Witch Defense Forces(WDF)(完結) 作:ハヤモ
エピメテウスに乗り込むぞ。
ヘリを調達して……ナニ!? 使えないだと!?
備考:
分からない事、相談事は無線。
にわか知識なので、解釈等に間違いがあるかもです……。
MGO PWのサウナネタが含まれます。
ご了承下さい。
やってみたかっただけである……。
◆ベルリンEDF本部周辺
只野二等兵視点
「ヘリが使えない!?」
思わず叫んでしまった。
場所はヘリポート。
隊長からエピメテウスの潜伏する海域、座標を知ったので、ヘリで向かおうとしたのだが、主任……ホーク1パイロットに首を横に振られた。
ええい! 本部の差し金か!
言ってやる、遠慮はしない!
「無許可管制無視上等! ただし対空砲火は勘弁。 とりま初期型N9エウロスでも良い。 それとも二等兵に出すヘリは無いと?」
言いくるめるように早口で、食い下がる俺。
対してホーク1は、呆れたように言った。
「あのな只野……よく見ろ、周りを」
「周り? 注目の的になってるから止めろと?」
「違う。 ヘリが、1機も、無いんだよ!」
ファッ!?
いやいや、いくら戦力が乏しいEDFといってもヘリのひとつやふたつ……。
「無い!?」
マジで無かった。
見渡せど、すっからかん。
そこそこ広い敷地に、何も無い。
風が虚しく鳴いているときた。
「どこいったんだ!?」
「ベルリン防衛戦で撃墜されたか、離陸前に破壊された」
マジで?
ジークフリート線に来てくれたネレイドは?
「俺や一部のヘリは空中退避に成功したが、それでも対空砲火やら航空ネウロイの攻撃が激しくてな。 俺が乗ったネレイド以外は堕とされた。 その後は、お前の知るように、ジークフリート線の援護に向かい……お前さんの知らん所で大破して戦闘不能。 どっちにしろ継戦する為の燃料が無かったが、めでたく全機不能さ」
おうふ……。
知らない事情があったのか。
「そういう事だ。 諦めてくれ」
「次の搬入はいつです?」
あまりモタモタしたくないなぁ……。
曹長ちゃん、今も苦しんでるんじゃないか。
「少し先だ」
おいおい。
そりゃ勘弁して欲しいでやんす。
「なる早で」
「急いでる方だ。 だが分かるだろう、生産も整備も設備も資材も人員も何もかも足りないんだ。 あっても、元の地球で使いたい分もある。 来ても他のエリアへの輸送や護衛に使われるのが優先されるだろうから難しいぞ」
ぐぬぬ……。
何か、何か他の解決策を考えねば。
「あっ、そうだ」
隊長に頼めば良いんじゃね?
権限は強いから、1機くらい融通が利く筈。
さっそく電話……じゃなくて無線しよう。
「隊長」
『無理ダナ』
回答早ッ!?
「諦めんなよ!?」
『そういう問題ではない。 先程から俺が要請しても地底にいるかの如く拒否られた。 やはり在庫が無いようだ』
どうすれば良いんだよ。
この間にも曹長ちゃんは……。
『こういう時、慌てても仕方ない。 ヘリが全滅していたのは予想外だったが、次のチャンスを待つしか無い』
いや、だって。
次のチャンスっていつだよ。
ヘリは無い、曹長ちゃんは救えない、軍曹ちゃんは行方不明。
心が落ち着かない。
戦場とは違った焦りを覚えるね。
「船とか、空軍のチカラは?」
『使えそうな船は連合軍が開戦時に徴発。 空軍は元の地球でのフライトで今は来れない』
「海軍の船は?」
『海軍は壊滅状態でエピメテウス以外無いだろうな』
「連合軍は?」
『連合軍の部隊はEDFの権限では動かせない。 仮に動かせても、エピメテウス、して中にあるだろうWDFの機密情報に乗り込むんだ、観戦武官だの連合傘下なんだのとこじつけてロクな事をしないだろうな』
「第509統合戦闘航空団の扱いだとして、俺ら側にいる航空ウィッチを乗り込ませるのは駄目なんですか?」
『飛行計画が出ていないウィッチが離陸したら、流石に目につく。 そうなれば追尾ないし拘束だ。 そも潜入や陸戦の知識はない。 それこそ狭い艦内に入るとなれば、狼の群れに子羊を放り込むものだ。 彼女達も危険に晒されるし、それこそ攫われて"喰われる"可能性がある』
「曹長ちゃんも危険ですよ」
『只野は第2、第3の曹長ちゃんを生みたいのか?』
そんなワケない。
……いけない、冷静にならなきゃ。
悲しみを掬う筈が、悲しみを増やす真似をしてはならない。
「すいません」
『焦る気持ちは分かる。 今は耐えるんだ』
でも何もしないで過ごすワケにはいかない。
それを察してか、隊長は慰める。
『只野、お前の味方は他にもいる。 本部もWDF計画には反対派だ、こじつけて色々と支援してくれている』
本部が?
