Witch Defense Forces(WDF)(完結)   作:ハヤモ

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作戦内容:
連合軍との調整がつくまで、監視や塹壕掘り、土嚢積みを継続。
偵察任務を遂行する部隊は可能な範囲まで接近、可能なら戦闘を行いデータ収集に努めて下さい。
健闘を祈ります。
備考:
陸路では海岸までが限界

キャラの性格とか、違うのは今更(ry


77.偵察戦

◆黒海方面

 

アニメではカネだのメンツだの、作戦遅延に難色を示した連合上層部だが、今は誰が先陣を切るかで揉めに揉めて自ら遅延を起こしている。

自国が英雄になりたいのかも知れないが、実際に戦わされる殆どは名もなき兵士たちであり、銃火に晒さぬ連中では無いのを忘れないで欲しい。

遅延による消費兵站量増加による民間生産者の負担も、地味ながら気にかけてくれまいか。

そんな民間人による戦争非難も賛同者も、結局は兵士の心境を知らない。

 

そんな兵士ら、黒海方面は今。

 

偵察戦闘や小競り合いが続いており、良くも悪くもそれで済んでいる黒海攻略団。

今日も行われる偵察任務には只野二等兵も参加し、海岸の敵戦力把握に努める。

 

 

「偵察ねぇ。 それより早く攻撃日を決めた方が良いのでは?」

 

 

準備しつつ文句を言う只野。

命を危険に晒す数を増やして良い事はない。

 

 

「必要な事だ」

 

 

隊長のStorm1は言う。

 

 

「敵の戦力と展開を少しでも把握したい。 それに応じて、こちらの展開方法も変わる」

 

 

黒海攻略は全方位一斉攻勢からなる。

これは ほぼ決定事項だ。

そうしてNOAHの戦力を全方位に分散せざるを得ない状況下に置く。

その間、本隊が手薄な敵防衛線突破を試みる。

その手薄とされる防衛線を探るのもまた、こういった偵察部隊であり、重要な任務である。

だがしかし。 敵も人類同様に偵察に出ている事から、火力差と本隊がどの方向に向いているかを見極め、戦力配備を調整していると思われている。

この事から、やはり攻撃日を先延ばしにするのは悪手。 その加減が難しい。

そこは嘘の情報を相手に与える行為をしてみたりと、別の情報戦が繰り広げられている。

例えば同じ時間に飯時に見せかけるとか、攻撃日ギリギリまで余剰戦力を集結させないとか。

 

 

「航空戦力が多いなら対空兵器を。 装甲目標が多いなら重火器を持ち込む。 それが分かるだけで、だいぶ違う。 分かるだろう」

「まぁ……有翼型が来るのが分かっていれば、ミサイルを持ち込んでましたね」

 

 

大戦の苦い思い出を浮かべる只野。

小隊ないし分隊に、ひとりくらい対空兵器を担いでいる隊員がいるべきだろうが、あの時は戦力に乏しく難しいところだった。

 

 

「というわけだ。 行くぞ」

「了解」

 

 

うだうだ文句を言っても仕方ない。

Storm1に連れられて、只野は海岸へと向かう。

 

だが彼らは後に海岸の守備隊に驚愕する事になる……。

 

 

 

 

 

◆黒海 海岸付近

 

黒海監視団を隠れ蓑に、"無断出勤"したルーデル大佐。

元々ココの隊員である経歴がある彼女は、コネでワガママを通し、本番前の演習のつもりで海岸まで飛んでいた。

偵察ではあるが"いつも通り爆装"している。

威力偵察と言えば聞こえは良いが、無断出勤なのも いつも通りだ。

師団長も皇帝も、彼女の部下も頭を抱える問題児である。

 

 

「あれは只野」

 

 

視認性の良い目で、陸地を見渡す。

すると、前に出会った只野が海岸に向かっているのが見えた。

その隊長と思われる……フルフェイスヘルメットに、通信ユニットを背負う男は知らないが、その者も只者ではない雰囲気が漂う。

 

 

