Witch Defense Forces(WDF)(完結) 作:ハヤモ
連合により再編成された国際黒海監視航空団から救援要請。
どうやら、ネウロイの群勢がカールスラント方面に再侵攻との事です。
509JFWは直ちに出動、これを迎撃。
なお、EDF側の空軍は動けません。
航空ウィッチと陸軍のみで対処します。
…………!?
空間転移反応!?
備考:
黒海方面は既に乱戦状態。
硝煙激しく、視界は皆無。
友軍誤爆の危険性から航空機による地上支援は困難。
◆黒海方面防衛線
あっち行ってコッチ行ってと軍隊の人使いの荒さには感心すると、只野二等兵は思う。
武装車両グレイプに放り込まれ、気がつけば黒海方面の戦場に放り出されている。
あるあるで済ませられたくない惨状にも、両手が休まる暇が無い事への嘆きも、WDFの心配も、黒海監視団への同情も後にして、仕方なしに戦争を始めた。
「って、"ヘビースモーカー"じゃねぇか!」
硝煙が地上と空を覆う光景に、つい叫ぶ。
だが、音だけは響き渡り、戦場である事を嫌でも認識させられる。
空は509JFWのモブウィッチーズと、小型航空ネウロイとドンパチしている音。
地上も遊撃戦用の最高峰、ニクスZCやら最終作戦仕様をジャラジャラした歩兵部隊が暴れている音。
だが発信源は分からない程の煙。
無数の発砲炎と煙、地面の埃、機械類が出す黒煙等で濃霧の状態になっており一切の視界が効かない!
「味方ごと撃てってか!?」
ミサイル持ちは自動ロックオンだから良いが、だからと景気良く白煙を撒き散らさないで欲しい。
EDF5のゲーム中でも、こういった現象は珍しくない。
特に高火力持ちのNPC部隊(ニクス隊や戦車隊等)が多いと余計に。
自分自身のミサイル発射時に発生する煙でも視界が悪くなる。
そうなると自動ロックオン機能やセンサー反応を頼りに攻撃を敢行するが、遮蔽物や地形を認識出来ないので危険である。
「歩きタバコ以上の迷惑行為だぞ!」
と、煙草ユーザーがキレそうな事を言うも仕方なし。
ココは戦場。 そんな事を言ってられない。
それに平時の時でさえ法も秩序も現代よりガバガバ世界だ。
身近な煙草や酒の話をするなら、可愛い未成年の女の子たちが咥えタバコを呑む光景なんて珍しくない。
アイドルみたいな、清楚な女の子が酒や煙草、モルヒネにリストカットでアヘってキメる姿はショックだろうが、現場は狂気の戦乱世界。
楽しみもなく、同年の子が隣でミンチになり、自分も いつ死ぬか分からない中で精神を安定させる為だ。
しても安定しない事もあるけれど。
それでも目を瞑る。
それがこの世界の日常ならと。
加えて男女間の交際を大目に見てるのも。
メインであるアニメの話では、晴れ舞台の青空で少女が舞い、華麗に戦う萌えの面やアイドルぽい……或いは思い描く憧れのエースな側面が強い。
だが血泥沼に塗れる他の最前線部隊、特に汚泥に這い蹲って、時に死体漁りや食糧の現地調達(ナニかは書かない)をし、不衛生な中で岩にかじりついてでも戦う陸軍陸上部隊は悲惨な日常を送っているのだと思う。
それら嫌な記憶をエイリアンの技術で曖昧に或いは吹き飛ばせるEDFは"便利"だと思う。
最も、戦闘面で役に立つ経験と判断されたら消してくれないが。
結局は兵士の命や数とは"単位"であり、兵器である。
戦闘力を減らす事は好まない。
それが良い事でも悪い事でも。
そんな兵器にも威力次第で非人道的か否かの議論があるが、果たして戦争や命を奪う兵器に人道なんてあるのか。
なんにせよ、線引きは曖昧。
他にも線を引きたがるのは人間の悪い癖だ。
して、嫌な光景を前にチンタラしている只野に、仲間が怒る。
みんな必死だ、口調も荒くもなる。
「只野! 口じゃなくて手を動かせ!」
グレイプの運転手だ。
車体上部に備わる砲塔───榴弾砲じゃなく連射砲なのは正解なのだろう───を動かして機関銃のように撃ちまくっていた。
それを皮切りのようにして、只野と共に来た連合兵士や陸戦ウィッチも文句を言う。
「何でも良い! 気配がする方向に撃ちまくれ!」
「弾を惜しむな時間を惜しめ!」
「応援のAFVも来る! 楽な仕事だぞ!」
「獲物を取られて良いのか!?」
言うや否や、弾を景気良くばら撒き始める面々。
セミオートマチック・ライフルの最終形であるG&M-29持ちが、景気良く特殊AP弾を撃ちまくり、また ある陸戦ウィッチは連式ロケラン ボルケーノの完成型であるボルケーノW30でロケット弾を撃ちまくる。
煙は濃くなり、ほんの数m先すら見えなくなる。
只野は舌打ちした。
「チッ。 喫煙スペースだな、俺は吸わないから帰って良いか?」
皮肉を言う。 実際に皮肉が転がっているのも皮肉である。 して誰も聞かない皮肉。
この戦狂は麻薬カクテル。