だったら、なんでWDF計画そのものを止めてくれなかったのか。
『ならWDF計画を止めろと思ってるな』
見透かされた。
隊長だしな、思考はバレるか。
「まあ」
『WDF計画は戦略情報部の発案で、本部の知らないところで勝手に始まった。 報告が上がる頃には本部が止められないところまで来ていたんだよ』
じゃあ、止められないなら何をしてくれるんだよ。
そう思うが、それも読まれたのか、隊長は続ける。
『エピメテウスとて整備や補給は絶対に必要だ。 人間が乗っている以上は特にな』
「でしょうね。 それで?」
『本来なら転送装置で元の地球に帰り、然るべき港に寄港しなければならない。 だが、本部は転送装置の不具合を理由に使わせないでいる。 どういうことか分かるか?』
使えないという事は。
この世界に留まるしかないワケで。
だけど補給が必要だから、何とかしないといけないワケであり……。
「この世界の、どこかの港に寄港する?」
『そんなところだ』
正解だった。
『正確には、安全な海域で浮上して、輸送機ノーブル等を用いて物資を運ぶのだろう。 流石にエピメテウス程の巨大潜水艦をマトモに繫留出来る港は無いだろうからな』
「ちゃんとした整備は不可能と」
『ああ。 だが根比べをする気はない。 相当の時間を浪費するのは分かりきっている。 そこでだ、寄港する……或いは補給しにくる土地に赴き、輸送機に密航するんだ』
ええ……。
それ、上手くいく保証あるの?
荷物チェックとかされるだろ、普通に。
とか思ったが、EDFの管理体制ってガバガバなのを思い出した。
意外となんとかなるかも知れない、なるのも悲しいなぁ……自分のトコの組織だし。
『あくまで計画だ。 エピメテウスにハッキングして現在地と航路を予想する事は出来るが、具体的にどこで補給するかは不明だしな』
「本部が指定すればコントロール出来るのでは?」
俺は言った。
補給は歩兵の現地調達とはワケが違う。
拠点や戦艦は大量の物資を計画的に運ばないとならない筈だ。
でなければ運用なんて出来ない。
それらは たくさんの人員と物資があって、やっと機能する高価な存在なのだから。
『勿論、それはしてくれた。 だが、エピメテウスは機密保持の観点を理由に本部の全指定を拒否。 大雑把に補給相手を教えてくれれば良いとして、後は自力で調整するとした』
おいおい。
本部は無力だな。
組織を運用する立場なのに、1枚岩じゃなさ過ぎて派閥争いみたいにならない?
あいや、陸軍と海軍の時点で違うけど。
『エピメテウス側はコッチを警戒している、という事だ。 WDF計画の、これ以上の漏洩は避けたいのが本音だ』
は?
