Witch Defense Forces(WDF)(完結) 作:ハヤモ
諸悪の根源を絶つ。
頭を低くして進め。
dead beachを制圧せよ。
備考:
地上戦力は海岸制圧が目標。
機械化航空歩兵はNOAH内部へ突入を試みる。
◆sectorΩ
只野二等兵視点
俺達は走った。
海岸に走って、走り続けた。
肉裂ける、血の噴水場を走った。
前に行くほど、雄叫びを上げる仲間が吹き飛んで。
戦車が横転し、近くの兵士が下敷きになり赤い花を咲かし。
シールドで防ぎきれなかった魔女が、影形なく蒸発する光景を見ていく。
やがて撃って撃たれて吹き飛び合う。
ネウロイは粒子となり四散して、人間は肉塊として溜まり逝く。
「うわあああ! くそっ! くそっ! くそぉ!」
悲鳴なのか雄叫びなのか。
自分でも何を言っているのか分からない。
何度見ても最悪な光景。 地獄絵図。
それでも戦うしかないんだって!?
そう主張する屍を乗り越えて、俺達は怪異に詰め寄せる。
一丸となった今、俺達は軍であり、地を盛り上げる畝りである。
「ゲホッ」
俺より先へ駆けていき、四散する兵士。
「死ねッ! 死ねぇッ!!」
目をひん剥き、なおも引金を引く兵士。
「墜ちろ! 墜ちろおおおッ!!」
空飛ぶ怪異に、懇願と殺意を剥き出す兵士。
数多の兵士が斃れ、尚も進む俺達兵隊。
だけどな、死ぬのが俺の仕事じゃない!
死んでたまるか!
そう思う程に足取りは重くなり、抜かれては勝手に先頭になり、また抜かれては先頭に。
爆ぜる肉塊を掻い潜り、なんとか進む。
次は俺なんじゃないか。
そうヒヤヒヤしつつ走り続けた。
ネウロイめ、とにかく海岸を支配されまいと必死だ。
赤いビームを乱射し、吶喊する兵士らを蒸発させ、ニクス型ネウロイが機銃掃射の如くビームを連射。
今までより ずっとビーム発射間隔が短く、弾幕を薄くしないようカバーを忘れない。
「うっ!?」
陸戦ウィッチに、いや。 死体に躓いた。
堪らず前に転ぶ。 砂が口に入り、誰かの血が体表にベットリ漬けた。 生温かい。
気持ち悪い。 だが構っている余裕はない。
立ち上がらず、そのまま匍匐姿勢。
立てば死ぬ。
これ以上は無理。 立てない。
立ち姿勢は自殺以外の何者でもない。
「ああそうだよ! 限界なんだよ!?」
伏せる他ない!
突撃の勢い? 最初だけだよ。
遮蔽物だって、マトモにないんだぞ!?
フェンサーやAFVはやられたのか、いつの間にか見当たらない。 つまり盾もない。
ビームと銃弾が頭上を無数に飛び交う、無秩序なガード無用の自殺コースと化している。
「頭を上げたら死ぬぞ俺。 上げるなよ俺」
言い聞かせつつ、地面に這いつくばってやり過ごす。
後はしっかり面倒見てよ兵隊さん。
俺は戦線が押し上がったら進む事にするから。
なんなら、死体のフリをしておく。
一丸? もう知らん!
チキンで良いよ もう!
EDFの空爆と砲撃後にも関わらず、ネウロイ野郎ども、かなり残存しやがったんだぞ。
対して人類、まだ制圧出来る兆しナシ。
「俺も必死なんだよ! 生きたいんだよ!?」
無秩序の中で無意味な生存権を主張をしつつ、前を見やる。
ビームの弾幕を抜けた陸戦ウィッチ隊や歩兵隊が肉弾戦へと発展させ、ネウロイに組み付いて殴っていた。
手擲弾、銃剣に円匙、鉄帽。
使えるものは何でも使う。 スゲェ。
逞しいね。 俺とは違う。
それでも銃火は激しく、TVの砂嵐かっていう弾幕の中にいた。
そう思うくらいには変に他人事で、悪く言えば おかしく なりそうだった。
耳元で常に羽虫が飛んでいるかのような銃弾が掠める音に、ビームの着弾により盛り上がった砂のシャワーを浴びていく。
豪華にも生温かい血肉風呂に入り浸るまである。
びちゃり。
「…………」
仲間の血肉が飛んできた。
誰かの眼球と目が合う。 最悪だ。
「戦車隊ッ!? ニクスや空軍は!」
叫ぼう! オカシくなりそうだ!
