Witch Defense Forces(WDF)(完結) 作:ハヤモ
キール港手前、森より先にて不自然な濃霧が発生中。
視界が劣悪。 この為、EDFの戦車は勿論、ウィッチを除く航空機の投入は不可能です。
連合兵やウィッチらの話を参考にするなら、どうやらネウロイの仕業とのこと。
偵察隊の報告やセンサー等からの情報、501部隊との相談の結果、キール中心半径20キロのどこかにネウロイがいると思われます。
直ちに討伐隊を編成、駆除に入ります。
501部隊からは全方位広域探査の魔法が使えるリトヴャク中尉、未来予測の魔法を使うエイラ少尉が出撃。
EDFからはStorm2と只野二等兵、スカウトや複数の攻撃部隊が出撃。
空と陸で連携し、ネウロイを倒して下さい。
健闘を祈ります。
なお、EDFによる新兵器運用実験部隊が作戦領空近くを飛来し、センサーに反応する可能性があります。
友軍誤射には十分に気を付けて下さい。
備考:
濃霧で視界が劣悪。
センサー等を頼りに行動、気を配ること。
設定などは、作者の妄想も含まれますので注意。
間違いもあるかも。
◆ジークフリート線
只野二等兵視点
俺とStorm2は要塞に撤退し、無事にハルトマン回収をやり遂げた。
偵察の続きはスカウトがやってくれたし、ついでの様に高機動型ネウロイも倒した。
そこは軍曹がいたからだが、思わぬ戦果である。
褒賞に美味い飯と休暇をくれないかな、無理ですよね分かってます。
「フラウ、心配したのよ」
「良かった……無事でなによりだ!」
「もー、大げさだなぁ」
いつのまにか到着していたミーナと、退却していたバルクホルンがハルトマンを抱きしめて無事を喜ぶ。
家族愛ってヤツかな、目に涙が浮かんでら。
なんつーか、羨ましいよ。
俺らは家も家族も、大切な者を失ってきた。
残されたチカラも微々たるものだ。
それでも戦い続けて、誰かを守れた事実は身に染みる。
…………守れなかったから、余計にな。
多すぎて、"さよなら"に慣れて、鈍感になって。
もはや守る者がいなくなったとさえ思えた。
でも、この世界で守る者達が再び出来た。
俺はまた、誰かを守れるだろうか。
取り戻せるだろうか。
或いは失うのだろうか。
「只野」
俺の名を呼ばれて我に帰る。
呼んだのはバルクホルンだった。
「ハルトマンを助けてくれて、ありがとう。 礼を言う」
「はい。 いえ、俺も越権行為というか、乱暴な言い方をしました。 礼を言われる事は無いです」
現状戦力じゃ無理だから友軍を出して来いと偉そうに言っておきながら、結局は倒しちゃったし!
無理とは嘘つきの言葉(タイミング次第)。
「いや、お前が正しかった。 本当にありがとう」
「ええ。 只野さん、ありがとう」
「エスコート助かったよー!」
続けて、ミーナやハルトマン本人にも礼を言われた。
「しかし、あのネウロイを倒してしまったなんて。 報告を聞いた時は驚いたぞ」
「見ていた身としても、驚いたよ!」
交戦したバルクホルンとハルトマンが讃美してくれた。
でも俺のチカラじゃないからな、否定しておこう。
「あー……アレはStorm2のお陰なんで」
「ストーム? ストーム・ワンの関係部隊か?」
バルクホルンが聞いてくる。
そうか、501部隊に潜伏していたからなStorm1隊長は。
付き合いもあって、名前が出てきたのかも。
折角だ。
ストームチームの話をしておこう。
ゆうて、詳しくないけど。
「そうだよ。 遊撃部隊ストーム。 EDFの精鋭部隊で、4チームある。 Storm1は部隊じゃなくて……隊長だったかな」
「本隊と来た、真っ黒い鎧の部隊は?」
「それはグリムリーパー隊だね、Storm3だ」
「4は?」
「赤っぽいウイングダイバーの部隊だよ。 そっちも本隊と一緒に来たよ」
「後で探してみよーかな?」
興味を持つ分には良いか。
むしろ、嬉しいまである。
したら、ミーナが知っているらしく、声を出した。
「Storm3、4はベルリンで見たわ。 とても強かった」
そうか、ベルリン防衛線にいたもんな。
見ていても変じゃない。
「ほう。 相当な練度と装備なのだろう」
バルクホルンが興味深そうに言った。
対して、ミーナはなんとも言えない顔に。
「え、ええ……ストーム3の武器が槍と聞いた時は驚いたけど」
「槍だと!?」
驚かれたが、仕方ない。
だって槍だもん、中世の武器だろそれ、だもん。
この世界、1940年代の主兵器は既に銃や大砲、航空機である。
銃剣やスコップによる白兵戦はあるかもだが、それが主な武器ではない。
「まぁ、なんです。 EDFの槍は特殊でして。 目に見えない速度で伸縮、刺さったあらゆる物体を破壊するチカラがありまして」
何故ならプラズマが〜とか、説明は出来ないよ。
仕組みは知らない。
だから聞くなよ、Storm1にでも聞いて。
「そのようね。 でも、接近しなくちゃならないようだから……運用出来る隊員は相当の練度と度胸を持っているわね」
「ストーム4は?」
「4は、ウイングダイバーの部隊ね。 スプリガン隊といったわ。 レーザー銃? で戦ってた。 でも隊長はランスだったかしら」
「ランス!?」
うん。
同じです、見た目はソレでもEDFのはビーム兵器みたいになってますので。
「それもだよ。 接近しなくちゃならないのは共通してるけど、先端からビーム的なのが出るから、物理的に突き刺すワケじゃない」
「ビーム、か。 EDFはビームを実用化しているようだが……やはり、どれを取っても凄い技術力だ」
「ビームねぇ。 ストーム2が、ネウロイにトドメさしてたよね?」
ハルトマンが言う。
ビーム……ブレイザーか。
種類や仕組みはまるで違うと思うが、説明できないので適当に頷いておく。
「そうだね。 EDFじゃ実弾兵器じゃない、ビームといった光学兵器も色んな種類が開発、使われているよ」
光学兵器は威力が高いイメージだな。
それに弾丸を携行しないぶん、軽量化も出来るのだろう。
空を飛ぶウィングダイバーの武器の殆どが光学兵器なのも、その関係があるかもな。
「凄まじいものだな……だが、そんな組織にいる只野も凄いよな」
へ?