そりゃ都合が良過ぎる。
同じEDFで、陸と海で管轄が違うとはいえだ。
「俺たち陸軍に救援要請した癖に、それはないんじゃないですか?」
と、つい言ってしまう。
隊長に言っても仕方ないのだが、心の声を溜められる程に器は大きくない。
『そうだな。 だが、表向きの話に惑わされてはいけないぞ』
「と、言いますと?」
『連合軍の存在だ』
ああ……。
『仮にも連合傘下になったEDFだ。 当然、同じ連合なら情報開示や技術提供をしろという話は しつこさ を増す。 物資提供を受ける以上、拒否し続けられないのは事実だ』
「陸軍が、連合に媚び諂ってエピメテウスを売るとでも?」
『そこまで考えてないだろうが、繋がりを切れない以上、どこかで情報が漏れる可能性はある。 それを警戒しての事だ。 ウォーロック事件の時までに、既に漏れていたモノもあるからな』
じゃあ、どうしろと。
エピメテウスに乗り込むのは、思ったより難しいかも知れないぞ。
『本部も その辺は了解している』
「なら、諦めると?」
『そうは言っていない。 この件は俺に任されているし、軍事行動ではないとして報告義務は無いとしている。 かなり無理矢理だが』
えーと?
つまり、どうするのさ。
『俺や只野が個人的に動く分には、なんとか連合の目を誤魔化せる。 逆にいえば、少人数で乗り込まないとならない』
「俺ひとりで、何とかしてエピメテウスに乗り込むと」
それ、色々と無茶振りだよね本当に。
狭い艦内でボッチ戦争はしたくないぞ。
『心配するな。 俺がいる』
「無線越しでしょ」
『そう言うな。 ビークルや兵器群には多少の知識はある。 その面でもアドバイス出来る事もあるだろうさ』
何も無いより良いけどね。
ああ、もう少し味方がいてくれれば。
『今は十分な情報も無い。 おって連絡する』
「了解です。 通信終了」
そう言って、話し終えた。
やれやれ。 どこまでも話は拗れるな。
「長電話は終わったか?」
ホーク1が声をかけてきた。
ジッと我慢の鷹であった。
「はい、別の手段にします」
「そうか。 すまんな」
「ホーク1は悪くないです」
良くも悪くもホーク1は、パイロットだからね。
人手不足の面から搬入やら主任やらをやっているのかも知れないけど、この件で悪いのは上層部だ。
「まぁ、なんだ。 出来る事があるなら手伝うさ」
それでも助けてくれるという。
ありがたい。
「じゃあ、ヘリが使えるようになったら教えて下さい」
「分かった」
まあ、今は そう言うしかない。
自発的に情報を集める余裕も技術もない。
平時でも警備任務やら補給兵の手伝いで荷物持ちとか やらされるし。
「下手に動いて、お上に消されるのも面白くないしな」
ブツブツ言いながら、俺はヘリポートを後にする。
今は情報を待つしかない。
こうしている間にも……と考えてしまうが、ジタバタしても仕方ないのも事実。
通常任務もある。
最近はそれでも非番の日が出来たが、連合軍の監視があるからか、EDFは行動制限を掛けていて好き勝手には動けない。
「今はカールスラント、EDF本部がある首都ベルリン周辺しか動けない、か。 何か出来る事は……」
またもブツブツ言いながら、本部が設置されたフラッグタワー周辺をフラつく俺。
EDFじゃなかったら憲兵なり警備兵に拘束されるところだな。
そう考えて薄く笑っていると。
目の前でウィッチと男性兵士が仲良く歩いているのが見えた。
よく見れば、周囲は そんなカップルがチラホラといる。
笑顔満開、デート満喫、平和万歳ってか。
「リア充め」
いや、良いんだけどね。
元々多国籍軍なEDFだが、日本支部から来た以上は隊員の大半は日本人であった。
だがコチラの世界に来て、各国の兵士が集まり509部隊となった今じゃ、国境も世界線も関係無い。
統合戦闘航空団自体、どこもそうなのだろうが軍服は統一されておらず、各国の軍服のままだ。
だからこそ平和だなと思わしてくれる。
第二次世界大戦の、国家間の戦争なんて起きていないのだ。
それこそ、あの惨劇なんて無かったように。
「記憶処理されたのもあるだろうけども……はぁ」
改めて責任がのし掛かる。
"ただの"二等兵なんかに、世界の運命を預けないで欲しい。
溜息を吐いて、今後を嘆いていると。
また無線が掛かってきた。 隊長からだ。
『只野。 さっきはああ言ったが、無理はするなよ』
怪我しているのに、二等兵を気遣う大将。
ありがたいね、こんな展開じゃなければ。
「ありがとうございます」
『根を詰めても良くない。 サウナにでも入って汗を流したらどうだ?』
へ?
