Witch Defense Forces(WDF)(完結) 作:ハヤモ
エピメテウスの座標に向かい、曹長ちゃんを助けるぞ。
連合軍から捕捉される時間を減らすべく、輜重隊に混ざって着艦する。
…………ッ!?
センサーに反応多数!
連合軍だ!
戦闘配備……ッ! 迷いは捨てろ!
備考:
人類同士の戦闘。
◆エピメテウス潜伏海域周辺
ついにエピメテウスに乗り込み、曹長ちゃんを助ける日がやって来た。
最初はヘリが無くて迎えに行けなかったが、Storm1や縁の下の力持ちなオペ子のお陰で調達する事が出来た。
南島にホーク1パイロットが操縦する【HU04ブルートSA9】が只野二等兵と護衛に501のバルクホルンとハルトマンを連れて離陸。
軍曹ちゃんは置いてきた。
まさか戦力として連れて行くワケにはいかないから。
匿った意味がなくなってしまう。
寂しそうな顔をされたが、我慢である。
さて。
しばし飛行して、エピメテウス潜伏海域周辺へと到達後、パイロットは直ぐに無線を飛ばして、近くにいるだろう兵站輸送部隊とコンタクトを図る。
『こちらホーク1。 暗号化無線で通信中。 輜重隊応答せよ』
しばらくノイズが走り、やがて声が聞こえて来た。
エピメテウスの輜重隊だ。
僅かにジェットの音が混ざることから、輸送機ノーブルだろう。
『こちらノーブルリーダー。 予定通りだな……位置情報を送信した。 背後からついて来てくれ』
『ホーク1了解。 エスコート頼む』
『こっちは輸送機だ。 最悪はおたくら陸軍に任せるよ』
『ヘッ。 海の上まで陸軍か?』
『いうな。 エピメテウスは動かせない』
『それもそうか。 だがアテにするなよ』
パイロット同士、無線越しに軽口を言いつつ、ヘリは進路を変えて飛んでいく。
レーダーで輜重隊を捉え、再び確認を取り合った。
『レーダーコンタクト。 其方を捉えた』
『こちらもだ。 逸れるなよ』
『ジェット機には敵わん。 加減してくれ』
『あいよ。 だがノンビリ飛んでくれるな、燃料も有限なんでね』
『勿論だ』
そんなやり取りを共用無線越しに聞いて、護衛役のハルトマンは只野に尋ねた。
「ねぇねぇ、本当に輸送部隊がいるの? 何も見えないよ?」
彼女は外の景色を眺めて言った。
確かに、綺麗な空と海が広がるばかりで穏やかそのものだ。
飛行物体は他に確認出来ない。
只野二等兵は南島での疲労で、ゲッソリしていたが、努めて優しい口調で答えてあげた。
「ちゃんと いる筈だよ。 ただ機体性能が違うから目視出来る距離にいないだけ」
「ふーん。 EDFって凄いんだね」
折角説明したのに、納得したのか飽きたのか、相槌をうつだけのハルトマン。
まあ、只野としても変にツッコミを入れられて答えられる知識は備えてないので、逆にありがたかったが。
いちおう、そんなハルトマンは戦闘になったら直ぐに飛び出せるようにユニットを履いている。
それは隣のバルクホルンも同じだ。
「緊張感を持てハルトマン。 いつ敵が来るかも分からないんだぞ」
「えー。 でも目的地近くだよ? それに、潜水艦にいるウィッチの輸送が目的だよね? 大丈夫だよ」
「カールスラント軍人たるものだな……」
「あー、はいはい気をつけまーす」
「なんだその態度は! もっとシャキッとしてだな……」
ゴチャゴチャと言い合う2人をよそに、只野の心境は複雑だ。
WDFの真実を知る者は、只野やストームを含めた一部の正規隊員だけだ。
501含む連合軍へは歪んだ事実のみを伝えている。
まさか、EDFが魔女を改造したなんて言える筈がない。
そんな事をしたら反感を買い、離反者が出まくる事態は避けられないから。
そうでなくても、全ての者から悲惨な記憶を完璧に消すのは不可能だ。
WDFによる犠牲者達の家族や親族、友人、関連部隊を騙し続けるのは難しい。
少なくとも、連合軍にはWDFの存在がバレている。
何をしてくるか分かったものではない。
だから、509JFW本隊のいるベルリンから離れて、南島にWDFを避難させたのだ。
ヤツらは……というか人類は利益になるなら人殺しすら平気でする節がある。
民間人視点なら狂ってる話であり、非難は避けられない話だが、組織や国家レベル、戦略で考えるとひと個人の命なんてあって無しにあらず。
だが個人の価値が、それらより重要なら?