誰に話すワケでもナシに大声で叫ぶ俺。
だが無情にも無数の銃弾とビーム音で掻き消された。
それでも、無機質な無線は拾ってくれたらしく。
Storm1が答えてくれた。
兵士が沢山いる中、俺みたいな二等兵にも関わってくれて嬉しいね。
なにより狂気の世界にも俺以外の生物がいるって実感出来るのが良い!
『ブラッカーは蹴散らされた。 ニクスは集中砲火で融解。 フェンサーは盾でも弾幕に耐えきれず。 タイタンは機動力に欠ける、後方だ』
ハッハー!
マジかよ最低!
「他のは? 色々あるでしょ!?」
『ヘリは自殺行為だから飛んでいない。 グレイプは歩兵隊の盾となり真っ先に鉄屑』
「その鉄屑ことバルガとか!」
『黒海の水深は浅くない。 機動力やネウロイのサイズから かえって邪魔になると判断。 投入予定はない』
「空軍は!?」
『501や509が奮戦中。 されど一進一退。 座標伝達による突入はしてくれるが、他の面では限界がある。 ジェット燃料や弾薬の絡みがあり、通常の航空戦には参戦していない』
じゃあ どうするんだよ。
総力戦の最中、死ぬのを待つしかないの?
サイキョーじゃん。 兵士冥利に尽きますってか!?
『諦めるな』
諦めてないよ?
他力本願なだけ。
『WDFが投入されれば、制空権は確保出来る。 辛抱だ』
「WDF!?」
参戦するのは知っていたけど、そういや何処にいるの?
「軍曹ちゃんに曹長ちゃんですよね?」
『そうだ』
「何処にいるんです」
『秘匿座標から、此方へ真っ直ぐ向かってきているところだ。 間もなく到着する。 耐えろ』
どれくらいなんだろうね。
結構長く感じるよ。
苦しい中にいると余計に。
「大戦中のレールガンも そうでしたけど。 最初から投入出来ないんですかね!?」
『あの時は敵に悟られない為と、ギリギリまで誘き寄せてある程度一網打尽にする為だ』
「今回は固定目標でしょうが!」
『WDFを巡る連合の横槍が酷い。 直前になって拉致されたくないだろ?』
この期に及んで連合が手を出すかな?
いや出すか。 連合だもん。
軍曹ちゃんと曹長ちゃんの辛さを思えば、俺なんて……。
ごめん。 俺も頑張るよ。
「すいません。 死にそうな状況下で熱くなりました」
『もう少しだ。 踏み留まって撃ちまくれ』
そう言われると、無線が切れた。
耳元の羽音のボリュームが上がる。
「チクショウ。 やってやる。 やってやんよ!」
赤黒く変色したTZストークを持つ。
匍匐射撃の姿勢を取り、スコープを覗いた。
ひしめき嘶くネウロイを中心に抑え───。
「さっさとクタバレえええええッ!」
降弾量を増加させた。
◆黒海方面 前線司令部
前線に設置された司令部。
そこでEDF司令官は居座っていた。
その取り巻きとなる部下は、後方ベルリン フラックタワー本部にいる戦略情報部と やり取りを交わしつつ、各地の情報を聞く。
前線にいるスカウト、人類連合の黒海監視団からの報告書と必死に睨めっこ。
情報の中には各地の状況が記載されており、彼らは余念なく神経を集中させているのだ。
「歩兵部隊 一部、第1防衛線突破! 近接戦闘に移行!」
「砲撃、空爆支援中止! 誘導兵による精密爆撃に切り替え!」
「オメガ機械化装甲師団、感なし!」
「新型ネウロイを確認! EDF型に魔女型です!?」
「空中戦、膠着状態続く! 進軍は困難な状況! 送れ!」
「こちら司令部! 間もなく援軍が到着する! 戦線を維持せよ!」
聞く度に司令官は唸る。
やはりか、ネウロイは決死の抵抗を見せてきた。
NOAHまでの道のり、その最後は空路に頼り切るしかないのだが、その前に海岸に展開する守備隊が厄介であった。