溺れ、沈め合い、それを喜び楽しむ。
発砲音や爆音そのものが麻薬のようになり、多くの者の正常な判断を互いに奪い合う。
比較的正気なのは、只野のようなEDF隊員か、良く訓練された兵士である。
「トリガーハッピーめ」
オーバーテクノロジーのEDF兵器群が不必要に血泥で汚れている錯覚に陥る。
そうでないなら、花火やパーティーグッズと勘違いしてるんじゃなかろうか。
途端にチカラを手に入れた人間に、アヘ顔晒されながら大口を叩かれた気分の只野。
イラついても仕方なし。
センサー反応を改めて見る。
敵である赤丸が分散。
同時に味方も分散、重複しているのも少なくなく、実にやり難い。
(ネウロイと味方がごちゃ混ぜだ。 既に友軍誤射が起きている可能性すらある。 航空ウィッチの援護は望むべくもない。 ここからロケランをブッ放せばミックスジュースの完成だし)
こんな乱戦時こそ、空爆誘導兵……エアレイダーの出番だろう。
かの兵科は、このような乱戦時でも友軍を巻き込まず効果的に航空支援や砲撃支援を取り付けられるようにする為の兵科だ。
だが隊長は負傷していて戦場に来れない。
その前に空軍がいない。
いや、いるにはいるが……それはウィッチだ。
よほど確実にネウロイだと分かる状況じゃなきゃ攻撃出来ないだろう。
だが制空権が無い以上、のんびり地上の敵味方を識別する余裕はない。
(509部隊のウィッチらもEDFの武器や装備をジャラつかせてるが、無理だろうな)
いつも通り歩兵隊か。
諦めて突入、白兵戦だ。
「ショットガンが欲しい」
ボヤくが、新しい武器も試したい。
TZストークを構えて、只野は突撃兵として前進する。
EDF隊員として、皆の為にも恐怖を克服しなければならない。
それはモブ隊員らも言っていた事だ。
「良いぞ!」
「頑張れよ!」
今はモブ兵士らに応援をされるが。
彼に着いて行く者がいない辺り、威勢は上っ面、中身は死への恐怖が垣間見れる。
「どうも」
只野は責めない。
勇敢は美徳ではないのを知っているから。
逆に、死の恐怖を忘れていない事を褒めてやりたかった。
ーーーーーEDFーーーーー
只野視点
「ネウロイは分かっているのか?」
センサー反応を見てボヤく。
ナニも見えない硝煙の中だというのに、銃声とビーム音は響き続け、しかし味方反応は減っていく。
それで疑問に思った。
人間なら、さっきの連中みたいに気配のする方向だのなんだのとデタラメに弾丸をばら撒いているだけだ。
なら、ネウロイは?
ネウロイは、どのように人間を感知して攻撃しているのか不明だ。
エイリアン連中のドローンに搭載されていただろう、高性能センサーのような機能があるのだろうか。
「でも視認の可能性はある。 だとしたら、どうやって」
というのも、ハルトマン救出の時を思い出してのこと。
ハルトマンは藁人形でデコイを作り、ネウロイを欺瞞していた。
アレの効果の程は分からないが、センサー反応を頼りに攻撃しているなら、森に隠れるハルトマンを的確に撃っていた筈だ。
考えながら、しかし戦わねばならない。
センサー反応を見つつ、敵の方向へにじり寄る。
姿勢を低く寄りつつも、一応周りを警戒。
ネウロイのビームにせよ、人間の銃にせよ、音や閃光……マズルフラッシュくらいは僅かに見えるからな。
ほら見ろ。
ドラム奏者がアッチにいるぞ。
閃光も"ハイ"ビームも迷惑なまでに見える。
威嚇行為にせよ景気付けにせよ、目立つ行為を好んでするヤツの気が知れない。
ほらセンサーを見ろ、ネウロイの損害より味方の損害が大きいぞ。
相変わらず青丸の減りの方が赤丸より早い。
戦時は嫌でも味わった状況だが、いつ見ても良い気はしない。
あっ。
「やべ、ネウロイは光や音の方向に撃ってるんじゃね!?」
俺は気が付いてしまったよ。
センサーが無い、視界も効かない。
なら光や音を感じて撃つしかない。
オカシイ話でもなんでもない。
寧ろ何故、それを人間側が意識しなかったんだよ。
「皆に知らせないと」
被害率を下げないと。
匍匐姿勢で、まず自分の被弾率を下げて無線を繋いで……よし。
「こちら只野二等兵。 視界の悪い中、ネウロイは光や音の方向に撃ってると思われます。 無駄撃ちは避けて下さい」
よし、取り敢えず注意はしたぞ。
聞いてくれたかは分からないが。
『あ? 今更そんな情報がなんだというんだ!』
わぉ。 警告に対して文句かよ、ありがとう。
今更でもやり方を変えてどうぞ。
『撃って撃って撃ちまくれ!』
あかん、音とマズルフラッシュが激しく。
火に油を注いでしまったようだ。
『EDFッ! EDFッ!』
女の子の声が。
陸戦ウィッチだね。
正規軍じゃなきゃ叫んじゃダメなんて事はないけどさ、正規軍の俺の言う事を聞いても良いんだよ?
