Witch Defense Forces(WDF)(完結)   作:ハヤモ

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作戦内容:
WDFを乗せた救護ヘリはベルリンに撤退中。
代わりに501とStorm2が現地に取り残されています。
救護ヘリの援護は他部隊に任せます。
Storm1はStorm2らを救援して下さい。
備考:
EDFのチカラの片鱗、改めて見せてやれ。

戦闘中なのに説明や会話がダラダラ注意報。
その余裕だけEDFと連合に差がある……という事で許して(殴)。


68.孤島余裕戦

◆南島

 

連合による信号弾や照明弾が打ち上がる。

浮かび上がるのはStorm2こと軍曹がたったひとり。

対する連合軍は歩兵はもちろん、装甲車や戦車まで上陸させて津波となりやってきた。

海には軍艦、空には航空機のオマケ付きだ。

 

 

「追撃に回った部隊もいるだろうが、俺ひとりにここまで残存させるとはな」

 

 

軍曹は建物の陰に隠れて、銃撃を躱す。

普通の兵士なら、戦って勝つのは無謀といえる比率だ。

そも、たったひとりの歩兵が装甲車やら歩兵隊やら航空機やらを同時に相手にして生き延びられる常識は無いだろう。

 

だが、彼はEDF隊員だ。

更に言えば伝説のストームチームの隊員だ。

 

夜間戦闘も経験し、エイリアン歩兵隊など数多の敵を相手にしてきた軍曹だ。 この程度なんて事はない。

 

装備もまるで違う。

手には光線銃のブレイザーを持ち、この世界の敵であるネウロイは勿論、連合の兵器群なんて蒸発させてあまりある。

装甲なんて無に等しい。 エイリアン連中を相手にしてきたぶん、余計に感じる。

 

 

「だからか? 俺も評価してくれたという事か」

 

 

言いつつ、軍曹は建物から飛び出した。

ブレイザーから光線を放ち、手始めに迫ってきた戦車を融解させた。 一瞬だ。

 

 

「なら期待に応えないとな」

 

 

建物から建物へ。

夜の闇にも身を隠し、敵に位置を悟られないよう移動し、重点となる部分に突発的に攻撃を仕掛け一撃離脱。 ゲリラ的に攻撃していく。

少人数で大軍を相手にする方法は限られる。

だがこれらは隊員の十八番ともいえるやり方だし、逆に大戦時は そうするしかなかった。

しかしながら、この場においては なんとでもなりそうだった。

それくらいに軍曹の練度と装備と連合軍に差があったのだ。

 

 

「歩兵がビームを!?」

「な、なんだよ あの銃!? まるでネウロイじゃねえか!」

「戦車が一撃!?」

「怯むな! 相手はひとりだ!」

 

 

だがそれでも、勇猛果敢に攻撃を続ける連合軍。

国か隊か上官か、何に忠義を尽くしているのか知らないが その勇気は称賛したい。

もっとも殺されるつもりは軍曹に無いから容赦なくやり返して、連合軍の戦力を削ぐ。

もはやワンマンアーミーだ。

 

 

「ええい! EDFはバケモノか!?」

 

 

戦車が融けて、歩兵が蒸発して、航空機は光の槍に串刺しの後、爆散。

たったひとりに与えられた被害規模に思わず叫ぶ。

 

実際、EDFはバケモノだから仕方ない。

技術も肉体も、精神も……恐らく。

特にストームチームの隊員となると。

そんなストームが更なるバケモノと対峙してきた事など連合軍は知らない。

 

 

(501は どこだ?)

