Witch Defense Forces(WDF)(完結)   作:ハヤモ

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作戦内容:
501部隊は連合指令部により、カールスラントに留まっています。
解散して原隊復帰しないのは、EDFに介入させる為でしょう。
本人たちは、あくまでも大人達に従わされているだけで罪はありませんが……。
ジークフリート線の惨劇から自力で脱出しようとしたのは、10代の女の子でありながら良くやったと思います。
それでも精神疾患による戦闘不能を避ける為に記憶処理を施してあります。
健康被害は報告されていませんが、警備兵は気にかけて下さい。
備考:
記憶処理をされるというのは、どんな気分なのだろうか。
ただ、思い出させる必要はない。


56.胸囲の新人

◆EDF本部フラックタワー周辺

 

この日、只野二等兵は任務としてベルリン市街地を警備……という名の散歩をしていた。

受領したTZストークを持ち歩き、周囲を見回す。

自分以外の歩兵は出歩いていないが、建物の屋上には狙撃部隊のブルージャケットがKFF狙撃銃の完成形KFF70を構えて警戒中。

その下を只野や市民、非番の兵士らが出歩いている状態。

ものものしいが、神出鬼没のネウロイ相手だ。

これくらいしても良いだろうとは連合への言い訳だった。

 

実際はWDFへの警戒が本音なのだが、空間旅行先なんて分からないし、最終作戦決戦仕様の武器で集中砲火をしても倒せなさそうな神モドキ魔女に、こんなのは無力に等しい。

 

だが有効な対策なんて無い。

ならやれる事をやるだけだと、こうしている始末だ。

それでも元凶の戦略情報部と、ウォーロックの制御も出来ないクセにWDFをモノにしたい連合の諜報機関らが捜索を続けている。

 

一方で、行方の知れている筈の もうひとり……そちらの話は まるでない。

潜水母艦エピメテウス艦内にいるだろう、曹長ちゃんを救う事すらままならない事に、只野は苛立ちを覚える。

 

 

「どうすりゃ良いんだよ……こんな事してたって、状況は悪いままだぞ」

 

 

自分にだけ聞こえる声でボヤく只野。

ヘリは使えない、他の者も動けない。

情報も不足気味。

だけど任務だけは押し付けられる。

地獄を生き延びただけでも儲け物だと言われても、自分さえ良ければ良かった過去と違い、喜べない。

兵隊だけは日に日に増えているが、いくら掻き集めたところでWDFには敵わない。

精々が時間稼ぎだ。

 

そんな状況を知らない一般市民、兵士らは買い物や食事を楽しんで笑顔を見せてくるときた。

 

発狂してフルオートで弾をばら撒きたくもなるが、まだそこまで落ちぶれているつもりはない。

 

 

「はぁ……いっそ記憶処理して貰って、嫌な事全部、忘れたいよ」

 

 

溜息をつくも、人知れない。

ストームチーム、特に隊長が その点においても味方なのが救いか。

502のクルピンスキーとのドンパチは意味不明だったが、まあ、意味のある行為であったと考えておく。

 

 

「どうしたんですか? 溜息ついて」

 

 

と、そこに可愛い声。

振り向けば501部隊の新人、宮藤とリーネ。

買い物中だったらしく、食糧の入った紙袋を抱えている。

 

 

「宮藤にリーネか。 何でもないよ、気にしないで」

 

 

只野は愛想笑いで誤魔化した。

大人の悩みに、軍人とはいえ子どもを巻き込むワケにもいかない。

特に、この子らは惨劇から生還したのだ。

その記憶は曖昧なのだろうが、そう思うほどに心が辛くなる。

グロデスクなスプラッターシーンは、只野ら隊員にとっては多少慣れている部分はあれど、他者に強要するつもりは微塵もない。

人間そっくりな(隊員には そう見えていた)エイリアンの四肢がもげるなんて、良くあった話だ。

 

 