今回はそのパターンだ。
して、連合の態度から想像がつく。
各国政府はこう考えてるだろう。
WDFと比べたら他の兵士なんて雑魚だと。
命よりプライドを。
チカラを手に入れて世界史を思いのままに。
我が国が1番だ、他国は奴隷に成り下がるべき。
分からせる為には、WDFのチカラが必要だ。
手に入るなら、雑魚の命なんて湯水の如く注ぎ込もうと。
人類の下らない覇権争いで、ネウロイとは関係ない場所で命が散る可能性。
既に多くの犠牲者が出た。
それらは災害レベルだが、人災である。
違いは"理性"の有無でしかない。
どちらにせよ、人類は世界や時代が違えど欲に目が眩んで常に非理性的な決断をしてしまう生物なのかも知れない。
(曹長ちゃん……とにかく、今は助けるんだ)
只野はドーントレス重機関砲の銃座について、気休めの戦闘態勢を取り続ける。
来るとしたらネウロイか連合軍だが、後者は勘弁して欲しい。
まさか2人に「人を殺せ」とは言えない。
『今のところレーダーに敵影なし』
パイロットは警戒しつつ、飛行する。
出来ることなら、このまま来ないで欲しい。
ネウロイにしても……どちらにせよ、今のヘリで対空戦闘はナンセンスだ。
空を高速で動き回る敵に連射性能の低い機関砲一門で渡り合うなんて困難だ。
「来るなよ頼むから」
でも、覚悟はしている。
只野は人間そっくりなエイリアンを何体も殺してきたが、人間そのものは殺した事がない。
暗黒時代の今の地球では、限られた資源を巡り人殺しも発生しているし、増援隊員の中には"経験者"もいる。
だが只野は"まだ"である。
だが今日、卒業する可能性。
EDFには、ある種の呪いの魔法がかけられているのだから。
『ッ! レーダーで敵影確認!』
案の定、それはきた。
どうせ全て悪い方向だ。 決まってる。
そう思わないと、強い衝撃に耐えられない。
『これは連合……扶桑の零戦!?』
取り付けられていた、この世界用の敵味方識別装置の判定結果をパイロットが叫ぶ。
それを聞いたカールスラントの2人は驚いてしまう。
「なっ!?」「えっ?」
まだ距離はある。
攻撃は互いに出来ない。
だが近寄ってくる以上、出来る事はしなければならない。
偶然かも知れない。
或いは違うかも知れない。
パイロットは無線を繋げるか試み、只野は既に諦めて心の準備をした。
『敵かも分からない。 殺害されたエイリアンの交渉団みたいにはなりたくないが、同じ人間なら言葉くらい通じるだろう』
「楽観的ですね」
『楽観的じゃなきゃ、やってられるか』
スイッチやらダイヤルやらをパチパチ動かし、呼びかけを行うも上手くいかない。
『無線機、積んでないのか』
「昔の航空機ですし。 みんな積んでるワケじゃないし、積んでいても技術が違うんでしょう、繋がらないんじゃないですかね」
『もう少し様子を見る……だが、準備を頼む。 大尉と中尉、コンタクトを取ってくれ』
「了解した」「はいよー」
そういうと、ウィッチの2人は扉をあけて飛び立った。
こういう時、航空歩兵なウィッチの運用は便利である。
「大丈夫ですかね?」
個人向け無線に切り替えて、心配そうに尋ねる只野。
ホーク1は明るく答えてくれた。
『ウィッチだ、心配ないだろ。 それにブルートに攻撃してきたって、機銃だろ。 コイツの装甲は破れない』