 

 

軍曹は本来の目的を思う。

島に残った501部隊の救助だ。

だがしかし、肝心の501が どこにいるのか分からない。

シャーリーとルッキーニは まだ分かるが、他の者はどこにいるのか。

 

 

(501は貴重な、それでいて各国のエースウィッチだ。 奴らも殺すのは本望じゃない筈だ)

 

 

光線を横になぞるように撃ち、島に爆炎を起こしながら軍曹は思考する。

いくらWDFが欲しいからって、彼女ひとりに戦争を終結させようなんて考える連合じゃあるまい。

なれば戦場の花たるウィッチを散らすなんて事はしない。

それに統合戦闘航空団は各国の代表が集まっている。

これを攻撃、殺害するという事は国際問題に発展する危険を孕む。

それを犯してまで連合……正確には欧州のどこかの軍隊と扶桑軍……が攻撃したのは、それほどまでにWDFが重要だからだ。

だとしてもやはり、殺害まで至ると人類の損失、自国の国際非難に繋げられるのは安易に想像出来た。

 

もはやWDFはEDFと欧州だけの問題ではない。

 

501にはソ連に当たるオラーシャ出身のサーニャ、アメリカに当たるリベリオン出身のシャーリーもいるのだ。

もっと言えば日本に当たる扶桑出身の宮藤に坂本……WDFを巡る世界大戦モドキ。

彼女らが巻き込まれてる以上、遠く離れた本国も感知している筈である。

風刺画でパイの取り合いがあるが、この場合は2つしかないモノを死に物狂いで取り合っているのだ。

 

 

「対ネウロイ戦で意見が合致しているならば、こんな戦争は起きなかった。 それが出来ないという事は……つまり そういう事だ」

 

 

遠くの夜空に飛び軍曹の位置を監視していた敵偵察機を、当然のように照準器無しで、かつ、最低限のエネルギー消費で撃破しつつ軍曹はボヤく。

 

マロニー空軍大将が関わったウォーロック事件もそうだ。

対ネウロイというより、アレは各国より有利に立つ為のものだった。

 

他にも似た話はある。

 

ガリアの空を守る506JFWことノーブルウィッチーズの事など。

貴族がメインだったりと、創設経緯を知ると大人達の政的な思惑部分が強い。

どちらにせよ、彼女達ウィッチに罪は無く、悪いのは大人達である。

断じてネウロイという人類共通の必要悪では無い。

人類はやはり、自らトラブルを起こして足の引っ張り合いをしたい生き物なのだ。

ひょっとしたら、プライマーも憂いたのかも知れない。

 

 

「いかんな、雑念が酷い。 俺も歳を食ったか」

 

 

ニヒルに笑う軍曹。

そんな心震えずして、無慈悲に倒されていく連合軍。 差があり過ぎる。

 

そんな彼を叱咤するように、無線が入ってきた。 Storm1だ。

 

 

『こちらStorm1! 軍曹、無事ですか!?』

 

 

バリバリバリ、というヘリのローター音。

見やれば先ほどと同種のブルートが接近しているところだった。

 

 

「こちらStorm2。 無事だ、来てくれて感謝する!」

『派手にやっているようですね。 手を貸します』

「助かる。 だが敬語はナシだ」

『まさか。 命の恩人に、恐れ多い』

 

 

戦場でも、余裕の会話をする2人。

銃座についている只野二等兵は、軽く戦慄を覚えている。

 

 

「それは俺のセリフだ。 Storm1には何度も救われた」

 

 

お世辞でもなく事実である。

目前の本営の時、インペリアル・ドローンの群れに襲われた時など。

他にもStorm1がいなければ死んでいた隊員は数知れず。

それこそ……かの者との時も。

 

 

『俺が民間人の時、助けてくれなかったらソレもありませんでしたよ』

「228基地の事か。 今や懐かしいな」

 

 

私語を交えつつ、戦車や歩兵隊を蒸発させている軍曹。

エイリアン連中と比べたら余裕故だった。

油断はしないが。

 

 

『互いに歳を取りましたね』

「時間は然程経っていない。 だが大戦の反動だな。 多くの仲間も失った」

『はい』

「事今に至っては、別世界に来てまで命を奪い合っている」

『人間のいるところ、どこへ行ってもそうなのでしょう。 ですがネウロイという共通の敵がいる分、この世界はマシです』

「必要悪だな。 今はEDFという敵もいる」

 

