Witch Defense Forces(WDF)(完結)   作:ハヤモ

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緊急事態応急対応:
WDF確認。
生存者確認。
備考:
本当の救いとは。
慰めよりも救いを。


59.救い。

◆ベルリンEDF本部

 

 

『こちらスカウト! 白銀の魔女、WDFを確認しました!』

 

 

偵察部隊からの報告を受けて、いよいよ目を背ける訳にはいかなくなった。

持てる戦力を結集し、EDFは防衛線を張る。

 

 

「やはりWDFだったか!」

 

 

司令官は驚きはしなかったが、ロクな対抗手段が無い現状、太刀打ちしようなどとは考えていない。

レールガンやらEMCやらで集中砲火したところで倒せない、とは考えたが。

 

 

「攻撃は控えろ。 白雪姫を怒らせるなよ」

 

 

取り敢えず防衛線全体に無線を飛ばすと、次に殺戮現場に無線を繋ぐ。

 

 

「生存者はいないのか? 誰でも良い、応答しろ」

 

 

そう言うも、一向に返答がない。

ウィッチも一般兵も全滅したのだろうか。

 

 

「王子様役も戦場にいた筈だ。 代わりは効くが、死んだとなれば付人に困るな」

 

 

只野二等兵を軽く気にするも、さして人物そのものが重要ではない。

二等兵1匹、されど1匹。

貴重な兵力ではあるものの、特別な人物ではない。

ただWDFと関わりがあるだけの兵士だ。

だから深刻には考えていない。

バルガの搭乗員が行方不明になった時ほどでもない。

 

そもそも魔女にキスする訓練なんて、只野も誰もしていないのだ。

連合から見れば、そんなの頭オカシイし、そもそも魔力を奪う行為である"えっち"はシてはいけないとされている。

キスすらダメなのだ。 おでこがギリギリ。

 

でも今回はシないと世界がヤバいというカオス。

エイリアンもビックリだろうて。

 

一方で元凶のEDFの見解。

キスくらい平気だろう、というかシてみてくれ世界の為にとは本部や情報部の考えで(そもそも考える程でもないとしている)、行為さえ出来る身体があれば王子様役は誰でも良いとさえしている。

勿論、ロマンスを抜きにして計画を考えた場合の話で、恋愛がどうこうと絡ませると只野が適任だろうとはしているが。

 

本気でヤッたらヤッたで「EDFヤベェ」の評価を連合から再刻印されるだろうが仕方ない。

白雪姫作戦に関しては周知の事実だけど、その話を連合総司令部にいるガランド中将(ウィッチ。 とても偉い人)に電報を打った時なんて妙な反応をされたものだ。

 

 

「あ、あー、うん。 天使が後押ししてくれるよ」

 

 

よく分からん事を言われた。

 

とにかく!

ナニでも良いから魔女から魔をヌいて初モノ奪ってキズモノにして女にするんだよ!

 

最後にモノいうのはテクノロジーの差じゃない、人間の愛なんだね(思考放棄)。

 

 

「例のアレをスタンバイさせておけ。 最悪、王子様はその辺のレンジャーでもウイングダイバーでも良い」

 

 

本部隊員は頷くと、隊員と連絡を取り合う。

残酷で残忍なWDFに なんとメルヘンで"えっち"な計画を進めるEDFなのであった。

 

 

 

 

 

◆黒海方面

 

一方その頃、死んだフリを続けるウィッチの救難信号を受けた救助隊が現地に到着。

1台の究極救護車両【キャリバン救護車両SAターボ】が只野二等兵らの側に止まった。

 

 

「お嬢さん、助けに来たぞ。 そんで只野王子は浮気か。 そんなんだと嫉妬されて殺されるぞ?」

 

 

茶かしながら、ひとりの隊員が降りてきた。

手には白い医療パック。

補助として救護支援装備を装備している。

ジークフリート線程ではないにせよ、周りは血肉でグチャグチャ。

にも関わらず普通の口調である。

 

 

「早く来てくれたから死なないです。 あと浮気ってなんです、まだしてません」

 

 

対して、真面目な声で返答する只野。

ムクリと起き上がるとウィッチを抱き起し、素早く救護車両に乗りこむ。

 

 

「これからするのか?」

 

 

隊員も一緒に乗ると同時に、救護車両は発進。

全速力でカールスラント領に退却。

大きく揺れる車体は、いつ弾が飛んでくるか分からない状況に慌てている様にも感じるが、ふたりは構わず会話を続けた。

 

 

「WDFは多分、ひとりじゃないんで」

「マジか」

「マジっす」

 

 

