Witch Defense Forces(WDF)(完結)   作:ハヤモ

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作戦内容:
牙城である黒海からは、頻りに小型ネウロイが飛んで来るようになりました。
攻撃を積極的にしない為、恐らく偵察目的ではと考えられています。
現在、連合軍による高射砲や対空機関砲によって迎撃ないし追い払いが繰り返されていますが、ネウロイに情報を与え続けるのは良いとは言えません。
EDF隊員も必要と判断した場合、戦闘を許可します。
備考:
たくさんの兵士や武器が集まってきた。

そんな兵力ないよとか、短時間で集まるかよとか、兵站どうなってるんだよ とか その他現実見ろよ(笑)とツッコミされると答えられない(殴)。


76.足踏みする司令部と、未来での評価

◆ベルリン フラックタワー

EDF本部

 

忌まわしい事件の夜が明けた。

兵士らは睡魔にも負けず、少女らに与えられた軽いトラウマにも負けず、健気に破壊されたテントやビークルを修理する。

黒海監視の任に就く若い兵士らもまた、船を漕ぎながらも、なんとか目を閉じまいと努力した。

 

そんな前線の一方、ベルリン フラックタワーEDF本部で司令官はボヤいていた。

 

 

「原因は分からない、か」

 

 

ウィッチを含む皆の記憶は残っているものの、何故起きたのか未だ分かっていない。

事情聴取するにも被害規模や その対処、様々な処理に追われて面倒になって後回しになっているのもある。

最終的には広範囲に散開する200万近い兵員ひとりひとりに うら若きウィッチの ぷるんぷるん事件を聞くのも効率が悪い。 なにより馬鹿らしい。

いちおうやっている体を出すために、限定的に階級の高い者や隊長格を呼び出して聞くにも、彼ら、彼女らもまた分からないから首を横に振られるのみ。

別に期待していない。 誰も死なず。 過ぎた事は水に流すのみ。

 

 

「我々は軍人。 奇想天外な現実とも戦う……が、優先順位は黒海攻略だ。 あまりこだわっているワケにもいくまい」

 

 

事件の全貌を把握するのは最早困難。

ならスッパリ諦めて、目の前に集中しなければ。

司令官は判断したし、それは正しい。

科学力の追いつかない敵を相手にしてきたのもある。 無理に拘るのも良くない。

連合軍も同意見なのか、あまり積極的に事件の捜査はしていないし。

 

司令官は無線で戦略情報部の少佐を呼び出すと、現状の整理を行った。

 

 

「状況は どうなっている?」

「胸の事件ですか?」

「…………軍事の方で頼む」

 

 

相変わらず淡々と言う少佐に倣うように、感情を殺して問う司令官。

男として、司令官として本能のままニヤけるワケにいかない。

真面目にヤる。 司令官は現実を見る事が出来るタイプである。

 

 

「連合軍は黒海を囲い込むようにして展開を続けています。 扶桑やリベリオン、稼働可能なオラーシャ軍が合流しつつ規模は拡大し続け、100個師団(ここでは1個師団2万として)相当に値します。 509部隊ことEDFも正規・非正規問わず展開。 ほぼ完了しています」

 

 

動員兵約200万。

世界から戦力を掻き集め、凄まじい規模になっている黒海攻略軍団。

囲うように展開している為、戦力はバラけているが本気度が伺える。

アフリカ、オラーシャ、オストマルク……他の戦線維持の観点から、決して多くを注ぎ込むワケにはいかない……それでも ここまで投入したのは黒海に巣食う原初の怪異を倒す為。

この戦力は第二次世界対戦に発動した、人類史上最大規模のノルマンディー上陸作戦に比例するともいえる数。

今回の黒海攻略作戦「ネプチューン作戦」は、奇しくも この上陸作戦の正式名である。

尤も海から陸地ではなく、陸から海に向かうのだが。

その都合、陸戦戦力は海岸のネウロイを倒すだけで、その先は航空戦力になる。

艦艇? 上手く内海に入れなくて……。

 

 

「かつてない大規模作戦だ。 これだけの人員集結、ネウロイも勘付く。 奴らの様子は?」

「偵察と思われる小型タイプが頻繁に飛来。 その度にスクランブル発進をしたウィッチが迎撃。 もしくは連合軍の高射砲部隊が対処。 被害報告は今のところ ありません」

 

 

とは言うものの。

あまり時間を掛けるのも良くない。

兵站、費用も馬鹿に出来ない。

それはアニメで上層部が言っていた事だが、無視出来ないのも事実である。

 

ネウロイにも偵察の概念があるなら、ただ駆逐されるのではなく、人類側の戦力情報を収拾し、何らかの対処をしてくる恐れがある。

史実に擬えるなら、敵は感知していないと考えたいが……残念ながら、そんな悠長な考えは出来ない。

 

ゲーム、白銀の翼辺りでバルクホルンが偵察ネウロイの話をチラリとしていた気がするから、怪異とはいえ、そういった概念は あるかも知れない。

知れないだけだが。

 

 

