Witch Defense Forces(WDF)(完結)   作:ハヤモ

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作戦内容:
WDFの暴走、それに伴う甚大な被害、挙句に当該魔女の行方不明。
あのまま戦闘が続いていれば、間違いなく欧州は、世界は破滅への道を辿っていたでしょう。
あれから時間も経ち、我々EDFはWDFに対抗する為にも連合軍のひと部隊として組み込まれ、509JFWとして位置付けられました。
これにより、連合からの補給等の支援が円滑に進められます。
ですが安心していられません。
このまま行方知らずのWDFを放置するワケにもいかず、戦略情報部と連合は情報収集を続けます。
隊員の皆さんは、状況を把握しつつ、いつ戦闘が発生しても良いように備えて下さい。
備考:
最終作戦決戦仕様をジャラジャラさせても、WDFへのトドメにはならない。
だが、魔女から魔法を奪う方法はある。
それは皆、知っている筈だ。

作中の509JFW部隊章は、そのままEDFが使用する地球の絵。


53.白雪姫

◆ベルリンEDF本部

 

あれから1週間程か。

ジークフリート線の惨劇から生き延びた只野二等兵は、五体満足であったが他の者は そうではなかった。

 

ストームチームは皆、重傷。

生きているのも、ここまで回復したのも不思議だったと衛生兵が言う。

医療班の必死の努力で一命を取り留めた面々だが、その回復力も人外だ。

 

やはり伝説の遊撃部隊員は違うということか。

 

だが戦場に復帰するのは困難で、ベッドから出る事は暫く出来そうにない。

そんなストームチームのひとり、Storm1の見舞いに訪れたのは只野二等兵。

本当は笑顔を見せ合うべきだろうが、状況は悪く、なんとか笑顔を見せようとしてぎごちなくなってしまう。

 

 

「その、具合は?」

 

 

堰を切ったのは只野だった。

対してStorm1は、民間人の作業着姿で、だけど包帯を所々露呈させた痛々しい姿で答える。

 

 

「まぁまぁだな」

「……命があって、良かったです」

 

 

そう言うが、会話が続かない。

WDFのこと、みんなのこと。

色々と言いたいが、言うべきか迷って……言葉に出ない。

 

 

「……他のストームも生きて戻れた。 また戦場に戻れるだろう」

 

 

その言い辛い一部を、Storm1隊長は言ってくれた。

 

Storm4、3は装備が大破した他、全身を骨折、出血多量だったが骨が露呈したStorm1程ではなく、安静にしていれば命に別状はない。

Storm2と共にいた部隊の面々も同様で、特にジークフリート線の惨劇には巻き込まれなかった為に"軽傷"の部類で済んでいる。

 

 

「只野。 お前も無事で良かった」

「俺は……軍曹ちゃんを止められませんでした」

「悔やむな。 あの場で止められた者は誰もいなかったよ」

 

 

狂気の紅海に浮かぶ白銀の魔女。

軍曹抜きだったとはいえ、伝説の遊撃部隊すら歯が立たず、多くの犠牲者が出た あの日。

 

ベルリンから駆け付けたEDF救護班は救えるだけの命を救う為に奔走。

エイリアンの技術をも応用、新陳代謝を異常促進させる特殊な薬物を投与、もげた足や腕を生やし、傷を塞いで回った。

 

PTSDの疑いがある者はモルヒネなんて生温いと、もっとヤバい(倫理観的に)薬物……クローンエイリアンに付けられていた装備……などで記憶を消去、或いは曖昧にした。

これは只野を含めた多くの人間が対象になりそうな話だが、少なくとも只野とストームは処置を受けていない。

平気なワケじゃないが、今後の作戦行動で必要になるかも知れない経験は残すという判断で消されなかったのだ。

お陰様で常人なら発狂する光景が脳裏に焼き付いたままだ。

それでも冷静そうにいられるのは、かつてのエイリアンとの大戦を潜り抜けた猛者だからだろう。

最も、これで発狂したら処置されてしまうのだが。

 

 

「…………そうですね。 501の皆は?」

「彼女らは記憶処理された。 人間の中身をばら撒いた光景だ、10代の女の子には耐えられないからな」

 

 

なんとも言えない表情で、しかし救いであった話をする隊長。

ゾンビのように狂気の戦場から撤退していた501部隊は、通りかかった救護班に回収されて記憶を"パー"にされた。

それはWDFの記憶ごとだ。

綺麗に抜き取るのは無理だが、後で個室で間違い探しのような答え合わせをして、都合の良い部分だけを覚えさせていった。

 

ストライカーユニット装着時、魔女の精神状況によっては飛べなくなるなどの悪影響も考えられる為、これで良かったのかも知れない。

 

 

「知らぬが仏です」

「本当だよ。 彼女達には可哀想な事をした」

「綺麗な空だけを見ていて欲しいです」

「そうだな。 これは本来EDFの問題だ」

 

 