「奇しくも同じ方面からの出撃か」

 

 

徒歩と航空機。

厳密には飛行脚で飛行する機械化航空歩兵だが、速度はルーデルの方が圧倒的。

そのまま只野の頭上を通り過ぎると、海岸に集まるネウロイを発見。

巣を守る守備隊なのは間違いなく、その規模は大きい。

しかし密集し過ぎだ。 どうぞ爆撃して下さいと言わんばかりの光景にルーデルは口角を上げた。

 

 

「只野、君は どう評価する?」

 

 

見慣れぬ巨人のようなネウロイもいるが、その群れに向かってルーデルは急降下。

ウィッチでなければ持てない、フットボール状の大きな爆弾を構える。

 

ネウロイは一拍遅れて気づくと、ビームを空に乱射。

大型のユニット故か、翼が被弾してしまうも、構わずに直上急降下爆撃を敢行。

爆弾を離し、素早く離脱。

自由落下した爆弾は吸い込まれるように守備隊のド真ん中に直撃し大爆発。

1個の爆弾で守備隊を半壊させたルーデルは、只野たちのいる方へと戻ろうとして……。

 

 

「ッ!」

 

 

ビームがユニットを直撃!

黒煙を上げつつ高度を下げるルーデル。

フラフラと空中で蛇行しつつ背後を向く。

先程の巨人のようなネウロイが、両手からビームを撃っていた。

威力は低いが、連射速度はマシンガンのソレだ。

 

 

(新型か。 周囲が吹き飛んだにも関わらず、ヤツは平然と。 装甲が厚い)

 

 

こんな状況なのに、冷静に敵を評価しつつ墜落していくルーデル。

何も墜落するのは1度や2度ではない。 ある意味慣れた光景だった。

その事自体に狼狽える事は無い。 無いのだが。

 

 

「ルーデルッ!」

 

 

人外の速度で追いかけてくる只野二等兵には驚いた。

 

 

「えぇ!?」

 

 

長い戦役に身を投じ続けてきた女帝も、これには目を見開いてしまう。

EDFの脚力強化装備アンダーアシストを知らないので、無理もなかった。

 

 

「俺が受け止める! 合わせて!」

 

 

両手を前に広げて、アピールしてくる彼。

 

 

「大丈夫だ。 不時着は慣れている」

 

 

乙女心を擽られようと、甘んじる気はない。

無断出撃した身だ。 彼を巻き込むワケにはいかない。

 

頰を染めつつ言い訳をして、彼を引かせようとするのだが、

 

 

「ナニ言ってるんスか! 偵察で死ぬのが本望でも無いでしょーが!」

 

 

グリムリーパーなら喜んで死に場所を受け入れそうだが。

只野はルーデルの夢の話を参考に反発しつつ、なおも受け入れようと走り続ける。

 

 

「俺の知り合いも言ってたぞ! 夢を追わなくなったらオシマイだって!」

 

 

いつのまにかシャーリーから聞いていた名言を乱用しつつ、走り続けるのを止めない。

高度を下げていくルーデル。 只野の必死の表情が見える。

 

 

「いやその。 私は諦めてないが」

「なら喜んで抱かれろ! 同じ夢を持つ者でしょうが! 夢に抱かれろ!」

 

 

興奮して意味不明な言葉を走らせる只野。

もう目の前まで迫ってる。

 

なんというか、馬鹿で真っ直ぐな男だなぁとルーデルは思った。

 

 

(まあ良いか。 たまには助けられるのも)

 

 

そうとも思った。

彼に軟着陸するように宙を滑ると、彼の必死の顔が浮かんでくる。

 

馬鹿だなぁ、だけど可愛いなぁ、と。

 

 

「うおおおお!?」

 

 

そのまま迫真のファインプレイ。

スライディングキャッチをかまし、ギュッとルーデルを抱えると、一緒になって地面を滑る。

ズザザザ〜っと。

 

砂埃が消えてくると、無傷のルーデルと只野が晴れ上がる。

EDFの戦闘服は、これくらいじゃ問題ないのだ。

 