「奴らも馬鹿ではない、時期は判らずとも人類が総攻撃を仕掛けてくるのは分かっている。 早めに手を打たねば」

 

 

司令官は奴ら怪異にも偵察の概念があるのを前提で危惧している。

電撃的に欧州の国々を解放、救済してきたが、それらは反撃の暇を与えず行動出来たからに過ぎない。

いくらEDFの技術が凄くても、数で押されたら堪らない。

元の地球でもそうだったし、アントウェルペン戦辺りでも そうだったが、奇襲されたり数の暴力を持ってして硝煙弾雨とビームを撃たれたら軽く死ねてしまう。

ストームチームの様な人外部隊や、501部隊のようなエリート部隊、509部隊のようなEDFの技術を持たせたハイテク部隊、神の模倣体なWDFを展開して戦争が終わるなら、とっくに終戦している。

 

……まぁ、人類同士の下らない争いが絡んで戦争が伸びているのは否定しない。

 

 

「足並みを揃えねば終わる戦争も終わらん。 チカラを合わせるしかない。 勝つ為にはな」

 

 

前線のモブ隊員が言っていた言葉を口にする。

それは力強い言葉でもあり、決意を示す言葉でもある。

が、少佐から返ってきた淡々とした言葉は無慈悲だった。

 

 

「連合軍は内輪揉め。 攻撃決行日時は未だ決定していません」

 

 

またか。

司令官は頭を抱えた。

 

 

「……ナニを揉めている」

「先陣を切る国、援護をする国の内訳です」

 

 

曰く、人類史に残る戦いである。

故に、どの国が勇敢に先陣を切り魔王城たる黒海を攻め落とし、人類の武勇伝を語るか。

世界の代表決めに精を出し、国民に喧伝したい上層部は勇者になるべく他者を蹴落とし合っているのだった。

 

 

「まだそんな事を」

 

 

司令官は呆れた。

 

 

「実際に戦うのは前線の兵士達だ。 それを忘れているのでは あるまいな」

 

 

作戦を立案、実行するにあたり軍の損害軽微に努め、勝利へと導く。

銃火に晒さぬからといって、好き勝手に兵士を戦場へ投げてはならない。

しかし、連合上層部はメンツと金の方が重要のようだ。

 

 

「大戦中、君の部下にも似た事を言ったが、あの時とは別のベクトルだ。 酷さで言えば連合の方が酷い」

 

 

オペ子との会話を思い出し、引き合いに言う司令官。

 

隊員なら知っている方が多いだろう。

大戦中のこと。 戦局の悪化、絶望的状況下。

オペ子が病んで、突然「神を探しています」と発言した衝撃たるや凄まじかった。

ビビった隊員は多いはず。

 

 

「仕方ありません」

 

 

少佐は言う。

淡々としているが、どこか疲れ声にも感じる。

 

 

「引き続き交渉の努力はしなければ なりません」

「言葉が通じるぶん、まだマシか」

 

 

上手くいかない事が多いが。

でなければ殺し合いも起きなかった。

エイリアンの時よりマシだと願うしかない。

 

 

「兵站は?」

「ノーブル隊が武器弾薬、食糧を輸送。 食糧に関しては連合軍は不足気味ですので我々の地球から物資を運び補填しています」

 

 

ここまできたEDF隊員なら輸送機ノーブルは知っていると思うが、いちおう説明しておこう。

ここでいうノーブルとは、EDFの垂直離着陸機(VTOL)ノーブルの事。

第506統合戦闘航空団ノーブルウィッチーズとは異なるので注意されたし。

 

 

「軍隊とは切ってもきれぬ関係だ。 だが、我々が物資を貰うつもりで この世界に来たというのに逆になるとは。 皮肉なものだ」

 

 

全くである。

どちらが悪いかで言えば、突然けしかけて少女を人体改造したEDFが悪いのだが、連合も利用するだけしてボロ雑巾にしてポイする思考なのも悪かった。

EDFとしては、ネプチューン作戦成功を手切れ金の代わりに献上し、オサラババイバイする予定。

もはや、ミーナ中佐やEDF司令官のような少数の良識派では どうする事も出来ないほど、軍は腐敗していたのだ。

 

 

「WDFのふたりは?」

「予定通り作戦に参加させます」

「よろしい。 問題はやはり、決行日か」

「はい。 連合軍とは早めに調整します」

「すまないが宜しく頼む。 私は現場指揮を執る」

「分かりました」

 

 

無線を切り、黒海周辺地図を広げる。

中央の『Black Sea』、その真ん中に書かれている『NOAH』はネウロイの巣。

EDFが勝手に名付けた名前だ。 そこには連合上層部や人類の先を憂いて付けられた部分もある。

 

 

「ノア、か。 人類にとって必要悪……いや、一致団結させてくれる方舟を沈めるという事か。 それが正しいのかは我々には分からん」

 

 

沈めた後の世界。

EDFの、元の地球と同じ末路を辿らない事を願うしかない。

 

ただそう思うのは、どこかエイリアンとの大戦と比較してしまうから……。

 