そう言うと、Storm1はバインダーを取り出し、只野に渡す。

その板に挟まる何枚かの紙には、現状報告の文字が羅列されている。

一瞥、流し読みしつつ只野は聞く。

 

 

「これは?」

「見ての通りだ。 EDFが連合軍に組み込まれたのは知っているだろう」

「はい。 仕方ないかと」

「兵站の意味でもな。 だが現状戦力で どうにかなるもんじゃない」

 

 

そうですね、とは只野。

ストームチームが太刀打ち出来なかったのだ、どうしろというのか。

 

 

「なのにも関わらず、連合のお偉いさんはWDFを手に入れようとしている」

「愚かですね、EDFが制御出来ていないのを知らないとでも?」

 

 

呆れを通り越した、乾いた笑いが起きた。

前から憎たらしい連合上層部も、ここまでくるとおめでたいとすら思う。

 

 

「その辺は本部も反発している。 無理だからな」

「それで、対策は?」

 

 

輸送計画書、搬入予定、受領書等を見る。

強力な兵器の名前が並べられているが、どれも神モドキと化した魔女に効果があるのか不明だった。

 

 

「今は充分な装備もない。 新型レールガンのイプシロンブラスト電磁投射砲が近々配備される他、ブラッカーA9などの最終作戦仕様も配備。 勿論、最新鋭のコンバットフレームも輸送されてくる」

「それで勝ち目は?」

「ない」

 

 

はっきり言われた。

こうも堂々とした絶望も、そうないだろうと、逆に笑いすら起きる。

 

 

「それでも無いよりはマシだ」

「そうですが」

 

 

言い淀むのも仕方ない。

かの者を倒したストームチームが敗北したのだ、奇跡の勝利を再び得るのは困難なのではないか。

 

 

「お前にも配備される武器がある。 来たら受領しとくと良い」

 

 

言われて、紙を凝視する。

びっしりと書かれた配備予定者の中に只野の文字を見つけ、その列の武器名を見やる。

 

 

「TZストーク?」

 

 

それはストーク型アサルトライフル最終型。

戦局を打開する切り札として開発されたものの、既に量産が難しい状況となっており、数丁の試作品が選ばれた精鋭に託されたという銃。

 

 

「スコープとレーザーサイトを装備している。 咄嗟の状況でも正確な射撃が可能だ。 威力も高い」

「いや、ちょっ。 俺なんかに?」

「お前だからこそだ。 俺が認めたんだ」

 

 

どうやら隊長が只野に配備した形らしい。

これには戸惑う只野。

階級は二等兵、欧州で逃げ出した元逃走兵。

精鋭というのはストームチームのような者を言うのだと、その意味では無縁だと思っていただけに不安になってしまう。

 

 

「でも、俺は」

「……お前は強い。 あの時、シルバーはお前の呼び掛けに反応していた。 また接近するチャンスが来るかも知れん。 その時の為にも護身用として持っておけ。 また隕石が降ってきた時、困るだろう」

「隕石にライフル弾が通用するんですか?」

「他の隊員が壊したのを見たぞ」

「えぇ」

 

 

隕石を降らす かの者 もヤバいと思うが、EDFの武器も結構スゴいと改めて思い知らされた只野であった。

 

 

「あと、シルバーを止める手段を模索している中で、魔女の魔法力やら魔法圧やら、ストライカーユニットの宮藤理論やら燃料やらエーテルやらの話を見聞き、俺なりに考えてるのだが」

「はぁ」

「方法として、シールドを圧倒的な一点火力で破壊するという脳筋な方法しか、今のところ思い付かない」

「いつかのプランBの結果みたいになりそうですね」

 

 

ここでいうプランBとは、エイリアンの前哨基地破壊作戦時の話である。

前にも話したので省略するが、あのヤバい装甲ならぬシールドを破壊ないし突破なんて出来る気がしないのだ。

高出力のバルジレーザーにも耐え、テンペストにも耐え、スプライトフォールにも耐えた。

 

 

「まあ、それは否定しないが」

 

 

と、一拍おいて。

 

 

「ヤツが誰かを掴んでる時は、シールドを張れないようだったな」

「まさか隊長……囮に、なんてことは」

「最悪は、そうするさ」

「無茶しないで下さい。 今度こそ死んでしまいます」

 

 

隊長なら、またやりかねない。

そう思わせるのは、彼が様々な武勲を上げてきたからだ。

それこそ、常人には無理な数々の戦果を。

 

 

「後は、試したいのが狙撃だな」

「狙撃?」

「ああ。 シールドは予め張るものだ。 機械みたいに自動で張られるなんて事はない。 なら、不意打ちの類なら防げないと思ってな」

 

 

なるほど、と只野。

シールドさえ張られなければ良いなら、遠くから気付かれないように撃てば良いか。

 

 

「ですが、スプライトフォールとやらに耐えた耐久を誇っているように感じましたよ。 シールド対策をしても、やはり」

「ああ、それも考えた」

「と、いうと」

 