 

「ッ……大丈夫?」

「問題ない。 只野は?」

「全然」

「ならヨシ。 お前は無茶するヤツだな」

「君程でもないけど」

「ふふっ」

 

 

抱き締め合う形で無事を確認し合う2人。

そこにStorm1が駆けつけてくる。 ローリング移動で。

どいつもこいつも変である。

 

 

「2人とも無事か?」

「無事ですよ」

「良かった。 取り敢えず彼女を陣地まで連れて行こう。 偵察はそれからだ」

 

 

そういうStorm1だったが、ルーデルはユニットを放棄しつつ立ち上がり否定する。

 

 

「私は平気だ。 寧ろ偵察に連れてけ」

「ユニットもナシに戦えるカラダじゃ無いだろう。 ハンナ・ウルリーケ・ルーデル大佐」

「なんだ。 知っていたのか」

 

 

Storm1が正体を破るが、特に驚かないルーデル。

知名度があるから、知っていても何ら変ではない。

 

 

「対地爆撃において人類最強のウィッチ。 だがな、もう無理はするな。 魔法が そろそろ使えないんだろう?」

「シールドが張れないだけだ。 空は飛べる」

「君のユニットは既に大破している。 そうでなくても、もう戦えるカラダじゃない。 諦めて帰れ」

「ふざけるな」

「お前がふざけるなッ! いい加減にしろ!」

「ッ!」

 

 

厳しい口調でルーデルを咎めるStorm1。

それは娘を叱る お父さん。

時々彼が見せる姿勢は、厳格な父親のようであり、その多くの言葉は心を揺さぶられるものだ。

只野も、自分が言われていないのにカラダの芯が震わされている錯覚を覚える。

太鼓を側で打ち鳴らされているかのよう。

 

それでも。 それでもルーデルは強い意志を表明する。

彼の放つ現実の言葉に挫かれる事なく、目尻に悔し涙を浮かべてもなお、彼女の信念は曲がらない。

 

 

「諦められない。 黒海の怪異が、元凶の元が絶たれようとしている重大な戦局にいるのだぞ」

 

 

顔を上げ、Storm1に言うのだ。

 

 

私はまだ戦える……戦えるんだ………ッ!

 

 

心の芯を震わされて無垢な少女にされようとも、涙がこみ上げようとも、根元は頑固だった。

只野は悼まれなくなって、彼女を もう一度抱きしめる。

ルーデルは為すがままだった。

 

戦闘狂の"きらい"があるにせよ、本気で世界平和の夢を考える節があるからの涙もある。

 

Storm1は、そんな頑固な娘に溜息を吐く。

 

 

「わかった。 希望は、必要だ」

 

 

かつての司令官の言葉を言い、Storm1は黒海に体を向けた。

彼女の意志を認めてあげたのだった。

 

 

「あくまで偵察が任務だ。 無理に殴り合う必要はない……行くぞ」

「了解」

 

 

只野は短く返答し、ルーデルに付き添った。

 

 

「行こう。 仮初めの平和の為に」

 

 

2人は歩く。

海岸には新型ネウロイが蔓延っている。

戦う気は無くとも、十分危険な任務だ。

だが、重要な任務だ。

 

 

 

 

 

ーーーーーEDFーーーーー

 

海岸に改めて向かえば、先程ルーデルによって半壊した守備隊が配置を直しているところだった。

此方には気付いていない。 都合が良いので、そのまま観察する。

 

見たところ、巨人型のネウロイを中心にフォーメーションを整えており、EDF隊員にとっては見覚えのある光景だった。

 

 

「アレはまるでコンバットフレームそのものだ。 厄介だな」

「ですね。 とうとうEDFの模倣まで始めましたか」

 

 

変に冷静な2人。

ネウロイが人類の兵器を模倣するのは知っていたので、寧ろ今更感すらある。

だが、真似されるのは良い気はしない。

 

 

「コンバットフレーム? あの巨人がか?」

 

 

ルーデルは尋ねる。

彼女はEDFの兵器群に詳しくない。

只野は答えた。

 