 

年寄り臭く、ある意味EDF隊員らしく口を動かしつつ、腕も動かすStorm1と2。

爆炎が夜の南島を照らし続け、もはや連合軍が照明弾を上げなくても見えるほどに派手だった。

 

Storm1の操るブルートは作戦領空に到達。

ガンナーの只野は沖合にいた軍艦の、修復を終えたばかりの対空機関砲や主砲、副砲をドーントレス重機関砲で破壊した。

努力が無駄になるサマは可哀想だが、命の奪い合いの最中に遠慮もヘッタクレもない。

 

 

『いいぞ只野、敵の対空能力を削いだな。 ヘリが堕とされたらオシマイだからな、対空兵装は見つけ次第破壊して構わない』

 

 

会話中だったが、部下の働きも しっかり褒めるStorm1である。

 

 

「うっす」

 

 

軽く返事をする只野。

猛者の会話を聞いていたので、なんとも言えない心境だった。

 

 

『とにかく軍曹、貴方と501を回収します。 501は どちらに?』

「分かっていれば苦労しない。 分かっているのはイェーガー大尉とルッキーニ少尉だ。 回収出来るか? スモークを焚いておく」

 

 

言うが早いか、EDFで見慣れた赤い煙が立ち昇る。

Storm1は了解した。

 

 

「ふたりは負傷している。 治療してくれ」

『了解。 只野、頼む』

「俺、衛生兵じゃないんですが」

『応急処置で構わない』

「……うっす」

 

 

相変わらずの、Storm1の謎のカリスマを前に返事をするしかない只野。

パワハラじゃない。 たぶん。

それを言ったら戦争末期とかヤバかっただろうし。 ほぼ徴兵状態の絶望戦線。

 

 

「空からも捜索頼む。 分からずとも連合軍を減らしていけば、そのうち見つかるだろう」

『了解。 援護します』

 

 

言いつつ、先ずはスモーク地点へと向かうStorm1。

連合の残存部隊が健気に銃撃を浴びせるも、ブルートの装甲が前では火花を散らすだけだった。

 

 

『いたぞ!』

 

 

スモーク付近にて。

痛みに耐えつつ、ルッキーニを庇うようにしているシャーリーを発見。

Storm1は着陸しようと思ったが、瓦礫などで起伏があり危険と判断。

只野を下ろして、着陸地点で合流する事にした。

 

 

「この高さで降りるんですか!?」

 

 

只野二等兵は文句を言った。

普通ロープやパラシュートナシでは大怪我する高度だったからである。

 

 

『大丈夫だ、EDF隊員だろ』

「ナニをしている只野! 早く飛び降りろ!」

 

 

ところが、ストームに叱咤された。

どうにもEDFの常識と只野の常識には見えない壁がある気がしてならない。

 

 

「分かりましたよ、もう……怪我したら責任取って下さいよ」

『大丈夫だ問題ない。 それくらいで怪我していたら鍛え直しだ』

「自分は無敵だ。 そう思い込め」

 

 

これこそパワハラ……なのか。

 

 

「チクショウ! 今行くぞシャーリー!」

 

 

只野は意を決して、飛び降りた。

着地の衝撃をEDFの戦闘服や軍靴、加えてローリングで和らげる。

痛みは無かったが、衝撃で多少痺れはした。

只野は兎も角、他のEDF隊員は それすら感じないのだろうか。

只野は疑問に思ったが、言わなかった。

今はさっさとシャーリーを助けねば。

 

 

『案ずるより産むが易し。 大丈夫だっただろう?』

「只野、お前は二等兵の域ではない。 厳しい世界を生き抜いてきた精鋭だ。 自信を持て!」

「分かりましたから。 隊長、早く回収ポイントに来て下さいよ!?」

 

 

腑に落ちない事を言われつつ、シャーリーとルッキーニの側まで駆け寄った。

ふたりは腕や足を負傷しているようだったが、命に別状は無さそうだ。

 

 