 

隊長は、窓の外を指差す。

そこには、いつぞやのレールガン……の、砲身をカタパルトにした原始的な装置が。

 

 

「あれは、変態が造ったウィッチ用カタパルトじゃないですか。 あんなので どうするんです」

 

 

どこでも迅速にウィッチを空に上げれるという、コンセプトで造られたソレ。

実用化されたトコを見たことがないソレは、下手すると鉄屑以下だと唾棄している只野。

だが、隊長はソレを使うと言う。

 

 

「ナニって、簡単だ」

 

 

そう言うと、ニコリと笑顔を向けられ、

 

 

「只野。 お前が弾丸になってシルバーに抱きつくんだ。 して、キスすれば良い」

 

 

衝撃の発言。

これには只野、ナニを言っているか理解するのに時間が掛かる!

 

 

「………………ファッ!?」

 

 

ようやく飲み込み、だが何故にという顔をする。

 

 

「まだ分からないか」

「まだ分からぬでござる」

 

 

驚愕のあまり、どこの知将だという妙な喋り方をしてしまう。

隊長は説明する。 簡単だった。

 

 

「魔女は"えっち"すると魔法が使えなくなる。 だから そうしろ」

「嘘でしょ? 公衆の面前で、決戦部隊が展開するシリアスなシーンで悪魔合体をしろと?」

 

 

年下の女の子に、空中で【自主規制】とかアブノーマルなプレイにも程がある。

人生が終わるレベルである。 エイリアンもビックリするかも知れない。

 

 

「ナニを言ってるんだ。 キスすれば良い。 恐らく それで魔法が使えなくなる。 シルバーは無力化される」

 

 

一方、隊長は真面目だった。

 

 

「愛は世界を救うのだ。 題して白雪姫計画とでも言っておこう。 シルバーは白いしな、キスをして目覚めさせる的な意味でもロマンチックだろう?」

「ナニ言ってんスか!? キスだけにしても犯罪者でしょ! つーか、失敗して死んだら笑いの種どころじゃなくなる!」

「安心しろ。 あの子はお前の事が好きだった。 ナニしても問題ない。 それに失敗したら世界は多分 終了する。 だから笑うヤツもいなくなる、やはりナニも問題はない」

「問題だらけじゃね? どっち転んでも犯罪者ENDじゃね?」

「頑張れ。 作戦司令本部と連合総司令部は認可した。 皆にも伝わるから、齟齬による足の引っ張り合いは無い」

「既に晒されてるうううう!?」

「人類を滅ぼしたいのか?」

「滅んじまえ、こんな計画で!?」

 

 

病室なのを思い出し、だけど頭を抱える只野。

人生、まさかこんな展開になるなんて。

魔女にキスするのが世界を救う方法とか、メルヘンにも程がある。

して、それを晒された人生の行く先はどこ。

 

 

「……白雪姫は」

 

 

隊長が真面目な声で続けた。

 

 

「ドイツの話だったか。 ちょうど、カールスラントに当たる。 して彼女はカールスラントの子だ。 これも運命か」

「……改造したのも運命ですか?」

「それはEDFが悪い。 故に我々は尽力し、止めねばならない。 だからキスしろ」

 

 

キス推ししてくる隊長に、キモさとかは感じないが、ある種の狂気を感じて別の話にする。

 

 

「曹長ちゃんは?」

「取り返そう。 先にな」

 

 

そういって、座標の書かれたメモ用紙を渡す隊長。

どうやら、そこに行けば良いらしい。

 

 

「エピメテウスがいる座標だ。 ヘリを飛ばして向かうと良い」

「俺ひとりで?」

「無線で俺と話せる。 その意味では1人じゃない、安心しろ」

「安心の要素が無いんですがそれは」

「エピメテウスにハッキングする術ならあるからな、もし向こうが受け入れ拒否でもしてきたら、テンペストやスプライトフォールを喰らわすぞオラァと言って脅せ」

 

 

隊長が言うと、本当にやりかねない。

たぶん、エピメテウス側も分かるだろう。

Storm1民間人時代、ハッキングの被害に遭ってるし……。

 

 

「……白雪姫は」

 

 

まだ言うか。

 

 

「1人とは限らんぞ」

 

 

それ、二股しろって事ですか?

愛がどうのってヤツはどうしたの?

 

 

「それに、白雪姫の話は変遷している……バッドエンドになるか、ハッピーエンドになるかは……分からない」

 

 

それは。

 

 

「結局、どうなるか分からないんですね」

「誰にも分からん。 だが、援護はする」

「ありがとうございます」

 

 

ならば。

来るか分からない絶望に怯えるなら、行動した方が良いのだろう。

 

只野はメモ用紙を持って、病室を後にした。

やれる事。 それは個人の二等兵にもある筈だ。

 




白雪姫。
どんな結末になるのか……。
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