Witch Defense Forces(WDF)(完結)   作:ハヤモ

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作戦内容:
ようやく攻撃日が決まりました。
各隊は状況に備えて下さい。
備考:
人類は何を得て、何を失うのだろう。

軍事的、用語的にミスがある可能性(ry。


78.D-day

◆黒海方面EDF司令部

 

この日、EDF司令官は黒海まで出張った。

最後のひと仕事を見届ける為だ。

本部には情報部の少佐とオペ子を残す。

 

 

「もうすぐだ。 もうすぐで」

 

 

戦争は終わる、とは言えなかった。

EDFが この世界から別れる意味では「終わり」だ。

しかし黒海の怪異を倒したところで、この世界の人類にとっての転換期になるくらいで、戦争は継続する。

 

 

「結局、奴らも謎の存在のままだしな」

 

 

怪異……ネウロイは、東に広がるユーラシア大陸、その大部分を領土とするオラーシャにもいる。

南東部のオストマルクにも残存している。

遠くの地、アフリカにもいるのだ。

もっと言えば、世界中にいるといって良い。

 

主な戦線、フォーカスが当てられたのが欧州なだけだ。

アニメでも欧州がメインだったかも知れないが、戦場は欧州以外にも数多ある。

 

それにだ。

奴らは神出鬼没に現れる。

巣が突然空に作られて、パニックになった時もある。

 

今後、それら戦線を連合軍は自力で支えねばならない。

 

 

「出来るのか? この世界の人類だけで」

 

 

ここまでお膳立てしておいて、連合が負け戦をし始めたらEDFとしても悲しい。

今までの犠牲と労力はなんだったのかと。

 

 

「いや、そう願おう。 我々に出来ることは、ただ祈る事だけだ」

 

 

この世界においては、別の意味で勝利を願うしかなかった。

少数の良識派では改善不能なレベルの腐敗した軍上層部。

だが、そんな腐者にも頼らねばならない人々。

ミーナ中佐たちが可哀想だと思うが、後の事は彼女たちに託そう。

 

WDF。

世界と魔女を真に救えるのは、この世界の人類でなければならない。

 

 

「……最後だ」

 

 

歳をとったからか、独り言を呟きつつ野戦テントに入る司令官。

中には連れてきたお馴染みの顔ぶれが揃う。 苦楽を共にしてきた仲間だ。

 

 

「諸君。 この世界にて最後の仕事となる。 頼んだぞ」

 

 

皆は敬礼にて答えると、各自の仕事に取り掛かる。

司令官は内心で感謝した。 元の世界が滅茶苦茶になっても、この世界でEDFが罪を犯しても、それでも共に歩んでくれた事に。

 

本部がエイリアン連中に襲撃された時も、共に抵抗した。

その後、地下施設に活動拠点を移し、劣悪な環境にも屈せず指揮を執る支えとなってくれた。

 

その意味では、情報部のオペ子にも感謝している。

彼女は若い身でありながら、本部が指揮を執れない期間、代わりに戦線の兵士のサポートをしてくれたのだから。

 

元の世界に帰ったら改めて感謝を伝えよう。

 

司令官は軍帽をかぶり直し、最後の確認を始める。

 

 

「ネプチューン作戦が間も無く発動する。 黒海の怪異を殲滅するのが目的だ。 連合とEDF、覚悟の200万をもってしてコレを討つ」

 

 

地図を広げる。

真ん中には『Black Sea』。

中央は『NOAH』。

包囲する連合軍とEDFの様々な部隊名。

うち、EDF本隊に混ざる『Storm team』。

その本隊の侵攻ルートを『sectorΩ』。

同じルートを辿る連合軍もいる。

その中には『501JFW』と『509JFW』。

 

始まりの1と最後の9。

共にチカラを合わせ方舟を沈めて無に還す。

そしてEDFは"0(ゼロ)"になる。

さも、始まりも終わりもない。

最初からそうであったかのように。

 

 

「海岸までは地上部隊で侵攻出来る。 後は航空戦力に頼る他ない。 それでも支援出来る事は多くある。 全力で行く。 出し惜しみはナシだ」

 

 

D-day。

この世界におけるEDF最後の戦闘まで もうすぐだ。

 

 

 

 

 

◆黒海方面sectorΩ

D-day

 

決戦早朝。 世界が白みを帯びる刻。

全地球防衛機構陸軍歩兵本隊及び扶桑陸軍歩兵隊、カールスラント陸軍歩兵隊ら他各国混成の第509統合戦闘航空団。

他担当戦域の人類連合軍もほぼ同様の様相。

第5匍匐前進。 尺取虫のように、ほぼ地面につけた状態で這い進み、海岸ギリギリまで進んでいる。

航空ウィッチ……機械化航空歩兵隊も飛行脚を引き摺るようにして、一般歩兵隊と共に動いていた。

速度が遅い匍匐移動も、ここまで来ると更に遅い。 代わりに相手からは殆ど見えない。

だが、その様子を空から見ている者がいたならば、目につくだろう。

"地面が動いている"のだ。 それだけ地を埋め尽くす兵隊が同じ姿勢で満遍なく広がりを見せ、練度の高い同一行動を取っていた。

 

 

(静止)

 

 

先頭のStorm1が、後続の"人類"に手信号を出す。 全員はピタリと止まった。

今、彼らの前方には海岸を陣取る怪異の守備隊がいる。

かなりの数だ。

 

 

(ここまでは段取り通り)

 

 

無言のまま、無線機を持った。

いつもよりチカラが入る。 時間だ。

 

 

(後は祈るだけだ……!)

 

 

そして。

 

 

「座標───!」

 

 

Storm1は、いつも通り"空爆誘導"をした。

 

 

『目標確認! 突入開始!』

 

 

そして、怪異守備隊の上空を10機ものフォボスZが突入していく。 そして。

 

 

『投下!』

 

 

多量の爆弾が投下された。

怪異は反応する間もない。 そのまま地面や怪異に直接ぶつかると、次々と爆発に次ぐ爆発が起き、怪異はバラバラに吹き飛んだ。

更に、それを合図にするかのようにして砲兵隊から巨大榴弾砲が撃ち込まれる!

 

 

『ドカンといけぇ!』

 

 

海岸で大爆発が無数に起きる。

他方面の海岸でも同様の事が発生していたが、1番大きかったのはStorm1たちのsectorΩだった。

 

それでもまだ、怪異は残っていた。

 

 

『目標地点への攻撃完了。 地上部隊の健闘を祈る!』

『砲撃終了です。 地上部隊(ほへいぶたい)の健闘を祈ります!』

 

 

突撃の合図ともなる、攻撃終了の無線。

Storm1は叫んだ。

 

 

「突撃せよッ!!」

 

 

皆は立ち上がり、そのまま海岸へと雪崩れ込む!

 

 

「「「うおおおおおおおおおおお!!」」」

 

 

突撃ラッパ。 笛の音。

黒海に鳴り響くは兵士たちの雄叫び。

 

そんな彼らの盾になるようにして、ノーブルがコンテナを投下。

戦車隊やニクス隊を"召喚"した。

ウィッチ隊は頃合いを見計らって、奇襲するように空へと舞い上がる。

 

 

「EDFッ! EDFッ!!」

 

 

只野二等兵は叫び走る。

皆と共に叫んで走る。

 

ネプチューン作戦。

D-day。

 

多くの兵士が散り逝く決戦の火蓋が、切って落とされた。

 


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