俺、ナニも凄くないんだけど。
装備や友軍に頼ってるだけだよ。
光学兵器もビークルの武装、バルチャーくらいしか経験ないよ。
ネウロスのバーストとか、使い辛い。 辛くない?
「様々な武器を使いこなし、動きもキレがある。 判断力も高い。 航空機……ヘリコプターとやらも動かせるし、他にも乗りこなしていたと聞く。 本当に二等兵か? EDFの二等兵はソレが普通だとしたら恐ろしい練度だ」
そこまで言われると、恥ずかしいな……。
「いや、そんなことは……うん。 ありがとうございます」
そうか。 そうだな。
少なくとも、学んで来たことや経験した事から目の前の子らを救う結果を出せた。
EDFは、俺はまだ、誰かを守れるんだな。
ああ。 なんか目頭が熱い……。
「只野。 感傷に浸っているところ悪いが、次の任務だ」
直ぐに冷却。
Storm1隊長、少し休ませて。
ああダメですかそうですか。
俺は苦笑するバルクホルン達に敬礼して、直ぐに隊長の元へ向かい、作戦説明を受ける。
「森の先に向かってくれ。 濃霧の中だ、ロックオン兵器や咄嗟に振り回せるアサルトライフル装備が良い。 鉢合わせ用にショットガンも良いかもな」
なら同じ装備で良いか……って、濃霧?
「霧ですか?」
「ああ。 不自然な事に、全く晴れる様子がない。 恐らくネウロイでは、との事だ」
ネウロイ万能過ぎない?
ヤツらってナニかを模倣した形をとってビームを乱射しているだけじゃないのか。
霧も出せるとかヤバいでしょ、なんでもアリなんじゃね?
「では、霧の中にネウロイがいると?」
「そうなる。 只野は霧のエリアに突入し、ネウロイを討伐しろ」
人使い荒くない?
俺、任務任務で疲れてるのよ?
あいや、EDFって そういう節があるよね。
だけど慣れない。
疲れるものは疲れる。
だから言ってやる、ハッキリと!
「了解しました。 討伐任務を遂行します」
敬礼して承諾しましたよチクショウ!?
yesマン、奴隷、機械、社(軍)蓄!
そんな感情を読み取ってか否か、Storm1は話してくれた。
「すまない。 本隊が来たとはいえ、大人数で森を抜けて濃霧に入るのはリスクが高くてな。 AFVも出せない」
大の為に小を切り捨てる感じ?
それは仕方ないし、理解は出来る。
共感は出来ないが。
AFVが出せないのも解せない。
なんだかんだ、レンジャーがビークルを要請して投下してもらっていたのを見た事があるからね。
なんなら工業施設への被害を考えて、ビークルはダメって言われていた戦場でも要請で投下されていた。
投入不可? 出来るじゃん。
詐欺でしょ、今回も。
「はい……いえ。 仕方ないです」
とりま、そう言っておく。
濃霧の激闘を経験した事もある、大丈夫だ。
なんなら砂嵐で視界が効かない中、前哨基地に接近、取り巻きと戦った事がある。
あの時は2段構えの作戦で、Aプランで工兵隊が爆弾を設置して破壊、失敗したら重戦車タイタンの一斉砲撃で破壊するというものだった。
危険ながら悪い作戦では無いと思ったが……まさか基地が"歩く"とはな、当時は俺も皆も驚いた。
結局、爆弾は設置出来ず退避、砲撃も効果なし。
作戦失敗に終わった。
Aプランで爆弾設置が成功していたとしても、やはり失敗に終わっていただろう。
北京決戦で進撃してきたエイリアン7割を撃滅、人類が勝利した後に行われた前哨基地突撃作戦の時、砲台は破壊出来ても基地本体に空爆が効かなかったのを見ると、爆弾を使っても意味は無かったのだろう。
俺は工兵じゃないから分からないが、あの空爆すら効かない金の装甲は破れなかった筈だ。
今回は、そのような事にはならない。
いつも通り。
霧の中というだけだ。 ただ、それだけだ。
そう願う。
「助かる───引き続きStorm2と行動だ」
わお。
軍曹チームも大変だな、連戦で。
EDF隊員なら珍しい話じゃないが、同情する。
精鋭部隊とはいえ、疲れるだろうからね。
その様子は見たことないが。
みんな、頑張り屋だと思う。 偉いよ。
じゃあ、そんな頑張り屋の増援は期待出来るか聞いてみよう。
「Storm3と4は来てくれないので?」
「来ない。 空戦ではグリムリーパーのブラストホールスピアは役に立たない。 スプリガンは……ウィングダイバー全体に言えるが、霧の中を飛行させるのは危険だからな」
えぇ……。
空を飛べない、槍一択の死神達は仕方ないとして、スプリガンはダメなのか。
かつて、普通に霧の中でウィングダイバーが戦闘をしていた事もあった気がするんだがなぁ?
「代わりといっては何だが、スカウトや陸戦ウィッチ、レンジャー部隊が分散して捜索。 501部隊からサーニャとエイラが出撃。 互いに連携してくれ」
「へ? 大丈夫なんですか?」
誰もいないより嬉しいが、それは大丈夫なのか?
陸戦ウィッチはともかく、航空ウィッチを霧の中に飛ばすのは心配だぞ。
「なに、サーニャの魔法がある。 ナニか覚えているか?」
ここで問題ですか。
えーと、なんだったかな。
あっ!
「探知系の魔法……!」
「正解だ」
そういえばそうだった。
サーニャは探知系、全方位広域探査の魔法が使える。
使い勝手は分からないが、結構高性能らしく、地平線まで探査出来るとか。
俺たちEDF隊員が使うセンサーより良いじゃねえか……羨ましい。
雨とか、悪天候でも使えるなら、なおよし。
俺らのセンサーは鈍るからね。
対してエイリアン連中のドローンは鈍る様子がなかった、チクショウ。
一方でネウロイは、そういう機能が有るのか無いのか分からない。
あるから、森に隠れる俺らを攻撃して来たともいえるが、ハルトマンのダミーに騙されているなら、どうなんだろう。
ヤツらの能力は謎だ。
考えても仕方ないね、それより今だ。
「あれ? でもエイラは?」
ダナダナのエイラは探知系じゃなかった筈なんダナ。
「未来予測が出来るからな、合わせて効果的だろう」
まぁ、隊長がそう言うなら そうなんだろう。
それに。
エイラはオールラウンダーみたいだから、大丈夫か。
「それから注意事項だ」
はい?