ともあれ。

城攻めは古今東西、守る側の何倍もの戦力が必要とされるが、敵の戦力は不明。

ひょっとしたら、人類連合200万より強い戦力を保持している可能性すらある。

怪異にとって重要拠点に違いない。 いちど戦争が勃発すれば死に物狂いの抵抗が予想される。

 

それは……お互い様に。

 

陸戦では砲兵隊と空軍の爆撃で海岸の敵をある程度吹き飛ばし、AFVを前面に押し出して盾にしつつの歩兵部隊前進を予定。

当然、航空戦力も襲ってくる筈なので、戦闘機相当のウィッチが護衛。

陸軍と並んで空軍も進み、NOAHを破壊する。

 

上手くいくかどうかではない。

最終的にはやらねばならない。

 

そうする事でしか、人類の闘争を慰められないならば。

 

 

「この世界に平穏が訪れる事を願う」

 

 

誰にも聞こえない声で、司令官は言った。

 

 

 

 

◆とある幼い魔女の日記

 

とても 強い 兵隊さん

 

神さま ころして やってきた

ちがう 世界から やってきた

 

ねうろい を たおして

ひと を いっぱい ころした

 

ふたり の おんなのこ を つれさって

ころした 神さま の かわりに なった

 

神さま は しろくて きれいな おすがた

 

おとな は みんな ほしがった

それで とりあいっこ して けんか した

 

神さま は 本当は ウィッチだから

神さまの代わりは にがおもい だって

 

それに 神さま は みんな の 神さま じゃない

強い 兵隊さん の 神さま

 

神さまは 兵隊さんが だいすき

 

ただの 兵士 が だいすき!

 

 

 

 

 

───黒海攻略団 とある魔女の日記から抜粋

 

1940年代 ネプチューン作戦

200万もの兵員が動員された歴史上 最大規模の作戦において、509部隊を知る手掛かりの ひとつとして数えられる日記。

幼い字、読み取り難い文面ながら当時を知る上では重要視する者もいる。

 

509部隊は統合戦闘航空団のナンバリングである500番代が与えられており、多国籍の部隊なのは変わりない。

しかし、その戦力規模は不鮮明ながらも小国の軍隊以上とも言われ、航空戦力のみならず陸上戦力も充実していた。

これは大国カールスラント防衛が主任務にあたり、十二分な備えをした結果であると唱える戦時研究者もいるが、異議も多い。

理由としてこの部隊は謎が多く、資料も多くは意図的に残されていない為である。

その為、個人や非正規で疎らに残された日記や独立部隊同士による書類上のやり取りの記録から差し測る他なかった。

 

残存する資料を読み解くと兵站面に関して冷遇されていたとされ、懲罰部隊の説が浮上するも、規模や充実した装備から それは否定された。

 

他に研究者を悩ませているのが出土した当時の装備品、武器弾薬類は1940年代の技術では製造不可能とされているものがほとんどである事だ。

 

アサルトライフルが一般に普及していないとされている時代にも関わらず、そういった自動小銃が多く見つかる。

他にもパンツァー・ファウストより ずっと高性能な対装甲重火器(現代の無反動砲相当)や、ウィッチの使用する飛行脚からは なんとコンピュータ制御と思わしき基盤類が発見された。

他、魔法誘導無しでの高性能誘導弾発射装置も見つかったり、現代の軍隊が使用しているものより高性能なビークルの破片も発見されている。

 

下手すると現代の軍隊よりも高性能な為、悪戯とさえ囁かれた。

技術試験部隊にしては、規模や配置が大き過ぎる。

いくら当時の人類連合上層部が面子と金を優先していた腐敗者の集合体だった事を考えても、やはり憶測の域をも超えている。

 

だが優れた知恵と技は、やがて風土を越えて交わり、普遍性を持つ科学技術となって、今日(こんにち)の豊かで便利な生活を支えているのは間違いない。

 

この日記から想像出来る事。

神や世界の単語が出てくる事、ネウロイのみならず人をも殺傷していたかのような記述がある事、他の資料と合致する情報を鵜呑みにするならば。

この部隊は別次元、規格外の強さを誇る独立した部隊であり、実験と実戦双方のチカラを備えた特殊部隊であろう。

神と呼ばれる者は魔女であるとされ、絶対的な強さを誇ったようだが、戦果資料も全く残っていないので全て不明だ。

ただの兵士が好き、ということから軍に従順だったのかも知れない。

 

この作戦を機に501部隊などの一部統合戦闘航空団が解散され、509部隊も同時に解散。

資料も多くが破棄。

最高司令部、ウィッチ隊総監ガランド少将の命令とされ、機密保持(破棄?)とされる。

戦時最大の謎ともいえる第509統合戦闘航空団の存在。

日々、発掘や研究をする者はいるものの、解明される日が来るのか分からない。

来ない方が良い、と言う者もいる。

 

だが僅かに分かっている事。

509部隊の別名EDF。

扶桑語で全地球防衛機構軍。

 

地球の為、この世界の為に戦っていた事は事実だろう。

 

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