「シャーリー! ルッキーニ! 無事かい?」

「その声は……只野か? 来てくれたんだな」

 

 

シャーリーは額に汗を流しつつも、来てくれた只野に可能な限りの笑顔を向けた。

501では比較的只野と関わりが強かったのもある。

再会場所が戦場なのは悲しいが、仲間として会えたのは嬉しかった。

 

 

「……なんで……同じ人間なのに……」

 

 

一方でルッキーニ。

最年少故に、ネウロイではなく人間に襲われた事実がショックらしい。

汗ではなくグスグスと涙を流す彼女。

可哀想だけど、今は慰めている場合ではない。

 

 

「正義の反対は正義なんだ。 彼らも信じて戦っている、それだけだよ」

「分からないよ、ただの……」

「君も……いつか大人になる。 そしたら分かるさ」

 

 

残酷とも問題を先延ばしにしてるとも言える発言をしつつ、ふたりを両肩それぞれに抱える。

いくら少女だからって、ふたりも持てば重いし動き辛い。

だが、それを為し得て全力疾走を始める只野もまた、人外のEDF隊員のひとりであった。

本人は否定するだろうが。

あくまで脚力補助装備アンダーアシストのお陰だと。

 

そんな人外の二等兵を撃ち始める残党歩兵。

せめて誰かを倒したいという、短絡思考に陥っている。

 

 

「援護する!」

 

 

それを軍曹がブレイザーで蒸発させてしまう。

連合に出来る事なんて、惨いまでにナニも無かった。

 

先回りして、待ってくれていたブルートに放り込むようにして、只野はふたりを機内に乗せる。

残るは他のメンバーだったが……。

 

 

「501全員をヘリに乗せるのは困難だ」

 

 

と、今更ながらStorm1が言う。

ミーナ、バルクホルン、ハルトマン。

坂本、宮藤、リーネ、ペリーヌ。

エイラ、サーニャもいる。

ブルートは輸送ヘリでは無い。 そんなに多くは乗せられない。

いやまぁ……乗せていた時もあったが、負傷者を缶詰にするのは酷だろう。

 

 

「なので、南島の連合軍を一掃する。 その方が早い」

 

 

短絡的、しかし戦力比から作戦を変更した。

普通に現状戦力で掃討戦に移ってもイけると踏んでの事だ。

エイリアンとの戦闘で色々マヒしている所為だが、格が違うにも程がある。

 

 

「マジっすか?」

 

 

只野だけは正気を疑ったが。

 

 

「マジだ。 既にセンサー反応からして残党は少ない。 殲滅だ。 エイリアン連中を倒すより楽な仕事だぞ」

「そうでしょうよ。 3人やそこらで装甲車や歩兵隊、戦艦を沈黙させたんですから」

 

 

自分で言っていてナニ言っているのか分からないのも只野。

分隊どころか班……ソレ以下の戦力で上陸部隊は ほぼ壊滅。

更に言おう。 Storm2個人で偉業を成し遂げている。

武器レベルもあるが、単純に連合軍と格が違うのだ。

 

 

「分かってるなら話は早い」

「投降を呼びかけないんで?」

 

 

しばし無線越しに逡巡して、

 

 

「……そうだな、呼びかけよう」

 

 

Storm1はチカラ無く言った。

 

 

「俺たちは侵略者だが冷血じゃない。 失わずに済むなら助けてやれ」

「イエッサー」

 

 

TZストークを構え、センサーを頼りに殲滅ないし投降を呼びかけに向かう只野。

付き添うように軍曹も続く。

 

その背中をヘリから見るシャーリーとルッキーニ。

 

仲間を助けようとしてくれるのは嬉しかったが……やはり、心に屈託があるのは否めなかった。

 

 

「ワンちゃん」

 

 

ルッキーニは問う。

 

 

「正義って、わからないよ」

 

 

Storm1は沈黙で答えた。

シャーリーは、何となく分かる。

分かるから、ルッキーニを抱き寄せて。

優しく頭を撫でるのだった。

 

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