曹長ちゃんの件を思いながら、そう言う只野。

車両に備わる謎の技術、自動治療機能で血塗れな姿が綺麗な身体にされていく。

寝かされたウィッチも同様だ。

 

 

「うぅ……う?」

 

 

痛みが引いた事に気付くウィッチ。

むくりと起きると、自分の身体をペタペタと触る。

大怪我したのに、もう傷が塞がっていた。

流石に軍服はボロボロにのままだが、勝手に治ることに驚くウィッチ。

 

 

「スゴい。 もうなんともない」

「そうか良かった、生存者は君と只野だけだ」

 

 

揺れる車内、隊員は適当に相槌を打つとWDFの話を続ける。

興味はモブ魔女ではなく、白銀だ。

だが、そんな素っ気なく冷たい反応は、心に氷柱のように突き刺さる。

 

 

「良かった……?」

 

 

助けに来てくれた感謝と喜びなんて飛んで、怒りが隊員に湧いてきた。

なんで、目の前の隊員は冷静で、いや、冷酷でいられるんだと。

 

あんな惨劇が起きたのに。

普通じゃない、この人達はオカシイと。

 

 

「何が良かったですか、ふざけないで! 仲間が、大勢死んだんですよ! なんで そんなに冷静でいられるんですか!?」

 

 

怒りが言葉となり、隊員たちにぶつける幼き子。

それを聞いて只野は悲しげな表情になり、救助隊員は無表情だった。

して、その状態のまま、怒りを素直に受け止めた。

 

 

「死んだね、大勢」

 

 

その変化のない口調にたじろぐも、自分の考えが正しいと認めさせる為に怒りをぶつけ続ける。

 

隊長も、友だちも、曹長も皆 死んだ。

それもネウロイじゃない、恐らくWDFなんていう白銀の魔女のせいで!

 

 

「それもEDFの所為ですっ!」

「そうだね」

「返して下さい!」

「死んだ。 帰ってこない」

「じゃあ、どう責任を取る気ですか!」

「生きている者が罪を背負うだろうね」

「だからなんなんですか!」

「WDFを止める。 その為に動けと言われたら努力はする」

「そうして下さい!」

「そうするさ」

「はやく! 今直ぐにでも……!」

「なるべくそうなる様には努力している」

「今直ぐですよッ!! 仇を! みんなの仇を……ッ!」

 

 

冷静に言い返されるだけの状況に、ウィッチは泣き出してしまう。

ただ、怒っても泣いても。

彼女が正しいことの証明にはならない。

それを教える様に、隊員は静かに語る。

 

 

「…………ここで君に言われたのを理由にして、敵討ちをしに行って、仇を増やす結果になったら。 君は責任を取れるのかい?」

「そんなの、私のせいじゃ!」

「君の所為で死んだ奴に、同じ事を言える?」

「ッ!」

 

 

助けようとしてくれた曹長の顔が浮かんだ。

自分を助けようとして、彼女は死んだ。

 

 

「あれは……私は悪くないっ! 私じゃない、みんな白銀が悪いのッ! EDFが悪いのよッ!!」

 

 

泣きながら罪を他者の所為にし始め、頭を抱えて震える彼女。

10代の彼女には酷だろう、いっそ死なせてあげた方が良いかも知れない。

だが、少なくとも生きる意志を見せたから彼女は生き延びたし、死んだ者の為にも生きるしかないのだ。

 

只野は、助ける予定の軍曹ちゃんがもたらしている惨劇と悲しみに潰されそうになるが、それでも戦場に立ち続けるつもりだった。

そうするしか、ないのだ。

 

 

「耐えられないよね、君も。 俺もだよ」

 

 

只野は泣きじゃくる彼女に言う。

 

 

「……死にたい。 死にたいよぉ……」

 

 

やっと、それだけ言った。

身体は治っても、心は治せない。

楽にする手伝いしか出来ない。

 

只野は救助隊員に視線を向け、頷き合う。

 

 

「じゃあ、せめて楽になって」

 

 

その意味を考える間もなく、彼女は首元にチクリとした鋭い痛みを感じた。

次の瞬間には、眠気に襲われて。

 

ぱたり、と横に倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「薬、間違えてません?」

「いつものだ、大丈夫。 寝るのは副作用だ」

 

 

記憶処理薬。

精神崩壊する記憶を除去ないし曖昧にし、戦線に戻れなくなる事を防ぐ薬。

 

只野も自分に打って欲しかった。

だが、それは許してくれないんだろう。

 

彼女は、子ども達はまだ、幸せな方だった。

 




嫌な事は忘れたい。 消してしまいたい。
意識してなくても、それは積み重なり、自分を形成している。
だから……弱い自分も消せるかも知れない。
だけど、それが許されないなら……。
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