静を失っている!

 

 

「バルクホルン大尉! ダメだ、撤退しよう!」

『ハルトマンが! ハルトマンが堕とされたんだぞ! 見捨てられるか!』

 

 

今の彼女のみでは勝てない!

幸い、俺ら歩兵に航空ネウロイは気付いた素振りがない。

 

 

「ハルトマン中尉は俺が回収する! だから安心して撤退するんだ!」

 

 

ここは森。

航空戦力が、草木に埋もれる歩兵を易々と見つけられるものか!

森を潜り進んで、ハルトマンを回収、友軍圏内まで撤退する!

 

 

『ふざけるな! 何が安心して───』

 

 

ふざける?

ふざけてない、俺は本気だ。

 

 

『"ただの"二等兵! 命令だ! 援護し───』

 

 

ふざけてるのは。

 

 

「お前がふざけるなよッ!!」

『ッ!?』

 

 

大尉にキレる二等兵。

ヤベェ、後で殺されるかも。

いや、その心配より今は。

 

 

「冷静さを欠いて、自分や戦況を見失うな! 次に何をするべきか、何が最善か考えろ! 現状戦力じゃ対処出来ないんだよ! 撤退して陣地から友軍を引っ張り出せ! じゃなきゃお前もハルトマンも死ぬ!」

 

 

1番、冷静さを欠いてるのは俺だけどな!

言っていることも滅茶苦茶だし!

アレだ、感情のままに階級を持ち出されてイラッときたのかも知れない。

軍人にあるまじき行為。

勿論、それは俺である。

あいや、今までの経験や勘から、バルクホルンが このままだと死ぬ可能性が高い気がしたからさ……仕方なく。

 

 

「良いから撤退! 後は歩兵の仕事ッ!」

『〜〜ッ!』

 

 

して、想いが通じたのか理性が勝ったのか。

バルクホルンと思われる青丸は後方へと下がっていった。

よし。 じゃ、仕事の時間ってワケだ。

 

 

「おい只野……勝手に俺らも巻き込まないでくれよ」

 

 

あ、振り返って見た偵察部隊の面々の顔がゲンナリしている。

 

 

「すまん、申し訳なく思っている」

 

 

平謝りしとこ。

とりま、この場においては穏便に頼むよ。

 

 

「言いたい事は分かるがな……仕方ない。 ハルトマン中尉を助けに行こう」

 

 

なんだかんだ、俺に付き合ってくれるというスカウト。

優しいねぇ、でも却下。

 

 

「俺ひとりで良い」

「なに?」

「人数は少ない方が見つかり難い。 それに、スカウトは本来の仕事……後方に戻って情報を持ち帰って欲しい」

 

 

偵察部隊は戦闘が任務じゃないからね。

基本、避けるべき事である。

その上で情報を持ち帰る。

 

 

「それに対空兵装は俺だけだ。 なら、俺が行くべきだろう?」

 

 

敵の大群に備えてMLRA-TWを持ってきたが。

どうやら、敵は1匹の模様。

して、相手から森に埋もれる俺を捕まえるのは困難な筈。

同じ位置に留まらなければ、いくらでもやり様はある。

 

 

「レーダー支援じゃない方を持ってきたが、正解だったな」

 

 

そう。

レーダー支援システムがなければ、多重LCシステムを起動すれば良いじゃない。

 

 

 

 

 

◆ジークフリート線

Storm1視点

 

 

「なに!? ハルトマン中尉が撃墜された!?」

 

 

スカウト及びバルクホルンからの無線報告に、俺は声を荒げてしまう。

なんでも、高速かつ高機動のネウロイと遭遇、これと交戦してハルトマンが撃墜されたという。

 

くっ。

ハルトマンが撃墜されるとは。

不意打ちに近い攻撃を受けたとしても、そう易々と堕とされる子ではなかった。

スコアだけでみれば、この世界にて人類最多の撃墜スコアを叩き出していた、それくらい凄い子だ。

 

 

「本部に連絡、増援を要請」

「了解」

 

 

俺は近くの仲間に指示しつつ、周辺地図を広げ、状況を再確認。

スカウトは森の状況と、この事を伝えつつ此方に帰投中。

バルクホルンは救援と態勢を整えるべく撤退、迎えに宮藤とリーネが向かった。

只野のみが現地に残り、ハルトマンの回収を試みている。

只野は二等兵だが新兵ではない、歴戦の戦士だ。

対空兵装もしている。

地形も森、航空ネウロイ相手には独り立ちでも何とか戦える環境にある。

 

 