サウナ?
「サウナなんて あるんですか?」
『知らなかったか』
知らないです。
いつの間に出来たのかい。
『連合各国から兵士が集まる過程で設備の拡張をしていたそうだが。 中にはサウナの本場フィンランド……こちらで言うスオムスの兵士もいてな、要望で作ったそうだ。 本格的な蒸し風呂だよ』
へぇ。
経験はないから、行ってみるかな。
行く当てもない。 そこで考えるのも悪くない。
『俺も行く』
へ?
隊長来るの?
「怪我は大丈夫なんですか?」
『激しい運動をしない分には平気だ』
左様ですか。
『……それに、502のチャラ女に用事があるからな』
「はぁ……チャラ女、ですか」
チャラ男ならぬチャラ女。
たぶんウィッチなんだろうが、ナニかあったのだろうか。
それにサウナって。
まさか裸の付き合いってヤツ?
「隊長。 ナニがあったのか知りませんが、女性が入ってるサウナに入るのはマズいですよ」
EDF……509は男女間の距離が近いとはいえ、流石に越えてはならない一線くらいある。
風紀が乱れ易いのは悪い点だが、だからって知っていてヤるのはダメだって。
『ナニか勘違いしているようだが。 逆にそういう所じゃないと話せない時もある』
「あのー……俺、お邪魔じゃないですか?」
男と女が混浴とか……サウナっつても、露出率の高い場所だよ?
もう変な噂が飛び交うんじゃね?
俺の場合は手遅れ感があるけどさ。
白雪姫作戦的なのが浸透していく過程で、コチラの顔を見るや顔を赤らめてヒソヒソ話す子も増えてるし。
『問題ない。 目撃者が多い方が良い』
「えぇ……隊長、そんな趣味が?」
みんなに見られてると興奮するんの?
ヤベェ、変態じゃん。
白雪姫作戦を発案する理由も納得だわ。
『違う。 チャラ女の悪事が広まる意味でだ』
若干の怒気を含んだ声。
うむむ……こりゃ真面目な案件か?
折角だ、ここまで言うんだから聞いておこう。
「一体、その人はナニをしたんです」
『ウチの子らに手を出したんでな、その説教だよ』
風紀が乱れる前に乱れてました。
でも、その説教方法も風紀が……いや、もう任せます。 好きにして。
「さいですか。 事情を知らないので、お任せします」
『そうしてくれ。 先に行ってる、気が向いたら只野も来ると良い』
うん……なんか、行き辛い。 辛くない?
「ちなみに、その人はウィッチなんですか?」
『そうだ。 501部隊のミーナやバルクホルン、ハルトマンと同じカールスラント軍で名はヴァルトルート・クルピンスキー。 階級は中尉。 バルクホルンとハルトマンとは同じ部隊だった。 伯爵なんて呼ばれてるが、爵位なんてない。 酒好き女好きの享楽主義で楽天家。 空戦では勇猛果敢で敢闘精神に溢れているそうなんだが……ユニット壊しで有名だとも聞く。 まあそれは仕方ない、仕方ないが……ウチの子に手を出すのはダメだ。 説教してやる』
早口で言い終わるや否や、無線が切れた。
どうやら説教とやらに行くらしい。
あの怪我で、無理に動いたら傷が広がるんじゃないかと心配なんだけど……。
それでも説教しに行くのは、それだけ仲間が大事なのだろう。
手を出された、というのはウィッチの事なのか知らないが。
あれ……じゃあ、クルピンスキーさんとやらは、百合属性なのかな?
「……うん、まあ……行くか。 隊長が心配だし」
別に野次馬精神からではない。
本当だとも。
それと、魔女のハダカを見たいワケじゃない。
ああ、本当だとも。
それに、10代の子にオロオロしていては白雪姫の王子様なんて無理だろ(言い訳)。
サウナでの戦いの話を一緒にしていましたが、温度差が激しいという最もな意見を頂きましたので、別の話数にしてお送り致します。