「……その時は撃墜しますか?」
『最悪は。 エピメテウスの位置が知られたら厄介だからな。 だが向こうは失敗しても、ただでは転ばない筈だ。 国際問題に発展させて、こちらを攻撃してくる。 扶桑がもしその気なら……連合各国みんなグルになってイジメが始まる』
「しかし扶桑ですか。 俺らの国、日本に該当する国ですよ」
『だからなんだ。 今頃、国がなんだと気にする必要はない』
「そうですね、すいません」
『……撃墜するなら、翼をもげ。 コックピットは狙うな』
「うっす」
セーフティを外し、センサー反応のする方へ砲口を向ける。
機関砲だ、連射速度は遅く、飛び回る航空機に当てるのは難しい。
「いや、これじゃない方が良いか」
そう言って、扉を開けるとTZストークを構える只野。
「コイツの初実戦使用相手が人間になるってか。 笑えるな」
死神部隊長みたいな言い回しをしながら、只野は最悪の事態に備えた。
して、それは来た。
『こちらバルクホルン! こちらからの呼びかけに応じない! そのまま そっちに向かってるぞ、気を付けろ!』
『こんなところに扶桑軍がいるなんて聞いてないよ! 何かおかしい、気をつけて!』
どうやらウィッチを無視して突っ込んできているそうだ。
「機影が見えた」
遠くの点がみるみる大きくなってきた。
この世界の戦闘機、プロペラ機。
性能はEDFの現代戦闘機と比べるべくもない。
だが、人間が乗っているのは同じだ。
「敵か? 味方か?」
緊張感が高まる。
それを察してか、ハルトマンは言うのだ。
「只野さん…………なるべく、殺さないで」
彼女らしからぬ、弱々しい言葉。
刹那。
ダダダダダダッ!!
白塗装の零戦が、撃ってきた。
「クソッタレ!!」
『敵だったか!』
この日、EDFと連合……この世界の人類と武力行使による戦闘が発生。
いつかこんな事になるだろうとは、只野もホーク1も思ってはいた。
だから予想していた分、落ち着いてはいた。
『ブルートは重装甲だ。 ブレイク(急旋回)は難しいが、機銃如きで堕とせるほどヤワじゃない。 のんびりと、しっかり狙えよ只野』
「了解しました」
スコープを覗き……何発か発砲。
青白い炎を焚き、それら弾丸の1発は翼に命中。
零戦は煙を上げて海面に着水した。
パイロットは自力で脱出したようで、無事だった。
『どうやら客は いっぱいいるらしい』
センサーには、次から次へと航空機を捉えていた。
空覆い、押し寄せる敵。
それはネウロイじゃない、同じ人類だ。
「何が悲しくて同じ日本と……いや。 彼らは"扶桑"だったか」
只野は覚悟する。
奴らの目的はなんであれ、手を出したのは向こうだ。
正当防衛である、命を取らないよう気を付けはするが、それだけだ。
「だがな、もし死んでも恨むなよ。 恨むなら……お前らの国を、上の奴らを恨め!」
発砲、発砲、発砲。
次から次へと堕ちていく。
(宮藤……ごめん。 扶桑にはいよいよ行けないよ。 だって、こんな目に遭ったんだから)
素早い回避行動を取る相手だが、歴戦のパイロットと特戦歩兵は その程度 なんて事ない。
エイリアン連中のドローンやら飛行型の侵略生物や有翼型エイリアンの群れを相手にしてきたのだ。
「これくらい、なんてことない……なんてことないんだよ……ッ!!」
───涙が出るのは、何故だろう。