「だが、仲間を独りで戦わせろとはEDFの誰もが学んでいない」

 

 

楽観は出来ない。

Storm4が孤立奮戦していた時も、仲間が駆けつけて共に戦った。

今回はStorm2に向かってもらう。

3、4はユニットが大きく音もある。

森で跳ねるにも、木々を薙ぎ倒すにも目立つからな。

持ち堪えてくれ只野。

 

 

 

 

 

◆キール手前の森

只野二等兵視点

 

スカウトと別れた俺。

センサー反応を頼りに、ハルトマンを探す。

上空を通過する赤丸に気を配りつつ、森を歩くのは大変だ。

 

 

「たぶん、この辺だと思うんだが」

 

 

陸戦ネウロイが潜んでるかも分からない。

PA-11SLSを構えつつ、しかし航空ネウロイにバレた時を考え、素早くMLRA-TWに切り替えられる態勢をしつつ前進。

森とは隠れられる場所が多い反面、視界が悪い。

銃弾も───ネウロイの場合はビームだが───簡単に草木を抜けるから、バレたら終わりだ。

多くは遮蔽物として機能しないのだ。

こういう場合、先に見つけられるかどうかで勝負が決まると言っても過言ではない。

幸いにも俺には、センサーと対空兵装がある。

だからといって勝てるかは分からない。

ハルトマンを回収したら、さっさとズラかるぞ。

 

 

「むっ?」

 

 

少し開けた場所に出た。

そこだけ陽が当たり、広場のようだ。

木々が倒れているあたりから、ハルトマンが墜落した衝撃で?

そう思った時、その倒木に下敷きになるようになっている人影が!

 

 

「ッ!」

 

 

ストライカーユニットもある!

まさかハルトマンが!?

 

 

「いや落ち着け。 センサー反応は別にある」

 

 

思わず駆け寄りたくなる衝動を抑える。

友軍表示の水色は、別の場所にあるし。

敵の罠かも知れない。

あそこは空から丸見えの位置だ。

昔からの戦術で、パイロットを助けにくる敵を待ち伏せして殺すなんてのもあるからな。

 

エイリアン連中も似た事をしていた。

街に取り残された俺らを助けようと救援部隊が送られた時だ。

さも救援が来るのが分かっていたかのように待ち伏せ攻撃をしたらしい。

 

ネウロイに そんな知性があるかは知らないが、戦術的な動きをするのは見てきた。

或いはそうかも知れない。

 

 

「騙されるなよ、俺」

 

 

森の傘から出ないようにしつつ、SLSに備わる倍率スコープを覗き込む。

して、俺は見た。

 

 

「ほらな」

 

 

スコープ越しに見えたソレ。

上着やストライカーユニットは本物みたいだが、肝心の"本体"は なんと藁人形。

俺はスコープから目を離した。

 

 

「デコイか……まさかネウロイが?」

 

 

そんな器用とは思えない。

なら、ハルトマン本人が作ったモノだ。

ネウロイを欺く為だろう、器用だな。

そうと思われるセンサー反応も近い。

耳を澄ませれば、水の音。

川か。

そこに混ざる雑音……の見極めは出来ない。

スカウトなら出来ただろうか?

 

 

「行こう」

 

 

足踏みしても仕方ない。

俺はSLSを再び構えつつ、慎重に向かった。

 

 

 

 

 

ーーーーーー EDFーーーーーー

ハルトマン視点

 

それは突然で、とても速かった。

EDFの偵察部隊が先に気付いて、敵の方向や情報を素早く教えてくれなかったら、撃つ事も出来ずに殺されていたかも。

 

私とトゥルーデはネウロイを迎え撃った。

だけど、ソイツは あまりに速く、高機動で 目で追いつく事がやっとな相手で。

 

ストライカーユニットを被弾、あっという間に撃墜されてしまった。

 

黒煙を空に撒き散らしながら見聞きしたのは、トゥルーデが叫んで、必死に撃つ光景。

 

ダメだって、一旦 逃げて!