あ、二等兵だからダメですかそうですか。
「ネウロイより味方に撃たれて死にそうだよ」
ため息を吐くも仕方なし。
センサー反応を頼りに戦うか。
手元にあるTZストークも試したい。
俺は匍匐前進を開始。
被弾率を下げる為だ、遅くても良い。
死に急ぐより遅い戦果と生き延びた命だよ。
相変わらずセンサー上では青丸が減る、赤丸はたまに減る。
損耗が激しいな、俺ひとりになっちゃうんじゃない?
「それはヤダなぁ……うん?」
ここでセンサー反応に異変が。
赤丸が急速に減り始めたのだ。
いや、消えたという表現が正しい。
「なんだ、またセンサーの故障か?」
そう思ってしまうのも仕方なし。
そのうちに青丸も。
センサーの探査波のエフェクトは出ているんだが……。
『ギャアアアッ!』
「ッ!?」
突然の、無線越しの悲鳴!
それを皮切りに、続く悲鳴の数々。
『ば、バケモノだ! 逃げろ! 逃げろォッ!』
『な、なんだ このビーム攻撃!? う、うわあああ!?』
『追いかけてくるぞ!』
『逃げられない! ガハッ!?』
『どこから撃ってるんだよ!?』
『助けてッ! 助けテェッ!!』
『隊長ッ!? 隊長が墜ちた!』
『今助けに……ギャッ!』
『どこから!? どこからなんだよぉ!?』
狂った声が耳元で踊り狂っていた。
なんだ、なんなんだ!?
急にどうしたんだ!
一瞬で威勢が狂乱に置き換わった。
まるで、ナニかに乱入されたような。
ここにさっきまでいなかったヤツが来たような。
「落ち着け……俺は大丈夫だ、大丈夫……こんな時、慌てた方が負けなんだ」
匍匐姿勢を維持。
ジッとする。
状況不明、下手にジタバタしても仕方ない。
撃つな喋るな動くな黙れ……!
高鳴る心臓の音にも怒鳴りたくなるのも抑え、俺は地面に頬を付ける。
したら。
ボトリ。 ボトボトッ。
ビチャッ、ベチャリ。
質量あるモノが落ちる音、粘りのある水音が響く。 すぐ近くで。
それは続き、やがて正体が分かった。
ドチャッ。
目の前にソレが落ちた。
瞳孔が開き切った。
少女だったモノと目が合った。
「うわあああああッ!?」
思わず悲鳴を上げて、だけど染み付いた軍事行動からか。
匍匐姿勢のまま、横に転がる。 刹那。
バシュッ!
光弾が俺のいた場所に着弾。
側に落ちた少女だったモノはミンチになり、四散。
もはやなんだったのかすら、分からない肉塊になっていた。
「はぁはぁ……! なんなんだ、なんなんだよチクショウ……!」
文句を言いつつ、転がり続ける。
やがてナニかに当たって身体が止まった。
見やれば兵士の死体の山だった。
手足の数から3人くらいだろう、先程より原型があるぶん、まだ冷静でいられた。
たぶん、さっきの高出力の光学攻撃とは別で死んだのだ、ネウロイだろう。
「ああ……くそっ……今度こそ協力してくれよ」
俺は物言わぬ死体たちに小さく言うと、その肉塊の山の下に潜り込んだ。
して再びジッとする。
戦時中でも似た事はやった。
死体を遮蔽物、もしくはその下や中に隠れて敵をやり過ごす方法。
狂ってるって?
死者への冒涜?
生きる為だ。
それに、俺は一応 断りは入れたからな。
もちろん、白銀の……。