なにかあるのかな。
「EDFの新兵器運用実験部隊が作戦領空近くを飛来する可能性があると情報部からの連絡だ。 センサーに反応する可能性があるから、間違って発砲、誤射しないようにな」
なんだそれ。
ウォーロックを運用していた強襲部隊の様な事をしおって。
いや、それって……。
「いうな。 今は任務に集中しろ」
…………ウッス。
「準備が整い次第、出撃してくれ。 健闘を祈る」
そう言って敬礼されたので、俺も返礼。
心にも発生したモヤモヤした霧。
だが仕事は仕事で集中しなければならない。
戦場では一瞬の油断が命取りだから。
手にSLS、背中にMLRA-TWを背負い装備を整えると、俺はStorm2と合流しに向かった。
◆キール港手前、濃霧の中
只野二等兵視点
「周囲に気を配れ。 センサー、感覚、音、全てを見落とすな!」
「「イエッサー!」」
Storm2……軍曹が俺らに指示しつつ、再び戦場へ。
霧海、その海中を俺ら歩兵隊は泳ぐ。
右も左も白いモヤしか見えず、側にいる筈のStorm2の面々も薄らとしか見えない。
こうも見えないと、方向感覚が狂いそうだ。
経験はあるが、慣れないね。
「おぅ、只野の兵装は改修型なんだって?」
唐突に軍曹の部下が訪ねてきた。
濃霧の中で呑気だな、おい。
なんてこと無いってか、流石は精鋭。
俺には真似できないね。
でも、雑談で気が紛れる。
心の霧払いになって良い。
無線越しに、しかし探さずに銃を構えつつ会話する。
「PA-11SLSですか?」
「ああ、倍率スコープにレーザーサイト付、性能自体も良いんだと? 羨ましいぜ!」
あー……そういや軍曹チームって、隊長の軍曹を除くと皆、初期のPA-11なんだよな。
精鋭部隊の筈なのに、ずっとソレなのだろう。
逆に二等兵の俺に改修型が回ってくるとは。
なんだろうね?
「俺もブレイザーを使いたいって申請したんだがよ。 銀の巨人、【かの者】を倒した後も何も変わりゃしないぜ!」
かの者、ね。
俺は見た事ないが、軍曹達は見たんだよな。
して、生き延びた。
どんなヤツだったんだろうか。
俺が考えてる間も文句たらたらな彼に、別の部下が割り込んでくる。
ウチの軍隊って皆、おしゃべりである。
「そういうな。 PA-11も良い銃だ。 2018年に採用されたEDF主力自動小銃で安定した性能。 確実に動作するし、もし故障したり紛失しても予備部品も多く、直ぐに代えが効く。 様々な局面で、信用に値する銃だ」
リスペクトするねぇ。
怪物の大群相手だと火力不足なんだけど。
使い易いのは同意しておこう。
「それに、長く同じ銃を使用していると、その癖を把握するぶん、レンジャー訓練を受けてきたとはいえ、他の銃に直ぐ対応出来ない可能性が出てくる。 その観点から俺たちではなく新人、二等兵に新型や改修が回されるのかもな。 只野は……階級こそ二等兵だが、新人と呼ぶワケにはいかないな」
それ、喜んで良いのか?
強い武器を渡されるのはありがたいけれど。
「私語は慎め!」
「「イエッサー!」」
叱られた。
そうだぞ、集中しなきゃ。
そうやって、霧の"海底"散歩を憂鬱に歩いていると、無線が再び入ってくる。
サーニャからだ。
『こちらリトヴャク中尉です。 敵影なし。 そちらは どうですか?』
戦場に似つかわしくない、儚く可愛い声。
それに反応するは、隊長の軍曹である。
「こちら軍曹。 センサーに感なし」
勇ましい声で、短い返答。
華はないが、頼もしい。
「いや待て! 今、センサーに2つ反応!」
むっ!?
俺も慌てるように確認!
赤丸が2つ、別々の場所にいるぞ!
『こちらも確認しました。 ですが1つです』
なに?
EDFのセンサーより良いだろうサーニャの魔法では ひとつ……?
「どういう事だ? センサーの不調か?」
「さすがEDF製だな!」
「センサーは万能じゃないですから」
「いつものことさ」
軍曹や俺らも、皮肉を混ぜつつ同じ疑問になる。
センサーが検知しない事はあっても、ない筈のものが映った事は無い。
『EDFのセンサーは壊れてるんじゃないかぁ? サーニャが正しいんだ』
ここでエイラのサーニャリスペクト。
まぁ、言うことはいつもみたいなモンだから置いておいて。
無いものが映ったとか?
幽霊じゃないんだ。 あってたまるか。
戦闘ロボットの脚にびっしり付いた砲台ひとつひとつに反応する事はあってもだ。
いや、エイラの言う通りセンサーが不調の可能性は否定出来ないな。
「なんにせよ、2つとも接近、其方を十字砲火出来る位置どりをしつつある。 エラーとは思えない! 危険だ、撤退しろ!」
軍曹の判断も正しい。
階級はウィッチの方が上だが、こうして命令口調で話すのは"ガチ"だからだろう。
後がない戦況でもない。
連合軍や空軍が無差別爆撃をしてくるワケでもない。
空の2人も慌てる理由はない筈だ。
『了解しました。 いちど撤退します』
『軍曹たちは、どーするんだ?』
「センサーを頼りに索敵、攻撃を試みる! それでダメなら別の手だ!」
『了解。 お前たちなら、きっと任せて大丈夫だもんな!』
向こうも、歴戦の猛者の気迫を感じてか、了解して撤退。
センサー上の敵が攻撃ポジションに着く前に離脱する事が出来た様だ。
敵が追撃する様子もない、大丈夫そうだ。
「さて、仕事の時間ってワケだ」
部下が面倒臭そうに言った。
仕方ないじゃん、軍曹がやるっていうなら、付き合うしかないだろう。
そんで、どうするんだ?
濃霧で視認は不可能に近い。
弾をセンサー反応方向にばら撒くの?
「敵は2つ。 霧の中でも此方が見えている行動を取っていた。 しかも戦術的にだ。 恐らくネウロイだ」
「厄介ですね」
「エイリアンより楽だと良いがな!」
「俺たちにはセンサーがある。 有効活用しない手はない」
軍曹が言い、部下も言葉を並べる。
やっぱり弾をばら撒くの?