 

そう言いたかったけど、息が詰まって 上手く声に出ない。

せっかく、新しい無線が支給されたのに、もう。

 

だけど、代わりに只野が声を上げた。

怒鳴るような声で、私までビクッてしちゃったよ。

 

階級も世界の垣根も関係なしに、仲間の為の声。

 

それにはトゥルーデにも伝わったみたいで、撤退していくのが無線越しにでも分かった。

 

良かった。

後は私が生きて帰れば、万々歳だね。

 

墜落した後。

幸いにも大きな怪我もなく動けた私は、故障したストライカーユニットを出来る範囲で修理しつつ、藁人形でデコイを作った。

南の島でワンちゃんが 使ったやつよりかは劣るけど……それでもネウロイを欺くのには十分だった。

 

無線を繋げて、救援を呼ぼうか。

運良く側で流れていた川で水を飲みながら、そう考えていると。

 

 

「手を上げろ」

 

 

背中に冷たい感触。

でも声はずっと、温かい。

 

私は両手を上げて無抵抗のポーズを取りつつ、それに答えた。

 

 

「酷いなぁ。 帰ったら只野さんに乱暴されたって、いっちゃおーかなー?」

 

 

そういったら案の定、面白いように慌てふためく声。

 

 

「ちょっと勘弁してくださいよ!? ネウロイが擬態してるかも知れないから仕方なくですって!」

 

 

振り返れば。

そこには異界の兵士であるEDF隊員。

見慣れないボロボロの戦闘服にヘルメット、だけどとても丈夫そう。

手にはマガジン式の歩兵銃、背中には鉄箱。

それも見慣れないけれど、とても強いだろう事を知っている。

 

なにより。

目の前の男性……それらを扱う只野二等兵が強いのを知っている。

 

 

「冗談だって───うん。 来てくれて、ありがと」

 

 

笑顔を見せて、礼を言った。

私だって、礼くらい言えるよ。

 

 

 

 

 

ーーーーーー EDFーーーーーー

只野二等兵視点

 

 

「お、おう」

 

 

年下の少女にからかわれたり、笑顔で礼を言われるなんて。

なんつーか、恥ずかしい。

そういうのとは無縁だと思っていたからな、特に戦場では。

とにかく、今するべき事をしていこう。

 

 

「こちら只野二等兵。 ハルトマン中尉を発見、回収してジークフリートに戻る」

 

 

無線で後方に連絡すると、Storm1隊長の安堵した声が聞こえてくる。

 

 

『良くやった只野。 そちらにStorm2が向かっている、合流して速やかに撤退してくれ』

「軍曹が? 了解しました」

 

 

まさか、俺とハルトマンの為にStorm2……軍曹チームを派兵してくれるとは。

嬉しいし、心強い。

かつて同じ228基地にいたのもあって、同郷の人の安心感というか……郷愁にも似たナニかがあって良いよね!

 

 

『フラウ、無事?』

 

 

この声はミーナ中佐!

EDF本部からだろうか、プロペラ音や風切り音が聞こえる気がするが……。

 

 

「ミーナ? うん、なんともないよ」

 

 

普通に返答するハルトマン。

普段から仲が良いのかな、同郷……同国だしな。

 

 

『良かった……今、ジークフリート線に向かってるわ。 また後で会いましょう』

「うん、わかった」

 

 

えっ!?

こっちに来るの?

本部にいた方が安全なんじゃ、と思ったけれど。

ミーナも部隊……家族が心配なんだろうし、戦力として参加したいのだろう。

たぶん、本部は増援として送った形だろうな。

道中が心配だが、EDF本隊が道をこじ開けてきた。

きっと大丈夫の筈だ。

 

 

『ハルトマン、無事か!?』

 

 

今度はバルクホルンか。

心配そうに声を張り上げてるが、ハルトマンは普通に返答していく。

 

 

「うん。 ぜんぜん平気」

『そうか……良かった』

 

 

安堵した声が聞こえてきた。

とても心配だったのだろうな。

 

 

『だが油断するな。 帰るまでが任務だからな』

「心配し過ぎだって。 只野さんもいるし」

 

 

二等兵1匹に、あまり期待しないでよ?

むしろ、これから合流するStorm2の方を頼って欲しい、俺も頼るから。

 

 

『そうか……なら、安心して任せられる』

 

 

大尉殿も頼るなよ。

自信ないよ、そんなに。

 

 

『あー……聞こえてるんだろう只野。 さっきは……その。 すまなかったな。 お前のいう通り、周りが見えていなかった』

 

 

しかも謝ってきたよ。

謝るのはコチラなので、直ぐに返答する。

後が怖い。

 

 

「いえ、俺も突然すいませんでした。 なので、顔面陥没パンチ連打からのリテイクパンチは勘弁して下さいお願いします」

 

 

赦しを乞う!

本当に勘弁な!

大尉殿の魔法による怪力パンチはヤバいって絶対に!

具体的に言えば、きっとシヌゥ!

 

 

『そんな事、するワケないだろう』

 

 

本当?