「そうですか? 聞くだけなら出来ますよ」

「……芳佳ちゃん」

 

 

トゲがあるとも無いとも言える言い方で、純度の高い笑顔を見せてくる宮藤。

それに思うところがあったのか、なんとも言えない表情を浮かべるリーネ。

 

 

「気持ちだけ受け取っておくよ。 2人は買い物かい?」

 

 

只野も気にする余裕は無く、取り繕った笑顔で対応するだけ。

彼女らが こういった振る舞いをするということは記憶処理されたんだろう。

普通の10代の子があんな記憶を保持していたら、ここで笑いながら買い物なんて出来やしない。

良くてベッドに毛布を包まってガタガタ震えているか、普通で発狂、薬中、悪くて自殺ものだ。

それを意地悪で言う程に腐ってもないが、気を紛れる様な話はしたいと思うし優しく接したい。

 

 

「はい! EDFの お世話になっているのも悪いので、なにか ご飯を振る舞おうと」

 

 

一瞬ギョッとする只野だがしかし、宮藤は料理が出来るサイドなのを思い出し、安心の息を吐く。

 

 

「和食とか?」

「はい! 味噌汁に白米に……」

「それは良いね。 みんな喜ぶよ」

 

 

素直に喜んで見せる只野。

レーションやらインスタントで済ませて来た隊員もいる中で、それはありがたい。

食事は士気を維持、高揚させる上で とても重要だ。

 

中には自分で作ろうとした者もいるのだが、高級食材で作ったジャンクフードと化した。

少なくとも魔女料理よりマシだったが。

 

大戦中、自分で料理をして部下に振る舞う事を言った隊員がいた。

部下は1番良いモノを使えば何とか食えますと軽口を叩いたが、魔女がソレをやったところで、食えるレベルになるか怪し過ぎる。

寧ろ料理に喰われるレベルになるかも知れない。

宮藤なら、そんな事にならない。

ならないハズだ。

 

 

「只野さん達の出身、日本って、扶桑と似ているんですよね?」

「そうみたいだね。 扶桑には行った事ないけど」

「良いところですよ。 横須賀とか」

「そうか。 いつか、行く日が来るかも知れない。 その時は宜しく」

「はい。 喜んで」

 

 

只野は言うが、行く機会があるとは思っていない。

 

扶桑。

欧州から遥か向こう。

戦場から遠く離れた国。

只野たちで言う、日本に該当する国。

 

文化は そっくりで、それは宮藤や坂本を見ていると 何となく分かる。

こちらの世界では扶桑は比較的平和で、空襲も無ければ飢餓に苦しんでる事もない。

普通に1940年代の文明レベルで人々が暮らしている。

だけど、人の声が響かない地球より ずっと明るい世界だ。

───世界が根本的に違う。

それに虚しさを感じる事あれど、仕方ない事である。

 

 

「只野さん」

 

 

と、リーネの声で思考の海からサルベージ。

 

 

「芳佳ちゃんの味噌汁は、とても美味しいんだよ。 毎日作って貰いたいくらい」

 

 

なんだろう。

黒いオーラが見える。

幻覚なんだろうが、恐怖を感じる。

 

 

「そ、そうなのか。 楽しみだな」

「もー! リーネちゃんってば」

「本当だよ芳佳ちゃん」

 

 

対して只野は狼狽え、天然宮藤は何ともなさそうに振る舞う。

このままだと、夜道に気をつけないとならなそうな展開だ。

それを察せない=ある種最強の宮藤を防波堤にしつつ、只野は話を変えた。

 

 

「そうだ、2人に服でも買ってあげよう」

「服ですか?」

「ここで会ったのもナニかの縁だ。 そうだな、2人は仲良さそうだからペアルックするとか」

「ペアルック?」

「お揃いってこと」

 

 