「……ネウロイは目標を歩兵隊にしたようだ。 高度を下げている。 方向からして標的はラビットチームだ!」
言われてセンサーを見る。
確かに探索している他部隊、ラビットに向かっているな。
ラビットチームは、軍曹チームと同じくレンジャーの少数部隊だ。
開戦した際、工業地帯で孤立、多数のドローンを相手にしていた部隊である。
今日まで生き延びているので、精鋭部隊に変わりない。
きっと大丈夫だ、今回も生き延びる。
軍曹は無線を各部隊に繋ぐと、ラビットや展開する部隊に指示を出した。
「軍曹からラビットへ! ネウロイは霧に紛れて攻撃するつもりだ! センサーに気を配り、反応する方向に弾をばら撒け! 他の部隊はラビットの救援へ向かえ! 戦力を集中し、迎え撃つ!」
やっぱりな。
短絡的、しかし有効な手段だ。
「我々も救援に向かう! 走るぞ!」
「「イエッサー!」」
軍曹が片手を振り、部下や俺に指示を出す。
俺らは霧の中、ダッシュで向かう。
素早くPA-11SLSを背負い、代わりにMLRA-TWを手に持つ。
すぐさま起動、上部ミサイルハッチ解放を確認。
トリガーを引きっぱなしにしてロックオン状態維持、標的を直ぐに迎撃出来る姿勢を取りつつ、俺らは霧の海を進んだ。
ーーーーーー EDFーーーーーー
濃霧の戦闘
「来るぞ! 撃てッ!」
濃霧の中。
ラビットチームは、視界の効かない中、センサー反応を頼りに襲撃してきたネウロイを攻撃する。
「ミサイルを使え!」
「はいっ!」
装備は工業地帯の時みたいなPA-11のみの軽装ではない。
ひとりはFORKーA20というMLRA-TWに似た鉄箱……20連装ミサイルランチャーを装備。
これでネウロイと思わしき標的をロックオン、20発もの2連小型ミサイルを同時に発射、空に広がる霧の海へと小型ミサイルを沈ませていく。
他の隊員は、いつものPA-11でフルオート。
無数の弾丸が霧へと消えていくが、霧の中では手馴れの銃でも当てずっぽうの発砲であり、センサー反応は健在のままだった。
「くそっ! 手応えがない!」
「敵は2つある! もう一方を攻撃してみろ!」
「了解!」
拘らず、すぐさま標的を切り替え、もう1匹を攻撃。
ミサイルが別の方向へ飛翔し、霧の大海の中から爆音が聞こえた。
「やったか!?」
命中したと思い、喜ぶもつかの間。
センサー反応は健在のまま。
「なに!?」
「撃破ならず!」
「撃ち続けろ! 装甲を抉り続ければ倒せるはずだ!」
言われた対空要員は、ミサイルパックを交換、リロードすると素早くトリガーを引き続けてロックオン。
ロックオン完了音が聞こえた瞬間、指を離しす。
バシュッという連続した音と共にミサイル群を再び大海へ沈ませる。
またも爆音。
先程より音が近いのは、寄られている証拠。
同時に遮蔽物ではなく標的に命中した意味でもあるが、センサー反応は健在のままだ。
「硬い!?」
装甲が強固だと思うラビットチーム。
だが対抗手段は撃ち続ける他ないと思い、戦闘続行。
だが、赤いα型のように相手は倒れてくれない。
して、相手はお返しだとばかりに、ビームを放ってきた。
「くるぞ!?」
霧の海から僅かに見える赤き閃光。
それは一瞬で地面に到達、ラビットチームを吹き飛ばしてしまった。
「ぐわああッ!?」
吹き出し花火のように隊員が、人間が宙を舞う。
さながら、かつてのエイリアン砲兵の攻撃を喰らった時のようである。
やがて重力でボトボトと落ちる様は人間は、ちっぽけな存在でゴミなんだと言われているかのようだ。
だが、EDF隊員も倒れない。
ラビットチームは呻き声を上げつつ、膝を地面に着きつつもヨロヨロと立ち上がった。
「ぐっ……みんな、だ、大丈夫か!」
「なん、とか……生きてる」
「アーマー破損……、まだ戦える」
そこはEDF隊員と強靭な戦闘服とアーマー。
通常の人間がビームを喰らったら、バラバラかミンチより酷い状態で絶命しかねない攻撃なのに、なんとか耐えた。
モブでもこの強度なので、いかにEDF全体が精強精鋭か分かるだろう。
ただ戦時は、エイリアンの文明レベルや物量が圧倒的だったり、ストームチームが群を抜いて凄まじい強さだったので弱く見えるだけである。
「こちらラビット……! 救援はまだか! このままでは全滅だ!」
だが、ピンチに変わりない。
霧に銃弾を撒きつつ救援を求めるラビット。
敵はセンサー上で健在、倒れる様子もない。
一方で、ネウロイは倒れない隊員を攻撃し続ける。
確実に殺そうとしてか、とうとう2つの赤丸方向からビームが飛んできた。
「うわあああ!?」
「十字砲火だぁ!」
「大至急、救援を! 持ち堪えられない!」
そう救援を求めた刹那。
無線ではなく、生の声が霧の海に響き渡る!
「待たせたな!」
して、ネウロイのビームとは違うビームが霧の海を貫いた!
軍曹のブレイザーだ!
その線状の光源は、濃霧の中でも薄らと見え、希望の光のようである。
「軍曹ッ!? 軍曹ですか!」
「ああ! 他の部隊も来たぞ!」
救援の喜びから、光に縋るように見渡すラビット。
相変わらず霧ばかりで光以外は見えない。
だが見えずとも分かる、仲間が来ている事に!
「おうよ! 助けに来たぜ!」
今度は別の声が聞こえた。
野太く、勇ましい声……散開していたフェンサー部隊が駆け付けたのだ。
機関砲かと見間違う程に大きな散弾銃、デクスター自動散弾銃を片手で持ち、散弾を霧空へとばら撒く。
パワードスケルトンがなければ携行すら出来ない高火力の武器を難なく扱う彼らだからこそ、出来る荒技である。
それを厄介だと思ったのか、ネウロイは彼らにビームを発射。
「ビームが!」
「任せろッ!」
それは霧の中にも関わらず寸分違わぬ正確無慈悲な精度で飛んできたが、
「ふんっ!」
なんと、ビームは着弾する事なく跳ね返ってしまった。
フェンサーのひとりが、左手に装備するリフレクターを起動させ跳ね返したのだ。
「どうやらネウロイ野郎、ガリアでの戦訓を活かせてないようだな!」
「もう少し賢くなる事をオススメするぜ」
「フェンサーを舐めるな」
煽りつつ、霧の中に散弾をばら撒くフェンサー。
ラビットチームに寄り添い、ディフレクション・シールドで庇うのも忘れない。
だが戦況は好転する様子を見せない。
「ちっとも堕ちないぞ!?」
「奴ら装甲を強化しやがったのか!?」
「散弾ではなぁ!」
「赤色機より強いぞ!?」
「火力の高いヤツを持ってくるべきだったか!」
フェンサーが来てもなお、ネウロイは堕ちない。
そこに軍曹らもブレイザーやPA-11で援護しているにも関わらず。
「只野! ミサイル発射!」
「了解!」
そこに只野二等兵の持つMLRA-TW、それも多重ロックオンシステムによる一点集中ミサイル群が霧へと沈んでいった。
が、今度は爆音が聞こえない。
「着弾せず!」
避けられたか?