殴られたらシャレにならないからね、マジ勘弁だからね。

 

 

『とにかく、無事に帰ってきてくれ。 ハルトマンを墜としたネウロイは、まだいる筈だからな。 気を付けろ』

「了解。 撤退します」

 

 

そう言って無線を終えると、直ぐに別の人から無線がきた。

出ない理由はないので、出ておく。

 

 

『こちらStorm2。 只野、聞こえるか?』

 

 

おお!

Storm2、軍曹じゃないか!

 

 

「こちら只野二等兵。 良く聞こえています」

『良し。 今、其方に向かっている。 既にセンサー反応が出ている筈だ。 合流してくれ』

 

 

言われてセンサーを見やれば、確かに。

センサーに友軍表示がある。

4つ、チーム丸ごと来てくれたのか。

 

 

「了解。 合流します」

『上空に気を付けろ。 ヤツはコチラを探っているぞ』

 

 

うん、知ってる。

なんか風切り音が時々聞こえるもん。

デコイを見ているだろうから、ハルトマンは死んだと思っているだろうが、救援が来る可能性から哨戒しているのだろう。

だが残念だったな。

ハルトマンは生きているし回収もした。

後は こっそり 逃げるだけ。

あばよネウロイ。 殺すのは後にしてやる。

 

 

「分かりました。 では後ほど」

 

 

そうして、無線を切る。

今度こそ静かになった。

ハルトマンの濡れた、だけど温かな手を繋ぎ、俺は軍曹の元へ向かう!

 

 

「じゃ、撤退しよう」

「只野さんと森でデートってね」

 

 

あまり大人をからかうんじゃないよ。

いや、子ども扱いしちゃったかな。

手を繋ぐ行為が嫌だったのかもしれない。

 

 

「ごめん。 "フラウ"だもんな」

 

 

からかい返して、手を離す。

したらなんか、ちょっと不機嫌になった。

何故だ。

 

 

 

 

 

ーーーーーー EDFーーーーーー

 

上空を警戒、森の傘から出ないように細心の注意を払いながらStorm2と合流した只野とハルトマン。

視界の悪い森の中で、迷わず合流出来たのは、やはりEDFの装備や経験故だろう。

 

 

「軍曹、救援 感謝します」

「良くやった。 後は撤退するだけだが、最後まで油断するなよ」

「そうだぞ。 突然、異世界に飛ばされるかも知れないからな」

「ですね」

「だな! そんなアンラッキー野郎が俺らと同じ基地にいたとは。 世間は狭いぜ」

「でも私は只野さんに助けられたよー?」

「あぁ、それは"ラッキー"だな!」

 

 

只野の経歴を知ってるようで、軍曹の部下は軽口を叩きつつ、だけど笑顔で只野の肩を叩いて笑顔で励ました。

戦場で神経がすり減る中、こういうコミニケーションは心の支えでチカラになる。

人によっては「お前の所為で仕事が増えた」とか「ふざけんなよテメェ」と言って裏切るヤツもいるが、そう言うヤツは生き残れなかった。

何故なら社会システムが崩壊し、過酷な環境で生き残れた者の多くは互いに助け合い、戦ってきた者、運が良い者達であるが、物資を巡り彼らを襲ったり情報を共有出来ない度が過ぎた自己中は反撃されて死んでいったからだ。

 

審判の日を迎えてもなお、人は愚かだったが、少なくとも彼ら……只野、Storm2、ハルトマン、彼らを支えている人間は世界も階級の垣根を超えて助け合える善人である。

 

 

「上空警戒。 来るぞ」

 

 

軍曹が静かに言い、皆は静止。

上空に差し掛かるネウロイから身を潜めた。

 

───さて。 善人だから生き残れるかと問えば、そうとは限らない。

EDFの世界では約70億の人口がいたらしいが、今は1割以下だ。

いくらなんでも70億が"エサ"だったとは考えられないし、考えたくない。

もし悪人だから皆死んだというなら、基準が知りたいものだ。

銀の巨人、かの英雄に殺されたエイリアンの神に問えるなら問いたいところだが、それが出来たところで消炭にされるのがオチだろう。

 

それは人間だからという理由なのか、それとも……。

 

この世界の人類共通の敵である怪異のネウロイも、何故 人間に攻撃するのか分からない。

 

そんなワケで、世界に存在する理不尽に殺害される事も否定出来ないのだ。

故に友軍圏内まで撤退している時に、それは起きた。

 

 

「おいおいおい!? コッチに機首を向けてるぞ!」

 

 

部下が静かに、しかし悲鳴を叫ぶ。

 

 

「バレたかも知れません!」

 

 

彼ら……歴戦の戦士の嫌な予感とは大抵当たる。

 

 

「退避した方が良い!」

 

 

提案か独り言か、別の部下が皆に聞こえる声で言った刹那。

軍曹は刮目して命令を下す!