先ずネウロイはEDF型……ビークルに似た怪異を前面に押し出し、ビームの弾幕で地上と空、双方を近付けさせない構えを取った。
後方にはトーチカ型ネウロイまで陣取り、空爆と砲撃に耐え忍んだ個体が順次反撃を開始。
居並ぶ戦車隊を瞬時に不能にしてしまう。
また、遅れるようにして航空ネウロイも出張り、進撃してきた501や509に攻撃開始。
厄介なのは、ウィッチ型ネウロイが出てきた事だ。
編隊飛行をするのは勿論、機動までウィッチそっくりで、格闘戦に慣れていない子は大苦戦。
そうでなくても、姿形がウィッチというだけで、精神的にダメージを受けて戦意喪失をする子すらいる。
だが、これらを片付けない事には近寄る事すら出来ないのだ。
ましてや、NOAH内部にいるだろう親衛隊的な連中とも殴り合わねばならない。
ここで戦力を削り取られてばかりは いられない。
「司令官! 援軍です! パットン将軍 率いる戦車隊です!」
1人が叫ぶように報告。
司令官はすぐさま指示を飛ばす。
「宜しい! 我が軍からもバックアップチームを出す! 遅れているタイタンと、陣地守備隊のネグリング自走砲を合流! 予備のブラッカーも掻き集めて反撃に転じろ!」
「了解! 先方に伝えます!」
ここでリベリオンの大将、西方軍集団司令官パットン将軍の戦車隊が来たのは大きい。
アニメとは多少編成が異なるが、かの誇大妄想兵器も投入、海岸のネウロイを吹き飛ばさんと進撃開始。
あれ? 時期とか、アフリカの方は? とかいうツッコミはなしで。
アレだよ。 決戦だから駆けつけてくれたんだよ。
決戦兵器も頑張って間に合わせたんだよ(決戦乱用)。
EDFも合わせて攻撃を続ける。
地上の怪異さえ片付けば、後は空だ。
501と509が空の怪異の相手をしているうちに、なんとかしないと空襲が来てしまう。
「WDFも来る! なんとしても勝たねばならんのだ!」
敵も必死だが、人類も必死だ。
波濤となる後続軍団の息が続くうちは、ひたすらに殴り続ける。
もう後には引けないなら、そうする他ないのだから。
「ストームチームの現在地知らせ!」
「本隊と共に膠着状態!」
「Storm1に伝えろ! ネグリングと戦車隊が来ると! アイツなら上手く運用出来る筈だ!」
「はっ!」
そう言わすくらいには信用されているStorm1。
誘導兵の"誘導"は決して空爆や砲撃、衛星やミサイルだけのモノではない。
「オメガはコレで何とかなる。 ならねば困るぞ。 EDFの投入戦力は出し切ったものだからな……!」
あの時程ではないにしても、祈る気持ちの本部の面々。
司令官はヘッドホンを落とすように捨てると、テントから出て行った。
趨勢を見届ける為だ。
「連合だけでは やはり……いや。 未来より今だ。 我々はここで勝利する」
黒海方面を睨む。
暗雲立ち込める海は、やや離れた地に設置された司令部からも よく見える。
同時に、闇祓う光が数多も輝く。
その刹那の輝き ひとつひとつは、兵士の命と引き換えに生み出されているものでもある。
「皆、頼むぞ……!」
今度こそ、司令官は祈りの言葉を口にした。
◆sectorΩ
只野二等兵視点
後方から履帯音が聞こえるから振り返れば、巨大な戦車隊がやって来たよ。
タイタンよりデケェよ。
ネウロイからのビームも弾いてる。
ナニコレ凄い。
そんなのが死体をバキバキと踏み潰しながら やって来たよ。
履帯に腸だかなんだかの臓器とか、血肉がへばりついている。
見なきゃ良かったぜ畜生!
「生きてる奴は避けろよ! 俺は言ったからな!」
威勢の良いオッサンボイスが聞こえたが、戦車長か?
随分と酷い事を言う。 仕方ないけどさ!