そう考えつつ、また撃てば良いとリロードする只野二等兵。
だが軍曹は違和感を覚えた。
(これだけの火力でも倒れない? 装甲が厚いのか? いや、片や着弾するも健在、もう片方は着弾しない。 何か妙だ)
ガードされた訳でもなく、着弾もしていない。
相手の形状や状況を知りたいが、濃霧では確認しようがない。
軍曹は皆に指示を飛ばした。
「今の装備では太刀打ち出来ない! 全員撤収! 一旦引くぞ!」
このままでは埒が明かない。
そう考えた軍曹の判断は早かった。
「了解!」
「大賛成だ、さっさとズラかろうぜ」
「殿はフェンサーの役目だ、任せろ」
踵を返し、隊員らはジークフリートに撤退。
逃がさんと追撃してくるネウロイだが、そこはフェンサー部隊の出番。
脚が遅く、鈍重なのもあるが、火力と防御力の高い彼らが壁となる事で、撤退する歩兵を援護する。
ザ・フォッグ。
アニメにも出てきた霧は歴戦の隊員を退けた。
だが隊員も霧海に溺れ死ぬ事はなく、引き分けの形で初戦は幕を閉じたのである。
ーーーーーEDFーーーーー
サーニャ視点
霧に隠れて見えない敵。
夜間よりも視界が効かない状況での索敵や戦闘は、とても難しい。
目隠しをして飛んでいると言っても、良いくらい。
ナイトウィッチである私は、それを良く知っている。
こうなると有視界飛行は困難。
ほとんど計器飛行で動かないとならない。
それで白羽の矢が立ったのが、ナイトウィッチであり全方位広域探査の魔法が使える私に出撃命令が下りた。
相棒は夜間飛行を共にした事もある、エイラ。
地上はEDFの部隊が展開。
空と陸、一緒にネウロイを捜索。
EDFも個人携行可能な探査装置を持っていて、それを頼りに行動するみたい。
見た限りだと、アンテナや装置の類は見当たらなかったけれど……小型化されているみたいで、正直に凄い技術だと思う。
南の島にいた只野さんも出撃。
そんな、とても強い男の人もいるんだもの。
きっと、大丈夫よね。
そうして、霧のエリアに侵入。
探査を開始。
暫くして、ネウロイの反応を検知。
EDFでも確認、戦闘態勢に。
だけど妙な事に、私は1つしか反応がなかったのに、EDFでは2つ反応したと報告。
エイラはEDFのは壊れてると言ったけれど、不思議とそうは思えなかった。
EDFの軍曹さんが言うには十字砲火出来る位置取りをしているとのこと。
本当だとしたら、とても危険な状況。
軍曹さんの指示……ううん、"提案"で、私とエイラは先に撤退する事になった。
後は歩兵隊に任せる形になってしまったけれど……あの人達なら大丈夫。
エイラも、そう言っていたもの。
もし倒せなくても、生きて戻ってくる。
根拠はない。
だけど、どこか誇らしい自信をEDFは、只野さん達は与えてくれたから。
私たちは安心して任せて、撤退出来た。
そんな中。
それを見た。
もう少しで霧から抜けるという時だった。
(あれは……ウィッチ?)
晴れかかった、だけど浅く流れる霧の波の向こう。
白く、ボンヤリとした人影が揺らいだ。
魔法針は探知していない。
でも、誰かいる。
白銀の、綺麗な女の子。
「エイラ、2時の方向」
「うん?」
不安感。
して幻想か現実か分からなくて。
エイラにも見てもらおうとして、そう言ったけれど。
「何もないぞ。 なにか探知したのか?」
そう言われてしまった。
目を凝らして見直すと、既にその空間にはなにもなかった。
霧が物静かに、薄く漂っているだけ。
「いま、人影が見えたの。 白銀の、白くて綺麗な子」
「んー? サーニャしか見えないぞ……あっ、変な意味じゃないからな!?」
……気のせい、だったのかな。
幻影。
ううん、あの子は本当にいた筈。
かつて、ペリーヌさんに言われた"幽霊"を思い出す。
もう仲直りしたけれど……幽霊、魔導針の反応もなくて、見た光景はまるでそのようで……。
ジークフリート線に戻ったら報告しよう。
EDFなら、なにか知っているかも知れないから。
◆ジークフリート線
Storm1視点
「───報告、ありがとう。 作戦を変更しよう」
帰還したサーニャと軍曹からの無線報告から、やり方を変えないとならないと感じた。
一応、EDF空軍の偵察爆撃機にも飛んで貰い、キールの地上や周辺空域を空撮してきて貰ったが……霧しか写っていない。
このままでは いつも通り、誘導兵の俺が直接座標伝達しなければならないな。
ビームがそれぞれから飛んでくる事から、敵は確実に2体。
だが、サーニャの探査網に掛からないのは気になる。
この場合、疑うは探知範囲や方式の違いだ。
俺が元技術屋という側面なのもあるが、この事から可能性を割り出してみる。
「EDFの個人使用しているセンサーは、光・温度・圧力・流量等を簡易的に検知、我々隊員に処理し易いようディスプレイに表示する。 サーニャの全方位広域探査の魔法との違いは……分かりやすいのは探査距離。 水平線の向こうまで探査出来るらしいからな、隊員のセンサーは、そこまで探査出来ない。 それにも関わらず検知出来ないならば、エイラの言う通り故障の説もある。 だがネウロイは無線妨害も行えることから、欺瞞情報を流された可能性も……欺瞞?」
ブツブツと思考し、仮説を立ててみる。
欺瞞……あざむく、だます。
そんな事をネウロイがするならば。
或いはコチラが探知出来ない、ステルス性の高いボディをしているなら?