 

「搭乗式強化外骨格。 ニクスともいう」

「とうじょう……なんだって?」

「戦車だよ。 履帯じゃなくて二足歩行の」

 

 

この世界の人にも分かりやすい言葉を選んで説明してあげる只野。

子ども扱いしてくるかのような彼に、少しムスッとするルーデルだが構わず話す。

 

 

「あの守備隊、半壊して再編成中みたいだけどルーデルがヤッたの?」

「そうだ。 1発喰らわせた。 だが、あのコンバットフレームとやらは無事だったな」

 

 

貴重な意見に、Storm1が反応。

今度は彼が尋ねた。

 

 

「そうか。 装甲まで模倣しているとしたら、尚更厄介だ。 武装は?」

「連射能力の高いビームを撃ってきたのは見たが、他は分からない」

「ますますニクスに近い。 となると、他の武装も警戒しなければ」

 

 

報告内容を脳内で纏めていると。

ズモモモッと、海岸から音が響く。

 

 

「なんだ?」

 

 

何事かと注目していると、海岸の砂が盛り上がり、大量の蜘蛛型ネウロイが湧き出てきた。 キモい。

 

 

「うわぁ……β型まで」

「べーた?」

 

 

EDFの世界を知らないルーデルは、また首を傾げるが、無視して会話を進める。

 

 

「いや良く見ろ。 あれは地底戦車のデプスクロウラーだ」

 

 

Storm1にツッコまれ、改めて見る。

確かに脚は4本、頭部左右に砲身と見られる棒が付いている。

 

 

「砂の中にも潜んでるときた。 これは奇襲される可能性大だぞ」

「ですね」

 

 

大戦初期、帰路の遭遇を思い出す。

海岸沿いの道を歩いて基地に帰投中、突然海岸の砂浜が盛り上がり赤い変異種が湧き出てきたのだ。

Storm1は即座の空爆要請で対処したが、危うく赤い津波に飲み込まれるところだった。

 

 

「むっ! アレは」

 

 

今度は空を見る。

黒いウィッチの様なネウロイが飛んでいるのが見える。

 

 

「ウィッチ……いや、ネウロイか」

「ウィッチ型、ね。 だとしてもネウロイだ。 人類じゃない」

 

 

刹那的に驚くも、直ぐ冷静になるルーデルと只野。

アニメにもウィッチ型ネウロイは出てきたが、あの意図は なんだったのか。

だが目の前に飛んでいるネウロイは、全員敵で良いだろう。

少なくとも交渉の余地は無い。 ネウロイ滅する慈悲はない。

宮藤が見たら、交渉に無断出撃したり戦う意欲を無くしてしまいそうだが。

 

 

「ウィッチ型のネウロイ。 この期に及んでバリエーションに富んでいる。 サーカスでも始める気か」

「なら熊でも出て来ますかね」

「従軍していた熊の話があったな。 502部隊にも使い魔が熊の子がいると聞く」

 

 

無駄話をする余裕を見せつつ、撤退を開始する。

このままサーカス団を見ていても、笑顔より絶望顔を浮かべそうになる。

このまま寛大にピエロにでも出てこられて、もてなされては堪らない。

 

 

「本部に連絡だ。 ルーデル、君の行いは有意義なものであったぞ。 感謝する」

「そうか……ありがとう」

 

 

叱りもすれば、褒めもするStorm1。

隊員らに慕われる理由のひとつだ。

 

 

「後は上に任せてD-dayに備えよう。 生き延びて黒海の怪異を滅する。 それだけだ」

 

 

3人は任務を終えて帰還する。

 

また明日。

いつ死ぬかも分からない戦場には様々な顔があるけれど。

皆総じて戦っている。

どんな凄い兵士にも、様々な想いがあって武器を握っている。

 

EDF世界の大戦末期。

ニューヨーク ブルックリン地区でのレジスタンスリーダー ジョエルのように。

 

この世界の人々も、何かの為に戦っている。

それを……知っていて貰いたい。

 

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