「分かったよ もう!」
地面に転がったまま、横に動いて避けてやった。
味方に轢かれて死ぬのは勘弁だからな。
「なんだ、イキの良いヤツがいたか!」
酷くね? 生きたいんだよ俺だって。
「悪かったな!」
「悪かねぇ、お前さんだけだったぜ? この辺で威勢良く弾ブッ放してたのは」
言われて周りを見る。
いつのまにか、俺しか動いてなかった。
おかしい……"生きてる"仲間が まだいたんだが。
「はっ……ははっ……なんだよ……あぁ」
ダメだ。 変にチカラが抜ける。 ははっ。
「だが! この陸上巡洋艦ラーテが来たからには、海岸ごとネウロイ野郎を吹き飛ばしてやる!」
「そりゃどうも。 頑張って下さい」
「頑張ってじゃねぇ! オメェも頑張るんだよ!」
どっかで聞いた言葉だなぁ。
そう思っていると。
巨大な戦車……ラーテだっけ……の重厚なハッチが開かれ、渋いオッサンが見下ろしてきた。
なんだこのオッサン!?
「ケツについて来い! 一緒にいたティーガーはリタイアしちまったが、後から509の戦車隊やら自走ロケット砲部隊が来る! 安心しろ!」
一方的に喋られると、また中に引っ込んで行くオッサン。
ナニか。 戦車について来いと。
そんで戦えと。
「……あのオッサン、不器用に励ましてくれたのか?」
そう思うと、なんか、無視してやるワケにもいかなくなってくるじゃん。
ビームが飛んでくる中。
ラーテ以外、的がなくなったのか集中砲火を受けるラーテ。
それでも健気にも頑張って前進していく。
たまに天をも打つ轟音を放ち、デカい主砲でネウロイを吹き飛ばしている。
凄いな。
連合製だとしたら、尚の事。
だけど、ネウロイはまだまだいる。
怖いが……援護が無いと危ない。
───ズモモモモモモッ!!
「ッ!?」
地中が盛り上がる!
偵察の時に見た、地中のネウロイだ!?
「オッサン、今行くぞ!?」
考えるより先に動く足。
血肉を蹴り飛ばしながら、ラーテに取り憑くネウロイを狙い撃つ。
「離れろネウロイ野郎ども!」
オッサンボイスが聞こえた。
また飛び出してきたと思えば、黄金のリボルバーでネウロイを撃ち始めた!
無謀だ!?
中にいる乗組員も思ったのか、オッサンを抑えて中に引きずり込もうとしているし!
戦意に溢れるのは結構だが、正直射撃の邪魔!
「俺が片付ける!」
俺は叫びながら、ネウロイだけを撃ち抜いていく。
TZストークは精度が高い。 スコープとレーザーサイトもある。
この距離で外すほど、俺の腕は悪くない!
「やるじゃねえか! 気に入ったぜ!」
「良いから!?」
「おっとそうだな! ネウロイ野郎をブチのめそうぜ!」
いや、車内に引っ込んで欲しいんだが。
ビーム飛んできてるし。
それも、海からも来てる。
こっちは射程圏外なのにズルくね?
「悔しいが、海の向こうはウィッチに任す! 代わりに海岸のネウロイは潰す! 行くぞ小僧!」
黙れオッサン!
いや、まあ やるけどさ!
『こちらStorm1』
おっ。 ここで隊長から無線が。
ラーテの裏に隠れつつ応答する。
「こちら只野二等兵」
『無事で何よりだ。 今、そちらへ向かっている。 ネグリング自走ミサイルの部隊と、遅れていたタイタンが来るぞ!』
おおっ!
援軍が来るのか!
まだ諦めるには早い。
軍曹ちゃん達も来るんだ、生きなくちゃ。
「待ってます。 WDFは?」
『もう少しだ! 先に海岸を制圧する!』
「了解!」
まだだ。 まだ終わらない。
でも。 この戦いは勝ちに行くぞ!
「EDFッ!」
俺はTZストークを持ち直し、ラーテに続いた。
◆戦時に関する話
かの有名な将軍が残した黒海での非正規の戦闘報告書には、見ず知らずの兵士について短く書いてある。
名も知れず、だが強く、ひとり戦い続けていたという。
その戦いぶりから「悪くない。 部下に欲しい」と言わしめたとか。
詳細が分からない為、その兵士が どういった者だったかは分かっていない。
だが只者ではなかったのかも知れない。