サーニャの探査魔法は、短波を含む電波を発信、感知する事で周囲の状況を把握する事が出来る。
またサーニャに限らず、ウィッチらが探査魔法を使う際、頭上に魔法のアンテナが形成されているが、それを魔導針といったか。
従来のやり方では、全方位に拡散して探査していた為、大体の方向や距離、大きさしか分からなかったらしい。
だが魔導針を使用する事で、探査魔法に指向性を持たせ、その分、より強力な探査を行える様になったという。
魔導針には種類があり、サーニャの場合はリヒテンシュタイン式魔導針というらしい。
見た目通り垂直方向に2つ、水平方向に2つの帯域で魔法探査を行う。
この様にして魔法探査の方向をあらかじめ定めることにより、より確実にネウロイとの距離、移動方向、移動速度などを三次元的に把握することができる。
……魔法を多少は知っておこうと調べていた時、魔導針に関する資料で「八木・宇田」の名前が出てきたのは不思議な気分だった。
魔法のない、我々の世界でもあったからな。
やはり、コチラと我々の世界は似ている。
八木・宇田アンテナの話だ。
身近だとテレビを受信する際に使う、家の屋根に取り付けられた魚の骨のようなヤツだ。
こちらではウィッチの使う魔法関係では八木・宇田式呪術陣というらしい。
魔導針の仕組みとしては、魔法探査を行うウィッチに術式を教え、頭の周囲に八木・宇田式呪術陣を形成させて指定の方向の探査を行う。
因みにテレビ受信用アンテナとして使用する場合「く」の字じゃない方を電波の発信所に向ける。
と、関係ない思考までしてしまったな。
「結局のところ、魔導針を用いた魔法探査は、1方向に強い魔法探査を行なっているだけだ。 そこの帯域をすり抜けてしまえば魔法探査にひっかからない。 探査はしっかりと行なっていたのに検知しなかったならば、それはネウロイの形状に問題がある。 例えば骨組み状でスカスカしているとか、な」
この仮説が正しければ、確かに。
サーニャの探査魔法では拾えない。
逆にEDFのセンサーが拾えたのは、ネウロイの持つコアや動き、ビーム発射源を検知したからか。
こんな事、エイラが知ったら憤慨しそうだ。
またダイレクトアタックされてしまうな。
サーニャを随分と気に入っているからな、否定されるような要素を聞けば怒るだろう。
まだまだ子どもらしく、可愛いヤツだ。
では、サーニャが検知出来た片方のネウロイは?
装甲が厚すぎて破壊出来なかったのか?
それは分からないが……大火力をぶつけてみるか。
「後は"実戦"あるのみだ」
俺は無線を繋ぐと、要塞の皆に連絡する。
「Storm1から討伐部隊へ。 敵は2つと断定する。 うち1つは攻撃が当たらず、もう1つは命中すれども倒せない。 だが幽霊ではない筈だ。 すり抜ける敵には面射撃で空ごと撃ち抜き、弾が当たるヤツには大口径弾等を用いて撃破せよ。 出撃予定の隊員らは装備を整えて待機していてくれ。 なお、ウィッチには休んで貰う。 今度は歩兵隊のみだ。 以上」
取り敢えず、試してみるか。
して、他にも報告であった、サーニャが見たという幽霊の話。
恐らくだが、それはWDF。
シルバーだ。
軍曹ちゃんか、曹長ちゃんかは知らない。
だが、そうだろう。
「…………"違うところ"で運用実験をしないで欲しいものだな」
そう言っても仕方ない。
何か意図して、わざと危険空域近辺を飛行させているのか。
士気が下がる、誤射や事故の危険もある。
それとも……それすら、わざとか?
「考えても仕方ない。 今はネウロイだ」
……只野には黙っておこう。
そう思った矢先、トントンと会議室の扉がノックされた。
「鍵は空いている。 入って良いぞ」
そう言うと扉が開かれ、1人の女性が入ってきた。
501部隊長のミーナだ。
本部から増援という形でやってきた。
それはありがたいが、1人だけなのも心許ない。
信用していないワケじゃないのだが。
「失礼します」
「ミーナか。 どうした?」
501関係の話だろうか。
「はい。 今の無線の件と、サーニャさんから気になる話を耳にしましたので。 その事について、聞きたいことがあります」
無線はともかく、サーニャの話か。
しまったな、サーニャは501部隊だ。
報告は俺だけでなく、ミーナにも当然される。
やはり、隠せる話ではないな。
「ウィッチを休ませる事はありがたいのですが、事前に相談して欲しいと思いまして」
「すまないな。 皆、疲れていると考えて独断してしまった。 反省はしている」
「はい。 次にサーニャさんから聞いた話なのですが」
「なんだ?」
きた。
コレはとぼけても無駄だ。
ミーナの真っ直ぐな視線の中には、多少の疑惑が含まれている。
ミーナは隊長として部隊を運営するにあたっても、政治的な手腕を発揮する面があるという。
誤魔化せば、ミーナに核心を突かれる。
それは避けねばならない。
少なくとも、今はな。
「戦場でウィッチらしき人影を見たとの事です。 なにかご存知ですか?」
ここで知らないと嘘を言えば、後々面倒になる。
良心が痛む。
事実を混ぜつつ、話そう。
「近くにEDFの別働隊がいるそうだ。 ウィッチ運用ノウハウがないからか、運用実験をしている。 恐らく、参加しているウィッチを見たのだろう」
WDF計画は伏せつつ、ミーナに話す。
だが、ミーナの目は細まり疑惑を深めた。
「ここは危険な空域です。 このような場所でわざわざ実験をする必要性を感じません」
「そうだな。 その通りだ」
「では、なぜ?」
俺が聞きたい。
「俺はEDF全体を知っているワケではない。 上に意見出来る事はあってもだ。 組織は1枚岩じゃない、君も分かるだろう?」
「では、上に具申をお願いします」
「わかった、そうする……他には?」
波状攻撃に耐え、つきそうになる溜息を我慢して言うと、ミーナは仕事モードを切って言う。
少し悲しげな、不安そうな表情で。
「……ストームさん。 EDFは、私たちウィッチは、どのように見えているの?」
「守るべき人類だ」
迷い無く言う。
これはEDFの総意だ。
そう、ただ……考え方が違うだけだ。
ーーーーーー EDFーーーーーー
只野二等兵視点
次も出撃予定だ、チクショウ。
とまぁ、文句言っても仕方ない。
生きているだけ儲け物と考えないとな。
「さて、装備はどうしようかなっと」
俺は武器集積所と化している格納庫に向かい、本隊様のブラッカーA1の横に並べられた銃火器を眺める。
ブラッカーね、対空戦闘には向かないし霧の中だから出番が無いのは仕方ない。
でも戦車兵の中には空を飛び回るエイリアン幼生体に主砲を当てていた気がするがな。
スゲェと思うが、やはり軍勢相手だと不利だった。
霧も出ているからね。
装備は軍曹達にも好きなのを持って来いと言われたのでね、好きにさせて貰う。
面射撃が出来る武器と重装甲を破壊出来る重火器だな。
陸戦ならショットガンとロケランを担ぐところだが、霧空を飛ぶ相手だ。
射程の無い普通のショットガンは厳しく、視界の効かない中での単発ロケランも遠慮したい。
倍率スコープ付きでも、霧が酷いから役に立たない。
「そういやサーニャと武器の話をしていた時、レパード誘導ロケットの話をしたな。 それを持って行くか?」
と、思ったが。
霧で相手が見えないのに誘導なんてマトモに出来ない。
仕方ない、別の武器を選ぼう。
「単発ゴリアスは論外だ。 弾数でも勝負したいからな……カスケードにしよう」
サーニャの持つ、フリーガーハマーに似た長方形な武器を背負う。
トリガーと小さな照準器が付いていなければ、ナニこの箱と思うソレ。
これは前後の蓋を取って伸ばす事で使用可能状態にし、30発前後もの小型ロケット弾を連射出来る。
ただ小型ロケット弾は連射性能を高めるため、限界まで軽量化されており、結果として精度が低下している。
また、小型なので1発の破壊力は低い。
まあええわ。 面攻撃用にするので。
今回は許したる。
「次に高威力の武器だ。 どうする俺」
やはりゴリアスか?