さり気なく手を引くような発言をしつつ、冷や汗を拭う只野。

お金に関しては、この世界の、欧州で使える単位で給金を貰っているので問題ない。

二等兵とはいえ、出るものは出る。

少額だが、使わないでいた分、2着くらい買える貯金はある。

こういう時の危機管理にも使えるとは思いもしなかったが。

 

金も武器になるんだね★

 

金を持ち歩いていて良かったと思う只野。

だがこの後、金で解決出来ない展開にはZシリーズの武器有りとて無力であった。

 

 

 

 

ーーーーーEDFーーーーー

 

なんだかんだ言いつつ、501の新人2人を丸め込んで服屋に来た一行。

戦時復興中だというのに、"屋根付き店"があるのはEDF設営隊の影響が強い。

 

そこで適当な服を買ってあげた只野だったが、またも暗黒面を見る羽目になる。

 

 

「お揃いだねリーネちゃん!」

「うん。 でもね芳佳ちゃん。 同じ服を着ても"同じ"には見えないよ」

「あれー? なんでだろうね?」

 

 

同じ服を着て、感想を言い合う恐怖の新人。

恐るべき魔女たちに、只野は内心ブルッちまうしかない。

 

ナニが違うか?

悲しき性を持つ男の只野には分かる。

 

胸部が! 圧倒的に! 違うからだ!

 

宮藤はぺったんこ、リーネはボインだ。

服は草原と山くらいの違いが見て取れる。

女の戦い……キャットファイトに発展しないのは、天然と闇の均衡が取れているからに他ならない。

 

が、しかし!

 

そんな様を見せられている只野はたまったものではない。

ある種の戦場が、ここに展開していた。

緊迫の時間。

歩くエイリアン前哨基地から退避したように、生き延びる事だけを考える只野。

 

 

「背丈やサイズで服の性格が変わるからね、仕方ないね!」

「うーん? でも私とリーネちゃんの背って そんなに違わないと思うんだけどなぁ」

(宮藤ぃいいいぃ!? 話合わせろよ!?)

「サイズが私の方が大きいから。 芳佳ちゃんが羨ましいな」

(ヒェッ)

「へ? なんで?」

「服屋さんにあった柄、みんな着られたじゃない。 ごめんね、私に合わせて貰って」

(リーネ! 黒リーネナンデ!?)

 

 

もうね黒い。 真っ黒黒助だよリーネちゃん。

対して全然気にしない天然宮藤。

リーネも宮藤も、意図してない天然コンビなのかも知れないが、だとしても見せられてる側としては胃に悪い光景だ。

この2人って、本当に親友なのか。

只野はどこかの情報を疑った。

 

 

「良いよ、気にしないで。 とても似合ってるよリーネちゃん! 馬子にも衣装だよ!」

 

 

褒めてねぇ! それ褒めてないよね!?

 

軍曹の部下が、入隊して間もないStorm1に言った言葉でもあるソレ。

というか意味わかってないで使ってる可能性がある。

幸いなのは、リーネが その意味が分かってないところだ。

 

 

「どういう意味なの?」

 

 

笑顔で聞くリーネ。

怖い。 怖すぎる。 ビビる。 胃がもげそう。

ここが爆心地になり、間違った使用方法が広がる恐れから只野は遮る。

 

 

「あー! 2人とも、気に入ってくれたかい?」

「はい! ありがとうございます、只野さん!」

「ありがとうございます」

 

 

遮った事には怒らず、素直に笑顔を向けてくれる2人。

笑顔が怖い。 憎悪に満ちた世界を誤魔化す愛想笑いは嫌いだが、天然なら良いというモノでもないと、改めて只野は思った。

 

 

「じゃ、じゃあね! 俺は街の警備に戻るよ!」

 

 

そう言って逃走。

10代の女の子に敗北する精鋭歩兵の図。

 

魔女って怖い。

そんな偏見が、またも只野の脳内にインプットされたとさ。

 




ラジオネタを盛り込んでみたり。
WDFの方は……どうなるのか。
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