 

 

「散開ッ!!」

 

 

刹那。

空で赤い閃光。

それは一線となり、緑の傘を突き破り地表へ向かう。

精鋭歩兵隊は弾かれたように緊急回避、只野はハルトマンを抱えてローリングで地面を蹴り転がる。

次には只野らがいた地面はクレーターが出来上がっていた。

もれなく、否。 天から漏れた陽が穴を照らし、現実である事をまざまざと伝える。

 

 

「チクショウ! 銃かスコープの反射光でもあってバレたか!?」

「旋回して来ます!」

 

 

センサー上では、大きく弧を描いてネウロイが戻ってくる。

機動上、同じ場所に留まれるのにしなかったのは、視界を広く確保する為だろう。

現隊長である軍曹は、それらを加味しつつ部下達に命令をしていく。

 

 

「同じ場所に留まらず固まるな! 散開して各個退却! 只野! 持っている対空兵装でネウロイを攻撃、足止めしろ! ハルトマン中尉、すまないが俺と共に後退だ!」

「「了解!」」

 

 

互いに迷いなく行動。

判断は一瞬、行動は迅速に。

各自の判断で森を駆け抜けて撤退。

只野は殿を務めるように、装備をSLSからMLRA-TWに持ち替え、トリガーを引きっぱなしにしてロックオン。

 

 

「多重ロックオンの味を喰らえッ!」

 

 

して、トリガーを放す。

20発を超える2連装ミサイルが、箱の上部ハッチから左右に分かれ連続して放たれる。

白い帯は森から空へと立ち上がり、ネウロイを追いかけ回した。

それは空を耕しているかのようである。

やがてネウロイに何発か被弾、動きが鈍った隙を突くように残りのミサイルの弾頭が連続して着弾、空で大きな爆発が起きた。

 

こうして生き延びて来たし、これからもそうだろう。

 

そうでなければ、死んでしまう。

否。 そうであっても理不尽に死ぬ。

生き残れて来たのは何も自身や仲間の技量の結果ではない。

全て世界の裁量だ。

最終的には運だ、どうしようもなかった。

阿鼻叫喚。 そんな狂気の戦場に常にいた。

いたが故に、運命に選別されて生き延びた隊員は、狂人で異常者でもあり超人に成り果てた。

飛翔能力を持っていたエイリアン幼生体が、地球環境で生き延びて進化するだろうと考えられたように、生き延びた人類もまた、進化したのかも知れない。

 

欧州で逃げ隠れし、しかし生き延びた只野も恐らく その新人類の ひとりである。

それは この世界のウィッチーズの持つ魔法やネウロイの怪異より神秘で謎のベールに包まれていた。

その事に、EDFは自覚していない。

辛うじて連合の人類が、それも ほんの 一握りの人類が曖昧に把握した。

 

曹長ちゃんは、その片鱗に触れて発狂した。

それ程にEDFは恐ろしいのだ。

神域に到達してしまったのだ。

地獄を超えて不可能の先へ。

特に、Storm teamは、Storm1は そうであろう。

 

 

「ネウロイ中破! コア撃破ならず!」

「構わない! 後は任せろ!」

 

 

Storm2、軍曹が手に持つ光線銃、ブレイザーで狙撃。

スコープやサイト等の補助具ナシで、しかし正確無慈悲の光線が、手負いのネウロイを貫く。

 

刹那。

ネウロイは光の粒子となり砕け散った。

あまりに呆気なかった。

 

 

「クリア。 センサー目視、共に敵影なし」

「殺すのは後だと言ったな。 アレは嘘だ」

「予定通り撤退する、足並みを揃えるぞ」

「「了解」」

 

 

淡々と仕事をこなしただけだと言いたげな、男達の背中。

それを見たハルトマンは、どことなく思う。

兵器が強いだけじゃないと。

隊員もまた、凄まじく強いのだと。

 

だが、人間のレベルで考えられたのは幸運だった。

 

それをも超えて深淵の底まで思考してしまい、垣間見て死神の微笑みを見た曹長ちゃんは狂ってしまった。

 

そんな彼女は、今は深い海の底。

 

死神。

EDFの手により生まれ変わっている───。

 




後半は哲学ぽくなっていた……。

新人類に改造され産み堕とされるWDFの方は どうなるのか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。