いや、南の島で使用したプロミネンスにしよう。
そう考えて、個人携行出来る限界を超えかけていそうな大砲を持ち上げる。
「うん……プロミネンス、デカいし重い。 取り回しも悪い」
てか、こんな大砲みたいなデカい大型誘導ミサイルまで要塞に持ち込まれていたのか。
予備弾薬類もだが。
兵站も担う補給・輸送部隊は大変だ……感謝するよ。
南の島を思い出す。
こんなものをStorm1はどこにしまっていたんだ。 謎である。
「なんか偏ったけど、何とかなる。 軍曹もいるし」
フラグを立てつつ、俺は集積所を後にした。
きっと大丈夫……大丈夫だ。
今度も生き延びる。 そう願う。
◆キール港手前、濃霧の中
濃霧の戦闘、2戦目
再び同じメンバーで、ネウロイに挑むEDF歩兵隊。
霧は相変わらずで、視界が効かない。
だが今度は勝つぞと皆の士気は高かった。
最初はネウロイを見つける為、部隊を分散させて捜索。
フェンサー部隊、ラビット、Storm2と只野二等兵。
あと、戦闘には参加しないがスカウトも捜索している。
見つけたら最寄りの部隊から交戦し、他の部隊も駆けつけて戦力を集中運用、撃破する作戦だ。
「只野の装備は全部ミサイルやロケットか」
霧の中を捜索しながら、軍曹は言う。
別に攻めているワケではない。
そうくるなら、彼の運用方法、立ち位置を考えなければという思いだ。
「カスケードは、分かっていると思うが精度は荒い代わりに弾数は多い。 面攻撃に使うなら扇状に発射しろ。 攻撃効果を高めるんだ」
「勿論です」
運用方法を説明する軍曹。
それを素直に聞く只野二等兵。
いくら強力な兵器とはいえ、使い方を誤れば持ち腐れである。
地底で空爆や砲撃要請をするような、おバカな真似はいけない。
「もうひとつはプロミネンスか。 良くあったな」
「はい。 なんかありました」
只野は淡々と言うが、プロミネンスは大砲のようにデカい大型ミサイルランチャーであり、見た目相応に危険物である。
それを雑な集積所に置いていたEDFの管理体制はどうなっているのだろうか。
戦場の混乱の中で行方不明になった武器もあるが、とあるヤベェ手榴弾は危険と書かれた貼紙を貼って倉庫に放り込まれていた事もある。
他の武器にも言えることだが、やはりEDFは雑なところがある気がする。
「だが、ロックオン圏内に入っても直ぐに撃つなよ。 重装甲用に持ち込んだのだろうが、センサー上では分からない。 無駄撃ちを避ける為、まず俺たちが見極める。 只野が撃つのはそれからだ」
「了解」
只野は了解、センサーに注意しStorm2の背後を進む。
ロケラン系なので前衛は味方に任せるのだ。
なお、軍曹はブレイザーのままだが、部下は別のライフルを手に持っている。
徹甲榴弾をフルオート発射可能なミニオンバスターMKX、セミオートだが強力なAP弾を発射するG&M-A29である。
面射撃には向かないが、破壊力は凄まじい武器である。
(まだ敵は出てこないか)
一方、只野二等兵。
一応、撃つ気は無いがトリガーを引きっぱなしにしてロックオン探査を行う。
プロミネンスはレーダー支援システムを使えば1キロ超えのロックオン距離を軽く稼げる為、敵の方向を知るのに使っているのだ。
流石に20キロは無理だが、センサーと併用する事で信用性や索敵能力を高めている。
味方部隊がいなければ、隙が大きく運用の幅は狭まってしまうが、今回も大丈夫だろう。
そんな時。
『こちらフェンサー! ネウロイ野郎を探知した! こちらに向かっている! 援護してくれェッ!』
野太い声が霧海に響き渡る。
すぐさま救援に向かうべく、軍曹達は走った。
「走るぞ!」
「「イエッサー!」」
いざ再戦。
只野二等兵は軍曹たちの後に続き、他の部隊も現場に急行する。
装備を変更した隊員らだが、今度は勝つ事が出来るのか。
ーーーーーー EDFーーーーーー
フェンサー部隊に狙いを定めたネウロイは、そこそこの高度から撃ち下ろす十字砲火を行った。
それは歩く前哨基地直下で受けた、砲撃の劣化版のようだ。
これをシールドで防いだり、跳ね返す。
だが激しい砲撃の合間を縫えず、ネウロイは反撃の隙を与えてくれない。
これにはフェンサーも苛立ちを覚えてしまう。
「ぐうぅ……ッ!」
「折角の高火力を発揮出来んとは!」
「耐えろ! チャンスは来るはずだ!」
シールドを構え続け、ビームに耐える。
フェンサーは火力こそ装備次第で戦車を上回るが、機動力が代償になっている。
それを補う為に、スラスターやジャンプブースターが"ランドセル"に付けられるが、今は使っている余裕はない。
使っところで、敵の正確な形状や位置も分からない。
退却する時に使えても、この状況下で戦闘に活かすのは困難だった。
「ならば!」
だが、そこは歴戦の勇士。
反撃の手立てを考え、実行に移す!
「ふんっ!」
なんと、1人のフェンサーがシールドを地面に突き刺し、その上に巨砲【35ミリ ガリア重キャノン砲】を載せたのである!
「頭良いなッ!」
「だろ? 脳筋とは言わせねぇ!」
これで盾を構える必要は無くなり、また砲を盾に載せる事で安定化、砲撃に集中する事にも成功。
「反撃の時間だぜ、ネウロイ野郎!」
勇ましく叫ぶと、フェンサーは霧海を響す砲撃音と閃光を瞬かせた!
35ミリ ガリア重キャノン砲の咆哮が、異界の霧海に響く!
それは最高性能の個人用重火砲。 貫通力に優れた特殊砲弾を発射する。
個人用としては最大級の兵器であり、その重量はパワードスケルトンの出力を最大にすることで「かろうじて運搬可能」というレベル。
大口径であるため、生身の人間なら発射時の反動だけで命を失いかねない。
恐らく、頑丈なウィッチとて耐えられない。
それを運用可能にしているフェンサーや、身に纏う強化外骨格は凄まじいものだ。
して、放たれた砲弾は重装甲と思われるネウロイに命中したらしく、霧の中から爆音が聞こえた。
「よしっ!」
「どうだ! 参ったか!」
ネウロイからのビームが止まり、フェンサーの脳裏に勝利の言葉が過ぎる。
流石に、あの砲撃を喰らって無事では済むまい……そう考えているからだ。
が、しかし!
「ナニィッ!?」
またもビーム攻撃が再開された!
まるで、その程度は擦り傷だとでも言わんばかりだ。
「馬鹿な!」
「今までのネウロイ野郎なら、これで倒せたぞ!?」
「今までと違うんだろうよ!」
再びシールドで身を守るのに徹するフェンサー。
このままではやられる……その時、軍曹達がやって来た。
「無事か! 援護する!」
霧海を、一筋の光が横切った。
今度は薙ぎ払うような照射であり、より攻撃範囲を広げての攻撃だった。
「喰らえ!」
そこに部下も加勢。
徹甲榴弾の容赦ないフルオートの横殴りの雨や、貫通力のあるAP弾が霧へ沈んでいく。
「フェンサー! 装甲の厚いヤツはどっちだ!?」
「今、攻撃してるヤツだ!」
「分かった! 只野、撃て!」
「イエッサー!」
そこに後方に控えていた只野二等兵が、プロミネンスミサイルを発射!
空高く火の玉が上がっていくのが、僅かに見えた。
「着弾するまでヤツを引き付けろ!」
軍曹の言葉に弾かれたように、更なる弾幕がネウロイを襲う。
セミオートで放たれている筈のAP弾も、連射速度が増してフルオートのようになっている。
「みんな撃て! 撃ちまくれ!」
そこにラビットが到着。
担いでいるロケットランチャー、グラントM32を撃ちまくり、ロケット弾が霧海の中で爆発していく。
「只野! カスケードに持ち替えて、センサー反応方向にばら撒け!」
「了解!」
言われた只野は、プロミネンスのリロードを中断。
武装を切り替えてカスケードの武装展開を瞬時に行い、トリガーを引き続ける。
「当たれッ!」
30発装填のロケット弾を景気良く放ちつつ、センサー反応方向に、横になぞるように砲口を動かす。
扇状に、バラバラに飛んでいくロケット弾。
いくつかは命中し、霧の中から軽い爆音が聞こえてくる。
やがてネウロイの天辺に到達、落下したプロミネンスミサイルが着弾。
大きな爆音となって、霧を刹那的に吹き飛ばした。
「さすがはプロミネンスだ!」
「流石にくたばっただろうよ!」
「じゃなきゃ困ります!」
部下が口々に言いつつ、センサーを見て攻撃効果を確認する。
そこには赤丸表示が消滅しており、残すは1体となっていた。
「よし! 後1つだ!」
「弾があたらねぇヤツだな!」
「敵の戦力は削った。 そのぶん、楽をさせてもらおう」
フラグを立てつつ武器を面射撃用に切り替える隊員ら。
すぐさま反応方向に銃口を向け、撃ちながら前進する。
「勝利は目前だ!」
「すすめー!」
「EDFッ!」
フェンサーは同じデクスター自動散弾銃、ラビットも散弾銃、ただしポンプアクションのスローターE20で攻撃。
軍曹はブレイザーで薙ぎ払うように攻撃、部下は銃口を小刻みに動かして弾道を変えつつ攻撃。
只野二等兵は、カスケードでロケット弾をばら撒いた。
なんか、対空戦闘にナンセンスな武装な気がするが、EDFは そういった武器でも なんだかんだ空飛ぶ敵と対峙してきた。
それこそ、これから来るような……乱入者に対しても。
「ッ!」
一筋の光が走る。
それはブレイザーや、ネウロイのビームではない。
もっと大きく、鋭いもの。
まるで【かの者】の流星の様な体当たりを人間サイズにしたようなもの。
「なんだ!?」
それはセンサー上で赤丸を"轢き殺す"。
EDF隊員が苦労した敵を、いとも簡単に倒してしまったのだ。
それは いつか見た銀の"死神"のよう。
「味方か?」
反応するように霧は晴れ上がる。
して、"犯人"は姿を現した。
「……ウィッチ?」
宙に浮くは、1人の少女。
息を呑む程に美しい白銀の髪を靡かせ、色白の肌は光を反射させ神々しい。
カールスラント空軍の軍服を着用しているが、ストライカーユニット無しで宙に浮いていた。
目は虚ろで、物静かに地を這うEDF隊員を見下ろしている。
「まさか」
その言葉を吐いたのは、軍曹だったのか只野なのかは分からない。
ただ唯一、ここにいるEDF隊員の"ふたり"は冷や汗を流しつつ誰かを理解した。
「…………軍曹ちゃん?」
只野二等兵が力なくボヤいた刹那。
彼女の右手が隊員らに向けられ。
「総員、直ちに撤退せよッッ!!」
軍曹が叫んだ。
次の瞬間。
眩い閃光が世界を包み込み、次に穏やかな光が直ぐに戻ってくる。
そこには既に隊員らの姿はなく、大きなクレーターと。
その中心に浮かぶ白銀の少女がいるだけとなった。
EDF隊員が倒したのは子機の方ですね。
それ、倒せるの? というツッコミは許して(殴)。
本体は謎の白銀の少女に倒されました。 アッサリと。
続くか未定。